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坊主が、住みついてしまって、世間が何といおうと、今は、立派な庵主づらをしておさまっているのであった。 その鉄心庵の現在――ときどき生ぐさ物の匂いがぷんぷんとかおって、貧乏徳利がいつも台どころにころがっているだけで、経を読む声さえ、通りがかりの誰もが聴いたことがないというのだから、いずれ、破戒無慚（は…

す。国衡うちまけ。軍兵（ぐんびやう）と〴〵くはいぼくし。国衡もちくてんす。頼朝公其跡（あと）をおはしめ給ふ。諸卒（しよそつ）の其中に。わだ小太郎義盛。先陣にはせぬけ。柴田のこほり大高宮の辺（へん）に至る。国衡は出羽（でば）道をへ。大関山（せき）をこえんとす…

と）りて之を用ふるを舍（や）めて、何爲（なんす）れぞ紛紛然（ふんぷんぜん）として百工（こう）と交易（こうえき）する。何（なん）ぞ許子（きよし）の煩（はん）を憚（はゞ）からざる。曰く、百工（こう）の事（こと）は、固（もと）より耕（たがや）し且（か）つ爲（な）す可（べ）からざるなり。然（しか）らば則ち天…

んぢ）等（ら）に求（もと）め、爾（なんぢ）等（ら）に勸（すゝ）む、爾（なんぢ）等（ら）は既（すで）に如何（いか）に行（おこな）ひ、及（およ）び神（かみ）を悦（よろこ）ばしむべきを我等（われら）より受（う）け、且（かつ）之（これ）を行（おこな）ふに由（よ）りて、益（ますます）之（これ）に進歩（しんぽ）せよ、…

ぷんかん）も火（ひ）の中（なか）に置（お）く事（こと）は耐（たま）らぬのに、終（をはり）なく火（ひ）の中（なか）に苦（くるし）むとは何（なん）と恐（おそ）ろしい事（こと）であろう、然（しか）し自（みづか）ら罪（つみ）を以（もっ）て天主（てんしゅ）を棄（す…

あいつの娘なら碌（ろく）な者でないに極（きま）ってらあ。初めて人のうちへ来ておれをやり込めに掛った奴だ。傲慢（ごうまん）な奴だ」と独（ひと）りでぷんぷんする。するとまた垣根のそばで三四人が「ワハハハハハ」と云う声がする。一人が「高慢ちきな唐変木（とうへんぼく）だ」と云うと一人が「もっと大きな家（う…

けて考（かんが）えて見（み）ましたが、今日（こんにち）に至（いた）る迄（まで）秘密（ひみつ）は依然（いぜん）として秘密（ひみつ）のまま、解決（かいけつ）されず残（のこ）って居（い）るのであります。」 主人（しゅじん）はもう水煙草（みずぎせる）を点（とも）すのを止（や）め、二三分間（ぷん…

、その梯子の一番下（ばんした）の段へふみかけた。 　それから、何分（なんぷん）かの後である。羅生門の樓の上へ出る、幅（はゞ）の廣い梯子の中段に、一人の男が、猫（ねこ）のやうに身をちゞめて、息（いき）を殺しながら、上の容子（ようす）を窺つてゐた。樓の上からさす火（ひ）の光（ひかり）が、かすかに、その男…

通（とほ）り過（すご）して盛岡（もりをか）は むかし豪族（がうぞく）安倍（あべ）氏（うぢ）が 柵（さく）を造（つく）りし厨（くりや）川（がは） 見（み）馴（なれ）の松（まつ）も名（な）に高（たか）く 尻内驛（しりないえき）に支（し）線（せん）あり 湊（みなと）に行（ゆ）くは二（に）十分（じつぷん）…

ぷん）する所（ところ）の人（ひと）其（それ）なり、捕（とら）へて確（しか）と引行（ひきゆ）け、と云（い）ひいたりしが、 45來（きた）りて直（ただち）にイエズスに近（ちか）づき、ラビ安（やす）かれ、と云（い）ひて接吻（せつぷん）せしかば、 46彼等（かれら）イエズスに手（て）を掛（か）けて、之（これ）を捕（とら）へたり。…

老鶴従来仙洞駕。寒雲在昔妓楼衣。 嵯峨旧院即事　菅原道真 こくわつゆをつつんでざんぷんになき、 ぼてうかぜにすみてはいりをまもる、 孤花（こくわ）露（つゆ）を裹（つつ）んで残粉（ざんぷん）に啼（な）き、 暮鳥（ぼてう）風（かぜ）に栖（す）みて廃籬（はいり）を守（まも）る、 孤花裹露啼残粉。暮鳥栖風守廃籬。 題后妃旧院　良岑春道…

）を濡（うるほ）し、己（おの）が髮（かみの）毛（け）を以（もつ）て之（これ）を拭（ぬぐ）へり。 45汝（なんぢ）は我（われ）に接吻（せつぷん）せざりしに、此（この）婦（をんな）は入來（いりきた）りてより絕（た）えず我（わが）足（あし）に接吻（せつぷん）せり。…

返答（へんたう）せり。秀吉公此よしを聞召。欝憤（うつぷん）をふく見止（やむ）事なくすでに。関東へはつかうの聞へ有。氏直持国（じこく）伊豆（いづ）するがに。数城（すじやう）有といへ共。何れも大軍（たいぐん）を引請（うけ）べき城にあらざる故。みなわりすて。豆州（とうしう）。にら山一城（じやう）ばかりを残…

には触れる訳に行かないのです。時にはナオミはヒョイとその壁を除（の）けそうにするので、「おや、いいのかな」と思ったりしますが、近寄って行けば矢張元通り締まってしまいます。 「譲治さん、あなた好（い）い児（こ）ね、一つ接吻（せっぷん）して上げるわ」 と、彼女はからかい半分によくそんなことを云ったもの…

）に折りたたんである新聞を見ると、日本に帰ってからまだ新聞と云うものに眼を通さなかったのを思い出して、手に取り上げてみた。テレビン油のような香がぷんぷんするのでそれが今日の新聞である事がすぐ察せられた。果して一面には「聖寿万歳」と肉太に書かれた見出しの下に貴顕の肖像が掲げられてあった。葉子は一ヵ月…

（なごり）ぢゃぞ！　腕（かひな）よ、抱（だ）け、これが最後（なごり）ぢゃ！　おゝ、息（いき）の戸（と）の脣（くちびる）よ、人（ひと）の命（いのち）を長永（とこしなへ）に買占（かひし）むる死（し）の證文（しょうもん）に天下（てんが）晴（は）れた接吻（せっぷん）の奧印（おくいん）せよ！……（毒藥の瓶を取…

惜しい事をしたと云った。最後に横町の道具屋をひどく罵（のの）しって、怪（け）しからん奴（やつ）だと云った。 　宗助と坂井とはこれからだいぶ親しくなった。 　佐伯（さえき）の叔母も安之助（やすのすけ）もその後とんと宗助（そうすけ）の宅（うち）へは見えなかった。宗助は固（もと）より麹町（こうじまち）へ…

25兄弟等（きやうだいたち）よ、我（われ）等（ら）の爲（ため）に祈（いの）れ。 26聖（せい）なる接吻（せつぷん）を以（もつ）て凡（すべ）ての兄弟（きやうだい）に宜（よろ）しく傳（つた）へよ。 27聖（せい）なる凡（すべ）ての兄弟（きやうだい）に此（この）書簡…

（あだ）に機（き）密（みつ）を告（つ）げざらん、又（また）爾（なんぢ）にイウダの如（ごと）き接吻（せつぷん）を為（な）さざらん、乃（すなはち）盗賊（とうぞく）の如（ごと）く爾（なんぢ）を承（う）け認（みと）めて曰（い）ふ、主（しゅ）よ、爾（なんぢ）の國（くに）に於（おい）て我（われ）を記（き）念（…

、一段下へ通り抜けた。駝鳥（だちょう）の白い毛が鼻の先にふらついて、品のいい香りがぷんとする。あとから、脳巓（のうてん）の禿（は）げた大男が絹帽（シルクハット）を大事そうに抱えて身を横にして女につきながら、二人を擦（す）り抜ける。 「おい、あすこに椅子が二つ空（あ）いている」と物馴（ものな）れた中野…