暁月夜

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だいくわい[編集]

さくらはなうめとめてやなぎえだにさくすがたと、くばかりもゆかしきをこヽろにくきひとりずみのうはさ、たつみやびこヽろうごかして、やまのみづにあくがるヽこひもありけり、はなざくらかやまけときこえしはもんへうじゆよむまでもなく、どうぞくちうそのひとありとられて、みづのながれきよえどがはにしべりに、わやうづくりきはめねど、ひとあしむるにはきのさまざま、すゐしよくしたヽるまつにまじりてもみぢのあるおやしきへば、なかはしのはしいたとヾろくばかり、さてひとるはそれのみならで、ひとへばるヽひめびしよくあねいもとかずおほはらからをこしてかたぬひげのをさなだちより、いでわかむらさきゆくすゑはとするこヽろひと/″\おほかりしが、むなしく二八のはるもすぎてことしはたちのいたづらぶしなにごとぞくまでやさしきかう/\のこヽろにす、ちヽぎみはヽぎみくらうたねよめいりのさうだんかけたまふごとに、わがまヽながらわたくいつしやうひとりみのねがひあり、おふせにそむくはつみふかけれど、ればかりはとしさいもなく、せんべんいちりついやいやをとほして、はてはせじやういまはしきうたはれながら、せまをとめにもかけず、けゆくとししみもせず、しづかにつきはなをたのしんで、わざとにあらねどうきよかぜちかづかねば、じぜんくわいそでひかれたきねがひもかなはず、ゑんいうくわいものいひなれんたのみもなくて、いとヾたかねはなごヽろにるしむひとおほしときしが、うしごめちかくにげしゆくずまゐするもりのさとしとよぶぶんがくしよせい、いかなるかぜさそひけん、はかなきたよりにひめのうはさみヽにして、をかしきやつわらつてきしが、そのひとりずみわけひとともにわからぬところなにゆゑかさぐりたく、なんともしてそのをんなひとめたし、いなたしではてくれん、かぶものめつきをも、ひぶつとなへてみとちやうおくぶかにしんさするならひ、あさひかげたまだれのをすにははぢかヾやかしく、むすめともはれぬばかなどにて、じひぶかきおやもつたいをつけたるこしらごとかもれず、れにりてゆかしがるは、ゆきあしたすゑつむはなげんざんまへのこヽろなるべし、さてせうしとけなしながらこヽろにかヽれば、いつもんぜんとほときれとなくかへりて、ることもれかしとちしが、ときはあるものいひだまちがくかうよりかへりがけ、ひくまへかしづたひをさびしくれば、うしろより、ごゑいさましくけしくるまのぬしはひめなりけり、いづくかへりかたかまげおとなしやかに、おしろいにはあるまじきいろしろさ、きものなにとむるもなけれど、くろちりめんのはおりにさらさらとせしけだかすがた、もしやとさとしわれらずせば、さてこそひきこむもんないくるまなんにふれてか、がたりとおとして一ゆりれヽば、するりおちかヽるうしろざしのきんかんを、ひめせんしゆけとめたまとたんゆふかぜさつとそのたもときあぐれば、ひるがへる八つくちひらひらとれてものありけり、れとらねばくるまそのまヽげんくわんにいそぐを、さとしなにものともらずあわたヽしくひろひて、ふところにおしれしまヽあとずにかへりぬ。

れしくるまたしかにかやまけものなりとは、しやふはつぴぬひにもれたり、十七八とえしはうつくしさのゆゑならんが、としごろむすめほかにりともかず、うはさのひめれならんれなるべし、さらばうはさもうそにはあらず、うそどころかきしよりはじふばいもつとし、さても、そのいろなみえなば、つちねおひのばらのはなさへ、しるくはつとはさまれたしとねがふならひを、びしよくにてなにゆゑならん、あやしさよとばかさとしとうかうでみしが、ひろひきしはしろぎぬはんけちにて、さいぎやうふじけむりのうたつくろはねどもふでのあとごとにきたり、いよいよさとりめかしきをんなふしぎおもへばふしぎかぎりなく、あのあいらしきなかなんてか、ひとじらしのふるまわけるべし、ゆめさらこひなどもやらしきこヽろみぢんもけれど、このわけこそりたけれ、わかをんなさだまらぬこヽろなにものるヽことありて、れよりおこりしなまだうしんなどならば、かへすがへすあさましきことなり、だい一はふびんのことなり、なか/\けだかこヽろもちそこねて、まだうおちいるはわれ/\しよせいうへにもあるを、なにごとにもすぢなるをとめぎにはむりならねど、さりとはなげかはしきまよひなり、かくしたしくひてしたしくかたりて、いさむべきはいさなぐさむべきはなぐさめてやりたし、さはへどりがたきがなかなればひめにもわろむしなどありて、そのみきたくおやりたけれどよめいりのせきらつくわらうぜきもしづかへば、むすめはぢはぢさすがししやくどのくして、いつしやうはこいりらしくらさせんとにや、さすればこのうたむしんきたるものにてはんもんねうちもあらず、いなこのいうびふでのあとはなんとしてもはれんちひとにはあらじ、かならずふかしさいありてなみならぬおもひをふりそでつヽひとなるべし、さてもゆかしやそのぬばたまよはゆめ

はじめはかうきこヽろさそはれて、むなしきおもひをいろいろにゑがきしが、またをりもがないまたびみたしとねがへど、それよりはいかゆきちがひてかうしろかげだにることあらねば、みづもとめてときかわきにおなじく、いちねんこヽあつまりてはいまさらまぎらはすべきしゆだんもなく、あさひるしよくをとりても、はてはがくかうきてもしよらきても、さいぎやううたひめすがただれてまへはなれぬに、さとしわれながらあきれるばかり、あつぱみらいぶんがくしやこのやうのことにてどうなるものぞと、しかりつけるあとよりこヽろふらふらとるに、ぜひもなしこのうへはとげしゆくしよたいいつさいたヽみて、こヽにもがくかうにもなうびやうれうやうきこくといひて、たちいでしまヽひとつきばかりをいづくひそみしか、こひやつこのさてもをかしや、かやまけにはをとこみしとは。


だいくわい[編集]

さとしおさなきよりうゑきのあつかひをきて、こぎようはさみつかへば、たけばヽきにぎつてにはをとこぐらゐなんでもなきこと、たゞすじやうられじとばかり、まことたヾいまやまだしにて、つちをなめてもれをりつしんてはじめにしたきわが〈[#ルビの「わが」はママ]〉ひと、れながらくもへたるうそにかためて、なまへをもそのとほり、たうざにこしへらて〈[#「こしへらて」はママ]〉ごすけとかひけり、さてもかぬとてれほどのやくまはりあるべきや、うきよつとめめをいちじゆんをはりて、さてもなほかヽるべきのらにてもあらば、によらいさまでむかひまでこのくちつるしてもかれず、くさむしりににはさうぢぐらゐはとて、六十をとこのするしごとぞかし、もつたいなやこじきくじきあさゆふらきて、まんえふしふふしんがみをしたるを、どろばちのあつかひにがすことひとらねど、らちもなくおもとあらひ、さてはしばふつてひろすがたわれながらられたていでなく、これをもしともなどにつけられなばと、こヽろさヽはらをはしりて、もんぐわいようじとかくいとへば、かつてばたらきのをんなどもをかしがりて、とうきやうおにところでもなきを、とちなれねばのやうにこはきものかと、みごとゐなかものにしてのけられぬ。

きみゆゑこそあたらわかものひとりこヽにかくあさましきていたらくと、まどをざヽかぜそよともげねば、らぬひめおほかたへやこもりて、ことなどにいよいよこヽろなやまさせけるが、をりふしのにはあるきにみぢんきずなきうつくしさをみとめ、れならぬめしつかひにやさしきことばをかけたまふにてもなさけふかきほどられぬ、はじめさう/″\にはしさいらしくじゆすなどをふりそでなかきかくし、きやうもんどくじゆまつかうくさくなりて、むすめらしきにほひはとほかるべしとおもひしに、そのやうのぶりもなく、りうはついつもたかしまだむすげて、おくすぢえりにださぬたしなみのよさ、さてもこのみのくまでにじやうずなるか、たゞしはこのひとひしくわはうか、しろかねひらうち一つにときいろぶさのねがけむすびしを、いうにうつくしくにあたまへりとれば、そくはつさしのはないちりんなか/\あいらしく、こヽ一つにびじんねうちさだまるといふてんねんえもんつき、じゆばんえりむらさきなるときいろことさらしろくみえ、わざじみなるくろちりめんにあかいとのこぼれうめなどひんいつそうにそうもよし、あるがなかにもうすいろりんずひふすがたをさヾなみいけにうつして、ひごひをやるおとヽぎみともに、よねんもなくをむしりて、しぜんみにむつましきさヽやきのうらやましさ、さとしもとよりつきやまごしにをがむばかりのねがひならず、あはれこのきみはいふりてひみつかぎにしたく、をりあれかしとつままちどほや、ひとつきばかりをあだくらしてちかづくたよりのきこそはだうりなれ、ひめたかねはなこれはふもとちり、なれどもあらしびやうどうものぞかし。

じんのすけとてかやまけじなん、すゑなりにはないとヾおほりんにて、こヽのつなれどもいきほひしのぎ、わんぱくかぎりなく、ふんべつがほかふにさへはず、ふつこくりうがくあにうへごきてうまでは、このきみにあたるひとあるまじとえけるが、ひめとはいつなかよしにて、なにごとにもちうねえさましたれば、もとよりものやさしきたちの、これはまたいちだんかあいがりて、ものさびしきあめなど、ともしびもとしよもつらき、ひざいだきてせ、これはいつ/\むかどこくにに、じんさまのやうなつよひとありて、そのときみかどそむきしぞくち、たいこうをなしてこのゑひきあげところ、このうまりしがたいしやうはなせば、こをどりしてよろこび、ぼくおほきくならばすばらしきたいしやうり、ぞくなどはなんでもなくち、そしてこのやうほんかれるひとりて、とうさまかあさまごはうびいたヾくべしとゐばるに、ひめほヽゑみながらいさましきをめて、そのやうたいしやうたまひても、わたしとはいまかはらずなかよくしてくだされや、おほねえさまそのほかのおひとそれ/\かたづきて、ひとおくさまたまわたしにはおにいさまとおまへさまばかりがたよりなれど、れよりもわたしはおまへさまきにて、どうぞいつまでもいまとほごいつしよりたければ、おほきくなりておやしきできとき、かならずともなひておちやごようにてもたまへ、おわかりにりしかとほヽずりしてへば、しだらもかれながらくちばかりはおとならしく、それはぼくたいしやうりて、そしておやしきできさへすれば、そこねえさまれてきて、いろいろのごちそうをなし、いろいろのおもしろきことをしてあそぶべし、おほねえさまちひねえさまぼくすこしもかあいがりてれねば、んなやつにはごちそうもせず、もんをしめてうちれずにかしてやらん、とふをめて、そのやういぢわるはおつしやるな、かあさまがおきヽにならばるし、れでもねえさまたちはじぶんばかりえんげいくわいはなみきて、ちうねえさまいつもおるすゐのみしたまへば、ぼくおほきくならばちうねえさまばかりはう/″\れてきて、ぱのらまやなにかヾせたきなり、れはいろ/\いきたるやうきてありて、てつぱうなにかもほんたうやうにて、かじところもありいくさところもあり、ぼくたいへんきなれば、ねえさまごらんにならばきつときならん、おほねえさまうへののもあさくさのもはう/″\のをいくどしに、ちうねえさまいちどれてかぬはいぢわるではきか、ぼくれかくらしければと、おもふまヽをゑんりよもなくかあいさ、さうおもふてくださるはうれしけれど、そのやうのことひとふてたまはるなよ、しばゐはなみかぬのはわたしのきにて、ねえさまたちのごぞんじはなきことなり、もうこのはなしはしまするほどに、なんぞおまへさまけふあそびて、おもしろおもひしおはなしがあらばかしてくだされ、けふごすけがどのやうなおはなしをいたしました。

このたいしやうわかさまなんなくさとしとりこになりけり、ひめとのなかむつましきをるより、きくわおくべしとたけうませいざうはじめに、うゑきかうしやく、いくさものがたりゐなかぢいばあいかにをかしきことひて、いづこのやまいかにひろく、それうみにはのつけやうもなきたいぎよありて、ひれうごかせばなみのあがることいくせんぢやうれがまたとりしてと、めづらしきことあやしきこととりとめなくつまらなきことを、をかしらしくはなしてきげんれば、おさこヽろじふばいひやくばいおもしろく、ごすけ/\きまとひてはなれず、こヽろおもしろしとけばれをそのまヽひめかたりて、ごすけはなしはなにごともうそならぬかほつき、まじめらしくりつぐをけば、ほとヽぎすもずぜんせどうきやうじんにて、くつさしとしほうりなりし、そのときくつひてだいをやらざりしかば、れがしやくきんになりてもずあたまがらず、ほとヽぎすじぶんをさがしてかへるなどをみちくさにさし、れをはせておわびをするとか、れはほんたうほんたうはなしにてうたにさへめば、ねえさまきてもわかることヽごすけひたり、ごすけたいそうがくしやにてなにごともらぬことなく、せいやうだのしなだのてんじくなにかのこともりて、そのはなしがおもしろければねえさまにもぜひかせまうしたし、まへかたぢいちがぼくかあいがりてねえさまめて、ほんたうやつなれば、こんどぼくくつしたをみてたまはるときれにもなにこしらへてたまはれ、よろしきかねえさまきつとぞかしねえさま、とねつしんにたのみて、おぼつかなきしようだくことばそのとほさとしつたふれば、このせうそくひとめせきはヾかりもなく、たまだれやすやすえて、るはたまなるひめたよりをさとしひごとるばかり、よしありげなるこヽろそこも、こヽにはじめておぼろ/\わかれば、いとほしねんむらむらとへがたく、きみゆゑにこそくまでにくすわれぼくせきならぬひめくかるべきはずなし、このいばらなかすくひしてと、かげだなるこひたけはしらわびずまゐおもひぬ。


だいくわい[編集]

やみつねなるひとおやごヽろ、ゆゑみちまよはぬはきものをとさとしこヽむれば、かやまけみたりむすめうちかみむづかしくすゑはねにて、きりやうたいていなれどもなんとしてきみおよものなく、れにてもはらからかとおもふばかりのさうゐなるに、あやしきははヽぎみしむけにて、さすがかるがるしきしも/″\たちへだてはけれども、おなものいひのどこやらがく、らかるべしとおもふことをり/\えけり。

ししやくきみさいあいのおもひものなど、きりつぼかういめかしきがたなるが、このおくがたねたみつよさに、あたらはなざかりはいびやうにでもなりて、かたみとゞめしひめならんには、ちヽぎみあいいかばかりふかかるべきを、いよいよむねわるくくらしくおもひ、しかるべきえんにもつけずなまごろしにして、よそめばかりはどこまでもわがまヽらしききずゐものにて、そのながしたちヽぎみをもみしか、この一ひめありとこヽろくすものなく、るはじんのすけどのばかりなるいぢらしさよ、いざやこのこヽろふではして、あはよくはいづこへなりともしばしともなひ、そのうへにてのさくまたいかやうにもあるべく、よしいちじみちのくなとりがはきよからぬながしてもし、はゞかりのなかうちわりてれば、てんえんれにつてこヽはこびしかもれず、いまこそいつかんしよせいもなけれど、やがてはひめをもかうふくゐちゑて、ふめいよへしはわけもなきことなり、さてはまちどりふみかよみちはともすがらふでにぎりしが、もとよりはすはならぬひめの、ことにはをとこなどにはずなければ、はじめよりふみりては、たまふかいなそこまことにあやふし、いかにせんとしあんくるしみしが、れよ、ひとめにふるヽはみちおなじこと、なにどきようはんし四五まい二つをりにして、すみつぎうすふみらぬかまぎらはし、わざぢてへうしにもき、このしゆかううまくゆけかしとくるをちけるが、ひとしらぬこそぜひなけれ、こヽとなりざかひのやぶぎはにて、ようじんためにとかやぶきまうけにまはするにはをとこさてさてこのくせものとは。

ひかげうらうらとかすみてあさつゆはなびらにおもく、かぜもがなこてふねむましたきほど、しづかなるあしたけしきじんのすけこどもごヽろにもたちて、いつよりはやにはにかけりれば、わかさま、とかさずびて、ゑがほをまづするにはをとこに、そのまヽすがりてはヽきうごかせず、ごすけまへがかけるかととつぜんをかしさ。もかきまするうたみまするきしやでもだきうでもおこのしだいわらへば、それならばきてれよ、ゆふねえさまかけをして、これがければぼくないふられるやくそくれはごすけのことからにて、ぼくごすけけるとひしを、ねえさまはかけまじとひたり、けてはくやしければねえさまおどろくほどじやうずに、のちはずにいますぐきてれよ、そうぢなどはずともしとてはヽきうばへば、ごすけすここまりて、きてはあげまするがいますこし、のちごすけへやへおいでなされきばむしやをかきてまゐらせん、れともさんすゐけしきにせんかとまぎらせば、いやいやいやいまでなくてはなんでもいやなり、のちになぞとはヾそのうちにぼくけて、ないふられるからいや、どうぞぜひいますぐかきれよ、かみふでねえさまのをりてべし、とはヽきてヽすに、づおまちなされとあわたヾしくめ、ぐとおつしやればぜひなけれど、へたできなばかへりてねえさまわらはれ、わかさままけものなり、うなされ、はゆるゆるとごにちことになし、ごすけよりもうためいじんにて、ゐなかりしときせんせいなりしゆゑそのわかねえさまにおにかけておどろかしたまへ、それこそかならずわかさまかちるべしとへば、はやそのうためとせがむふところよりぶみいだし、れはごくたいせつうたにてひとすべきではけれど、わかさまをおたせまうしたく、ほかひとないしよにてねえさまばかりにごらんたまへ、はやく、ないしよで、ねえさまにおげなされ、と三つ四つにりてじんのすけふところおしいれしが、むしんところなんともづかはしく、おとさぬやうにひとせぬやうにとくれ/\をしへ、はやくおでなされとへば、りやうてむねいだきて一しんじんのすけ、おおとしなさるな、とびもならず、にはかにこヽろづきあたりれば、はなかぜれをわらふか、ひとめはなけれどどこまでもおそろしく、にはそうぢそこそこにたヾひとはじとはかり、さとしこれほどのせうたんともおもはざりしを。

おもひとほどはづかしくおそろしきものはなし、をんなどししたしきにてもこのひとこそとうやまともに、さしむかひてはなにごともはれず、そのひとひとことふたことに、はづかしきはくまではづかしく、おそろしきはくまでおそろしく、ちりほどのことにしみぬべし、なんによなかもかヽるものにや、じんのすけごすけしたふはれともことなりてあはものなれど、わがこのひといちごんおもく、ふみふところにしてひめへやときは、すゑあねぎみこヽにありて、おさいくものもなかなるに、いませてはるかるべしと、わけもとよりはずなけれど、ごすけともはであそけるが、じんさまわたしのへやへもおいでなされ、たまつきしてあそびますほどに、とおもしろげにさそひてあねきみはやねがしにはたはたしやうじてヽ、ねえさまこれ、とふところよりなかせ、ごすけじやうずなれどうたはうなほめいじんゆゑ、これをごらんれさへすれば、ぼくつとごすけひたり、てばぼくないふぼくのにて、ねえさまのごむにんぎやうはおやくそくゆゑいたゞくのなり、さあたまはれとかき〈[#ルビの「かき」はママ]〉ねれば、ひめほヽゑみながら、いやいや、おやくそくなるにうたにてはいやよ、ごむにんぎやうげまじとかしらをふるに、れでもねえさまこのうたごくたいせつのにて、ひとにもせずおとさぬやうごらんれろとごすけひしは、よりもきにさうゐはなし、ぜひにんぎやうたまはれとててわたしするに、なにごヽろなくらきていちぎやうよむとせしが、ものいはずたヽみててぶんこをさめれば、そのかほいぶかしげにあふぎて、ねえさまにんぎやうくださるか、げまするとわづかにうなづひめじんのすけうれしくたちあがつて、つたつた。


だいくわい[編集]

このおもつうじさへせばこのこヽろやすかるべしとねがふはあさし、いりたつまヽによくさりて、はてなきものこひなりとかや、さとしはじめてのふみこヽろをいためて、もしりもせばつみれのみならず、らじとてひめるされまじ、さらでものまヽはヽごぜいかにたけりて、どのやうことにまでたちいたるべきか、おもへばしりよあさはかにて、じんのすけどのたのみしはばん/″\ふかくなりし、ともおもまたみづからはげましては、なんわけもなきこと、だいえいだんにはをとことさへりしわれこのうへできごとかくごまへなり、たゞあやふきはひめこヽろにて、しゆびよくふみとヾきたりとも、つれなくへされなばかひもなきこと、とかくじんのすけどのたよきたしとまちけるが、そのひゆふがたにんぎやうちていつよりもうれしげに、おまへうたゆゑしゆびよくかちり、このやうにんぎやうりしとほこかほすれば、ねえさまうたごらんなされしや、してなんおつしやりしとへば、なんともはずにぶんこいれておしまひなされしが、こんどまたあのやううたみて、ねえさまごらんれよかし、おまへめられなばれとてもうれしきものをとかあゆふに、おもひあるいつそうたのもしくさま/″\きげんりて、ねえさまさだめしうたはおじやうずならん、ぜひごすけはいけんたければ、このごろねえさまにおねがひなされ、おてをいたゞきてたまはれ、かならず、きつとへんじつうろこヽにをしへ、いちにちふつかち、みつかりてもおとさたきにさとしこヽろもだえ、じんのすけるごとにれとなくうながせば、ぼくもらつてりたけれどねえさまくださらねばと、あはいたばさみにりてこまりしていこごヽろにもぎりかれてかなかちてうろうろするを、さとしいろ/\にたのみてこのたびふうぶみに、あらんかぎりのことばいかきけん、ぶんしやうえんれいひやうばんをとこなりしが。

なばびなんともふべきにや、はなすぢとほりもとにぶからず、しもぶくれにうわがほなるさとしさすががくもんのつけたるひんゐは、にはをとこりてもはなれず、ごすけ/\かつてもとかしましきひやうばんは、おちやしておほおくにもたかく、おやくそくむこぎみやうかうちうにて、ねざめしやしんものがたるそうりやうひめさへ、かきねさくられかしごすけ、いさヽかのようじにてたいそうらしく、ごはうびたまはるくわしはなもみぢ、おづからなるめいよはあれど、こひほんぞんあればわきだちにれるなく、一しんおもひみてはありむかしのさとしならで、あたら廿四のべんきやうざかりをこのていたらくざんねんともおもはねばこそ、じんのすけつゐしようしあるきて、ほんしんにはるまじきふみしゆかうあんぐわいのことにてへうしよくき、ぶんこをさたまひしとはがもの、と一たびいさみけるが、それよりのちいくどいくつうかきおくりしふみに一たびへんじもなく、さりとてつれなくなげかへしもせねど、らきてみしやいなじんすけこたへぶりのはかなさに、このたびこそとかきたるは、ながひろにあまりおもふでにあふれて、れながらくまでもまよものかと、ふみなげだしてたんそくしけるが、じんすけむかひてはなほさらかなしげに、ねえさまはあくまでごすけくみて、あれほどごらんれしうたに一たびのおへんかもなく、あまつさへあなたにまで、このやうとりつぎするなとさへおつしやりしつれなさ、これほどはぢをとこの、をめをめおやしきられねば、いとまたまはりてきこくすべけれど、たまゐなかにはりやうしんもなく、たヾひとりありしいもとれとひじやうなかよかりしが、いませてなにもなき、そのいもとねえさまそつくりにて、いまあらばとこひしさへがたく、おまへさまねえさまなればれにはいもとやうおもはれて、そのてのほごにてもへてたばほんまうなるべく、めて一ふではいけんねがひたきなり、されどもげせんれ、いかやうおもふともおよびなきことにて、ぶれいものとおしかりをければそれまで、なれどもおいやならばおいやにて、むしろさつぱりめどほりもいややなればこヽねかし、とでもありて、いよ/\るまじきことらばそのうへかくごもあり、くまでのおもなんとしてもゆるはずなけれど、かくごしだいあきらめもつくべし、いまこれげて、あきらかのおこたいてたまはれ、しだいにてわかさまにもおわかれにるべければときよじつをまぜて、こごヽろあはれとくやうたのみければ、じんすけもとよりごすけびいきにて、このをとこのこと一も十もじやうじゆさせたく、よろこかほたさの一しんに、これまでのふみいくつうひとめれぬやうとヾこほりとヾけ、ひめこヽろらずへんじをとめしが、このせまりたることばれまづかなしく、けふこそはかならずへんじり、そちよろこやうにすれば、ゐなかくことはめになし、いつまでもこヽれよ、だしぬけゐなかきてはやぞとき、そのなみださとしぬぐはれてなほかなしく、にすがりていつまでもきしが、みつごたましひいつはりにはらで、このことしんこんにしみてかなしければこそ、そのよかんとうのもとにひめがみて、ごすけおもひてふを、ごしやうねえさまへんじたまはれ、けつしてこののちわがまヽもはずいたづらもなすまじければ、ごすけゐなかかへらぬやう、いままでどほり一しよあそばれるやうへんじたまはれ、たヾちよつとごすけひとふでにてもとひたれば、このまきがみなにかきぼくたまはれ、ごすけゐなかかへりてもところなれば、おほかたこじきるべきにや、それ〈[#ルビの「それ」はママ]〉れではぼくどうしてもやなり、ぜひこれごらんなされて、ちよつとなにとかふてくだされ、ようねえさま、ようねえさま、おねがひ、これ、とてもみぢはすいぢらしさ、なさけふかきによしやうの、これのみにてもなみだあたひはたしかなるに、よしやまがつにせよにはをとこにせよ、れをひとくかるべきか、ひめこヽろいかにもつれけん、じんすけはヽぎみのもとにばれ、このへんじなく、のこしげにいでゆきたるあとにて、たまかひなこれいだき、むねてヽもすがらきけり。


だいくわい[編集]

はたちはるゆめらして、らくくわゆふべになにごとをおもひつきてか、ひめべつさうずまゐしたきねがひ、かまくらどことやらに、てうばうえらんでこぞはれしが、はなしのみにてぬもゆかかしく〈[#「床かしく」はママ]〉はなれしやれたるがありて、めいぶつまつがありてとちヽぎみじまんにすがり、わたくとしごろまヽくらして、このうへのおねがひはまうしがたけれど、とてものそこおくらしてはたまはらぬか、じんのすけさまおうきうならば、つかはさるべきおやくそくとや、それまでのおるすゐまたとうさまをりふしのおいでに、ひとまかせらずはごふじいうすくなかるべく、なにとぞそこまはせて、しらなみうらかぜおもしろく、うめはながひでもひろはせてたまはれとのねがひ、ふびんどのやうしさいあればとて、つきはなをかしきさかりのとしに、せんにんまんにんすぐれしびしよくを、かヾみきからぬかのやううへひとごとにしてうれしとはかれぬを、おやといふのましていかならん、さりとはいんきよさまじみしねがひも、ひめこヽろにはむりならぬこと、なまなかみやこきてきやうだいどもが、うきよめかすをするもらし、なにごとものぞみにまか〈[#ルビの「まか」はママ]〉かせて、みたしとならばかしこませ、きなことでもまつかぜはし、きまヽくらさせるがめてもと、ちヽぎみこヽにおるしのでければ、あまりとてもかあいさうのこと、よしそのみねがひとてやうとほくに、みちれほどでけれどりにてはれもしんぱいなりこどもたちもさびしかるべく、じんのすけそのうちにもしたひて、ちうねえさまならではけぬに、あさゆふだヾいかにさりて、あねたちのなんぎゆるやうなれば、いましばらくまりてと、はヽぎみものやはらかにのたまひたれど、おゆるしのいでしにかひなく、それ/\したくしてまめやかつきらみ、しゆつたついつ/\ない/\とりきめけるを、じんのすけかぎりなくくやしがり、ちヽぎみなげはヽぎみめ、ふたりひめあたりあるきて、ちうねえさまいぢすことヽらみ、ぼくをもともにやれとまり、ひめむかへばわけもなくあまへて、りつきしまヽきてはなれず、ねえさまなにごとをはらたちてかまくらなぞへおいでなさるぞ、れも一つきはんつきならばけれど、おかへりいつともれずとみなひたり、どのやうおつしやるともそれはうそにて、かまくらかばおかへりのきにまりたれば、のこりてさびしからんよりれもともにゆき、れもこヽかへるまじ、とうさまかあさまや、れをてヽももろともかんとばかり、ひめしづかにさとして、そのみもほろりとし、かあゆこといふてかしたまふな、かまくらきてかへらぬとはれがひしか、それこそはうそにて、ちよつとあそびにき、そのうちにかへつてまするほどに、おとなしうちてたまはれ、よしかへらずとてあしこはおまへさまのおやしきゆゑ、おほきうなりたまふまでのおるすゐいまもおまうしたけれどそれこそさびしく、やにりてかあさまこひしかるべし、なにおとなしうおほきうなりたまへと、わびるやうになぐさめられて、それでもとわんぱくへず、しくしくきにつねげんきなくなりて、しよんぼりとせしすがたいぢらし。

ひめかまくらごもりのうはさむねとヾろきてさとししばしはあきれしが、なほじんのすけくはしくへば、さうゐなきものがたりなかばきながらにて、なにとぞめにやうくふうきかとたのまれて、さてなにとせん、うでしあんにもあたはず、しほれかへるじんのすけひとめゑんりよなきをうらやみて、こヽろそらになれどつちはヽきめんだうさ、このみりしもゆゑかは、つれなきひめふるまひそのわけぐれず、こヽてられてとりのこされんわれ、いでやしゆつたつまへの一をとこヽろねがひしが、むなしくかげずにあすさうてううらめしきたより、いまなにてヽ一にちびやうきしけるが、こひみだるヽこヽろあはれかなしくも、ひめへやまいへだてに、こよひかぎりのなごりしまんとて、こヽろそらよひやみはるらくくわにはあしおとなきこそよけれ、めてはゆめれかしとしのびぬ。

けてのきばにふうりんのおとさびしや、あすこのおといかにこひしく、こののきばのことへやのこと、とりわけてはじんさまのこと、ちヽぎみのことはヽぎみのこと、つねまでならぬしまいのこと、こひしかるべきものをといまこひしく、とこものおもふひめじんのすけしばしかたはらはなれず、こよひこヽんとひしを、あすあさじやまなればとはヽぎみゑんりよして、かれしあとのなほさらさびしく、おもへばあすよりのかんきよいかならん、じんさまはしばしこそれをしたひてきもしたまはめ、ほどへなばおのづとわすれて、ねえさまたちにたまはんはひつぢやうれはぎるヽことこひしさひごとさりて、ゑがほみたしとてもおよことにあらず、ちヽぎみとてもなりかし、とほはなれておもかげをしのばヽ、ちかきには十ばいまして、ふかかりしじあいこゑこのみヽはなれざるべし、れによりてこそこヽをもて、いとヾしきおもひにるしむれど、ごすけのこともわすれがたし、るせよごすけゆめさらさらくからねばこそ、こひすまじとてぞかし、うつせみのかるためまたありや、らぬこヽろうらみもせんくみもせん、そのくまるヽをほんまうにてのしよゐもらひしふみどこまでもしきに、ふうこそらぬてぶんこめて、一しやうきはまではともとせんこヽろ、さりとてはおひさきのあるきにつきひながからんことらや、なにごともさらさらとてヽ、からずおもしろからずくらしたきねがひなるに、はるかぜふけばはなめかしき、かれきならぬこヽろのくるしさよ、あはつききかこのむねはるけたきにと、にいよいよどうきたかく、みしめるそでなみだこぼれて、ひめしばらくうちしてきけるが、ふきいよかぜたがたましひか、あくがるヽこヽろこヽたへがたく、しづかにつてつまどせば、いまはつかつきおもかげかすんで、さしのぼにはこだちおぼろおぼろとくらく、たりやこきでんほそどのぐちさとしためにはくものもなきときぞかし。


だいくわい[編集]

はぬうきよさま/″\にはいかなることやひそむらん、いまむかしのなみだたねこひならぬざんげものがたり、くもかなしきうへあり、はるふけてにしむかぜに、ねやともしひまたヽくかげもあはれさびしやちやうじがしらの、はなばれしかやまけひめいまししやくおなはらに、さうぎよくとなへはびしよくかちめしが、さりとてあにぎみせきえず、ものしづかにつヽましくしよげいめいよのあるがなかに、ことのほまれはひさかたそらにもひヾきて、つきまへちゆうなほときくもはれてかげそでにち、はなむかつてぎよくおんもてあそべばうぐひすねをとヾめてふしをやまなびけん、ししやくちようあいよりもふかく、おやなきいもとたいせつかぎりなければ、きがうへにもきをらみて、なにがしけおくがたともをつけぬ十六のはるかぜむざんたますだれふきとほしてこのはつざくらちりかヽりしそでうままはりにびなんきこえはれど、つきくもゐちりろくさなんとしてこのこひなりたちけん、ゆめばかりなるちぎあにぎみにかヽりて、とほのりかへりみちのずゑちやてんをんなはらひて、いんぐわふくめしなさけことばさてもろくさろけんあかつきは、くびさしべてがつしやうかくごなりしを、ものやはらかにかもごしゆくんが、げるぞろくさやしきたちのいてれ、れもあくまでかあゆそちに、つかはさるべくはつかはしたけれど、ひちまんごくせんぞくんこうたひし、くわうひつはんべいといふたいし、このことばかりはなしがたきにおもてだちてはひめやしきおきがたけれど、れにはひとりいもと、ことにりやうしんらうごにて、かたみおもへばふびんかぎりのなきに、そちこヽろ一つにてれもあんどひめきずもつかず、こヽをよくれうけんなしさつぱりのいれかし、さりながらこののちありつきにとつヽみものたまはりて、はねどてきれの、はしたにはあらざりけんを、ろくさこれとヾめず、ぢゆう/\だいざいくびおふせらるヽともらみはきを、なさけのおことばてつしぬとてをとこいつぴきみごとなきしが、さてもげせんてば、こひかねゆゑするとやおぼす、これよりいごいつしやう五十ねんひめさまにはゆびもさすまじく、ましこうぐわいゆめさらいたすまじけれど、かねゆゑぢるくちにはあらず、こればかりはとおそれげもなく、つきもどしてさてつくづくとびけるが、きていそのまヽいとまごひしきなごりひめともはず、うまれかはらばくわぞくにとばかり、こヽでヽいづこゆきけん、わすれぬひめのことわすれねばこそ、ぎりといふなみだんで、こヽろやしきはなれざりしが、ちやうだいふかくにものおもふひめろくさいとまつたくより、こヽろむすぼほれてくることく、さてじあいふかきあにぎみつみともはでさしおきたまもつたいなさ、ひちまんごくすゑうまれておやたまともめでたまひしに、かはらにおとるいたづらはづかしく、なほそのひとこひしきもらく、なみだしづんでおくつきひに、らざりしこそをさなけれ、うへきをかさねて、やどりしたねさつきとは、さてもとばかなげふしてなきけるが、いまひとにもはじものおもはじ、たヾねかしとすてものにして、へやよりそとあしさず、いつしんくやめてはいづかたうつたふべき、せんぞちじよくかけいけがれ、あにぎみめんもくなくひとめはずかしく、わがこヽろれをめてひるず、いつしんつかれてせにせしすがたあにきみこヽろやみにりて、いやくてあてづからのほんそういよいよかなしく、はてものいはずなみだのみりしが、やつきじゆみやうこのこにあれば、つきたらずの、こゑいさましくげて、たまひめさまごしつしやうきもへず、るやさくらむなしくなりぬるを、いづくりてかろくさてんちなげきて、ひめいのちゆゑばかりみじかきちぎりにあさましきしゆくせおもへば、ひとりのこりてなんとせん、まちたまもろともにのこヽろなりけん、しのたまはりしひめしごきひぢりめんを、さいごむねいくへまきて、おほかわなみかへらずぞりし。

ふかうもとさとめて、ちヽこひはヽこひしのよはゆめにも、かぬさくらかぜうらまぬひとりずみのねがかたくなり、つヽむにもれすじやうひとしらねばこそさま/″\つてもとめて、かやまひめくるしく、いつさいしゆうじやうすてものに、わがまヽらしききやうがいこヽろにはなみだみて、しやはたちのいたづらぶし、一ねんかたまりてうごかざりけるが、いはをもとほなさけさとしがことにしみそめて、そのひとゆかしからねどそのこヽろにくからず、ふみいだきていくよわびしが、れながらよわこヽろあさましさにあきれ、ればこそはけばこそはおもひもすなれ、いざかまくらがれてこのひとのことをもわすれ、かるヽこヽろちたきものと、けつしんこヽりしこよひめてはつまどごしのおこゑきヽたく、とがめられんつみわすれてこヽしのそでにすがりてさとしなげヽば、これをはろゆうきいまく、よしひとめにはこひともこヽろくるはねばととうかむかひて、るまじきこひおもひをるしさ、さとしはじめよりの一ねんかたり、めてはあはれとのたまへとうらむに、もつたいなきことヽてひめき、おこヽろざしのふみふうらねどごらんぜよこのとほりと、てぶんこまことせしが、さてわれゆゑけばうれしきかかなしきか、ゆくすゑいかにごりつしんなされてどのやうなおひとたまふおにや、おもへばたつときごべんきやうざかりをれなどのためにとはなにごとぞや、いよいよこひあさましきものはかなきものくきもの、しやうがいこのやうかなしく、ひとはれぬものおもふも、あさましきこひゆゑぞかし、れにはらぬおやむかし、かたるまじきことれもめ、ちヽぎみさらなりはヽぎみにもいへはぢとてつヽむを、かせまゐらするではなけれど、一しやうに一うちあものがたり、きいたまはれすじやうと、こヽなみだくしてかたあかせば、ゆめとやはんはるあげがたちかく、とりがねそらきこえてさてせはしなし、きみみやこれはかまくらに、ひきはなれてまたいつかはふべき、ぢやうりためしをこヽれば、こひひとりやすかりける、なにごとはじおもはじ、おふせられてもたまはるなとて、あかつきつきかげわかちしが、これよりひめいかりけん、さてさとしいかりけん、つれなくえしありあけつきかたみそらながめて、(あかつきばかり)とうめ〈[#「口+斗」、U+544C、29-11]〉きけんからず。

この著作物は1925年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。