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は無い、表向きに威張つた喧嘩は出來もしないで、温順しさうな顏ばかりして、根生がくす／＼して居るのだもの憎くらしからうでは無いか、家の母さんが言ふて居たつけ、瓦落（がら）／＼して居る者は心が好いのだと、夫れだからくす／＼して居る信さん何かは心が惡るいに相違ない、ねへ正太さん左樣であらう、と口を極めて…

がくかう）の通学生（つうがくせい）とかや中村（なかむら）のかたには娘（むすめ）只一人（たゞひとり）男子（をとこ）もありたれど早世（さうせい）しての一粒（つぶ）ものとて寵愛（ちやうあい）はいとゞ手（て）のうちの玉（たま）かざしの花（はな）に吹（ふ）かぬ風（かぜ）まづいとひて願（ねが…

）きたきは無理（むり）か、かくすに顯（あら）はるヽが世（よ）の常（つね）ぞかし。 さすれば夢（ゆめ）のあともなけれど、悟（さと）らぬ先（さき）の誰（た）れも誰（た）れも思（おも）ひを寄（よ）せしは名（な）か其人（そのひと）か、醫科大學（いくわだいがく）の評判男（ひようばんをとこ）に松島忠雄（まつしま…

1893年 櫻（さくら）の花（はな）に梅（うめ）が香（か）とめて柳（やなぎ）の枝（えだ）にさく姿（すがた）と、聞（き）くばかりも床（ゆか）しきを心（こヽろ）にくき獨（ひと）りずみの噂（うはさ）、たつ名（な）みやび男（を）の心（こヽろ）を動（うご）かして、山（やま）の井（ゐ）のみづに浮岩（あくが…

が見（み）へないと云（い）ふ位（くら）ゐの苦（くる）しいもので、當今（たうこん）は產婆（さんば）學校（がくかう）卒業（そつげふ）の若（わか）いお婆（ばあ）さんが御座（ござ）います、女（をんな）が年（とし）を老（と）れば婆（ばゞあ）と極（きま）つて居（ゐ）る、處（ところ）が…

なれば、宗教（しうけう）を以（もっ）て、天主（てんしゅ）に立帰（たちかへ）る外（ほか）に、赦（ゆる）される道（みち）はない。又後世（またのちのよ）の幸福（さいはひ）は、金（かね）や位（くらゐ）や学力（がくりょく）を以（もっ）て得（え）られるものでない、天主（てんしゅ）が…

がくせい）もありけり、さればこそ一（ひと）たび見（み）たるは先（ま）づ驚（おどろ）かれ再（ふたゝ）び見（み）たるは頭（かしら）やましく駿河臺（するがだい）の杏雲堂（きやううんだう）に其頃（そのころ）腦病患者（なうびやうくわんじや）の多（おほ）かりしこと一（ひと）つに此娘（このむすめ）が…

2 學者（がくしや）とパリサイの人（ひと）はモーセの位（くらゐ）に坐（ざ）す 3 故（ゆゑ）に凡（すべ）て彼等（かれら）が爾曹（なんぢら）に言（いふ）ところを守（まもり）て行（おこな）ふべし然（され）ど彼等（かれら）が行（おこな…

みやおよびそのうちにいますものをさしてちかふなり 22 また天（てん）をさしてちかふものは神のみくらゐおよびそのうへに坐（ざ）するものをさしてちかふなり 23 あゝ 汝らわざはひなるかな がくしやとパリサイの人 僞善者（ぎぜんしや）よ いかにとなれば薄荷（はくか） 茴香（うききやう） 馬芹（まきん）の十分（じゅうぶん）の一（いち）をとりておさめ…

な）れた此二（このふたつ）の運転（うんてん）の外（ほか）に、天文学者（てんもんがくしゃ）は尚十許（なほとをばか）り重（おも）なる運転（うんてん）を認（みと）めて居（ゐ）るが、到底素人（たうていしろうと）では夢（ゆめ）にも解（わか）らぬ話（はなし）に成（な…

是（これ）が本当（ほんたう）の答（こたへ）であって、若（も）し茲（こゝ）で天主（てんしゅ）に三位（さんゐ）あると答（こた）へたならば反対（あべこべ）に成（な）る。物（もの）が二（ふたつ）でもある時（とき）は、一（ひとつ）は是限（これきり）、今一（いまひとつ）は其限（それきり）と成（な…

（しも）の凍（こほ）りついた土（つち）に兩手（りやうて）をつかへ、斑紋󠄁（はんもん）の快癒（くわいゆ）を泣（な）いて祈願（きぐわん）したのであつた。が高等（かうとう）小學校󠄁（せうがくかう）を卒業（そつげふ）した時（とき）、私（わたし）は癩（らい）を宣吿（せんこく）されたのである。…

（とうげん）の　さまにも似（に）たる後楽園（こうらくえん） 昔（むかし）の名（な）をば其儘（そのまゝ）に　今猶殘（いまなほのこ）す江戸川（えどがは）の　流（なが）れは盡（つき）ず岸（きし）の邊（べ）に　柳櫻（やなぎさくら）のこきまぜる 紺靑（こんじょう）のべし如（ごと）くなる　濠（ほり）の彼方（あ…

ながく生き延びる。とっくに分別の出来た大人が、今もなお熱心に――厚紙でサンドウイッチのよう挟（はさ）んだうえから一と思いに切って見たら？――こんなことを考えているのである！ところが、最近、ふとしたことから、この空想の致命的な誤算が暴露（ばくろ）してしまった。…

が任（にん）となす、亦（また）重（おも）からずや、死（し）して後（のち）已（や）む、亦（また）遠（とほ）からずや。〉 八之八 子曰：「興於詩，立於禮，成於樂。」 〈子曰く、詩（し）に興（おこ）り、禮（れい）に立（た）ち、樂（がく）に成（な）る。〉 八之九 子曰：「民可使由之，不可使知之。」…

なに）かに一時（いつとき）も居（ゐ）やしないのに、何故（なぜ）まあ丈夫（ぢやうぶ）で生（うま）れて呉（く）れたらう、厭（いや）だ、厭（いや）だ、何（ど）うしても此縁（このえん）につながれて、これからの永世（ながらく）を光（ひか）りも無（な）い中（うち）に暮（くら）すのかしら、厭（いや）な…

下し賜ひし 君ぞかし」 わが天皇（すめらぎ）は わがくにの 版圖を擴（ひろ）めて 東洋の 覇國と世界に うたはるゝ 基（もとゐ）を開きし 君ぞかし」 いざやうたはん もろともに 天津日影を 折かへし いざや祝はん もろ聲に 今日のよき日を くりかへし」 十二月 昨日とくらし 今日と過ぎ 月日流るゝ…

の鳥（とり）きたりて其枝（そのえだ）に宿（やどる）ほどの樹（き）となる也（なり） 又（また）曰（いひ）けるは神（かみ）の國（くに）は何（なに）に比（くら）べ何（なに）の譬（たとへ）を以（も）て之（これ）を喩（たとへ）ん一粒（ひとつぶ）の芥種（からしたね）の如（ごと）し　之（これ）を地（ち）に播（ま…

そしていよいよ河田師範の顔がそれらの眼の矢面に立った瞬間（しゅんかん）、生徒達はみな急に嬉（うれ）しくなった。 後の方に坐（すわ）っているものの中には、わざわざ腰（こし）を伸（のば）して眺（なが）めたものもあった。そしてその眼は同じく嬉しそうになって生徒達の頭の中へまた割込（わりこ）んで行った。 河田師範の顔が…

むせぶは水（みづ）の聲（こゑ）ばかり 長（なが）野（の）に見（み）ゆる大寺（おほてら）は 是（これ）ぞしなのゝ善（ぜん）光（くわう）寺（じ） むかし本（ほん）田（だ）の善光（よしみつ）が ひろひし佛（ほとけ）なりとかや こゝにとゞまるひまあらば 戸（と）隱（がくし）山（やま）にのぼり見（み）ん 飯（い）綱（づな）の原（はら）のほとゝぎす…