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神（かみ）を忘（わす）れざる記（き）憶（おく）に全（まった）く遠（とほ）ざかる人（ひと）は、近者（きんしゃ）に対（たい）する悪（あ）しき記（き）憶（おく）の為（ため）に擾（みだ）さるゝ思（おもひ）を心中（しんちゅう）に懐（いだ）かん。神（かみ）を記（き）憶（おく）する時（とき）にすべての…

い）でて患難（かんなん）に向（むか）ひし希望（きぼう）を彼（かれ）は自（みづ）から奪（うば）へるなり。けだし此（この）念慮（なんりょ）は彼（かれ）に神（かみ）の為（ため）に患難（かんなん）に近（ちか）づくを許（ゆる）さずして、彼（かれ）が此（この）念慮（ねんり…

い）りて、之（これ）に止（とどま）り、その従前（じゅうぜん）の思想（しそう）と感情（かんじょう）とをすべて全（まった）く棄（す）てて、恰（あたか）も造物（ぞうぶつ）の中（うち）に居（お）らざる者（もの）の如（ごと）くなると、未（いま）だ嘗（かつ）て存在（そんざい…

り綺麗（きれい）に成（な）れる、唯不熱心（たゞふねっしん）の間（あひだ）の小罪（せうざい）は、取返（とりかへし）の付（つ）かぬ損（そん）に成（な）るのである。 必竟何（つまりいづ）れにしても大罪（たいざい）の跡（あと）の残（のこ）るのは、天主（てんしゅ）は真理其者（しんりそのもの）にて…

たい）せしむる為（ため）に幾許（いくばく）接近（せっきん）するか。 故（ゆえ）に人（ひと）よ汝（なんぢ）に於（おけ）る神（かみ）の照（しょう）管（かん）に感謝（かんしゃ）せざる者（もの）となるなかれ。畢竟（ひっきょう）汝（なんぢ）は勝（しょう）利（り）者（しゃ）にはあらず、ただ器（き）械（かい）の如…

りの次第にして手（て）の着（つ）けやうもなきものと云ふ可し彼の地方官が税權（ぜいけん）法權（はふけん）を濫用（らんよう）して私利（しり）を營（いとな）むのみならず大小（だいせう）の官吏（くわんり）を始（はじ）めとして所在（しよざい…

きん）いろの草地で、草は風にざわざわ鳴り、まわりは立派なオリーブいろのかやの木のもりでかこまれてありました。 その草地のまん中に、せいの低いおかしな形の男が、膝（ひざ）を曲げて手に革鞭（かわむち）をもって、だまってこっちをみていたのです。 一郎はだんだんそばへ行って、びっくりして立ちどまっ…

っきん）の敵（てき）に敵（てき）す可（べか）らずと言（い）えり。参考（さんこう）す可（べ）し。 　近日（きんじつ）世上（せじょう）に征韓（せいかん）の話（はなし）あり。一（ひ）と通（とお）り聞（きけ）けば伐（う）つ可（べ）き趣意（しゅい…

りと身体（しんたい）の食（しょく）と衣（い）と其（その）他（た）の必要物（ひつようぶつ）の事（こと）及（およ）び居室（きょしつ）の事（こと）に関（かん）する大（おほい）なる費（ひ）心（しん）は汝（なんぢ）を占領（せんりょう）せざるか、また己（おのれ）を全（まっ…

い）ふ。 昔（むかし）からの金言（きんげん）に「道（みち）は片時（かたとき）も離（はな）るべからず、離（はな）るべきは道（みち）にあらず」と云（い）はれた通（とほり）。 親（おや）に対（たい）する道（みち）は孝行（かうゝゝ）と云（い）ひ、君（きみ）に対（たい）する道（みち）は忠義（ちうぎ）と云（い…

つ）の目（め）の怪（あや）しく闇（やみ）に光（ひかり）る所（ところ）を通（とお）り、桷（たるき）に棲（と）まった家禽（かきん）共（ども）が夢駭（おどろ）かされて脚（あし）を変（かわ）える下（した）を進（すす）んで行（い）った。 博士（はかせ）の望（のぞ）んだトビーは不格好（ぶかっこう）な、毛（け）…

っきん）するに向（むか）はしむべし。しかれども汝（なんぢ）の為（な）す所（ところ）を目標（もくひょう）と調和（ちょうわ）せしむるを殊（こと）に要（よう）するは何故（なにゆえ）なるか、之（これ）を確知（かくち）せんことを思（おも）ふべし。けだし此（これ）なくんば、真理（しんり…

い）ふ『汝（なんぢ）神（かみ）の深（ふか）き事（こと）を窮（きわ）むるを得（え）んや、全能者（ぜんのうしゃ）の造（つく）りし者（もの）を全（まった）く窮（きわ）むるを得（え）んや』〔イオフ十一の七〕。それ造物（ぞうぶつ）の至（いた）りて微（び）なるものをさへ理会（り…

きんちく）せられん〔ティモフェイ後三の十二〕。けだし主（しゅ）は言（い）へり、『我（われ）に従（したが）はんと欲（ほっ）する者（もの）は己（おのれ）を捨（す）て、その十字架（じゅうじか）を負（お）ひて我（われ）に従（したが）へ』〔マルコ八の三十四〕。安息（あんそく）に生（い）きん…

りたれども君（きみ）の禄（ろく）を食（はみ）て我（われ）と同（おな）じく仕（つかふ）るものをいへり（十金（じっきん））を負（おふ）といふは負債（ひきおひ）甚（はなは）だ少（すくな）くして君（きみ）に負債（ひきおひ）せし千萬金（せんまんきん…

いて来ました。 　雪狼どもは頭をふってくるりとまわり、またまっ赤な舌を吐いて走りました。 「カシオピイア、 　もう水仙が咲き出すぞ 　おまえのガラスの水車（みずぐるま） 　きっきとまわせ。」 　雪童子はまっ青なそらを見あげて見えない星に叫（さけ）びました。その空からは青びかり…

きんぎゅう）を拝（はい）せり。立法者（りっぽうしゃ）モイセイの時（とき）、告（つげ）て『淫（いん）を行（おこな）ふなかれ』〔出（しゅつ）埃及（エジプト）記二十の十四〕との給（たま）へり、然（しか）るにイズライリ民（みん）は淫所（いんしょ）に入（い）りて、敢（あえ）て淫（い…

　にわかにパッと明るくなり、日光の黄金きんは夢ゆめのように水の中に降って来ました。 　波から来る光の網あみが、底の白い磐いわの上で美しくゆらゆらのびたりちぢんだりしました。泡や小さなごみからはまっすぐな影かげの棒が、斜めに水の中に並ならんで立ちました。 　魚がこんどはそこら中の黄金きんの光をまるっき…

「こいつはどうもあやしいぞ。笊森の笊はもっともだが、中には何があるかわからない。一つあけて見よう。」と云いながらそれをあけて見ますと、中には無くなった農具が九つとも、ちゃんとはいっていました。 　それどころではなく、まんなかには、黄金（きん）色の目をした、顔のまっかな山男が、あぐらをかいて座（すわ）っていました。そしてみんなを見ると、大きな口をあけてバアと云いました。…

いたが、彼はふと闇の中にたった一つの開け放された窓を見つける。その部屋のなかには白い布のような塊（かたま）りが明るい燈火に照らし出されていて、なにか白い煙のようなものがそこから細く真直（まっす）ぐに立ち騰（のぼ）っている。そしてそれがだんだんはっき…