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ルカ聖福音書2 (ラゲ訳)

提供: Wikisource

<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

『ラゲ訳新約聖書』エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

ルカ聖福音書2

第7章

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1イエズス其(その)凡(すべ)ての言(ことば)を人民(じんみん)に說(と)き聞(き)かせ畢(をは)りて、カファルナウムに入(い)り給(たま)ひしが、 2或(ある)百夫(ひやくふ)長(ちやう)、己(おの)が重(おも)んぜる僕(しもべ)の病(や)みて死(し)するばかりなれば、 3イエズスの事(こと)を聞(き)くや、ユデア人(じん)の長老(ちやうらう)等(ら)を遣(つか)はし、來(きた)りて其(その)僕(しもべ)を醫(いや)し給(たま)はん事(こと)を請(こ)はしめたり。 4彼等(かれら)イエズスの許(もと)に詣(いた)りて切(せつ)に願(ねが)ひ、彼(かの)人(ひと)は之(これ)を爲(な)し給(たま)ふに堪(た)へたる者(もの)なり、 5其(そ)は我(わ)が國民(こくみん)を愛(あい)し、我(われ)等(ら)の爲(ため)に自(みづか)ら會堂(くわいどう)を建(た)てたればなり、と云(い)ひければ、 6イエズス彼等(かれら)と共(とも)に往(ゆ)き給(たま)ひ、既(すで)に其(その)家(いへ)に遠(とほ)からずなり給(たま)へる時(とき)、百夫(ひやくふ)長(ちやう)朋輩(ともだち)を遣(つか)はして云(い)はしめけるは、主(しゆ)よ、自(みづか)ら煩(わづら)はし給(たま)ふこと勿(なか)れ、其(そ)は我(われ)不肖(ふせう)にして、主(しゆ)の我(わが)屋根(やね)の下(した)に入(い)り給(たま)ふに足(た)らざればなり。 7故(ゆゑ)に我(わが)身(み)も御前(みまへ)に詣(いた)るに堪(た)へずと思(おも)へり。然(さ)りながら唯(ただ)一言(ひとことば)にて命(めい)じ給(たま)へ、然(さ)らば我(わが)僕(しもべ)痊(い)えん。 8蓋(けだし)我(われ)も人(ひと)の權(けん)下(か)に立(た)つ者(もの)ながら、部下(ぶか)に兵卒(へいそつ)ありて、此(この)に往(ゆ)けと云(い)へば往(ゆ)き、彼(かれ)に來(きた)れと云(い)へば來(きた)り、又(また)我(わが)僕(しもべ)に之(これ)を爲(な)せと云(い)へば爲(な)すなり、と。 9イエズス之(これ)を聞(き)きて感嘆(かんたん)し、從(したが)へる群衆(ぐんしゆう)を顧(かへり)みて曰(のたま)ひけるは、我(われ)誠(まこと)に汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、イスラエルの中(うち)にても、斯(か)程(ほど)の信仰(しんかう)に逢(あ)ひし事(こと)なし、と。 10斯(かく)て遣(つか)はされし人々(ひとびと)家(いへ)に歸(かへ)りて見(み)れば、病(や)みたりし僕(しもべ)既(すで)に痊(い)えたりき。 11其(その)後(のち)イエズスナイムと云(い)へる町(まち)に往(ゆ)き給(たま)ふに、弟子(でし)等(たち)も夥(おびただ)しき群衆(ぐんしゆう)も共(とも)に往(ゆ)きてありしが、 12町(まち)の門(もん)に近(ちか)づき給(たま)ふ時(とき)、折(をり)しも舁(かき)出(いだ)さるる死人(しにん)あり。是(こ)は其(その)母(はは)の獨子(ひとりご)にて、母(はは)は寡婦(やもめ)なり、町(まち)の人(ひと)夥(おびただ)しく之(これ)に伴(ともな)ひ居(ゐ)たり。 13主(しゆ)此(この)寡婦(やもめ)を見(み)給(たま)ふや哀(あはれ)を感(かん)じ給(たま)ひて、泣(な)くこと勿(なか)れ、と曰(のたま)ひつつ、 14近(ちか)づきて棺(くわん)に手(て)を觸(ふ)れ給(たま)ひしかば、舁(か)ける人々(ひとびと)立(たち)止(とどま)れり。 15イエズス、若者(わかもの)よ、我(われ)汝(なんぢ)に命(めい)ず、起(お)きよ、と曰(のたま)ふや、死(し)したる者(もの)起(おき)返(かへ)りて言(ものい)ひ始(はじ)めけるを、其(その)母(はは)に與(あた)へ給(たま)ひしかば、 16人々(ひとびと)皆(みな)懼(おそれ)を懷(いだ)き、光榮(くわうえい)を神(かみ)に歸(き)して云(い)ひけるは、大(おほ)いなる預言(よげん)者(しや)我(われ)等(ら)の中(うち)に起(おこ)れり、神(かみ)は其(その)民(たみ)を顧(かへり)み給(たま)へるなり、と。 17斯(かく)て此(この)噂(うはさ)ユデア一般(いつぱん)及(および)凡(すべ)て其(その)周圍(めぐり)の地方(ちはう)に弘(ひろ)まれり。 18ヨハネの弟子(でし)等(たち)、此(この)一切(いつさい)の事(こと)を己(おの)が師(し)に告(つ)げしかば、 19ヨハネ其(その)弟子(でし)の二人(ふたり)を呼(よ)びて、來(きた)るべき者(もの)は汝(なんぢ)なるか、或(あるひ)は我(われ)等(ら)の待(ま)つ者(もの)は尙(なほ)外(ほか)に在(あ)るか、と云(い)ひてイエズスに遣(つか)はしければ、 20彼等(かれら)イエズスの許(もと)に至(いた)りて云(い)ひけるは、洗者(せんしや)ヨハネ我(われ)等(ら)を汝(なんぢ)に遣(つか)はして、來(きた)るべき者(もの)は汝(なんぢ)なるか或(あるひ)は我(われ)等(ら)の待(ま)つ者(もの)尙(なほ)外(ほか)に在(あ)るかと云(い)ふ、と。 21當時(たうじ)イエズスは、多(おほ)くの人(ひと)を病(やまひ)と傷(きず)と惡鬼(あくき)とより醫(いや)し、且(かつ)多(おほ)くの瞽者(めしひ)に視力(しりよく)を與(あた)へ給(たま)ひしが、 22答(こた)へて使(つかひ)に曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)見聞(みきき)せし事(こと)を、往(ゆ)きてヨハネに告(つ)げよ、卽(すなは)ち瞽者(めしひ)は見(み)え、跛者(あしなへ)は步(あゆ)み、癩(らい)病者(びやうしや)は潔(きよ)く成(な)り、聾者(みみしひ)は聞(きこ)え、死者(ししや)は蘇(よみがへ)り、貧者(ひんしや)は福音(ふくいん)を聞(き)かせらる、 23總(すべ)て我(われ)に就(つ)きて躓(つまづ)かざる人(ひと)は福(さいはひ)なり、と。 24ヨハネの使(つかひ)去(さ)りて後(のち)、イエズスヨハネの事(こと)を群衆(ぐんしゆう)に語(かたり)出(い)で給(たま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)何(なに)を見(み)んとて荒野(あれの)に出(い)でしぞ、風(かぜ)に搖(うご)かさるる葦(よし)か、 25然(さ)らば何(なに)を見(み)んとて出(い)でしぞ、柔(やわらか)き衣服(いふく)を着(き)たる人(ひと)か、看(み)よ、値(あたひ)高(たか)き衣服(いふく)を着(き)て樂(たの)しく暮(くら)す人々(ひとびと)は、帝王(ていわう)の家(いへ)に在(あ)り、 26然(さ)らば何(なに)を見(み)んとて出(い)でしぞ、預言(よげん)者(しや)か、我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、然(しか)り預言(よげん)者(しや)よりも優(まさ)れる者(もの)なり、 27錄(かきしる)して「看(み)よ、我(わが)使(つかひ)を汝(なんぢ)の面前(めんぜん)に遣(つかは)はさん、彼(かれ)汝(なんぢ)に先(さきだ)ちて汝(なんぢ)の道(みち)を備(そな)ふべし」とあるは彼(かれ)の事(こと)なり。 28卽(すなは)ち我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、婦(をんな)より生(うま)れたる者(もの)の中(うち)に、洗者(せんしや)ヨハネより大(おほい)なる預言(よげん)者(しや)はあらず、然(さ)れど神(かみ)の國(くに)にて最(もつとも)小(ちひさ)き人(ひと)も彼(かの)より大(おほ)いなり。 29彼(かれ)に聞(き)ける總(すべ)ての人民(じんみん)稅吏(みつぎとり)までも、ヨハネの洗禮(せんれい)を受(う)けて神(かみ)を義(ただ)しとせり、 30然(さ)れどファリザイ人(じん)、律法(りつぱふ)學士(がくし)等(ら)は彼(かれ)に洗(せん)せられずして、己(おのれ)に於(おけ)る神(かみ)の御旨(みむね)を輕(かろ)んぜり、と。 31主(しゆ)又(また)曰(のたま)ひけるは、然(さ)れば我(われ)現代(げんだい)の人(ひと)を誰(たれ)にか擬(なぞら)へん、彼等(かれら)は、誰(たれ)に似(に)たるぞや、 32恰(あたかも)童(わらべ)等(ら)が衢(ちまた)に坐(ざ)して語(かたり)合(あ)ひ、我(われ)等(ら)、汝(なんぢ)等(ら)の爲(ため)に笛吹(ふえふ)きたれども、汝(なんぢ)等(ら)踊(をど)らず、汝(なんぢ)等(ら)の爲(ため)に嘆(なげ)きたれども、汝(なんぢ)等(ら)泣(な)かざりき、と云(い)へるに似(に)たり。 33卽(すなは)ち洗者(せんしや)ヨハネ來(きた)りて、麪(ぱん)を食(しよく)せず酒(さけ)を飲(の)まざれば、汝(なんぢ)等(ら)、彼(かれ)は惡魔(あくま)に憑(つ)かれたりと云(い)ひ、 34人(ひと)の子(こ)來(きた)りて飲食(いんしよく)すれば、彼(かれ)は食(しよく)を嗜(たし)み酒(さけ)を飲(の)み、稅吏(みつぎとり)と罪人(つみびと)との友(とも)たり、と云(い)ふ。 35然(さ)りながら、智惠(ちゑ)は其(その)凡(すべ)ての子(こ)に義(ただ)しとせられたり、と。 36爰(ここ)に一人(ひとり)のファリザイ人(じん)、イエズスに會食(くわいしよく)せん事(こと)を請(こ)ひければ、其(その)ファリザイ人(じん)の家(いへ)に入(い)りて、食卓(しよくたく)に就(つ)き給(たま)ひしが、 37折(をり)しも其(その)町(まち)に罪人(つみびと)なる一個(ひとり)の婦(をんな)ありて、イエズスがファリザイ人(じん)の家(いへ)にて食卓(しよくたく)に就(つ)き給(たま)へるを聞(き)くや、香油(かうゆ)を盛(も)りたる器(うつは)を持(もち)來(きた)り、 38イエズスの足下(あしもと)にて其(その)後(うしろ)に立(た)ち、御(おん)足(あし)を次第(しだい)に淚(なみだ)にて濡(うるほ)し、己(おの)が髮(かみの)毛(け)にて之(これ)を拭(ぬぐ)ひ、且(かつ)御(おん)足(あし)に接吻(せつぷん)し且(かつ)香油(かうゆ)を注(そそ)ぎければ、 39イエズスを招(まね)きたるファリザイ人(じん)、之(これ)を見(み)て心(こころ)の中(うち)に云(い)ひけるは、彼(かれ)は果(はた)して預言(よげん)者(しや)ならば、己(おのれ)に觸(ふ)るる婦(をんな)の誰(たれ)にして如何(いか)なる人(ひと)なるかを、能(よ)く知(し)れるならん、彼(かの)婦(をんな)は罪人(ざいにん)なるものを、と。 40イエズス答(こた)へて、シモンよ、我(われ)汝(なんぢ)に云(い)ふ事(こと)あり、と曰(のたま)ひければ、彼(かれ)、師(し)よ、仰(おお)せられよ、と云(い)ふに、 41[曰(のたま)ひけるは]、或(ある)債(さい)主(しゆ)に二人(ふたり)の負債(ふさい)者(しや)あり、一人(ひとり)は五百デナリオ、一人(ひとり)は五十デナリオの負債(ふさい)あるを、 42還(かへ)すべき由(よし)なければ、債(さい)主(しゆ)二人(ふたり)を共(とも)に免(ゆる)せり、斯(かく)て債(さい)主(しゆ)を最(もつと)も愛(あい)せん者(もの)は孰(いづれ)れなるぞ、と。 43シモン答(こた)へて、我(われ)思(おも)ふに其(そ)は多(おほ)くを免(ゆる)されたる者(もの)ならん、と云(い)ひしに、イエズス、汝(なんぢ)善(よ)く判斷(はんだん)せり、と曰(のたま)ひ、 44然(さ)て婦(をんな)を顧(かへり)みてシモンに曰(のたま)ひけるは、此(この)婦(をんな)を見(み)るか、我(われ)汝(なんぢ)の家(いへ)に入(い)りしに、汝(なんぢ)は我(わが)足(あし)の水(みづ)を與(あた)へざりしを、此(この)婦(をんな)は淚(なみだ)を以(もつ)て我(わが)足(あし)を濡(うるほ)し、己(おの)が髮(かみの)毛(け)を以(もつ)て之(これ)を拭(ぬぐ)へり。 45汝(なんぢ)は我(われ)に接吻(せつぷん)せざりしに、此(この)婦(をんな)は入來(いりきた)りてより絕(た)えず我(わが)足(あし)に接吻(せつぷん)せり。 46汝(なんぢ)は油(あぶら)を我(わが)頭(かうべ)に注(そそ)がざりしに、此(この)婦(をんな)は香油(かうゆ)を我(わが)足(あし)に注(そそ)げり。 47此(この)故(ゆゑ)に我(われ)汝(なんぢ)に告(つ)ぐ、此(この)婦(をんな)は多(おほ)く愛(あい)したるが故(ゆゑ)に、多(おほ)くの罪(つみ)を赦(ゆる)さるるなり、赦(ゆる)さるる事(こと)少(すくな)き人(ひと)は愛(あい)する事(こと)少(すくな)し、と。 48斯(かく)て彼(かの)婦(をんな)に向(むか)ひ、汝(なんぢ)の罪(つみ)赦(ゆる)さる、と曰(のたま)ひしかば、 49食卓(しよくたく)を共(とも)にせる人々(ひとびと)、心(こころ)の中(うち)に言(いひ)出(い)でけるは、彼(かれ)何人(なにびと)なれば罪(つみ)をも赦(ゆる)すぞ、と。 50イエズス婦(をんな)に向(むか)ひて、汝(なんぢ)の信仰(しんかう)汝(なんぢ)を救(すく)へり、安(やす)んじて往(ゆ)け、と曰(のたま)へり。

第8章

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1其(その)後(のち)イエズス、說敎(せつけう)し且(かつ)神(かみ)の國(くに)の福音(ふくいん)を宣(の)べつつ、町々(まちまち)村々(むらむら)を巡廻(じゆんくわい)し給(たま)ひければ、十二使徒(しと)之(これ)に伴(ともな)ひ、 2又(また)曾(かつ)て惡鬼(あくき)を逐拂(おひはら)はれ、病(やまひ)を醫(いや)されたる數人(すにん)の婦人(ふじん)、卽(すなは)ち七(ななつ)の惡魔(あくま)の其(その)身(み)より出(い)でたる、マグダレナと呼(よ)ばるるマリア、 3ヘロデの家令(かれい)クサの妻(つま)ヨハンナ及(および)スザンナ、其他(そのた)多(おほ)くの婦人(ふじん)ありて、己(おの)が財産(ざいさん)を以(もつ)て彼等(かれら)に供給(きようきふ)し居(ゐ)たり。 4然(さ)て夥(おびただ)しき人(ひと)、町々(まちまち)よりイエズスの許(もと)に走(はせ)集(あつま)りければ、イエズス喩(たとへ)を以(もつ)て語(かた)り給(たま)ひけるは、 5種(たね)播(ま)く人(ひと)其(その)種(たね)を播(ま)きに出(い)でしが、播(ま)く時(とき)或(ある)者(もの)は路傍(みちばた)に落(お)ちしかば、踏(ふみ)着(つ)けられ、空(そら)の鳥(とり)之(これ)を啄(ついば)めり。 6或(ある)者(もの)は石(いし)の上(うへ)に落(お)ちしかば、生(はえ)出(いで)たれど、潤(うるほひ)なきに由(よ)りて枯(か)れたり。 7或(ある)者(もの)は茨(いばら)の中(うち)に落(お)ちしかば、茨(いばら)共(とも)に長(そだ)ちて之(これ)を蔽塞(おほひふさ)げり。 8或(ある)者(もの)は沃(よき)壤(つち)に落(お)ちしかば、生出(はえい)でて百(ひやく)倍(ばい)の實(み)を結(むす)べり、と。イエズス此(この)事(こと)を曰(のたま)ひて、聞(き)く耳(みみ)を有(も)てる人(ひと)は聞(き)け、と呼(よば)はり居(ゐ)給(たま)へり。 9弟子(でし)等(たち)、此(この)喩(たとへ)を如何(いか)にと問(と)ひしに、 10曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)は神(かみ)の國(くに)の奧義(おくぎ)を知(し)る事(こと)を賜(たま)はりたれど、他(た)の人(ひと)は喩(たとへ)を以(もつ)てせらる、是(こ)は彼等(かれら)が見(み)つつ視(み)えず、聞(き)きつつ曉(さと)らざらん爲(ため)なり。 11此(この)喩(たとへ)は斯(かく)の如(ごと)し、種(たね)は神(かみ)の御言(おんことば)なり、 12路傍(みちばた)の者(もの)は聞(き)く人々(ひとびと)にして、彼等(かれら)の信(しん)じて救(すく)はれざらん爲(ため)、後(のち)に惡魔(あくま)來(きた)りて言(ことば)を其(その)心(こころ)より奪(うば)ふなり。 13石(いし)の上(うへ)の者(もの)は、聞(き)く時(とき)に喜(よろこ)びて言(ことば)を受(う)くれど、己(おのれ)に根(ね)無(な)く、暫(しばら)く信(しん)じて、誘(いざなひ)の時(とき)には退(しりぞ)く人々(ひとびと)なり。 14茨(いばら)の中(うち)に落(お)ちしは、聞(き)きたる後(のち)、往(ゆ)く往(ゆ)く世(よ)の慮(こころづかひ)と富(とみ)と快樂(くわいらく)とに蔽塞(おほひふさ)がれて、實(み)を結(むす)ばざる人々(ひとびと)なり。 15然(しか)るに沃(よき)壤(つち)に落(お)ちしは、善良(ぜんりやう)なる心(こころ)にて、言(ことば)を聞(き)きて之(これ)を保(たも)ち、忍耐(にんたい)を以(もつ)て實(み)を結(むす)ぶ人々(ひとびと)なり。 16誰(たれ)も燈(ともしび)を點(とも)して、器(うつは)を以(もつ)て之(これ)を覆(おほ)ひ、或(あるひ)は寢臺(ねだい)の下(した)に置(お)く者(もの)はあらず、入來(いりく)る者(もの)に明(あかり)を見(み)せん爲(ため)に、之(これ)を燭臺(しよくだい)の上(うへ)に置(お)く。 17蓋(けだし)祕(ひ)して露(あらは)れざるはなく、隱(かく)れて遂(つひ)に知(し)れず公(おほやけ)にならざるはなし。 18此(この)故(ゆゑ)に汝(なんぢ)等(ら)聞方(ききかた)に注意(ちゆうい)せよ。其(そ)は有(も)てる人(ひと)は尙(なほ)與(あた)へられ、有(も)たぬ人(ひと)は其(その)有(も)てりと思(おも)ふ物(もの)をも奪(うば)はるべければなり、と。 19然(さ)てイエズスの母(はは)、兄弟(きやうだい)、逢(あ)はんとて來(きた)りしかど、群衆(ぐんしゆう)の爲(ため)に近(ちか)づくこと能(あた)はざりしかば、 20汝(なんぢ)の母(はは)、兄弟(きやうだい)汝(なんぢ)に逢(あ)はんとて外(そと)に立(た)てり、と告(つ)ぐる者(もの)ありしに、 21イエズス答(こた)へて人々(ひとびと)に曰(のたま)ひけるは、神(かみ)の御言(おんことば)を聽(き)き且(かつ)行(おこな)ふ人(ひと)、是(これ)我(わが)母(はは)、兄弟(きやうだい)なり、と。 22一(いち)日(じつ)イエズス、弟子(でし)等(たち)と共(とも)に小舟(こぶね)に乘(の)り給(たま)ひしに、我(われ)等(ら)湖(うみ)の彼方(かなた)に渡(わた)らん、と曰(のたま)ひて軈(やが)て乘出(のりいだ)せり。 23斯(かく)て渡(わた)る間(あひだ)にイエズス眠(ねむ)り給(たま)ひしが、暴風(ばうふう)湖(うみ)に吹(ふき)下(おろ)し來(きた)り、水(みづ)舟(ふね)に充(み)ちて危(あやふ)かりければ、 24弟子(でし)等(たち)近(ちか)づきて、師(し)よ、我(われ)等(ら)亡(ほろ)ぶ、と云(い)ひつつイエズスを覺(さ)ましたるに、起(お)きて風(かぜ)と怒涛(あらなみ)とを戒(いまし)め給(たま)ひしかば、波風(なみかぜ)息(やす)みて凪(なぎ)となれり。 25然(さ)て、汝(なんぢ)等(ら)の信仰(しんかう)何處(いづこ)に在(あ)る、と曰(のたま)ひければ、彼等(かれら)且(かつ)怖(おそ)れ且(かつ)感嘆(かんたん)して、是(これ)を誰(たれ)と思(おも)ふぞ、風(かぜ)も湖(うみ)も、命(めい)じ給(たま)へば是(これ)に從(したが)ふよ、と云(いひ)合(あ)へり。 26又(また)ガリレアに對(むか)へるゲラサ人(じん)の地方(ちはう)に渡(わた)りて、 27上陸(じやうりく)し給(たま)ひしに、一箇(ひとり)の人(ひと)ありて之(これ)を迎(むか)へたり。彼(かれ)惡魔(あくま)に憑(つ)かれたる事(こと)既(すで)に久(ひさ)しくして、衣服(いふく)をも着(き)ず家(いへ)にも住(す)まず、墓(はか)にのみ居(を)りしが、 28イエズスを見(み)るや御前(みまへ)に平伏(ひれふ)し、聲(こゑ)高(たか)く叫(さけ)びて、最(いと)高(たか)き神(かみ)の御子(みこ)イエズスよ、我(われ)と汝(なんぢ)と何(なん)の關係(かかはり)かあらん。願(ねがは)くは我(われ)を苦(くる)しむること勿(なか)れ、と云(い)へり。 29是(これ)イエズス惡鬼(あくき)に、此(この)人(ひと)より出(い)でよ、と命(めい)じ給(たま)へばなり。蓋(けだし)彼(かの)惡鬼(あくき)に執(とら)へらるる事(こと)既(すで)に久(ひさ)しく、鎖(くさり)にて縛(しば)られ、桎(あしかせ)にて護(まも)らるるも、繫(つなぎ)を破(やぶ)り、惡魔(あくま)に驅(か)られて、荒野(あれの)に往(ゆ)き居(ゐ)たりき。 30イエズス之(これ)に問(と)ひて、汝(なんぢ)の名(な)は何(なん)ぞ、と曰(のたま)ひしに彼(かれ)、軍團(ぐんだん)なり、と云(い)へり、其(そ)は之(これ)に入(い)りたる惡魔(あくま)多(おほ)ければなり。 31然(さ)てイエズスの命(めい)じて底(そこ)なき淵(ふち)に往(ゆ)かしめ給(たま)はざらん事(こと)を請(こ)ひたりしが、 32其處(そこ)に多(おほ)くの豚(ぶた)の群(むれ)、山(やま)にて草(くさ)を食(は)み居(ゐ)しかば、惡魔(あくま)等(ども)其(その)豚(ぶた)に入(い)るを允(ゆる)されん事(こと)を請(こ)ひけるに、イエズス之(これ)を允(ゆる)し給(たま)ひければ、 33惡魔(あくま)等(ども)其(その)人(ひと)より出(い)でて豚(ぶた)に入(い)り、其(その)群(むれ)周章(あはただ)しく崖(がけ)より湖(みづうみ)に飛入(とびい)りて溺死(おぼれし)せり。 34牧者(ぼくしや)等(ども)其(その)成行(なりゆき)を見(み)るや迯(にげ)往(ゆ)きて、町(まち)に村(むら)に吹聽(ふいちやう)せしかば、 35人々(ひとびと)事(こと)の樣(やう)を見(み)んとて出(い)でしが、イエズスの許(もと)に來(きた)り、彼(かの)惡魔(あくま)の出(い)でたりし人(ひと)の、既(すで)に衣服(いふく)を纏(まと)ひ心(こころ)確(たしか)にして、イエズスの足下(あしもと)に坐(ざ)せるを見(み)て怖(おそ)れたり。 36斯(かく)て見(み)し人々(ひとびと)も亦(また)、惡魔(あくま)憑(つき)の救(すく)はれし次第(しだい)を誰彼(たれかれ)に告(つ)げしかば、 37ゲラサ地方(ちはう)の人民(じんみん)擧(こぞ)りて、己(おのれ)等(ら)より立去(たちさ)り給(たま)はん事(こと)をイエズスに請(こ)へり、是(これ)大(おほ)いに怖(おそ)れたればなり。然(さ)てイエズス船(ふね)に乘(の)りて歸(かへ)り給(たま)ひしに、 38惡魔(あくま)の離(はな)れし男(をとこ)伴(ともな)はん事(こと)を願(ねが)ひしかど、イエズス之(これ)を去(さ)らして曰(のたま)ひけるは、 39己(おの)が家(いへ)に歸(かへ)りて、神(かみ)が如何(いかん)ばかり大(おほ)いなる事(こと)を汝(なんぢ)に爲(な)し給(たま)ひしかを告(つ)げよ、と。斯(か)くて彼(かれ)は普(あまね)く町(まち)を廻(めぐ)りて、イエズスの如何(いかん)ばかり大(おほ)いなる事(こと)を己(おのれ)に爲(な)し給(たま)ひしか言弘(いひひろ)めたり。 40イエズス歸(かへ)り給(たま)ひしに、人(ひと)皆(みな)待(まち)居(ゐ)たりければ、群衆(ぐんしゆう)之(これ)を歡迎(くわんげい)せり。 41折(をり)しも名(な)をヤイロと云(い)える人(ひと)來(きた)り、會堂(くわいどう)の司(つかさ)なりしが、イエズスの足下(あしもと)に平伏(ひれふ)して、己(おの)が家(いへ)に入(い)り給(たま)はん事(こと)を請(こ)へり、 42其(そ)は己(おのれ)に十二歲(さい)ばかりの獨(ひとり)女(むすめ)ありて、將(まさ)に死(し)なんとすればなり。イエズス往(ゆ)き給(たま)ふ途(みち)にて、群衆(ぐんしゆう)に押(おし)蹙(せま)られ給(たま)へる中(うち)に、 43十二年(ねん)來(らい)血漏(ちろう)を患(わづら)へる一人(ひとり)の女(をんな)、曾(かつ)て醫者(いしや)の爲(ため)に悉(ことごと)く其(その)財産(ざいさん)を費(つひや)したれども、誰(たれ)の手(て)にも醫(いや)され得(え)ざりしが、 44後(うしろ)より近(ちか)づきてイエズスの衣服(いふく)の總(ふさ)に觸(ふ)れしかば、其(そ)の出血(しゆつけつ)忽(たちまち)止(とま)れり。 45イエズス、我(われ)に觸(ふ)れし者(もの)は誰(たれ)ぞ、と曰(のたま)へば皆(みな)否(いな)めるを、ペトロ及(およ)び之(これ)に伴(ともな)ひたる人々(ひとびと)云(い)ひけるは、師(し)よ、群衆(ぐんしゆう)押(おし)蹙(せま)りて汝(なんぢ)を煩(わづら)はすに、猶(なほ)誰(たれ)か我(われ)に觸(ふ)れし、と曰(のたま)ふか。 46イエズス曰(のたま)ひけるは、我(われ)に觸(ふ)れし者(もの)あり、我(われ)靈(れい)能(のう)の我(わが)身(み)より出(い)でたるを覺(おぼ)ゆればなり、と。 47女(をんな)其(その)隱(かく)れざりしを見(み)て慄(をのの)きつつ、來(きた)りてイエズスの足下(あしもと)に平伏(ひれふ)し、其(その)觸(ふ)れし理由(りいう)と直(ただち)に痊(い)えたる次第(しだい)とを公衆(こうしゆう)の前(まへ)に明(あか)しければ、 48イエズス之(これ)に曰(のたま)ひけるは、女(むすめ)よ汝(なんぢ)の信仰(しんかう)汝(なんぢ)を救(すく)へり、安(やす)んじて往(ゆ)け、と。 49言(ことば)未(いまだ)了(をは)らざるに、人(ひと)會堂(くわいどう)の司(つかさ)の許(もと)に來(きた)り、汝(なんぢ)の女(むすめ)死(し)せり、師(し)を煩(わづら)わすこと勿(なか)れ、と云(い)ひしに、 50イエズス此(この)言(ことば)を聞(き)きて女(むすめ)の父(ちち)に答(こた)へ給(たま)ひけるは、懼(おそ)るること勿(なか)れ、唯(ただ)信(しん)ぜよ、然(さ)らば彼(かれ)助(たす)かるべし、と。 51斯(かく)て其(その)家(いへ)に至(いた)り給(たま)ひて、ペトロ、ヤコボ、ヨハネ及(およ)び女(むすめ)の父母(ちちはは)の外(ほか)、共(とも)に入(い)る事(こと)を誰(たれ)にも許(ゆる)し給(たま)はず、 52人(ひと)皆(みな)女(むすめ)の爲(ため)に泣(な)き且(かつ)歎(なげ)き居(を)れるを、泣(な)く勿(なか)れ、女(むすめ)は死(し)したるに非(あら)ず、寢(い)ねたるなり、と曰(のたま)ひしに、 53人々(ひとびと)は彼(かれ)の死(し)したるを知(し)りて、之(これ)を嘲笑(あざわら)ひ居(ゐ)たり。 54然(しか)るにイエズス、女(むすめ)の手(て)を取(と)り、呼(よば)はりて、女(むすめ)起(お)きよ、と曰(のたま)へば、 55其(その)靈(れい)還(かへ)りて女(むすめ)直(ただち)に起(お)きしかば、之(これ)に食物(しょくもつ)を與(あた)ふる事(こと)を命(めい)じ給(たま)へり。 56兩親(ふたおや)は甚(いた)く驚(おどろ)きしが、成(な)りし事(こと)を誰(たれ)にも語(かた)るな、とイエズス戒(いまし)め給(たま)へり。

第9章

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1斯(かく)て十二使徒(しと)を呼集(よびあつ)めて、諸(もろもろ)の惡魔(あくま)を逐(お)ひ病(やまひ)を醫(いや)す能力(のうりよく)と權利(けんり)とを授(さづ)け給(たま)ひ、 2神(かみ)の國(くに)の事(こと)を宣(の)べ、且(かつ)病者(びやうしや)を醫(いや)す爲(ため)に遣(つか)はさんとして、 3曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)途(みち)に在(あ)りて何(なに)物(もの)をも携(たづさ)ふること勿(なか)れ、杖(つゑ)、嚢(ふくろ)、麪(ぱん)、金(かね)、及(および)二枚(まい)の下衣(したぎ)を有(も)つこと勿(なか)れ。 4何(いづ)れの家(いへ)に入(い)るも是(これ)に留(とどま)りて、其處(そこ)より出去(いでさ)ること勿(なか)れ。 5總(すべ)て汝(なんぢ)等(ら)を承(う)けざる人(ひと)あらば、其(その)町(まち)を去(さ)り、彼等(かれら)に對(たい)する證據(しようこ)として、己(おの)が足(あし)の塵(ちり)までも拂(はら)え、と。 6斯(かく)て十二使徒(しと)出立(しゆつたつ)して村々(むらむら)を巡廻(じゆんくわい)し、到(いたる)處(ところ)に福音(ふくいん)を宣(の)べ、病者(びやうしや)を醫(いや)し居(ゐ)たり。 7時(とき)に分(ぶん)國(こく)の王(わう)ヘロデ、イエズスによりて行(おこな)はるる凡(すべ)ての事(こと)を聞(き)きて疑(うたがひ)惑(まど)へり。其(そ)は或(ある)人々(ひとびと)はヨハネ死者(ししや)の中(うち)より復活(ふくくわつ)したりと謂(い)ひ、 8或(ある)人々(ひとびと)はエリア現(あらは)れたりと謂(い)ひ、或(ある)人々(ひとびと)は古(いにしへ)の預言(よげん)者(しや)の一人(ひとり)復活(ふくくわつ)したりと謂(い)へばなり。 9斯(かく)てヘロデ云(い)ひけるは、ヨハネは我(われ)既(すで)に馘(くびき)りしものを、斯(かか)る事(こと)の聞(きこ)ゆる彼(かの)人(ひと)は誰(たれ)なるぞ、とてイエズスを見(み)ん事(こと)を求(もと)め居(ゐ)たり。 10使途(しと)等(たち)歸(かへ)りて、面々(めんめん)が行(おこな)ひし一切(いつさい)の事(こと)を告(つ)げければ、イエズス彼等(かれら)を從(したが)へて、別(べつ)にベッサイダ附近(ふきん)なる寂(さび)しき處(ところ)に退(しりぞ)き給(たま)ひしに、 11群衆(ぐんしゆう)之(これ)を知(し)りて其(その)跡(あと)を慕(した)ひしかば、イエズス之(これ)を接(う)けて神(かみ)の國(くに)の事(こと)を語(かた)り、治療(ちれう)を要(えう)する人(ひと)を醫(いや)し居(ゐ)給(たま)へり。 12日(ひ)既(すで)に昃(かたぶ)きしかば、十二[使徒(しと)]近(ちか)づきて云(い)ひけるは、我(われ)等(ら)は斯(かか)る寂(さび)しき處(ところ)に居(を)るなれば、群衆(ぐんしゆう)を解散(かいさん)して、周圍(めぐり)の村(むら)及(およ)び田家(ゐなかや)に宿(やど)らせ、且(かつ)は食物(しょくもつ)を索(もと)めしめ給(たま)へ、と。 13然(しか)るにイエズス彼等(かれら)に向(むか)ひ、汝(なんぢ)等(ら)之(これ)に食物(しょくもつ)を與(あた)へよ、と曰(のたま)ひしかば、彼等(かれら)云(い)ひけるは、我(われ)等(ら)の五(いつつ)の麪(ぱん)と二(ふたつ)の魚(さかな)とあるのみ。或(あるひ)は往(ゆ)きて此(この)凡(すべ)ての群衆(ぐんしゆう)の爲(ため)に食物(しょくもつ)を買(か)はんか、と。 14然(さ)て居合(ゐあは)せたる男子(だんし)五千人(にん)許(ばかり)なりしが、イエズス、人々(ひとびと)を五十人(にん)宛(づつ)、組々(くみぐみ)に坐(ざ)せしめよ、と弟子(でし)等(たち)に曰(のたま)ひければ、 15彼等(かれら)其(その)如(ごと)くにして、悉(ことごと)く坐(ざ)せしめたり。 16イエズス五(いつつ)の麪(ぱん)と二(ふたつ)の魚(さかな)とを取(と)り、天(てん)を仰(あふ)ぎて之(これ)を祝(しゆく)し、擘(さ)きて弟子(でし)等(たち)に分(わか)ち、群衆(ぐんしゆう)の前(まへ)に置(お)かしめ給(たま)ひしかば、 17皆(みな)食(しよく)して飽(あき)足(た)りしが、食(しよく)餘(あま)したる物(もの)を拾(ひろ)ひて屑(くず)十二筐(かご)ありき。 18イエズス獨(ひとり)祈(いの)り居(ゐ)給(たま)ひけるに、弟子(でし)等(たち)と共(とも)に居(を)りしが、問(と)ひて曰(のたま)ひけるは、群衆(ぐんしゆう)我(われ)を誰(たれ)と言(い)ふぞ、と。 19彼等(かれら)答(こた)へて云(い)ひけるは、人々(ひとびと)或(あるひ)は洗者(せんしや)ヨハネなりと謂(い)ひ、或(あるひ)はエリアなりと謂(い)ひ、或(あるひ)は古(いにしへ)の預言(よげん)者(しや)の一人(ひとり)の復活(ふくくわつ)したるなりと謂(い)ふ、と。 20イエズス彼等(かれら)に曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)は我(われ)を誰(たれ)と謂(い)ふか、と。シモン、ペトロ答(こた)へて、神(かみ)のキリストなり、と云(い)ひしかば、 21イエズス嚴(きび)しく彼等(かれら)を戒(いまし)め、誰(たれ)にも之(これ)を語(かた)らざる樣(やう)命(めい)じて、 22曰(のたま)ひけるは、人(ひと)の子(こ)は樣々(さまざま)に苦(くる)しめられ、且(かつ)長老(ちやうらう)、司祭(しさい)長(ちやう)、律法(りつぱふ)學士(がくし)等(ら)に排斥(はいせき)せられ、然(さ)て殺(ころ)され、而(しか)して三日(みつか)目(め)に復活(ふくくわつ)すべし、と。 23又(また)一同(いちどう)に對(むか)ひて曰(のたま)ひけるは、人(ひと)若(もし)わが後(あと)に來(きた)らんと欲(ほつ)せば、己(おのれ)を棄(す)て、日々(にちにち)己(おの)が十字架(じふじか)を取(と)りて我(われ)に從(したが)ふべし。 24其(そ)は己(おの)が生命(せいめい)を救(すく)はんと欲(ほつ)する人(ひと)は之(これ)を失(うしな)ひ、我(わが)爲(ため)に生命(せいめい)を失(うしな)ふ人(ひと)は之(これ)を救(すく)ふべければなり。 25卽(すなは)ち人(ひと)假令(たとひ)全(ぜん)世界(せかい)を贏(まう)くとも、若(もし)己(おのれ)を失(うしな)ひ己(おのれ)を害(がい)せば、何(なん)の益(えき)かあらん。 26蓋(けだし)我(われ)と我(わが)言(ことば)とを愧(は)づる人(ひと)をば、人(ひと)の子(こ)も亦(また)己(おのれ)と父(ちち)と聖(せい)使(し)等(たち)との威光(ゐくわう)を以(もつ)て來(きた)らん時(とき)彼(かれ)を愧(は)づべし。 27然(さ)れど我(われ)誠(まこと)に汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、此處(ここ)に立(た)てる者(もの)の中(うち)に、神(かみ)の國(くに)を見(み)るまで死(し)を味(あぢ)ははざらん人々(ひとびと)あり、と。 28是(これ)等(ら)の御言(おんことば)の後(のち)八日(やうか)ばかりを經(へ)て、イエズスペトロとヤコボとヨハネとを從(したが)へ、祈(いの)らんとて山(やま)に登(のぼ)り給(たま)ひしに、 29祈(いの)り給(たま)ふ間(あひだ)に、御顏(おんかほ)の容(かたち)變(かは)り、衣服(いふく)は白(しろ)くなりて輝(かがや)けり。 30折(をり)しも二個(ふたり)の人(ひと)ありてイエズスと共(とも)に語(かた)り居(を)りしが、是(これ)モイゼとエリアとにして、 31威光(ゐくわう)を帶(お)びて現(あらは)れつつ、イエズスが將(まさ)にエルザレムに於(おい)て遂(と)げんとし給(たま)ふ逝去(せいきよ)の事(こと)を語(かた)り居(を)れり。 32ペトロ及(およ)び共(とも)に居(を)る人々(ひとびと)、耐(た)へずして眠(ねむ)りたりしに、其(その)覺(さ)むるや、イエズスの榮光(えいくわう)と、共(とも)に立(た)てる二人(ふたり)とを見(み)たり。 33然(さ)て其(その)二人(ふたり)イエズスを離(はな)れければ、ペトロ言(い)ふ所(ところ)を知(し)らずして、イエズスに云(い)ひけるは、師(し)よ、善(よい)哉(かな)我(われ)等(ら)が此處(ここ)に居(を)る事(こと)、我(われ)等(ら)三(みつ)の廬(いほり)を造(つく)り、一(ひとつ)は汝(なんぢ)の爲(ため)、一(ひとつ)はモイゼの爲(ため)、一(ひとつ)はエリアの爲(ため)にせん、と。 34斯(か)く語(かた)り居(を)る程(ほど)に、一叢(ひとむら)の雲(くも)起(おこ)りて彼等(かれら)を覆(おほ)ひしかば、弟子(でし)等(たち)雲(くも)に入(い)る時(とき)懼(おそれ)を懷(いだ)けり。 35斯(かく)て聲(こゑ)雲(くも)の中(うち)より響(ひび)きて曰(いは)く、「是(これ)ぞ我(わが)愛子(あいし)なる、之(これ)に聽(き)け」と。 36此(この)聲(こゑ)の響(ひび)ける時(とき)、唯(ただ)イエズス獨(ひとり)のみ見(み)え給(たま)ひしが、弟子(でし)等(たち)は默(もく)して、其(その)見(み)たりし事(こと)を當時(そのころ)誰(たれ)にも語(かた)らざりき。 37翌日(よくじつ)彼等(かれら)山(やま)を下(くだ)る時(とき)、群衆(ぐんしゆう)夥(おびただ)しく來(きたり)迎(むか)へしが、 38折(をり)しも一個(ひとり)の人(ひと)、群衆(ぐんしゆう)の中(うち)より呼(よば)はりて云(い)ひけるは、師(し)よ、希(こいねがわ)くは我(わが)子(こ)を眷(かへり)み給(たま)へ、其(そ)は我(われ)獨子(ひとりご)なるものを、 39あはれや惡鬼(あくき)之(これ)に憑(つ)けば、俄(にはか)に叫(さけ)びて投(なげ)倒(たふ)し、且(かつ)泡(あわ)吹(ふ)かせ*攣(ひきつけ)させ、碎(くだ)くるばかりにして漸(やうや)くに立去(たちさ)る。 40我(われ)汝(なんぢ)の弟子(でし)等(たち)に、之(これ)を逐拂(おひはら)ふ事(こと)を請(こ)ひしかど、能(あた)はざりき。 41イエズス答(こた)えて曰(のたま)ひけるは、吁(あ)嗟(あ)信仰(しんかう)なき邪(よこしま)の代(だい)なる哉(かな)、我(われ)何時(いつ)まで汝(なんぢ)等(ら)と共(とも)に居(を)りて汝(なんぢ)等(ら)を忍(しの)ばんや。其(その)子(こ)を此處(ここ)に連(つれ)來(きた)れ、と。 42斯(かく)て彼(かれ)近(ちか)づきけるに、惡魔(あくま)之(これ)を倒(たふ)して*攣(ひきつけ)させしかば、 43イエズス汚鬼(をき)を叱(しか)り、子(こ)を醫(いや)して其(その)父(ちち)に還(かへ)し給(たま)へり。 44是(ここ)に於(おい)て人(ひと)皆(みな)神(かみ)の大能(たいのう)に驚(おどろ)き、イエズスの爲(な)し給(たま)へる凡(すべ)ての事(こと)を感嘆(かんたん)しければ、イエズス弟子(でし)等(たち)に向(むか)ひ、汝(なんぢ)等(ら)此(この)言(ことば)を耳(みみ)に藏(をさ)めよ、蓋(けだし)人(ひと)の子(こ)は人々(ひとびと)の手(て)に付(わた)さるる事(こと)あらん、と曰(のたま)ひしが、 45彼等(かれら)此(この)言(ことば)を解(かい)せず、而(しか)も彼等(かれら)が曉(さと)らざらん爲(ため)に、之(これ)に對(たい)して隱(かく)されしかば、此(この)言(ことば)に就(つ)きてイエズスに問(と)ふ[事(こと)を畏(おそ)れ居(ゐ)たり。 46爰(ここ)に、己(おのれ)等(ら)の孰(いづれ)が最(もつとも)大(おほ)いなるか、との考(かんがへ)彼等(かれら)の中(うち)に起(おこ)りしかば、 47イエズス其(その)心(こころ)に慮(おもんぱか)る所(ところ)を見(み)貫(ぬ)き給(たま)ひ、一人(ひとり)の孩兒(をさなご)を取(と)りて己(おの)が側(かたはら)に立(た)たせ、 48彼等(かれら)に曰(のたま)ひけるは、誰(たれ)にてもあれ、我(わが)名(な)の爲(ため)に此(この)孩兒(をさなご)を承(う)くる人(ひと)は、我(われ)を承(う)くるなり、又(また)我(われ)を承(う)くる人(ひと)は、我(われ)を遣(つか)はし給(たま)ひしものを承(う)くるなり、卽(すなは)ち汝(なんぢ)等(ら)一同(いちどう)の中(うち)に於(おい)て最(もつとも)小(ちひさ)き者(もの)は、是(これ)最(もつとも)大(おほ)いなる者(もの)なり、と。 49ヨハネ答(こた)へて、師(し)よ、汝(なんぢ)の名(な)を以(もつ)て惡魔(あくま)を逐(おひ)拂(はら)う者(もの)あるを見(み)しが、我(われ)等(ら)と共(とも)に從(したが)はざる者(もの)なれば、我(われ)等(ら)之(これ)を禁(きん)じたり、と云(い)ひければ、 50イエズス之(これ)に曰(のたま)ひけるは、禁(きん)ずること勿(なか)れ、汝(なんぢ)等(ら)に反(はん)せざる人(ひと)は汝(なんぢ)等(ら)の爲(ため)にする者(もの)なればなり、と。 51イエズスが此(この)世(よ)より取(と)られ給(たま)ふべき日數(ひかず)滿(み)ちんとしければ、エルザレムに往(ゆ)くべく御顏(おんかほ)を堅(かた)め、 52先(まづ)數人(すにん)の使(つかひ)を遣(つか)はし給(たま)ひしかば、彼等(かれら)往(ゆ)きてイエズスの爲(ため)に準備(じゆんび)せんとて、サマリアの或(ある)町(まち)に入(い)りしかど、 53イエズスの御顏(おんかほ)エルザレムに向(むか)へるによりて、人々(ひとびと)之(これ)を承(う)けざりき。 54然(さ)ればヤコボとヨハネと二人(ふたり)の弟子(でし)之(これ)を見(み)て、主(しゆ)よ、我(われ)等(ら)今(いま)命(めい)じて天(てん)より火(ひ)を下(くだ)し、彼等(かれら)を燒(やき)亡(ほろ)ぼさしめば如何(いか)に、と云(い)ひければ、 55イエズス顧(かへり)みて、叱(しか)りて曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)は如何(いか)なる精神(せいしん)なるかを自(みづか)ら知(し)らざるなり、 56人(ひと)の子(こ)の來(きた)りしは、魂(たましひ)を亡(ほろ)ぼさん爲(ため)に非(あら)ず、之(これ)を救(すく)はんが爲(ため)なり、と。斯(かく)て一同(いちどう)他(た)の村(むら)に往(ゆ)けり。 57一行(いつこう)路(みち)を步(あゆ)める時(とき)、或(ある)人(ひと)イエズスに向(むか)ひ、何處(いづこ)にもあれ、往(ゆ)き給(たま)ふ處(ところ)に我(われ)は從(したが)はん、と云(い)ひしかば、 58イエズス之(これ)に曰(のたま)ひけるは、狐(きつね)は穴(あな)あり、空(そら)の鳥(とり)は巢(す)あり、然(さ)れど人(ひと)の子(こ)は枕(まくら)する處(ところ)なし、と。 59然(しか)るに又(また)一人(ひとり)に向(むか)ひて、我(われ)に從(したが)へ、と曰(のたま)ひしかば彼(かれ)、主(しゆ)よ、先(まづ)往(ゆ)きて父(ちち)を葬(はうむ)る事(こと)を我(われ)に允(ゆる)し給(たま)へと云(い)ひけるに、 60イエズス曰(のたま)ひけるは、死人(しにん)をして其(その)死人(しにん)を葬(はうむ)らしめ、汝(なんぢ)は往(ゆ)きて神(かみ)の國(くに)を告(つ)げよ、と。 61又(また)一人(ひとり)が云(い)ひけるは、主(しゆ)よ、我(われ)汝(なんぢ)に從(したが)はん、然(さ)れど先(まづ)我家(わがいへ)に在(あ)る物(もの)を處置(しよち)する事(こと)を允(ゆる)し給(たま)へ。 62イエズス曰(のたま)ひけるは、手(て)を犂(すき)に着(つ)けて尙(なほ)後(うしろ)を顧(かへり)みる人(ひと)は、神(かみ)の國(くに)に適(てき)せざる者(もの)なり、と。

第10章

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1其(その)後(のち)主(しゆ)又(また)七十二人(にん)を指名(しめい)して、己(おの)が至(いた)らんとする町々(まちまち)處々(ところどころ)に、先(まづ)二人(ふたり)づつ遣(つか)はさんとして、 2曰(のたま)ひけるは、收穫(かりいれ)は多(おほ)けれども働(はたら)く者(もの)は少(すくな)し、故(ゆゑ)に働(はたら)く者(もの)を其(その)收穫(かりいれ)に遣(つか)はさん事(こと)を、收穫(かりいれ)の主(しゆ)に願(ねが)へ。 3往(ゆ)け、我(わ)が汝(なんぢ)等(ら)を遣(つか)はすは、羔(こひつじ)を狼(おほかみ)の中(なか)に入(い)るるが如(ごと)し、 4汝(なんぢ)等(ら)、財布(さいふ)、旅(たび)嚢(ぶくろ)、履(はきもの)を携(たづさ)ふること勿(なか)れ、途中(とちゆう)にて誰(たれ)にも挨拶(あいさつ)を爲(な)すこと勿(なか)れ。 5何(いず)れの家(いへ)に入(い)るも、先(まづ)此(この)家(いへ)に平安(へいあん)あれかしと言(い)へ、 6若(も)し其處(そこ)に平安(へいあん)の子(こ)あらば、汝(なんぢ)等(ら)の祈(いの)る平安(へいあん)は其(その)上(うへ)に留(とどま)らん、然(しか)らずば汝(なんぢ)等(ら)の身(み)に歸(かへ)らん。 7同(おな)じ家(いへ)に留(とどま)りて、其(その)内(うち)に在(あり)合(あ)はする物(もの)を飲食(いんしよく)せよ、是(これ)働(はたら)く者(もの)は其(その)報(むくい)を受(う)くるに値(あたひ)すればなり。家(いへ)より家(いへ)に移(うつ)ること勿(なか)れ、 8又(また)何(いず)れの町(まち)に入(い)るとも、人々(ひとびと)汝(なんぢ)等(ら)を承(う)けなば、汝(なんぢ)等(ら)に供(きよう)せらるる物(もの)を食(しよく)し、 9其處(そこ)にある病人(びやうにん)を醫(いや)し、人々(ひとびと)に向(むか)ひて、神(かみ)の國(くに)は汝(なんぢ)等(ら)に近(ちか)づけり、と言(い)へ。 10何(いず)れの町(まち)に入(い)るとも、人々(ひとびと)汝(なんぢ)等(ら)を承(う)けずば、其(その)衢(ちまた)に出(い)でて斯(か)く云(い)へ、 11汝(なんぢ)等(ら)の町(まち)にて我(われ)等(ら)に附(つ)きし塵(ちり)までも、我(われ)等(ら)は汝(なんぢ)等(ら)に向(むか)ひて拂(はら)うぞ、然(さ)りながら神(かみ)の國(くに)の近(ちか)づきたるを知(し)れ、と。 12我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、彼(かの)日(ひ)には、ソドマはかの町(まち)よりも恕(ゆる)さるる事(こと)あらん。 13禍(わざはひ)なる哉(かな)汝(なんぢ)コロザイン、禍(わざはひ)なる哉(かな)汝(なんぢ)ベッサイダ、其(そ)は若(もし)汝(なんぢ)等(ら)の中(うち)に行(おこな)はれし奇蹟(きせき)、チロとシドンとの中(うち)に行(おこな)はれしならば、彼等(かれら)は早(はや)く改心(かいしん)して、荒(あら)き毛(け)衣(ごろも)を纏(まと)ひて灰(はひ)に坐(ざ)せしならん。 14然(さ)れば審判(しんぱん)に當(あた)りて、チロとシドンとは汝(なんぢ)等(ら)よりも恕(ゆる)さるる事(こと)あらん。 15又(また)カファルナウムよ、汝(なんぢ)も地獄(ぢごく)にまで沈(しづ)めらるべし、天(てん)にまでも上(あ)げられたるものを。 16抑(そもそも)汝(なんぢ)等(ら)に聽(き)く人(ひと)は我(われ)に聽(き)き、汝(なんぢ)等(ら)を輕(かろ)んずる人(ひと)は我(われ)を輕(かろ)んじ、我(われ)を輕(かろ)んずる人(ひと)は我(われ)を遣(つか)はし給(たま)ひしものを輕(かろ)んずるなり、と。 17斯(かく)て七十二人(にん)、喜(よろこ)びつつ歸(かへり)來(きた)り、主(しゆ)よ、汝(なんぢ)の名(な)に由(よ)りて、惡魔(あくま)すらも我(われ)等(ら)に歸服(きふく)す、と云(い)ひしかば、 18イエズス彼等(かれら)に曰(のたま)ひけるは、我(われ)サタンが電光(いなづま)の如(ごと)く天(てん)より落(お)つるを見(み)つつありき。 19看(み)よ我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に、蛇(へび)、蠍(さそり)、竝(ならび)に敵(てき)の一切(いつさい)の勢力(いきほひ)を蹂躙(ふみにじ)るべき權能(けんのう)を授(さづ)けたれば、汝(なんぢ)等(ら)を害(がい)する者(もの)はあらじ、 20然(さ)りながら、鬼神(きしん)の汝(なんぢ)等(ら)に服(ふく)するを喜(よろこ)ぶこと勿(なか)れ、寧(むしろ)汝(なんぢ)等(ら)の名(な)の天(てん)に錄(かきしる)されたるを喜(よろこ)べ、と。 21其(その)時(とき)イエズス、聖靈(せいれい)によりて喜悦(きえつ)して曰(のたま)ひけるは、天地(てんち)の主(しゆ)なる父(ちち)よ、我(われ)汝(なんぢ)を稱贊(しようさん)す、其(そ)は是(これ)等(ら)の事(こと)を學者(がくしや)、智者(ちしや)に隱(かく)して、小(ちひさ)き人々(ひとびと)に顯(あらは)し給(たま)ひたればなり。然(しか)り父(ちち)よ、斯(かく)の如(ごと)きは御意(みこころ)に適(かな)ひし故(ゆゑ)なり。 22一切(いつさい)の物(もの)は我(わが)父(ちち)より我(われ)に賜(たま)はりたり、父(ちち)の外(ほか)に、子(こ)の誰(たれ)なるかを知(し)る者(もの)なく、子(こ)及(およ)び子(こ)が肯(あへ)て示(しめ)したらん者(もの)の外(ほか)に、父(ちち)の誰(たれ)なるかを知(し)る者(もの)なし、と。 23斯(かく)て弟子(でし)等(たち)を顧(かへり)みて曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)の見(み)る所(ところ)を視(み)る目(め)は福(さいはひ)なる哉(かな)。 24蓋(けだし)我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、多(おほ)くの預言(よげん)者(しや)及(およ)び帝王(ていわう)は、汝(なんぢ)等(ら)の視(み)る所(ところ)を視(み)んと欲(ほつ)せしかど視(み)ることを得(え)ず、汝(なんぢ)等(ら)の聞(き)く所(ところ)を聞(き)かんと欲(ほつ)せしかど聞(き)くことを得(え)ざりき、と。 25折(をり)しも一人(ひとり)の律法(りつぱふ)學士(がくし)立上(たちあが)り、イエズスを試(こころ)みんとして云(い)ひけるは、師(し)よ、我(われ)何(なに)を爲(な)してか永遠(えいえん)の生命(せいめい)を得(う)べき。 26イエズス之(これ)に曰(のたま)ひけるは、律法(りつぱふ)に何(なん)と錄(かきしる)したるぞ、汝(なんぢ)其(そ)を何(なん)と讀(よ)むぞ、と。 27彼(かれ)答(こた)へて、汝(なんぢ)の心(こころ)を盡(つく)し、魂(たましひ)を盡(つく)し、力(ちから)を盡(つく)し、精神(せいしん)を盡(つく)して汝(なんぢ)の神(かみ)たる主(しゆ)を愛(あい)し、又(また)汝(なんぢ)の近(ちか)き者(もの)を己(おのれ)の如(ごと)く愛(あい)すべし、と云(い)ひしに、 28汝(なんぢ)の答(こたへ)正(ただ)し、之(これ)を行(おこな)へ、然(しか)らば汝(なんぢ)活(い)くることを得(え)ん、と曰(のたま)へり。 29然(しか)るに彼(かれ)自(みづか)ら弁(べん)ぜんと欲(ほつ)してイエズスに向(むか)ひ、我(わが)近(ちか)き者(もの)とは誰(たれ)ぞ、と云(い)ひしかば、 30イエズス答(こた)へて、或(ある)人(ひと)エルザレムよりエリコに下(くだ)る時(とき)、强盜(がうとう)の手(て)に陷(おちい)りしが、彼等(かれら)之(これ)を剥(は)ぎて傷(きず)を負(お)はせ、半死(はんし)半生(はんしやよう)にして棄(すて)去(さ)れり。 31偶(たまたま)一人(ひとり)の司祭(しさい)、同(おな)じ道(みち)を下(くだ)れるに、之(これ)を見(み)て過(すぎ)行(ゆ)き、 32又(また)一人(ひとり)のレヴィ人(じん)も、其(その)所(ところ)に來合(きあは)せて之(これ)を見(み)しかど、同(おな)じ樣(やう)に過(すぎ)行(ゆ)けり。 33然(しか)るに一人(ひとり)のサマリア人(じん)、旅路(たびじ)を辿(たど)りつつ彼(かれ)の側(かたはら)に來(きた)りけるが、之(これ)を見(み)て憐(あはれ)を催(もよお)し、 34近(ちか)づきて油(あぶら)と葡萄(ぶだう)酒(しゆ)とを注(そそ)ぎ、其(その)傷(きず)を繃帶(ほうたい)して己(おの)が馬(うま)に乘(の)せ、宿(やど)に伴(ともな)ひて看護(かんご)せり。 35然(さ)て翌日(よくじつ)デナリオ銀貨(ぎんか)二枚(まい)を取(と)り出(いだ)して宿主(やどぬし)に豫(あた)へ、此(この)人(ひと)を看護(かんご)せよ、此(この)上(うへ)に費(つひや)したらん所(ところ)は、我(われ)歸(かへ)る時(とき)汝(なんぢ)に償(つぐの)ふべし、と云(い)へり。 36此(この)三人(にん)の中(うち)、彼(かの)强盜(がうとう)の手(て)に陷(おちい)りたる人(ひと)に近(ちか)かりしと汝(なんぢ)に見(み)ゆる者(もの)は孰(いづれ)ぞ、と曰(のたま)ひけるに、 37律法(りつぱふ)學士(がくし)、彼(かの)人(ひと)に憫(あはれみ)を加(くは)へたる者(もの)是(これ)なり、と云(い)ひしかばイエズス、汝(なんぢ)も往(ゆ)きて斯(かく)の如(ごと)くせよ、と曰(のたま)へり。 38斯(かく)て皆(みな)往(ゆ)きけるに、イエズス或(ある)村(むら)に入(い)り給(たま)ひしを、マルタと名(なづ)くる女(をんな)自宅(じたく)にて接待(せつたい)せり。 39彼(かの)女(をんな)にマリアと名(なづ)くる姉妹(しまい)ありて、是(これ)も主(しゆ)の足下(あしもと)に坐(ざ)して御言(おんことば)を聽(き)き居(ゐ)たるに、 40マルタは饗應(もてなし)の忙(いそが)しさに取紛(とりまぎ)れたりしが、立(たち)止(とどま)りて云(い)ひけるは、主(しゆ)よ、我(わが)姉妹(しまい)の我(われ)一人(ひとり)を遺(のこ)して饗應(もてな)さしむるを意(い)とし給(たま)はざるか、然(さ)れば命(めい)じて我(われ)を助(たす)けしめ給(たま)へ、と。 41主(しゆ)答(こた)へて曰(のたま)ひけるは、マルタマルタ、汝(なんぢ)は樣々(さまざま)の事(こと)に就(つ)きて思(おもひ)煩(わづら)ひ心(こころ)を騷(さわ)がすれども、 42必要(ひつえう)なるは唯(ただ)一(ひとつ)、マリアは最良(さいりやう)の部分(ぶぶん)を選(えら)めり、之(これ)を奪(うば)はるまじきなり、と。

第11章

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1斯(かく)てイエズス、或(ある)處(ところ)にて祈(いの)り給(たま)へるに、其(その)終(をは)り給(たま)ふや、弟子(でし)の一人(ひとり)云(い)ひけるは、主(しゆ)よ、ヨハネも其(その)弟子(でし)に敎(をし)へし如(ごと)く、我(われ)等(ら)に祈(いの)る事(こと)を敎(をし)へ給(たま)へ、と。 2イエズス彼等(かれら)に曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)祈(いの)る時(とき)に斯(か)く言(い)へ、父(ちち)よ、願(ねが)はくは御名(みな)の聖(せい)とせられん事(こと)を、御國(みくに)の來(きた)らん事(こと)を、 3我(われ)等(ら)の日用(にちよう)の糧(かて)を、日々(ひび)我(われ)等(ら)に與(あた)へ給(たま)へ、 4我(われ)等(ら)も總(すべ)て己(おのれ)に負債(おひめ)ある人(ひと)を免(ゆる)すに由(よ)り、我(われ)等(ら)の罪(つみ)を免(ゆる)し給(たま)へ、我(われ)等(ら)を試(こころみ)に引(ひ)き給(たま)ふこと勿(なか)れ、と。 5又(また)曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)の中(うち)友(とも)を有(も)てる者(もの)、夜中(よなか)に其(その)許(もと)に往(ゆ)き、友(とも)よ、我(われ)に三(みつ)の麪(ぱん)を貸(か)せ、 6我(わが)一個(ひとり)の友人(いうじん)旅路(たびじ)を我(わが)許(もと)に來(きた)れるに、之(これ)に供(きよう)すべき物(もの)なければ、と言(い)はんに、 7彼(かれ)内(うち)より答(こた)へて、我(われ)を煩(わづら)はすこと勿(なか)れ、戶(と)は既(すで)に閉(と)ぢ、我(わが)子等(こども)我(われ)と共(とも)に床(とこ)に在(あ)れば、起(お)きて汝(なんぢ)に與(あた)ふることを得(え)ず、と言(い)ふ事(こと)あらんか、 8然(さ)るを猶(なほ)叩(たた)きて止(や)まざる時(とき)は、我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、彼(かの)人(ひと)假令(たとひ)己(おの)が友(とも)なればとては起(お)きて與(あた)へざるも、其(その)煩(わづら)はしさの爲(ため)に起(お)きて、其(そ)の要(えう)する程(ほど)の物(もの)を與(あた)ふるならん。 9我(われ)も汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、願(ねが)へ、然(さ)らば與(あた)へられん、探(さが)せ、然(さ)らば見出(みいだ)さん、叩(たた)け、然(さ)らば[戶(と)を]開(ひら)かれん、 10其(そ)は總(すべ)て願(ねが)ふ人(ひと)は受(う)け、探(さが)す人(ひと)は見出(みいだ)し、叩(たた)く人(ひと)は[戶(と)を]開(ひら)かるべければなり。 11汝(なんぢ)等(ら)の中(うち)誰(たれ)か父(ちち)に麪(ぱん)を乞(こ)はんに其(その)父(ちち)石(いし)を與(あた)へんや、或(あるひ)は魚(さかな)を[乞(こ)はんに]其(その)代(かはり)に蛇(へび)を與(あた)へんや、 12或(あるひ)は卵(たまご)を乞(こ)はんに蠍(さそり)を與(あた)へんや、 13然(さ)れば汝(なんぢ)等(ら)惡(あし)き者(もの)ながらも、善(よ)き賜(たまもの)を其(その)子(こ)等(ども)に與(あた)ふるを知(し)れば、况(いはん)や天(てん)に在(ましま)す汝(なんぢ)等(ら)の父(ちち)は、己(おのれ)に願(ねが)ふ人々(ひとびと)に善良(ぜんりやう)なる靈(れい)を賜(たま)ふべきをや、と。 14イエズス惡魔(あくま)を逐出(おひいだ)し給(たま)ふに、其(その)人(ひと)唖(おし)なりしが、既(すで)に惡魔(あくま)を逐出(おひいだ)し給(たま)ふや唖(おし)言(ものい)ひしかば、群衆(ぐんしゆう)感嘆(かんたん)せり。 15然(さ)れど其(その)中(うち)の或(ある)人々(ひとびと)は、彼(かれ)が惡魔(あくま)を逐出(おひいだ)すは惡魔(あくま)の長(かしら)ベエルゼブブに依(よ)るなり、と謂(い)ひ、 16又(また)他(た)の人(ひと)は、イエズスを試(こころ)みんとて、天(てん)よりの徵(しるし)を之(これ)に求(もと)め居(ゐ)たり。 17イエズス其(その)心(こころ)を見拔(みぬ)きて彼等(かれら)に曰(のたま)ひけるは、總(すべ)て自(みづか)ら分(わか)れ爭(あらそ)ふ國(くに)は亡(ほろ)び、[分(わか)れ爭(あらそ)ふ]家(いへ)と家(いへ)とも亦(また)倒(たふ)るべし、 18サタン若(もし)自(みづか)ら分(わか)れ爭(あらそ)はば、其(その)國(くに)如何(いか)にしてか立(た)つべき、蓋(けだし)汝(なんぢ)等(ら)は謂(い)ふ、我(われ)ベエルゼブブに由(よ)りて惡魔(あくま)を逐出(おひいだ)すと。 19我(われ)若(もし)ベエルゼブブに由(よ)りて惡魔(あくま)を逐出(おひいだ)すならば、汝(なんぢ)等(ら)の子等(こども)は誰(たれ)に由(よ)りて之(これ)を逐出(おひいだ)すぞ、然(さ)らば彼等(かれら)は汝(なんぢ)等(ら)の審判(しんぱん)者(しや)となるべし。 20然(さ)れど我(われ)若(もし)神(かみ)の指(ゆび)を以(もつ)て惡魔(あくま)を逐出(おひいだ)すならば、神(かみ)の國(くに)は眞(まこと)に汝(なんぢ)等(ら)に來(きた)れるなり。 21强(つよ)き者(もの)武裝(ぶさう)して其(その)住所(すみか)を守(まも)る時(とき)は、其(その)有(も)てる物(もの)安全(あんぜん)なりと雖(いへども)、 22若(もし)彼(かれ)より强(つよ)き者(もの)襲(おそひ)來(きた)りて彼(かれ)に勝(か)たば、悉(ことごと)く其(その)恃(たの)める武器(ぶき)を奪(うば)ひて、其(その)捕獲物(ぶんどりもの)を分(わか)たん。 23我(われ)と共(とも)に在(あ)らざる人(ひと)は我(われ)に反(はん)し、我(われ)と共(とも)に集(あつ)めざる人(ひと)は散(ち)らすなり。 24汚鬼(をき)人(ひと)より出(い)でし時(とき)、荒(あ)れたる處(ところ)を巡(めぐ)りて安息(やすみ)を求(もと)むれども得(え)ず、曰(いは)く、出(い)でし我家(わがいへ)に歸(かへ)らん、と。 25卽(すなは)ち來(きた)りて其(その)家(いへ)の掃(はき)清(きよ)められ飾(かざ)られたるを見(み)るや、 26往(ゆ)きて己(おのれ)よりも惡(あし)き七(ななつ)の惡鬼(あくき)を携(たづさ)へ、共(とも)に入(い)りて此處(ここ)に住(す)む、斯(かく)て其(その)人(ひと)の末(すゑ)は前(まへ)よりも更(さら)に惡(あし)くなるなり、と。 27此(この)事(こと)等(ども)の事(こと)を曰(のたま)へるに、或(ある)女(をんな)群衆(ぐんしゆう)の中(うち)より聲(こゑ)を揚(あ)げて、福(さいはひ)なる哉(かな)汝(なんぢ)を孕(やど)しし胎(たい)よ、汝(なんぢ)の吮(す)ひし乳房(ちぶさ)よ、と云(い)ひしかば、 28イエズス曰(のたま)ひけるは、寧(むし)ろ福(さいはひ)なる哉(かな)、神(かみ)の言(ことば)を聽(き)きて之(これ)を守(まも)る人々(ひとびと)よ、と。 29然(さ)て群衆(ぐんしゆう)馳(はせ)集(あつま)りければ、イエズス語(かたり)出(い)で給(たま)ひけるは、現代(げんだい)は邪惡(じやあく)の代(よ)にして、徵(しるし)を求(もと)むれども、預言(よげん)者(しや)ヨナの徵(しるし)の外(ほか)は徵(しるし)を與(あた)へられじ、 30卽(すなは)ちヨナがニニヴ人(じん)に徵(しるし)となりし如(ごと)く、人(ひと)の子(こ)の現代(げんだい)に於(おけ)るも亦(また)然(しか)り。 31南方(なんぽう)の女王(によわう)は、審判(しんぱん)に當(あた)りて、現代(げんだい)の人(ひと)と共(とも)に立(た)ちて之(これ)を罪(つみ)に定(さだ)めん、彼(かれ)は地(ち)の極(はて)より、サロモンの智惠(ちゑ)を聽(き)かんとて來(きた)りたればなり、看(み)よ、サロモンに優(まさ)れるもの茲(ここ)に在(あ)り。 32ニニヴ人(ひと)は審判(しんぱん)に當(あた)りて現代(げんだい)の人(ひと)と共(とも)に立(た)ちて之(これ)を罪(つみ)に定(さだ)めん、彼等(かれら)はヨナの說敎(せつけう)によりて改心(かいしん)したればなり、看(み)よ、ヨナに優(まさ)れるもの茲(ここ)に在(あ)り。 33燈(ともしび)を點(とも)して、隱(かく)れたる處(ところ)又(また)は桝(ます)の下(した)に置(お)く者(もの)はあらず、入來(いりく)る人(ひと)に明(あかり)を見(み)せん爲(ため)に之(これ)を燭臺(しよくだい)の上(うへ)に置(お)く。 34汝(なんぢ)の身(み)の燈(ともしび)は目(め)なり、其(その)目(め)にして善(よ)くば、全身(ぜんしん)明(あきら)かなるべく、若(もし)惡(あ)しくば其(その)身(み)も亦(また)暗(くら)かるべし。 35此(この)故(ゆゑ)に、汝(なんぢ)に在(あ)る明(あかり)の闇(やみ)にならざる樣(やう)心(こころ)せよ、 36汝(なんぢ)の全身(ぜんしん)明(あきら)かにして闇(やみ)の處(ところ)なくば、全體(ぜんたい)明(あきら)かにして輝(かがや)ける燈(ともしび)に照(て)らさるる如(ごと)くならん、と[語(かた)り給(たま)へり]。 37イエズス語(かた)り給(たま)へる中(うち)に、一人(ひとり)のファリザイ人(じん)、己(おの)が家(いへ)にて食(しよく)し給(たま)はんことを請(こ)ひしかば、入(い)りて食(しよく)に就(つ)き給(たま)ひしが、 38イエズス食前(しよくぜん)に身(み)を洗(あら)ひ給(たま)はざりしを、此(この)人(ひと)見(み)て訝(いぶか)りければ、 39主(しゆ)之(これ)に曰(のたま)ひけるは、偖(さて)も汝(なんぢ)等(ら)ファリザイ人(じん)は、杯(さかづき)と皿(さら)との外部(そと)を淨(きよ)むれど、汝(なんぢ)等(ら)の内部(うち)は盜(ぬすみ)と不義(ふぎ)とに滿(み)てり。 40愚(おろか)なる者(もの)等(ども)よ、外部(そと)を造(つく)り給(たま)ひし者(もの)は、亦(また)内部(うち)をも造(つく)り給(たま)ひしに非(あら)ずや。 41然(さ)りながら餘(あま)れる物(もの)を施(ほどこ)せ、然(しか)らば一切(いつさい)の物(もの)直(ただち)に汝(なんぢ)等(ら)の爲(ため)に淨(きよ)めらるべし。 42然(さ)れど禍(わざはひ)なる哉(かな)汝(なんぢ)等(ら)ファリザイ人(じん)、其(そ)は薄荷(はつか)、**(ヘンルド)、其他(そのほか)一切(いつさい)の野菜(やさい)の十分(ぶん)の一を納(おさ)むれど、義(ぎ)と神(かみ)を愛(あい)する事(こと)とを措(さしお)けばなり、是(これ)等(ら)を爲(な)してこそ彼等(かれら)をも怠(おこた)らざるべかりしなれ。 43禍(わざはひ)いなる哉(かな)汝(なんぢ)等(ら)ファリザイ人(じん)、其(そ)は會堂(くわいどう)にては上座(じやうざ)を、衢(ちまた)にては敬禮(けいれい)を好(この)めばなり。 44禍(わざはひ)なる哉(かな)汝(なんぢ)等(ら)、蓋(けだし)露(あらは)れざる墓(はか)に似(に)て、上(うへ)を步(あゆ)む人々(ひとびと)之(これ)を知(し)らざるなり、と。 45律法(りつぱふ)學士(がくし)の一人(ひとり)之(これ)に答(こた)へて、師(し)よ、斯(か)く言(い)ひては、我(われ)等(ら)にも侮辱(ぶじよく)を加(くは)ふるなり、と云(い)ひしかば、 46イエズス曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)も禍(わざはひ)なる哉(かな)律法(りつぱふ)學士(がくし)、其(そ)は人々(ひとびと)には擔(にな)ひ得(え)ざる荷(に)を負(お)はすれど、自(みづか)らは指(ゆび)一(ひとつ)だも其(その)荷(に)に觸(ふ)れざればなり。 47禍(わざはひ)なる哉(かな)汝(なんぢ)等(ら)、預言(よげん)者(しや)等(たち)の墓標(はかじるし)を建(た)つる者(もの)、之(これ)を殺(ころ)ししは汝(なんぢ)等(ら)の先祖(せんぞ)にして、 48汝(なんぢ)等(ら)自(みづか)ら其(その)先祖(せんぞ)の所爲(しわざ)に同意(どうい)する事(こと)を證(しよう)す、其(そ)は彼等(かれら)之(これ)を殺(ころ)したるに汝(なんぢ)等(ら)其(その)墓(はか)を建(た)つればなり。 49是(これ)によりて亦(また)神(かみ)の智惠(ちゑ)曰(のたま)はく、「我(われ)彼等(かれら)に預言(よげん)者(しや)及(およ)び使徒(しと)等(たち)を遣(つか)はさんに、彼等(かれら)は其(その)中(うち)の者(もの)を殺(ころ)し、又(また)は迫害(はくがい)せん」と。 50然(さ)れば世界(せかい)開闢(かいびやく)以來(いらい)、流(なが)されたる凡(すべ)ての預言(よげん)者(しや)の血(ち)、 51卽(すなは)ちアベルの血(ち)より祭壇(さいだん)と神殿(しんでん)との間(あひだ)に倒(たふ)れしザカリアの血(ち)に至(いた)るまで、現代(げんだい)は其(その)罪(つみ)を問(と)はれん、我(われ)誠(まこと)に汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、現代(げんだい)は斯(かく)の如(ごと)く罪(つみ)を問(と)はるべし。 52禍(わざはひ)いなる哉(かな)汝(なんぢ)等(ら)律法(りつぱふ)學士(がくし)、其(そ)は知識(ちしき)の鍵(かぎ)を奪(うばひ)取(と)りて、自(みづか)らも入(い)らず、入(い)らんとする人々(ひとびと)をも拒(こば)みたればなり、と。 53是(これ)等(ら)の事(こと)を曰(のたま)ふ中(うち)に、ファリザイ人(じん)、律法(りつぱふ)學士(がくし)等(ら)甚(はなはだ)しく憤(いきどほり)出(い)でて、樣々(さまざま)の事(こと)を以(もつ)て閉口(へいこう)せしめんとし、 54イエズスを訟(うつた)へんとして陰謀(いんぼう)を廻(めぐ)らし、其(その)口(くち)より何事(なにごと)をか捉(とら)へんとせり。

第12章

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1其(その)時(とき)夥(おびただ)しき群衆(ぐんしゆう)、周圍(めぐり)に立(た)ち居(ゐ)て踏(ふみ)合(あ)ふ計(ばかり)なるに、イエズス弟子(でし)等(たち)に語(かたり)出(い)で給(たま)ひけるは、ファリザイ人(じん)等(ら)の麪酵(ぱんだね)に用心(ようじん)せよ、是(これ)僞善(ぎぜん)なり。 2蔽(おほ)はれたる事(こと)に顯(あらは)れざるべきはなく、隱(かく)れたる事(こと)に知(し)れざるべきはなし、 3其(そ)は汝(なんぢ)等(ら)の暗黑(くらやみ)にて言(い)ひし事(こと)は光明(あかるみ)に言(い)はれ、室内(へや)にて囁(ささや)きし事(こと)は屋根(やね)にて宣(の)べらるべければなり。 4然(さ)れば我(われ)わが友(とも)たる汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、肉體(にくたい)を殺(ころ)して其(その)後(のち)に何(なに)をも爲(な)し得(え)ざる者(もの)を懼(おそ)るること勿(なか)れ。 5爰(ここ)に汝(なんぢ)等(ら)の懼(おそ)るべき者(もの)を示(しめ)さん、卽(すなは)ち殺(ころ)したる後(のち)地獄(ぢごく)に投入(なげい)るる權能(けんのう)ある者(もの)を懼(おそ)れよ、然(しか)り、我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、之(これ)を懼(おそ)れよ。 6五羽(は)の雀(すずめ)は四(し)錢(せん)にて賣(う)るに非(あら)ずや、然(しか)るに其(その)一(いち)羽(は)も、神(かみ)の御前(みまへ)に忘(わす)れらるる事(こと)なし。 7汝(なんぢ)等(ら)の髮(かみの)毛(け)すら皆(みな)算(かぞ)へられたり、故(ゆゑ)に懼(おそ)るること勿(なか)れ、汝(なんぢ)等(ら)は多(おほ)くの雀(すずめ)に優(まさ)れり。 8我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、總(すべ)て人々(ひとびと)の前(まへ)にて我(われ)を宣言(せんげん)する者(もの)は、人(ひと)の子(こ)も亦(また)神(かみ)の使(つかひ)等(たち)の前(まへ)にて之(これ)を宣言(せんげん)せん。 9然(さ)れど人々(ひとびと)の前(まへ)にて我(われ)を否(いな)む者(もの)は、神(かみ)の使(つかひ)等(たち)の前(まへ)にて否(いな)まるべし。 10又(また)總(すべ)て人(ひと)の子(こ)を譏(そし)る人(ひと)は赦(ゆる)されん、然(さ)れど聖靈(せいれい)に對(たい)して冒涜(ばうとく)したる人(ひと)は赦(ゆる)されじ。 11人々(ひとびと)汝(なんぢ)等(ら)を會堂(くわいどう)に、或(あるひ)は官吏(くわんり)、權力(けんりよく)者(しや)の前(まへ)に引(ひ)かん時(とき)、如何(いか)に又(また)は何(なに)を答(こた)へ、又(また)は何(なに)を言(い)はんかと思(おもひ)煩(わづら)ふこと勿(なか)れ、 12言(い)ふべき事(こと)は、其(その)時(とき)に當(あた)りて、聖靈(せいれい)汝(なんぢ)等(ら)に敎(をし)へ給(たま)ふべければなり、と。 13斯(かく)て群衆(ぐんしゆう)の中(うち)より、或(ある)人(ひと)イエズスに向(むか)ひ、師(し)よ、我(わが)兄弟(きやうだい)に命(めい)じて、家督(かとく)を我(われ)と共(とも)に分(わか)たしめ給(たま)へ、と云(い)ひしかば、 14イエズス之(これ)に曰(のたま)ひけるは、人(ひと)よ、汝(なんぢ)等(ら)の上(うへ)の判事(はんじ)又(また)は分配(ぶんぱい)者(しや)として、誰(たれ)か我(われ)を定(さだ)めしぞ、と。 15斯(かく)て人々(ひとびと)に曰(のたま)ひけるは、愼(つつし)みて凡(すべ)ての貪欲(どんよく)に用心(ようじん)せよ、其(そ)は人(ひと)の生命(せいめい)は所有物(もちもの)の豐(ゆたか)なるに因(よ)らざればなり、と。 16又(また)彼等(かれら)に喩(たとへ)を語(かた)りて曰(のたま)ひけるは、或(ある)富者(ふしや)の畑(はた)豐(ゆた)かに實(みの)りければ、 17其(その)人(ひと)心(こころ)の中(うち)に考(かんが)へけるは、我(われ)産物(さんぶつ)を積(つ)むべき處(ところ)なきを如何(いか)にせんと。 18遂(つい)に謂(い)へらく、我(われ)は斯(かく)爲(す)べし、卽(すなは)ち我(わが)倉(くら)を毀(こぼ)ち、更(さら)に大(おほ)いなる物(もの)を建(た)てて、其處(そこ)に我(わが)産物(さんぶつ)と財貨(ざいうわ)とを積(つ)まん、 19而(しか)して我(わが)魂(たましひ)に向(むか)ひ、魂(たましひ)よ、多年(たねん)の用意(ようい)に蓄(たくは)へたる財産(ざいさん)數多(あまた)あれば、心(こころ)を安(やす)んじ、飲食(いんしよく)して樂(たの)しめ、と言(い)はん、と。 20然(さ)れど神(かみ)は彼(かれ)に曰(のたま)はく、愚者(おろかもの)よ、汝(なんぢ)の魂(たましひ)は今夜(こんや)呼(よび)還(かへ)されんとす、然(さ)らば備(そな)へたる物(もの)は誰(たれ)が物(もの)と爲(な)るべきぞ、と。 21己(おのれ)の爲(ため)に寳(たから)を積(つ)みて、神(かみ)の御前(みまへ)に富(と)まざる人(ひと)は斯(かく)の如(ごと)き者(もの)なり、と。 22又(また)弟子(でし)等(たち)に曰(のたま)ひけるは、然(さ)れば我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、生命(いのち)の爲(ため)に何(なに)をか食(く)ひ身(み)の爲(ため)に何(なに)をか着(き)ん、と思(おもひ)煩(わづら)ふこと勿(なか)れ、 23生命(いのち)は食物(くひもの)に優(まさ)り、身(み)は衣服(いふく)に優(まさ)れり。 24烏(からす)を鑑(かんが)みよ、播(ま)く事(こと)なく刈(か)る事(こと)なく、倉(くら)をも納屋(なや)をも有(も)たざれども、神(かみ)は之(これ)を養(やしな)ひ給(たま)ふなり、汝(なんぢ)等(ら)烏(からす)に優(まさ)ること幾何(いくばく)ぞや。 25汝(なんぢ)等(ら)の中(うち)誰(たれ)か工夫(くふう)して己(おの)が壽命(じゆみやう)に一(いつ)肘(ちう)だも加(くは)ふることを得(え)んや、 26然(さ)れば斯(か)く最(いと)小(ちひさ)き事(こと)すらも能(あた)はざるに、何(なん)ぞ其他(そのた)の事(こと)を思(おもひ)煩(わづら)ふや。 27百合(ゆり)の如何(いか)に長(そだ)つかを鑑(かんが)みよ。働(はたら)く事(こと)なく紡(つむ)ぐ事(こと)なし、然(さ)れども我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に言(い)う、サロモンだも其(その)榮華(えいぐわ)の極(きはみ)に於(おい)て、彼(かの)百合(ゆり)の一(ひとつ)ほどに粧(よそほ)はざりき。 28今日(けふ)野(の)に在(あ)りて明日(あす)爐(ろ)に投入(なげい)れらるる草(くさ)をさへ、神(かみ)は斯(か)く粧(よそほ)はせ給(たま)へば、况(いはん)や汝(なんぢ)等(ら)をや、信仰(しんかう)薄(うす)き者(もの)等(ども)哉(かな)。 29汝(なんぢ)等(ら)も、何(なに)をか食(く)ひ何(なに)をか飲(の)まんと求(もと)むること勿(なか)れ、又(また)大望(たいまう)を起(おこ)すこと勿(なか)れ、 30蓋(けだし)世(よ)の異邦(いはう)人(じん)は、此(この)一切(いつさい)の物(もの)を求(もと)むれども、汝(なんぢ)等(ら)の父(ちち)は汝(なんぢ)等(ら)の之(これ)を要(えう)することを知(し)り給(たま)へばなり。 31然(さ)れば先(まづ)神(かみ)の國(くに)と、其(その)義(ぎ)とを求(もと)めよ、然(さ)らば此(この)一切(いつさい)の物(もの)は汝(なんぢ)等(ら)に加(くは)へらるべし。 32小(ちひさ)き群(むれ)よ、懼(おそ)るること勿(なか)れ、汝(なんぢ)等(ら)に國(くに)を賜(たま)ふ事(こと)は、汝(なんぢ)等(ら)の父(ちち)の御意(みこころ)に適(かな)ひたればなり。 33汝(なんぢ)等(ら)の所有物(もちもの)を賣(う)りて施(ほどこし)を行(おこな)へ、己(おのれ)の爲(ため)に古(ふる)びざる金(かね)嚢(ぶくろ)を造(つく)り、匱(つ)きざる寳(たから)を天(てん)に蓄(たくは)へよ、彼處(かしこ)には盜人(ぬすびと)も近(ちか)づかず、蠹(しみ)も壞(そこな)はざるなり。 34是(これ)汝(なんぢ)等(ら)の寳(たから)の在(あ)る處(ところ)には、心(こころ)も亦(また)在(あ)るべければなり。 35汝(なんぢ)等(ら)腰(こし)に帶(おび)して手(て)に燈(ともしび)あるべし。 36又(また)恰(あたか)も、主人(しゆじん)婚莚(こんえん)より還(かへり)來(きた)りて門(もん)を叩(たた)かば直(ただち)に開(ひら)かん、と待(まち)受(う)くる人(ひと)の如(ごと)くに爲(せ)よ。 37主人(しゆじん)の來(きた)る時(とき)に醒(めさ)めたるを見(み)らるる僕(しもべ)等(ら)は福(さいはひ)なり、我(われ)誠(まこと)に汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、主人(しゆじん)自(みづか)ら帶(おび)して此(この)僕(しもべ)等(ら)を食(しよく)に就(つ)かせ、通(かよ)ひて彼等(かれら)に給仕(きふじ)せん。 38主人(しゆじん)十二時(じ)までに來(きた)るも三時(じ)までに來(きた)るも、僕(しもべ)等(ら)の斯(かく)の如(ごと)きを見(み)ば、彼等(かれら)は福(さいはひ)なり。 39汝(なんぢ)等(ら)知(し)るべし、家父(かふ)若(もし)盜人(ぬすびと)の來(きた)るべき時(とき)を知(し)らば必(かなら)ず警戒(けいかい)して其(その)家(いへ)を穿(うが)たしめじ。 40汝(なんぢ)等(ら)も亦(また)用意(ようい)してあれ、人(ひと)の子(こ)は汝(なんぢ)等(ら)の思(おも)はざる時(とき)に來(きた)るべければなり、と。 41ペトロ、イエズスに向(むか)ひ、主(しゆ)よ、此(この)喩(たとへ)を曰(のたま)ふは、我(われ)等(ら)の爲(ため)にか、凡(すべ)ての人(ひと)の爲(ため)にもか、と云(い)ひしかば、 42主(しゆ)曰(のたま)ひけるは、時(とき)に應(おう)じて家族(かぞく)に麥(むぎ)を程(ほど)よく分(わけ)與(あた)へしめんとて、戶主(こしゆ)が其(その)家族(かぞく)の上(うへ)に立(た)つる、忠義(ちゆうぎ)にして敏(さと)き執事(しつじ)は誰(たれ)なるか、 43主人(しゆじん)の來(きた)る時(とき)に斯(か)く行(おこな)へるを見(み)らるる僕(しもべ)は福(さいはひ)なり。 44我(われ)誠(まこと)に汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、主人(しゆじん)は己(おの)が有(も)てる一切(いつさい)の物(もの)を之(これ)に掌(つかさど)らしめん。 45もし彼(かの)僕(しもべ)心(こころ)の中(うち)に、我主(わがしゆ)人(ひと)の來(きた)る事(こと)遲(おそ)しと謂(い)ひて、下男(げなん)、下女(げぢよ)を打擲(うちたた)き、飲食(のみくひ)して醉(ゑひ)始(はじ)めんか、 46期(き)せざる日(ひ)、知(し)らざる時(とき)に、彼(かの)僕(しもべ)の主人(しゆじん)來(きた)りて之(これ)を罰(ばつ)し、其(その)報(むくい)を不忠(ふちゆう)者(もの)と同(おな)じくせん。 47又(また)其(その)主人(しゆじん)の意(い)を知(し)りて用意(ようい)せず、主人(しゆじん)の意(い)に從(したが)ひて行(おこな)はざる僕(しもべ)は、鞭(むちう)たるる事(こと)多(おほ)からん。 48然(しか)れども、知(し)らずして鞭(むちう)たるべき事(こと)を爲(な)したる者(もの)は、打(う)たるる事(こと)少(すくな)かるべし、總(すべ)て多(おほ)く與(あた)へられたる人(ひと)は多(おほ)く求(もと)められ、委托(いたく)したる事(こと)多(おほ)ければ催促(さいそく)する事(こと)も多(おほ)かるべし。 49我(われ)は地上(ちじやう)に火(ひ)を放(はな)たんとて來(きた)れり、其(その)燃(も)ゆる外(ほか)には何(なに)をか望(のぞ)まん。 50然(しか)るに我(われ)には我(わ)が受(う)くべき洗禮(せんれい)あり、其(そ)が爲遂(しと)げらるるまで、我(わ)が思(おもひ)逼(せま)れる事(こと)如何許(いかばかり)ぞや。 51汝(なんぢ)等(ら)は、我(われ)地上(ちじやう)に平和(へいわ)を持(もち)來(きた)れりと思(おも)ふか、我(われ)汝(なんぢ)等(ら)に告(つ)ぐ、否(いな)却(かへ)つて分離(ぶんり)なり。 52蓋(けだし)今(いま)より後(のち)、一家(いつか)に五人(にん)あらば、三人(にん)は二人(にん)に、二人(にん)は三人(にん)に對(たい)して分(わか)れん、 53卽(すなは)ち父(ちち)は子(こ)に、子(こ)は父(ちち)に、母(はは)は女(むすめ)に、女(むすめ)は母(はは)に、姑(しうとめ)は嫁(よめ)に、嫁(よめ)は姑(しうとめ)に對(たい)して分(わか)るる事(こと)あらん、と。 54イエズス又(また)群衆(ぐんしゆう)に曰(のたま)ひけるは、汝(なんぢ)等(ら)西(にし)より雲(くも)起(おこ)るを見(み)れば直(ただち)に雨(あめ)來(きた)らんと謂(い)ふ、既(すで)にして果(はた)して然(しか)り。 55又(また)南風(みなみかぜ)吹(ふ)くを見(み)れば暑(あつ)くなるべしと謂(い)ふ、既(すで)にして果(はた)して然(しか)り。 56僞善(ぎぜん)者(しや)よ、汝(なんぢ)等(ら)は天地(てんち)の有樣(ありさま)を見(み)分(わ)くる事(こと)を知(し)れるに、如何(いかん)ぞ今(いま)の時(とき)を見分(みわ)けざる、 57如何(いかん)ぞ義(ただ)しき事(こと)を自(みづか)ら見定(みさだ)めざる。 58汝(なんぢ)等(ら)敵手(あひて)と共(とも)に官吏(くわんり)の許(もと)に往(ゆ)く時(とき)、途中(とちう)にて彼(かれ)に赦(ゆる)されん事(こと)を力(つと)めよ。恐(おそ)らくは汝(なんぢ)を判事(はんじ)の許(もと)に引(ひ)き、判事(はんじ)は下役(したやく)に付(わた)し、下役(したやく)は監獄(かんごく)に入(い)れん、 59我(われ)汝(なんぢ)に告(つ)ぐ、最終(さいしゆう)の一厘(りん)までも還(かへ)さざる中(うち)は、汝(なんぢ)其處(そこ)を出(い)でざるべし、と。