別れ霜

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第一囘[編集]

 さうしてふゆめといふぎりまことじやまくさしぎはまではとひきしむるりよくこゝろはかりにはこがねといふおもりつきてたからなきこだからのうへもわするゝせうりだいそんいまにはじめぬふくしやのそしりもかぢぼうにはこゝろもつかずにぎつてはなさぬくまたかしゆぎりくつはいつもすぢちがひなるうちかんだれんじやくちやうとかや、ともさへづりのかしましきならできやくあししげきごふくみせあり、くちよければしいれあたらしくにつためうじそのまゝのれんにそめてちやうばがうしにやにさがるあるじのうんぺいふわくといふしじふをとこあかがほにしてほねたくましきはうすじやうゆきすかれひそだちてのせちがらさなめこゝろみぬわたりのだんなかぶとはおぼえざりけり、つまはいつごろなくなりけん、かたみむすめたゞひとりおやぬをおにことよべどとびんだるおたかとてことしにはちのつぼみのはないろゆたかにしてにほひこまやかにあつぱたうだいこまちそとほりひめとせけんさぬもだうりあらかぜあたりもせばあのやなぎごしなにとせんとあだぐちにさへうはされてごとういなりえんにちうしろすがたのみもはいたるわかものはえいよかうふくうへやあらんそつげふしけんいうとうしようなんのものかはこくくわいぎゐんいすにならべてしやうがいきばうひとつにかぞへいるゝがくせいもありけり、さればこそひとたびたるはおどろかれふたゝたるはかしらやましくするがだいきやううんだうそのころなうびやうくわんじやおほかりしことひとつにこのむすめもととはあきうどのするかけねなるべけれどかくそのびあらそはれず、すがたかたちのうるはしきのみならでこゝろざまのやさしさなさけふかいとたけみちけたるうへたきもとながれをみてはしりがきうるはしくししよごけいかど/″\しきはわざとさけていせげんじのなつかしきやまとぶみあけくれふづくゑのほとりをはなさず、さればとてかうろほうゆきみすをまくのさいぢよめきたるおこなひはいさゝかもしんそうはるふかくこもりてはりしごとによしやうほんぶんつくこゝろがまことしゆしようなりき、いへかうじゆんなるはいでかならずていせつなりとか、これがをつとあふがれぬべくさだまりたるはてんかくわはうひとりじめぜんしやうくどくいかばかみたるにかとにもひとにもうらやまるゝはさしなみのとなりまちどうしやうちゆうしにせられしまつざはぎゑもんひとりむすこよしのすけばるゝやさをとこちぎりはふかそせんえんかれてかしひとりこどうし、いひなづけのやくなりたちしはおたかがみどりのふりわけがみをおたばこぼんにゆひむるころなりしとか、さりとてはながかりしとしつき、ことしはよしのすけもはやはたちいまいちりやうねんたるうへおほやけつまとよびつまばるゝぞとおもへばうれしさにむねをどりてともだちなぶりごともはづかしく、わざとらずがほつくりながらもくれなゐわれしらずおほそでびやうぶにいとゞこゝろのうちあらはれていまさらきたることもありひとみぬひまのてならひまつざはたかとかいてまたぬりかくすあどけなさりはつえてもおぼこぎ〈[#「未通女氣」は底本では「末通女氣」]〉なりおなこゝろよしのすけごとしとくちにはいへどとしつきはわがためゆづるたゆみしやうにおぼえてかしらすほどのまどろかしさよ、たかどのつきゆふべかげわかつはいつぞとしのび、はなしたふむつゆのあしたならぶるつばさこてふうらやましくようじにかこつけてをり/\とひおとづれによそながらはなおもてわがものながらゆるされぬひとへがきにしみ/″\とはものいひかはすひまもなくとかくうらめしきつきひなりひまゆこまかたちもあらばたづなむちげていそがさばやとまでおもわたりぬ、されどもてんびじんんでびじんめぐまずおほくはりやうはいざらしむとかいへり、やよひはなかぜかならずさそひじふごやつきくもかゝらぬはまことにまれなり、おぼつかなしやさいしかじんかがなべてよろこびののいつかべき、あしわけぶねのさはりおほなればこそおやにゆるされにゆるされかれねがこれひよしやましんのうかゞへばとてぬばたまかみひとすぢさしはさむべきひまえぬをもしこのゑにしむすばれずとせばそはてんさいちへんか。



第二囘[編集]

 ろうしよくのぞむはにんじやうつねなるかも、ひやくいたればせんをとねがせんにいたればまたまんをとしよぐわんやすときなければこゝろつねやすからず、つら/\おもへばむいちぶつほどきらくなるはあらざるべし、たいていごじふねんさだまつたいのちさうばこがねもつくるはせるわけにはかず、はなふがくきこえてしうんらいがうするあかつきにはだいにんれうにてこととゝのはずとはたれもかねてれたるはなしつるせんねんかめまんねんにんげんじやうぢういつもつきよこめめしならんをねがかりにもむじやうくわんずるなかれとはだいふくちやうじやるべきひとかんじんかんえうかなめいしかたつてうごかぬところなりとか、そもまつざはにつたらがそせんきこえしはかみかぜいせひとにてつとおほえどこゝろざしてゝせりごふくるかげもなかりしがろくけんまぐちくろぬりどざうときのまにしんだいたちあがりてをとこふたりうちあにむろんいへあととりおとゝにははゝかたたえたるせいおこさせてにつたとはなのらすれどしよじべつけかくじゆんじてしゝそん/\すゑまでどうしんけふりよくことしよあひかくりすべからずといふゐしかたくほうたいしてよゝまじはりをかさねしがたうだいにつたのあるじはいへにつきてちすぢならずひとりむすめにふふなりしかばあひおもふのこゝろふかからずかつにのみはしくせものなればかねてはまつざはりうせいをたのみてあやにかけたるいひなづけのえにしおやなりなりあひやけどうしなりふそくしなあらばたまへとかなたにばかりしんせつつくさしてひきいれしすくなからずさいをうがうまきことしていくとせすぎしあさひのかげのぼるがごといまさかゑみなまつざはかげなるものからのどもとすぐればわするゝあつたいとうちゐいたればうへこぶうるさくなりてひとりつく/″\あんずるやうけいじつちやうへだてぬところどうしやうげふいとなむがうへれはほんけとてもちひもおもかるべくわれとてしんよううすきならねどかなたしちぶえきあるときこゝにはわづかにさんぶのみいへはんえいちやうきうさくまつざはきにしかずつはむすめきりやうすぐれたればこれとてもまたひとつのかねぐらよしのすけとのえにしえなばとほちやうかどぢめんぢさんむこもなきにはあらじいつきよりやうとくとはこれなんめりとおもこゝろむすめにもどうきもとむるばんとうかんざうにのみわつかせばよこてつてさんせいしゆじゆうにちやひたひをあつめてそのはうはふかうたりき、ときなるかなまつざははさるとししやうはふじやうつがふにつたよりいちじれしにせんばかりかねことしはすできげんながらいちりやうねんひきつゞきてのふけいきさすがしにせてもとゆたかならずことおりもとそのほかにもしはらふべきかねいとおほければにつたしんぞくあひだがらなりかつこれまでかたよりたてかへしぶんすくなからねばよもやじじやううちあけてえんきはゞゆるさじとひもすまじたにんうちかぶとすかされきかいじかけのあやつりしんじやうまつざはももうくだざかよとはやされんはくちをしくなるにつたあとまははらおりもとそのほかありがねおほかたとりあつめてしはらひたるうはさこそみゝよりのことなれとひごろねらひすませしまとかなたよりえんきをいひさぬに、きつはなしてきふさいそくいひわけすべきほどもなくたちまおもてむきのそしようざたとはれりけるもとまつざはすだいいへがらしんようあつければきん/\せんにせんかねいづかたにてもてうたつできうべしとせじんおもふはうらうへにてたまごしかくまだばんこくはくらんくわいにもちんれつさたをきかねどみそかつきなかじふごややみもなくてやはおくもうろうのいかなるしゆだんありしかにつたくわくさくきはめてめうにしていさゝかのゆうづうもならずじだんはゞやとほんそうせしかどそれすらもとゝのはずしてにつたしゆびよくかちせいかちどきこゑいさましくひきあげしにそれとかはりてまつざはしうしやうらうばいまことねみゝでみづさうどうおどろくといふひまもなくたくみにたくみしけいりやくあらそふかひなくはいそとなりいへくらのみかすだいつゞきしのれんまでもみなかれがしたればよりおちたるやまざるどうやうたのむこかげあめもりしんしちといふばんとうしろねづみきよねんしやうこくかへりしのちそろばんだまふでさきちやうじりつくろふどぶねづみのみなりけんしゆかいちだいじこんにちまをしあはせたるやうにふじみさいぎやうきめみかへるものさへあらざればむねんなみだてにもつにしてのみゆかしきつまこひざかしたどうぼうちやうといふところおやこみたりあめつゆしのぐばかりのいへりてからひざをばれたりけり、うみならずやまならぬじんせいかうろなんいまはじめておもあたふちせことなるあすかがはあすよりはなにとせん、もとふかひととなりてにうじやくにのみそだちしれとおぼえしげいもなくそろばんりならへどものあたりしことなければときようにはちもせずしてくらへばむなしくなるやまたかばうしはんぐつきのふかざりしまはりもひとふたりはてはみそかかんぢやうさへむねにつかふるほどにもなりぬ。



第三囘[編集]

 いちにんなみをとこになりながらなんふがひないしやふふぜいにまでおちぶれずとものことほかしやうのあらうものをとたいげんきしむかしこゝろはづかしさよれがこのんでぎうばかはりにあぶらあせながしぢんあいなかめぐるものぞしやうもやうきはてたればこそはじぐわいぶんもなひまぜにからめててたのつまりむねんざんねんまんぢうがさのうちにつゝみてまゐりませうとこゑびくすゝめるこゝろいらぬとばかりもぎだうにひとそれはまだしもなりうるさいはとしかりつけられてわれしらずあとじさりするいくぢなさまだしもこほるよあらしつじまちちやうちんえかへるまであんじらるゝはふたおやのことなりれぬひんくめらるゝとくわいきうじやうのやるかたなさとがらうたいどくになりてやなみだがちにおなじやうなわづらかたそれもごもつともなりわれさへむねんはらわたをさまらぬものをむねさけるほどにもおぼしめすなるべしにくきはにつたなりうらめしきはうんぺいなりよしやをすゝりしゝむらをつくすともあきたるべきやつならずとひえこほこぶしにぎりつめてあてどもなしににらみもしつおもかへせばそれもぐちなりうらみはひとうへならずれにをとこらしききりやうあらばほどまでにはきゆうしもすまじアヽとたんずればいきしろくえてよかぜやぶびやうぶうちしんぱいになりてしぼつてかへるからぐるまざいふのものゝすくなほどくらうのたかのおほくなりてまたぐわがやしきゐたかさ、アヽおかへりかとおきかへはゝ、おとつさんはげしなツてゞすかさぞごふじいうございましたらうなにもおかはりはございませんかとうらとこゝろきずもつあし、オヽおまへるすさはいどのがえられてといひさしてしばたゝくまぶたつゆしらをかきへいといふいうめいむじひものあくきらせつよとかげぐちするはしぶうちはえんはなれぬたなこどもえてがつてやちんきれいはらひてぼんくれさたうぶくろあましるさへはしかばぐるめじりもろともまゆげによぶぢざうがほにもゆべけれど、いまうへにはにくくしがうよくものじじやうあくまでりぬきながららずがほたばこふか/\あやまりあればこそたゝみひたひほりうづめてたんぐわんふきいだすけむりして、いひわけきくみゝはなしやちんをさめるかたなけるかみちふたつぞどちらにでもなされとぽんとはたくそのきせるうちわつてやりたいつらがまちもくてきなしにけふまでとべしはぢゆう/\こなたわるけれどはゝうへとらへてなにいひつたかおみゝれまいとおもへばこそさま/″\くらうもするなれさらでものごびやうきにいとゞおもさをへたやうなものはてこまつたとひはせでうつぶこゝろしあんにくれぬ、さはいどのがえられてとはゝことば〈[#ルビの「ことば」は底本では「こゝば」]〉くりかへしてなにわけらねどいますぐにこゝいつすんゆうよもならぬとそれは/\にもかゝれぬだんじやうおまへにもれうけんあることゝやうやうにいひのべてかへりますまでたのんではいたれどマアどうしたらからうかしあんしててくだされとこごゑながらもおろ/\なみだあんじなされますなうにかなりますこんやだいぶけましたからあしたさう/\でむきましてはなしあひをつけませうナニすこしのゆきちがひでそれほどのことではございませんとおやにまでいつはるとはさてものちのよおそろしゝ、ぬにくるよあがらすもこうときてはんぽをしへとなるものをいきがひなやごしやくふぼおんになれずましてやのれんいろむかしにめかへさんはさてきててうしぼさんのやつ/\しさにつく/″\うきよいやになりてわがみてたきをり/\もあれどやみつかれしふたおやねがほさしのぞくごとにわれなくばなんとしたまはんもつたいなしとおもかへせどくはなみだくすりなべしたずみびとろ/\とがちくらしとてりやういにもかゝられねばす/\おもこゝろぐるしさよおもへばてんかみほとけわがためにはみなあだいまこのばあひすぐしにするとはなんことにつたこそうんぺいこそだいあくにんこつちやうなれむすめばかりはよもやとおもへどそれもこれもこゝろまよひかすがたこそことばこそやさしけれうりつるらぬなすびてゝおやおなこゝろになつていまわがみあいそきて、ひとづてふみいつつうそれすらもよこさぬとはげめんによぼさつないしんはあれもによやしやめ。



第四囘[編集]

 ひとはとまれおまへさまばかりはたかこゝろごぞんじとおもふたはそらだのめかなさけないおことばまへさまとえんきれてながらへるわたしおぼしめすかうらみをまをさばそのこゝろうらみなりとゝさまわるだくみそれおあそばすにおこたへのことばもなけれどそのくやしさもかなしさもおまへさまにおとることかはひとしらぬやぐえりなにゆゑにぬるゝものぞなみだいろのもしあらばこのそでひとつにおうたがひはれやうものひとあなけものとはあまりのおほせつもりてもごらんぜよつながれねどかごとりおなじことふろやくもけいこごともひとりあるきゆるされねばおめにかゝるをりもなくふみあげたけれどおところたれひもならずこゝろにばかりないないりましたをはくじやうものぎりしらずとおしくるめてのおことばだうりなれどごむりなりこのみひとつにとががあらばたれもせんかれもせんひざともといふだんがふあひてあそばしてよとなみだながらひかへるたもとするどはらつておたかどのことばばかりはうれしけれどまことやらなにやらこゝろまでよしのすけあやにくたずてゝごこゝろおほかたれてありかひしよなしのいやになりてえんちどがさにけいりやくざんまいかゝりしわれらわなのうちのけものうつわらはるゝはずなんなみだつくりがはげてはどくなりうしのりかへるうまきはなしない/\ることならんをいへくらぢさんなりひらをとこたまかほわれらづれにもつたいなしおきなされよたくもなしとつれなしやうしろむきにくらしきことかぎならべられてもくちをしきはそれならずけぬこゝろにあらはれぬむねうらめしくきみさまこそはなんともおぼしめすまじけれどものごゝろそのころよりさま/″\のことくらうにしてだしなみものまなれかれかおりたやかれまじとこゝろのたけはきみさまゆゑつかはれてかたときやすおもひもせずおともだちあそびもしばゐきもおきらひとればおほかたことわりいふてひがものわらはれしはれのためをさなあそびのむかしらずむつまじきなかにもはづかしさがたてりておもふことおもふまゝにもいはざりしをあさこゝろおぼしめすかたとひどのやうなことあればとてあだびとなんのそのわらひがほせてならうことかはやまほどのうらみもくるすぢあればせんかたなしきみさまあいさうつきてのたくみかとはおことばながらあまりなりおやにつながるゝつみおなじとかくごながらそのなばかりはゆるしたまへよしやとゝさまにどのやうなおにくしみあればとてかはらぬこゝろわたしこそきみさまつまなるものをなにとげ/\しいたにんあしらひきこえぬおこゝろやといひたさをおさゆるなみだそできてモシとめればふりはらはおりのすそエヽなにさるゝじやまくさしわれはおまへさまのてあそびならずおとぎになるはうれしからずそなたたいけむすめごひまもあるべしそのひぐらしのじかんもをしくれぞあひてをおさがしなされとふりはらへばまたすがりよしさまそれはごしんじつかとみあぐるおもてにらみかへしてうそいつはりはおまへさまなどのなさることぎりにんじやうのあるならよもやとおもきしやうぢきからいぬどうやうひとでなしにをかまれてのれんはぢれゆゑぞもとたゞせばねわけのきくおやこなからぬといふだうりはなしよしらぬにせよるにせよそれはそなたごかつてなりかたきつまにもせられずよめにもすまじふこともなしくこともうらみつらみをならてなばちからぐるまうしあせなんせきれるものかははぬがはなぞおまへさまはさかりのはるめきたまふはいまなるべしこもかぶりながらみおくらんとことばていねいきごみあらくきり/\とひしばりてぐるまゆねおそろしくさんぱつなゝめにはらひあげてしろおもてくれなゐいろさしもやさしきつねにはめればふりきるそでたもとまづいましばしとびつうらみつりつくてさきうるさしとたちげにはたとけたふされわつとこゑれとわがみゝりてかへるはいづこつねへやりかゝるふづくゑこげつせうこてふのまきはかなくめてまたおもひそふいつすゐゆめゆふひかたぶくまどすだれかぜにあほれるおとさびし。



第五囘[編集]

 おめづらしやおたかさまけふおいでどういふかぜふきまはしかをとゝひのおけいこにもそのまへもおかほつひにおせなさらずおししやうさまもみなさまもたいていでないおあんがないちにちうはさしてをりましたとうれしげにでむかけいこほうばいにしきのはなばれていがくしいもとはくあいじんじきこえたかきあにみまねおとなしづくりなにがしがくかうつうがくせいちゆうばんりよくさうちゆういつてんくれなゐたゝへられてあがりのたかまげひふでたちはたちしてのかたぬひあげかはいらしきひとがらなりおたかさまごらんなされとしよりなきいへらちのなさあにあにとてをとこことうちのことはとんとすてものわたしひとりつもふもほんにほこりだらけでございますとわらひていざなざぶとんうへおかまひあそばすなとしづごゑにおたかうやむやのむねせきしよたれにうちあけんあひてもなしともだちむつまじきもあれどそれははるあきはなもみぢつゐにしてかんざしつくりものならねどたうざつきあひすがたこそはやさしげなれちゑくわうだいくはこのひとすがりてばやとこれもをさなげさりながらすがたれぬはひとこゝろわらひものにされなばそれもはづかしなにとせんとおもふほどきやうだいあるひとうらやましくなりておあにいさまはおやさしいとかおまへさまうらやましとくちるればはなこすこみをふくんでこればかりはわたししあはせさりとてけんくわするときもありむりこごといはれましてはらだふこともあれどあとさきもなしなまこのやうなとわらはれますこのごろせれうひまがなうてしばゐよせもとんとごぶさたそのうちにおさそまをしますあにはおまへさまをといひかけてわらことばなにとしらねどおほどこしとはおなさけぶかことさぞかしかあいさうのもございませうとおもふことあればさつしもふかはなこたばこきらひときゝしがかたはらきせるとりあげていつぷくあわたゞしくおしやりつそれはもうさま/″\ツイふつかばかりまへのことごくひんうらやものなんざんくるしみましてあにしゆじゆつふたりともあんぜんではありましたれどあかごせるものがないとかきませばつねこゝろしようちがならずとほしてはりしごとるものふたつかはしましたととくいがほものがたとくかげなるこそよけれとかきゝしがあやしのことよとうたがむねさうだんせばやのこゝろえぬはなこさま/″\のくわんじやはなしきのふみまひどうぼうちやうとやらしやとけばつゆたがはぬやうすなりそれほどまでにはよもやとおもへどまさしくならばなんとせんじつぴくはしくきたしとおもへどとがむるこゝろことばつまりてこたへなにやらうろうろになりぬおたかさまゆるりなされいまあにもどりまするまづそれよりはおけたきものいつぞやはなまをせしあにひざうぐわでうイエおまへさまにごらんるゝにめられこそすれなにとしてこごとくことではなしおまちあそばせよともてなしぶりことばなめらかのひととてなか/\かへしもせずえだえだそふものがたりはなこいとゞまじめになりてまをしてはをかしけれどおまへさまはおひとりごわたしとてもあにばかりをんなきやうだいもちませねばさびしさはおなじことなにかにつけてこゝろぼそごふそくかはらねどいもとおぼしめしてよとそこにものあることばづかひそれはわたしよりねがふことゝいふことばきもをはらずそれならばおはなしありおくださりますかとあやしのねどひおたかさまおまへさまのおむねひとうかゞへばわけのすむことほかでもなしまことねえさまにおなりくださらぬかときつぱりいはれてごじやうだん〈[#ルビの「ごじやうだん」は底本では「ごじやだん」]〉わたしこそまこといもとおぼしめしてとふをさへぎりそれではごぞんじのきならんてゝごさまとあにとのなかにおはななりたつておまへさまさへごしようちならばあすにもしんじつあねさまいやか/\おいやならばおいやでよしとうすきみわろきやさしげのこゑうそまことあまりといへばあまりのこと、みだるゝこゝろさすがしづめてはなこさまおほせまだわたしにはのみこめませぬおこたへもなにおつてのことけふづおいとまたんとするをしひてもめずらばおかへりかきおへんじまちまをしますとおくいだげんくわんさきさやうならばをあとになしていだくるまかけごゑはしひとりをとこあれはいづくくすりとりあはれのすがたやとみかへればかなたよりもみかへかほオヽよしさまことばいままろでぬくるまれきろくとしてわだちのあととほしるされぬ。



第六囘[編集]

 なかがらすしやうじごしになかにはまつすがたをかしとけんぷよのぶとんすつぽりとこたつうちあたゝかに、びじんしやくしたつゞみうつゝなく、かどはしたるひろひあれはいづここそうどんせつちゆうひとけいぶつおもしろし、とてもつもらばごしやくろくしやくあまどけられぬほどらしてとこやみちやうやえんりてたしともつじたたはごとたまふちろ/\にもりくくわながめべつけれど、にしむさぶさはふりかゝりてののちならでれぬことなり、うそさぶしとひしもふつかみつかあさよりもよほすうすずみいろそらもやうづつうもちのてんきよはうさうゐなくにしきたかぜゆふぐれかけてがもうりうじよかはやちら/\とでぬ、いりあひかねこゑいんひゞきてねぐらにいそぐともがらすこよひやどりのわびしげなるにうつせみのゆめみはじめ、まちあひおくにかいつめびきのさんさがすだれるゝわらごゑひくきこえておもはずとまゆくひとあしもとくるぼんなういぬしつぽ、しまつたりときてちくしやうめとはまことみつけのことばなり、ものなればおもからぬかさしらゆきゆきかひおほくはあらぬかたかはまちうすぐらきにしよんぼりとせしちやうちんかげかぜにまたゝくもこゝろぼそげなるいちりやうくるまあり、はだいやすあらはれてげたるやぶれしほろよめなればこそだしもなれひるはづかしきふるげつとのりてしなさぞぞとられておほくはれぬやせづくこめしろほどりやしやくしやくにけんけぶりつなあはれしゆちゆうにかゝるこのひとちからおぼつかなきほそづくりにしやふめかぬひとがらきやしやといふてめもせられぬりきえきしやくわいつたとはうけとれずりれきいかきたしとひとなければれとくちびるひらきもならず、アヽとためいきかみしめるさぶさにふるひてうちあふおもてればさてびなんしいろこそはくろみたれびもくやさしくくちもとにゆうわとしやうやはたちいちつぎ/\つゝそでぎものいとおりぞろへにあらためておびきんぐさりきらびやかのなりさせてたしりうかうはながたやくしやなんとしておよびもないことたいけわかだんなそれしたうやくなるべし、さりとてはほどじんぴんそなへながらおぼえたげいきかとりあげてもちひるひときかあはれのことやとはまへかんじなりしんじやうさら/\れたものならずうつくしきはなとげもありにゆうわおもてあんぐわいしよゐなきにもあらじおそろしとおもへばそんなもの、ひいきめにはせつちゆううめはるまつまのみすよすせうせつかゝはらぬがだいゆうなりつじまちいとまげんしよひもといてさうなものといろめがねかけてせじやうものうつるはおのれめがねがらなり、はまだけねどふりしきるゆきひとあしおほかたたえ/″\になりておろしやうかこゝかしことほあんまこゑちかまじいぬさけびそれすらもさびしきをみちばたやなぎにさつとかぜになよ/\となびいてるはこゆきものおもがほわかものえりのあたりいやりとしてハツとふりはらへばはんめんがすとうひかりあをじろし、ひとはなしひとなほさらなからんをなにつとかばからしさよとよそめにはゆるゐものからまだたちさりもせずぜんごくばるはひとまこゝろえぬなるべし、こほてさきちやうちんあたゝめてホツとひといきちからなくあたりみまはまたひといきこゝくるまおろしてよりさんどめときかねいまはとけつしんほぞかたまりけんツトたちあがりしがまたふところをさしれてひとしあんアヽこまつたとわれしらずたんそくことばくちびるをもれてそのまゝはもとのとほしたうちおとつゞけてきこえぬ、ゆきはいよ/\つもるともむべきけしきすこしもえずゆきゝとてもなきことかとらくたんみゝうれしやあしおとかたじけなしとかへりみればかくとうひかゆきえいじゆんくわいさこうあやしげにそゝいでぎられしあとまたひとおとこのたびこそはとれげなさけなしさんげんばかりてまへなるいへりぬ、さすがきこんつきはてけんばうぜんとしてたちつくすをりしももすこまゐるとございませうとはなごゑしてくろかげうつりぬ、てんあたひとこそつれはづすまじといさたつすゝればはてなんとせん、すぎたるはおよばざるふたりづれとはあやにくや、くるまいちにんのりなるを。



第七囘[編集]

 こゝろられのさるゝものはさんくわいぎてむかひのくるまかぞれたし、たせてきてもかりしをともまちちのざつたふゑんりよしてじかんはやめにいひつけかへせしものなんとしてのさうゐぞやよもやわすれてぬにはあらじうちにてもそのとほいつまでむかさずにはかれまじ、れいしゆへきどこみせにかたふれてねいりてもしまひしものかそれなればいよいよこまりしことなりうちにてもさぞあんこゝへもまたどくなりなにとせんとおもほどよりつもゆきいとゞこゝろぼそしよくるゐながるゝおもてにかいひとりとりのこされしにつたのおたか、げにもうきよおんぎよくししやうもとしかるべきくわいもよほことわりいはれぬすぢならねどつらきものはぎりしがらみぜひたれてこのひひるすぎより、かざにしきうらはとはゞなみだばかりぞうすげしやうふかくらういろかくしてともむじやきものがたりをわらふてむなぐるしさおもひにやせたなくびりすがりておうらやましやおたかさまのおほそさよおめしあがりしかごでんじゆきたしとまじめひとをかしくはなくてそのこゝろねうらやましくなりぬひと/″\かへてゝよりいちじかんばかりつにはながじかんながらくるまおとかどにもきこえずすてかれなばだしもなれどおちやまゐらせよおくわしあがれはまだそれほどふかくもなしおむかひもいままゐらんゆるりなされともてなさるゝほどなほさらどくがたくなりていつまでちてもえませねばはゞかりながらくるまひとねがひたしとはしためしうせんのほどたのればそれはなんざうさもなきことなれどつひちがひにおむかひのまゐるまじともまをされずいますこしおまちなされてはとしぶ/\にいふはくるまもとめにくがつらさになるべし、それもだうりゆきよみちしてとはひかねてこゝろならねどまたしばらくにどめれしちやかをうすらぐころになりてもおともなければいまぬものかるものかてにもならずてにしていつといふさいげんもなしちがひになるともそれはよしかくくるまねがひたしとおしかへしてたのるゝにしゝやうにもとどくがりてらばおまをすまじとてもおかへりなさるゝにけてはよろしからずくるまおほいそぎにまをしてよとしゆいひつけにはせんかたなくてやうらめしげながらうけたまはりてはしごあわたゞしくりしがみづぐちづるだいこくがさうへゆきつもるといふもなきばかりすみやかにたちかへりてでいりくるまやどなごりなくではらひてひきこひとりをりませねばおどくさまながらとにようばうこうじやうそのまゝのかへごとらばなにとせんおたくにおあんじはあるまじきにみやうさうてうごきくわんとなされよなどしんせつめられるれどさうもならず、ゆきこそふれはまだそれほどにござりませねばとかへじたくとゝのへるにそれならばたれともにおつれなされおひろひごめいわくながらこのほとりにはくるまちよつとむづかしからんおほどほちかくまでごなんじふなるべしうちにてすらひをけすこしもはなされぬにやきあたつておかぜめすなしつれいなにもなしこゝよりすぐにおづきんれぞおかたかけまをせとそうがゝりにしたくてつだはれてはゞかりさまといひもあへけぬうちにおいそぎなされなまなかおまをさずばほどつもるまいものおどくのこといたしたりおわびはいづれとおくかどぐちいぬこゑおそろしけれどおくりのぢよちゆうほねたくましきにこゝろづよくてのきしたづたさんちやうばかりごらんなされませあのちやうちんきつとくるまいますこしのごしんばうかるゝこほりつくやうなりうれしやとちかづいてればさてもやぶぐるまモシとこゑはかけしがあとじさりするおくりのぢよちゆうソツとおたかそでひきてもうすこまゐりませうあまりといへばとあとこごゑなりをりしもふりしきるゆきにおたかかうもりかたむけてみかへるともなくみかへとたんうつるはなにものほうとうらんめんせいねんしやふなりおたかよかぜにしみてかぶる/\とふるへてたちどまりつゝこのゆきにてはさききてもるかきかれませねばなににてもよしくるまたのみなされてよとにはかあしもとおもげになりぬあのこんくるまにおしなさるとかあのこんくるまにとにどさんどたかかろうなづきてことばなしれもせつちゆうずゐかうなんぎをりとてもとむるまゝにいひつくるくだんくるまさりとてはふにあひなりにしきうはぎにつゞれのはかまつぎあはしたやうなとこゝろをかしくひきいだすをみおくつてごきげんようくるまやさんよくおをつけまをして。



第八囘[編集]

 いだくるまいつさん、さりながらつもゆきしやりんにねばりてかしやじやうどうえうするわりあはせてみちのはかはかずよろづよばしころにはてつだうばしやらつぱこゑはやくえてきやうやとけいじふじはうずるひゞきそらたかし、よろづよばしまゐりましたがおたくどちらかぢひかへてたゝずしやふしやじやうひとこゑひくゝなべちやうまでとたゞひとことしやふきもへずちからめていまいつせいいだしぬ、がい/\たるせつやけいかはりはなけれどおほどほりはさすがひとあしえず〈[#「えず」はママ]〉ゆきがすとうひかかう/\として、はだへをさすかんきへがたければにや、しやじやうひとかたかけふかひきあげてひとめゆるはづきんいろかたかけはでもやうのみ、くるまによほふぐるまなりほろゆきふせぐにらねば、かうもりからぜんめんおほひてくこといくちやうなべちやううらはうございますかとみかへればいななべちやうではなし、ほんしろかねちやうなりといふ、らばとばかりいだまたいつちやうまがりませうかとへば、まつすぐにとこたへてこゝにもくるまめんとはせずにほんばしまできたしといふになにかはらねどことばとほり、かしにつきてまがりてくれよ、とはいづかたみぎひだりか、ひだりへいやみぎかたへとまたひとよこちやう、おどくなれどこゝれてまつすぐゆきしゝとこみちりぬ、なんことこのみちつきあたり、ほかまがらんみちえねば、モシおたくはどのへんでとおぼつかなげにとはんとするときなんとせんみちまちがへたりひきかへしてとまたあともどり、おほぢいづればこうぢらせこうぢぬひてはおほぢそういくそうてんいくてんたつゆきわだちのあとながひきてめぐりいづればまたいぜんみちなり、うすぐらまちかたかどしやふばうぜんくるまひかへて、おほせとほりにまゐりましたらまたいぜんみちましたがしやおまちがひではございますまいかこれまがるとさきほどいとやまへまつすぐけばおほどほりへしまひますたしかうらどほりとおほせでございましたがちやうめいなんまをしますかそれしだいたいていわかりませうととひかけたり、しやじやうひとことばすくなかくまがつてくだされ、たしかこのみちおもふやうなりとてかぢぼうきかへさせぬ、ごらんなされましやはりこゝはもとみちこれでよろしうございますかといぶかしみてしやふことばに、ほんにこれはちがひたりもうひとあとよこちやうがそれなりしかもれずとあいまいこたかた、さればといふてかへひとよこちやうこゝにもあらずいますこさきへといふちやうちんしてしやうかりしもにどさんどしやふまたみちくはしからずやあらんいまこのしよくれざるにやあらんおなみちゆきかへりてかうてもしたらんにつよくいひてもしもせずしめすがまゝみちりぬ、やう/\ふかくならんとすひとかげちらほらとまれになるをゆきはこゝいちだんいきほひをましてりにれどかくれぬものはなべやきうどんほそあはれなるこゑおろしやうかあらたかおと、さてはあんまふえいぬこゑこうぢひとへだてゝとほきこゆるがなほさらさびし、さてもあやしやしやじやうひとよろづよばしにもあらずなべちやうにもあらずほんしろかねちやうぎたりにほんばしにもとゞまらずおほぢこうぢいくとほりそもいづかたかんとするにかやうかうしてきてうのちつまわするゝひとありとかきしがこれはまたいかにかへるべきいへわすれたるかとしもまだわかかるをせうしといはゞせうしおもへばさていぶかしきことなり、こたびきやうばしへといそがせぬ、うらみちづたにちやうさんちやうちやうめいなにれねどすこりしにかいだてかけあんどんひかろう/\としてぬしはありやなしやいりぐちならべしげたにさんぞくれうりばんあくびもよすべきみせがゝりのかつぽうてんあり、しやじやうひとめばやみとめて、オヽこゝなりこゝちよつとにはかさしづいつせいいさましくひきいれるくるまかどぐちろすかぢぼうともにホツトひといきうちにはをんなどもくち/″\らつしやいまし。



第九囘[編集]

 いきほひよくひきいれしがきやくろしてさておもへばはづかしゝ、きおくのこみせがまへいまにはむかしながらひときのふといふきよねんをとゝしどうしやうちゆうくみあひくわいぎあるひなにがしこんしんくわいのぼりなれしはしごなり、それとればにはかかたすぼめられてひとなければあはたゞしくかたかげのあるうすくらがりにくるまわれせていこひつ、しづかにかへりみればれもさゝはらはしるたぐひ、おぼえてるものぞまつざはわかたいしやうたゝへられてせきかみくらまうけられしれすらみすぼらしきこのなりよしやおもておぼえがればとてたにんそらに、それもあるならひなりしてやかはりたるゆきすみおろかなことくもつちほどけんかくのおびたゞしさいかうゐてんぺんとはいへれほどのさうゐれがなんとしてのつくべきこゝろおにみししのひとめいとはしくわざよこちやうみちけてられじとするあつかひもたにんなんかんじもなくちがつてみあはすまなこいなづま、ハツとおもふはればかり、わざとつくるかまことみわすれてからずがほかれて、ろすむねにむら/\とかんじるはさてもにんじやうこそうすきものなれかみといはゞよしがみえすいたやうななかなり、がほしてしきにもあらずことばかけられてはおきばもなけれどそれにもなにいろのあるもの、ものいはゞふりきらんずそでがまへあざけるやうなしりめづかくちをしとるもこゝろひがみかめしつかひのものでいりのものゆびればすくなからぬにんずながらひとりとしてさうだんあひてにとなのりづるものなし、ふうきにはしんるゐがほいくだいさきのたれさまなにえんこありとかなしとかねこもらぬしまでがさとあしらひのえせつゐしようつちにはいししゆうせんはじめにれるくふうさんだんはじいてねばれぬものゝりにもはぬしないくらかぶせてうはほおのれうちぶところぬく/\とせしけんぷぞろひはゆゑものともおもはずおかげちましたとそらをがみせししんちくにかいづくことばさんねんさきあはうどりか、いまれいらくたかみみくだしてぜんたいいくぢさすぎるとひしとかこくおもふはこゝろがらなり、たにんけばてきたうひやうといはれやせんべつけおなじきにつたにまではからるゝほどゆだんのありしはいへうんかたぶときかさるにてもにくきはにつたむすめなり、うつくしきかほにあはぬはこゝろせうがくかうがよひにむらさきふくさつゐにせしころとしうへせいといさかひまけてむねんこぶしにぎときおなじやうになみだちて、くちをしげにあひてにらみしこともありしがそれはむしんむかしなりせいらいきよじやくとてかりそめふうじやにもとをかはつかにつたはうもんおこたればかしこにもまたひとりびやうにんしんぱいしよくじすゝまずけいこごとにきもせぬとか、おまへさまおひとりのおわづらひはおふたりのおなやみとをんなどもわらはれてうれしときしがいまさらおもへばことさらにはせしかれたものならずこのごろしはにしきのげんくわんさきうつくしくよそほふたくらべてれよりことばけられねどむごんゆきすぎるとはふらちならずやこそおちぶれたれいひなづけえんきれしならずまことそのこゝろならうつくしくりつぱれてやりたしれるといへばびんぼふじよたいのカンテラのあぶらこよひもちひだけありしかいかに、さらでもごふじいうのおふたりともしびなくばさぞこまはやかへりてやうすりたきもの、いまきやくじんながさまだしやだいくれんともせずいつまでたするこゝろにやさりとてまさかにはたりもされまじなんとしたものぞとさしのぞおくかたらうかあゆあしおとにもおもてくわつあつくなりてわれしらずまたかげる、おもへばたるゝやうなたれぬやうなまんいちしやだいわたひとりしかほぢよちゆうならばなにとせんことばがけられなばなにといはんはぢうはぬりはえうなきことなりしやだいといふもれたものけずともよしこのまゝにかへらんかいなしければこそゆきふたときみときはぢぐわいぶんおやにはへられたものならず、はてれでもこのすがたなにとしてみおぼえがあるものかとじもんじたふをりしもろうひのかなきりごゑに、いけはたからくるまやさんはおまへさんですか。



第十囘[編集]

 それはなんぞのおまちがひなるべしわたくしきやくさまにおちかづきはなしいけはたよりおともせしにさうゐけれどしやだいたまはるよりほかごようありとはおぼえずそのわけおほせられてしやだいちやうだいねがくだされたしといつぽうごかんとせぬよしのすけいざなろうひみをふくみ、おまちがひやらなにやらわたしらことならねどたゞきやくさまのおほせにはいましやふようじがあるあしあらはせてこゝびたしとおほせられたにさうゐはなしかくあがりなされよとすゝぎまでんでくるゝはよもじやうだんにはあらざるべしいつはりならずとせばしんもつきくわいなんびとなにようありてひたしといふにやしんせきほういうあひだがらにてさへおもてそむけるわれたいしていちめんしきなくいちごまじはりなきかもふじんしよようとはなにごとあひたしとはなにゆゑひとちがひとおもへばわけもなければかしこといひこゝといひまはりしはうがくいぶかしさそれすらことふしぎなるにたのみたきことありあしあらひてあがりくれよとはさていぐわいわからぬといへばほどわからぬはなしはなしなんとせばからんかとたゝづみたるまゝためらへばろうひはもどかしげにいそがしたてゝ、おきやくさまもさぞまちちかねおあひにならばわけはどのみちれるはずなりづおいでなされよとをとらへてひきたつるにらばまゐるべしおはなしなされおほかたひとちがひとおもへどおにかゝりしうへならではおうたががたからんごあんないたのまをすとめいれうこたへながらこゝろうちいぜんまう/\ばく/\しづかにあしきよをはりていざとばかりにいざなはれぬ、さすがなりしやうばいがらさんとしてかないらすでんとうひかりにつゞれはりいちじるくえてときいまごくかんともいはずそびらあせながるぞくるしき、おきやくさまはおにかいなりといふともなはるゝはしごいちだんまたいちだんうきよきといふことらでのぼくだりせしこともありしそのときしやくとをんなまへはなれずてふ/\しくもてなしたるがをんなもしらばいよ/\めんぼくなきかぎりなりそのころともいまあそびにんはぢやうものなにぞのはしにがことしてかく/\しか/″\ともものがたりなばどこまでらるゝはぢならんとおもへばなにゆゑあがりたるかいまさらせんなきことしてけりとおもふほどむねさわがれてあしふるひぬ、あんないはかねてはしごのぼてゝみぎてこざしき、おきやくさまはこゝにとしめしたるまゝろうひいそきたりしやうじそとしばしたゆたひしがつべきことならずとひくくしてしづかにくるざしきうちこれはいかづきんえざりしおもてかたかけにつゝみしいまあきらかにあらはれぬ、ごびにもはなれずききよにもわすれぬのち/\はんしんにせつまにつたむすめのおたかなり、よしのすけはそれとるよりなにおもひけんぜんごむしやべつきびすかへしてツトはせいづればおたかはしつてむごんひきとむるおびはしふりはらへばとりすがりはなせばまとひつきよしさまおはらだちはごもつともなれどもしばし、おながうとはまをしませぬまをしあげたきことひととほりとことばきれ/″\になみだみなぎりてひきとむるかひなほそけれどけんめいこゝろくもちすぢもゝすぢちからなきちからはらひかねてごしやくなよ/\となれどわざあら/\しくけておひとちがひならんそのやうおほうけたまはるわたくしにはあらずいけはたよりおともせししやふみゝにはなんのことやらわけすこしもわかりませぬしやだいたまはるほかごようはなきはずごじやうだんはおくだされとはらつてすつくとてば、あんまりなりよしさまそのこゝろならそれでよしわたくしにもかくごありとなみだはらつてきつとなるおたか、オヽおもしろしかくごとはなんかくごいひなづけやくそくいてしゝとのおのぞみかそれはこのはうよりもねがことなりなんまはりくどいまをしあぐることのさふらふひととほりもふたとほりもることならずのちとはいはずまへにてれてるべしれてらんたにんになるはぞうさもなしとあざわらむねうちくはなにもの、おたかなみだかほうらめしげに、おなさけなしまだそんなことまゝにならばこのむねなかつてごらんれたし。



第十一囘[編集]

 またばしよそれつじそれところまちたまかならずよとちぎりてわかれしそのよのことるべきならねばこゝろやすけれどこゝろやすからぬはまつざはいまきやうがいあらましはさつしてもたものゝそれほどまでとはおもひもらざりしがそのごなんぎたれがせしわざならずもつたいなけれどおやうらみなりかれぬまでもいさめてんかいなちゝはともあれかんざうといふものあるいじやうなまなかのこといひだしてうたがひのたねになるまじともがたしおためにならぬばかりかはひととのあふせのはしあやなくたえもせばなにかせんるべきみちのなからずやとまどふはこゝろつゝむいろめなにごともあらはれねどでぎらひときこえしおたかきのふいけはたししやうのもとへけふするがだいにしきのへとこまげたなほさするおほかるをふしんといはゞふしんもたつべきながらこゆゑにくらきはおやめがねうんぺいじやちふかきこゝろにもむすめいつむじやきこどもびしはせたけばかりとおもふかしやのけねんすこしもなくハテなかかりしはむかしのことなりいまよしのすけなにとしてあいそつきぬものがあらうかむすめはましてかうしんふかしおやいひつけることそむはずなししんぱいむようかんざうちゆういをさへりあげもせずにしきのこんまうあたかもよしれはうとくいしなりといふこきやうなにがしにはすくなからぬぢしよをさへてりとくにむすめためにもためにもゆくすゑわろきえんぐみならずとより/\のさうだんれきくはらだゝしさたとひみぶんむかしとほりならずともげんざいゆるせしをつとあるいまはしきよめいりざたきくもいやなりおもてにかざるじんしやがほひつきやうなにごとかのしゆだんかもれたことならずやさしげないもとごてにならぬよしをり/\たこともありどくじやのやうなひと/″\しんようなさるおこゝろにはなにごとまをすともかひはあるまじさりとてこのまゝおくらばかなしきことのんはまへなりかせてしんぱいさするもければたのむはひとちからのみをとこちゑにはかんがへもなからずやとおもひたてばこゝろやたけ、はやるほどなほおちつきておともだちたれさまごびやうきときくかくべつなかひとではありぜひみまひまをしたくぞんじますがとゆるしへばつねだてにるべきねがひとてうたがひもなくうんぺいうなづきてらばきてくかへれびやうにんところながゐはせぬものともにはなべなりとれてきなされとをつくればイエそれにはおよびませぬうらどほりをけばついそこなりなべうちのことがいそがしうございますツイゆきてツイかへるにともなどゝはたいそうすぎますしたくなにりませぬ、このまゝすぐにとそこ/\みじたくしてにはぐちでんとするとたんぢやうさまけふもおかけかどこへぞとかんざうがぎろ/\おそろしけれどおくしてなるまじとわざとつくるゑがほあいらしくけふもとはかんざうひどいぞやけふはとはねばてにをはがちがところぞとほゝみてなにげもなしにいへでぬやくそくつじゆきかへりつてどもまてどもけふはいかにしけんかげえずれにかんもうしろめたしなにとせんかならたまふなわがいへられんははづかしとてちやうどころつげたまはねどさきにしきのにてそれとなくきしはうろおぼえながらおぼえありしおいかりにふれゝばそれまで、むなしくものをおもふよりはいつそにかゝりしうへにてかくもせんとこゝろこたへてつまこひしたとばかりあてどなしにこゝのうらやかしこのうらやさりとてはくもつかむやうなたづねものもおもこゝろがしるべにやまつざはといふかなにらねどとしよりびやうにんふたりありてとしわかしやふいへならばこのうらつきあたりからさんげんめどぶいたはづれしところがそれなりとまでをしへられぬときゆふぐれうすくらきにまよこゝろもかきくらされてなにいひれんのすきよりさしのぞかないのいたましさよづきんかたかけはつゝめどをもるものはくれなゐなみだ



第十二囘[編集]

 さらでもおいてはひがむものとかいはんやひんにやつれにやつれひとうらめしくなかつらくけてはなげれてはいかこゝろはれまなければさまでにはびやうきながらいつなほるべきけしきもなくあはれかれきたるぎゑもんふうふちわびしきははるならでよしのすけかへりおそさよ〈[#「好き」は底本では「好さ」]〉きやくありてとほくまできたるにやそれにしてもかへりさうなものひぐれまへにいちどづゝやうすみもどるがつねなるをなにとしてけふはとうなじばすこゝろおなおもてのおたかろじぐちかへりみつかないのぞきつよしさまはどうでもおるすらしくごさうだんすることやまほどあるをおかゝらではもどらるゝことかはさるにてもこのびやうにんのうへにこのくらしみぎひだりもおひとつにりかゝるよしさまがごしんぱいさぞなるべしつねなみならばごりやうしんみとかんごもすべきよそみきくるしさよとかへなみだむねみてさしのぞかんとするにまいどうちよりけておもていだすはみちがへねどもむかしのこらぬよしのすけはゝすがたなりひとならでたぬひとおもひもらずたゝずむかげにおどろかされてものをいはずつむるめもとうとくなりてやいぶかしげにどなたさまぞとはるゝもつらしおたかづきんてばやりておわすあそばしたかととりすがりてるゝやけのきゞすわがこならねどつながるえんとてはゝをんなこゝろよわくオヽおたかいなたかどのかなんとしてこのやうところたづねてれましたとおろ/\なみだこゑきゝけてやいざりいづるぎゑもんはくぼみしにキツとにらみてコレなにつてるぞゆふがたべつしてかぜさむそのうへにかぜでもかばよしのすけたいしてもむまいぞやといふことばいておたかおそる/\かほをあげごびやうきといふことをひとづてきましておいかりにふれるとはるもごやうすうかゞひたさににくいところつくろつてやうやうのおもひでまゐりましたおとつさまにもおとりなしをとしほ/\としていひづるをとりつはゝことばたずぎゑもんあざわらつてかんともせずさりとはくちがしこくさま/″\のことがいへたものかなてゝおやしこまれてはそのはずことながらもうそのてりはせぬぞよよけいくちかぜひかさんよりはやきたくくさるゝがさゝうなものまことおもひてくものはこのやうちひとりもなしばあさまもまゆげよまれるなとにく/\しくはなつてみかへりもせずそれはごもつともごりつぷくながられまでのことつゆばかりもわたくしりてのことはなしおにくしみはさることなれどまをしわけひととほりおあそばしてむかしとほりにおぼしめしてよとわびいことばきもへずなんといふぞてゝおやつみれはらぬいままでどほよめしうとになりたしとかきいあきれるなりかんがへてにんぴにんうんぺいむすめつまよしのすけおもふかよしやよしのすけつといふともれあるいじやうよめにすることもうとうならぬけがらはしゝうんぺいおもしてもむねくなりましてやそれがむすめよめになんどおもひもらぬことなりことばかはすもいまはしきにとく/\かへらずやおかへりなされエヽなにをうぢ/\ばあさまそこめなさいとことばづかひもあら/\しくいかりのめんしよくすさまじきをはゝかねてそれはあまりにたんきなりあのことばひととほりはきいておりなされませぬかととりなすをハタとにらんでそちまでがおなじやうになんたはごともはやなにごとみゝもなしそちさずばじしんにとむるつまつきのけつゝやみつかれてもおいいつてつあがりがまちになきくづれしおたかほそうでむづとりつちからきはめておしだかどぐちじひひとことれをとわびるもくもなんようしやあらくれしことばいかりをめてよめでなししうとでなしあかたにんいへでなしなんといふとももうはぬぞ、ハタとたてあまどしきゐくちしはみぞたちはもなくわつとそらやみからすりやうさんせい



第十三囘[編集]

 かくごいまさらなみだみぐるしゝとはげますはことばばかりれまづはらまぶたつゆえんとするいのちさてもはかなしこゝまつざはにつたせんぞるゐだいぼしよひるなほくらじゆもくしげみをふきはらよかぜいとゞひさんこゑをそへてふくろふさけいちだんものすごしおたかけつしんまなざしたじろがずおこゝろおくれかさりとてはごみれんなりたかこゝろさきほどもまをとほきはめしかくごみちひとふたりぎせいにしてもおまへさまのおこゝろうかゞさききてかへねんはなしてゝごさまのけふおほにんぴにんうんぺいむすめよめになどゝはおもひもらぬことなりよしのすけもあれゆるさずとごりつぷくかず/\それいさゝかもごむりならねどおまへさまとえんきれてこのよなんたのしからずつらきにしきのがこともありしよせんこのいのちひとつぞとかくごみちおなじやうにゆきあつておまへさまのおこゝろうかゞへばそのとほりとかいまさらごゐはいのあるはずなしわたしうれしうぞんじますをとみごといひはなつてじゆばんそでみれんなどがあることかはをとこいつぴきながらきよじやくちからおよばずたゞにもあらでやまひにふたおやにさへかうやうはうぢふじふぶんかひなきうらめしくなりててたしとおもひしはきのふけふならずわれ/\ふたりくとかばさすがうんぺいじやけんつのれるこゝろになるはぢやうなりおやとてもとほいつてつこゝろやはらぎらばりやうけかうふくこのうへやあるわれ/\ふたりにありてはいかせんしんばんくするともうんぺいこうくわいねんまじくしてやげてのわびごとなんとしてするべきならずよしやひざげればとてわがおやけつしてきゝいれはなすまじくこつじきひにんおちぶるともにつたごときにこのくちくされてもたすけをもとむることはせずとそれへいぜいことばなるものじんみらいこのふわなかけるはずなしすだいつゞきしりやうけのよしみいつてうにしてやさんことせんぞゐしにもたがふことなりひとともわらはんともん、さりながらせんぞたいいへたいするかうふたりいのちなりてゝはえあるぞとおもへばいづくのこみれんもなしいざみじたくをとさいごよういあはれみじかちぎりなるかなゐづゝにかけしたけくらべふりわけがみのかみならねばくともいかゞしらかみにあねさまこさへてあそびしころこれはきみさまこれはわれけふしばゐくのなりいやはなみはうれはしとたはむはせしそれひとつもねがひのかなひしことはなくまちにまちしちやうじつげつのめぐりればはかなしやさうでんうみともならねどかはるはげんざいおやこゝろ、ましてやたにんそこふかきけいりやくふちるべきならねばおとしいれられてのちひとくわいこんむなしくなみだくてりかゝるいうくつながるゝじやうちよしりよぶんべつぬばたまやみくらきなかにもほしあかりにみあはせてにつことばかりなごりゑがほうらさびしくいざとうながせばいざとこたへてさすがにたゆたはるゝいくぶんじおもさだめてツトたちよりつよういたんたうとりなほせばうしろやぶなにやらものおとひともやつるとみゝますにわたかぜさだかにきこえぬさて〈[#「さて」は底本では「さてて]〉おつてにもあらざりけりおたかしたくとゝのひしかとりみださんはのちまでのはぢなるべしこゝろしづかにといましめることばふるひぬいたましゝあたらせいねんはなといはゞつぼみえだいまおこらんよはきやうふう、おたかむなさきくつろげんとするこのときはやしかんいつぱつ、まちたまへとばかりうしろやぶがきまろびでゝきゝうでしつかとをとこれぞはなしてなしてとかよわにもいつしんふりきらんとするをいつかなはなさず、いやはなしませぬはなされませぬおまへさまころしてはだんなさまへみませぬといふはまさしくかんざうか、とおたかことばをはらぬうちやみにきらめくしらはいなづまアツとひとこゑいつせつなはかなくれぬれんりかたえは。



第十四囘[編集]

 こぼれまつばつちになるまでふたりともにとちぎりしものをわればかりなにとしておくるべきとあしずりしてなげきしがいのちはかなくとゞめられてふたゝんともおもはざりしろくでふじきへやをそのまゝざしきらうえんしやうじあけたてにもうばみはりのはなれずしてやかんざうちゆういしうたうつばさあらばらぬこととりならぬいづくぬけでんすきもなしあはれはものひとれたやところかはれどおなみちおくれはせじのむすめめいろてとるうんぺいきづかはしさにしきのとのえんだんいまいまはこびしなかこのことられなばみなぐわべいなるべしつゝまるゝだけはとしかくしてなだめてみつすかしてみついけんをかへしなをかふれどそでなみだれんともせずもすればわれともにとけつしそぶりゆだんならずなにはしかれいのちありてのものだねなりむすめこゝろおちつかすにくはなしとしてはこんぎをすゝめもなさずるものはひゞうとしのことわざもありをだにればよしのすけつゐぼねんうすらぐはひつぢやうなるべしこゝろながくときまつはるこほりあさひかげおのづからけわたるをりならではなにごとかひありともおぼえずれも/\いけんふなこゝろはなしをなぐさめておもしろをおもしろしとおもはするのがかんえうぞとわれさきだちてきげんりつなぐさめつかたへこゝろかせんとつとかたへみはりをげんにしてほそひもひとすぢこがたないつてふたかれさせるなよるべつしてをつけよときくばめくばおほかたならねばめしつかひのものこゝろかぜおとをもたゞにはかずねづみれにもみゝそばだてつぎしんあんきしやうずるおくそのひとげんざいすをながらぢやうさまはいづこへぞおすがたえぬやうなりとひとさわがせするもありうばろく/\あはさずおたかかたへねどこならうきよざふだんふうかんをこめつをかしくおもしろものがたりながらしづみがちなるしゆこゝろねいぢらしくもきづかはしくはなれぬまもりにこれもひとつのせきしよなりいかにしてかえらるべきいかにしてかのがるべきおたかかみとりあげずけしやうもせずよそほひしむかしべにおしろいれがためいろならずきみにおくれてかゞみかげあはおもてつれなしとてきやらあぶらかをりもめずみだしだいはなすがたやつれるわれたのもしく、ならばこのまゝにたしとねがへどいのちこゝろのまゝならずむともなくわづらふともなくつく/″\とながめてつくづくとなみだそらとをいちゆうともとしておくらねどむかへねどるものはつきあらたまるはとしちりてかへらぬきみおもへばなんさくらはるしりがほことしけるつらにくさよまたしてもほりきりのしやうぶだよりくるまをつらねてきしはそもいつのゆめになりてしやうりやうだなこものうへにもおもてだちてはまつられずさりとてはなかうらめしゝつきあきくさばもろしらたまつゆこたへてえかぬるなんごらんじてなんとおうらみなさるべきにやぎしゆきかいごうふたつなきていしんうれしきぞとてホロリとしたまひしなみだかほいまさきのこるやうなりさりながらおもこゝろゆうめいさかひにまではつうずまじきにやつれなかなしくひきとめられしいのちみれんをしみてともおぼしめさんくるしさよとおもひやりてはしづおもいだしてはむせかへみとはなんゆめにもわすれてるものはじんせいきといふきのかず/\るものはむいむしんしゆんかしうとうらくくわりうすゐちりてながれてかへなみとしまたとしけふこゝろけやするあすおもひのはなれやするあはれえいぐわにしたしむすめにもきらかざらせてれもあんしんらくいんきよねがはくはかうんちやうきうなれしそんはんじやうなれとかくうへきようじあらせじとのおやごゝろひきかへしねがひもさかさまながらけふをすてんかあすこそはとうかゞこゝろおこたりなけれどひとめせきもりなんとしてひまあるべきこゝしちねんはまだろうちゆうとり



第十五囘[編集]

 おとつさまにもかんざうにもばあやにはべつしてのこといろ/\とくらうをかけましていまさらおもへばはづかしいやらおどくやらをさなごゝろのあとさきずにほどのないむふんべつさりながらきぬいのちかやことたすかりしをうれしいとはおもひもせでよしなきぎりだてにこゝろぐるしくよしさまのおあとふてとおもひしはいくたびかさりとてはいのちふたつあるかのやうにかる/″\しいしあんなりしとこうくわいしてればいままでのことくちをしくこれからのたいせつになりましたあほうらしいんだひとへのみさをだてなになることでもなきをいつまでひとりこゝろかぞへるとしこゝろぼそこれほどならばなぜむかしことばそむいていとひしかれとれませぬはゝさまなしのおひとつにごくらうたんとけましてうへうへにもまたいくねんこゝろやすめぬふれうけんふかうのおわびきやうこうさつぱりよしさまのことおもつていづかたへのえんぐみなれおほせにゐはいはいたしませぬかんざうばあやながあひだこゝろづかひさぞかしとどくわたしこゝろいまもいふとほはれてみればまよひはくもきりこれまでのすこしもなしかならかならしんぱいしてくださるなよとさすがこゝろよわればにやこうくわいなみだにたゝへておたかくとはいひしぬとしつきこゝろくばりしかひやうやこのことばにまづあんしんとはおもふものゝうんぺいなほもゆだんをなさずたちゐにつけてをそゝぐにおたかことばたがひもなくうれひまゆいつしかとけてきのふにかはるまめ/\しさちゝのものがものへばさらてだいこぞういるゐせわひほどきにまでもちひてうき/\とせしやうすさてまことくわいごしてそのこゝろにもなりぬるかとおちつくはうんぺいのみならずうちとのものもおなじことすこまくらやすんじけりさるにてもいぶかしきはまつざはふうふうへにこそよしのすけざいせときだにひきまどけぶりたえ/″\なりしをいまはたいかにそのひおくるやあたらわかきはなにおくれてぬべきやまひいえたるものゝわづてないしよくごせんろくせんろめいをつなぐすべはあらじをあやしのことよとたづねるにげうきとはくものゝなほいんとくしやなきならでこのはくめいあはれみてやめぐむともなきめぐみによくしてえんそくらうらずといふなるそはまたいづこれなるにやさてあやしむべくたつとむべきこのじぜんかせいしといはずしんじやうといはずぎりしがらみさこそとるはひとりおたかうばあるのみしのび/\のみつぎのものそれからそれとひとでへてれとらさぬようじんむかしかたぎいつこくをたてとほさするゑんりよしんつうおいたはしやみぎひだりごくらうばかりならばおよめさまなりしうとごなりごかうかうごゑんりよらぬはずをとあるとききしにおたかおなじくなみだになりてわたしこゝろるものはそなたばかりよしさまのことはおもりてもごりやうしんゆくすゑしんぱいなりあすえんきなばかくじいうかなふまじそのときたのむはそなたぞかしとゝさまのおこゝろよくりてまつざはさまとのなかむかしとほりにしてしゝひとつがおたのみぞとてりやうてあはせてをがみぬせしよしのすけいたまぬならねどしゆうへなほさらにづかはしくかげになりひなたになりいけんかず/\つらぬきてやけふこのごろそでのけしきなみだこゝろれゆきてえんにもつくべしよめにもかんといひいでしことばこゝろうれしくしちねんごしのえてゆめやすらかにいくよあるあけがたかぜあらくまくらひいやりとしてめさむればえんがはあまどいちまいはづれてならべしとこはもぬけのからなりアナヤとばかりかへしてまくらもとあんどんありあけのかげふつとえてうばなみだこゑあわたゞしくぢやうさまがぢやうさまが。

 かはらぬちぎりのれなれやせんねんしようふうさつ/\としてちしほのこらぬくさばみどりれわたるしもいろかなしくらしだすつきいつぺんなんうらみやとぶらふらんこゝゑんあうつかうへに。

この著作物は1925年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。