マルコ聖福音書2 (ラゲ訳)

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<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

マルコ聖福音書2 第2篇

第11章[編集]

1一行いつかう橄欖かんらんざんもとにて、エルザレムとペッファゼとベタニアとにちかづけるとき、イエズス二人ふたり弟子でしつかはしたまふとて、 2これのたまひけるは、むかひむらけ、其處そこらば、ただちいまだひとらざる驢馬ろばつながれたるにはん、きてひききたれ。 3もしひとありて、なにすかとはば、しゆこれえうす、とへ、しからばただち此處ここつかはさん、と。 4弟子でしたちきて、門前もんぜんつじ驢馬ろばそとつながれたるにひて、これきけるに、 5其處そこてる人々ひとびとうちに、なんぢ驢馬ろばきてなんとかする、とものありければ、 6弟子でしたちイエズスのめいたまひしごとひしに、人々ひとびとこれゆるせり。 7かく驢馬ろばをイエズスのもとひききたり、おの衣服いふくそのうへけしかば、イエズスこれたまへり。 8おほくのひとおの衣服いふくみちき、ある人々ひとびとよりえだきりおとしてみちきたりしが、 9さきのちしたが人々ひとびとよばはりて、ホザンナ、 10しゆによりてきたれるものしゆくせられたまへ、われちちダヴィドのきたくにしゆくせられよ、いとたかところにホザンナ、とたり。 11イエズスエルザレムにり、[しん]殿でんいたりてあまね見廻みまはたまひしに、ときすで夕暮ゆふぐれなりしかば、十二にんともにベタニアにたまへり。 12翌日あくるひ一同いちどうベタニアをづるとき、イエズスたまひしが、 13はるかある無花果いちじくのて、これなにをかだすこともやと、其處そこいたたまひしに、そとなにをもだしたまはざりき。無花果いちじくときにあらざればなり。 14イエズスこれものいひて、いまよりのち何時いつまでもなんぢくらひとあらざれ、とのたまひしを弟子でしたちきたりき。 15一同いちどうエルザレムにいたり、イエズスしん[殿でん]にたまひて、殿内でんない売買うりかひする人々ひとびと逐出おひいだはじめ、兩替りやうがえつくゑ鴿はと人々ひとびとこしかけとをたふたまひ、 16うつはたづさへて[しん]殿でんとほこと何人なにびとにもゆるたまはず、 17彼等かれらをしへてのたまひけるは、かきしるして「我家わがいへ萬民ばんみんいのりいへとなへられん」とあるにあらずや、しかるになんぢこれ強盗がうとう巣窟そうくつせり、と。 18司祭しさいちやう律法りつぱふ學士がくしこれき、如何いかにしてかイエズスをほろぼさんとあひはかたり、群衆ぐんしゆうこぞりてそのをしへ感嘆かんたんするによりて、かれおそれたればなり。 19夕暮ゆふぐれにはイエズスまちよりたまひしが、 20あさ弟子でしたちとほりかかりて、かの無花果いちじくのよりれたるをしかば、 21ペトロおもひいだして、ラビたまへ、のろたまひし無花果いちじくのれたり、とひしに、 22イエズスこたへてのたまひけるは、かみ信仰しんかうせよ、 23われまことなんぢぐ、たれにてもあれこのやまむかひ、なんぢけてうみとうぜよとひて、そのこころ逡巡たじろがず、ところなににてもるべしとしんぜば、そのことかならずらん。 24ゆゑわれなんぢぐ、なんぢ何事なにごとをもいのりてもとむればことごとべしとしんぜよ、らばそのことかならずなんぢらん。 25またいのらんとてときひとたいしてうらみあらばこれゆるせ、これてんましまなんぢちちなんぢつみゆるたまはんためなり。 26なんぢもしゆるさずば、てんましまなんぢちちなんぢつみゆるたまはじ、と。 27一同いちどうふたたびエルザレムにいたりしが、イエズス[しん]殿でんうちあゆたまとき司祭しさいちやう律法りつぱふ學士がくし長老ちやうらうちかづきて、 28ひけるは、なんぢなんけんもつこれことすぞ、またこれことすべく、たれか、このけんなんぢさづけしぞ。 29イエズスこたへてのたまひけるは、われ一言いちごんなんぢはん、われこたへよ、らば、われなんけんもつこれことすかをげん。 30ヨハネの洗禮せんれいてんよりせしか、ひとよりせしか、われこたへよ、と。 31彼等かれらこころおもんぱかりけるは、てんよりとはんか、らばなんかれしんぜざりしとはれん、 32ひとよりとはんか、人民じんみんはばかところありと。みなヨハネをしん預言よげんしやみとめたればなり。 33かくてイエズスにこたへて、われこれらず、とひしかば、イエズスこたへて、われなんけんもつこのことどもすかをなんぢげず、とのたまへり。

第12章[編集]

1イエズス、たとへもつ彼等かれらかたりたまひけるは、あるひと葡萄ぶだうばたけつくりて、かきめぐらし、酒醡さかぶねり、物見ものみだいまうこれ小作こさくにんして遠方えんぱう旅立たびだちしが、 2季節きせついたり、小作こさくにんより葡萄ぶだうばたけ受取うけとらしめんとて、一人ひとりしもべ彼等かれらつかはししに、 3小作こさくにんこれとらへてち、空手からてにて逐歸おひかへせり。 4ふたたびしもべつかはししに、彼等かれらまたそのかうべきずつけ、おほいこれはづかしめたり。 5さらしもべつかはししに、彼等かれらこれをもころし、なほ其他そのた數人すうにんの[使つかひ]をも、あるひあるひころせり。 6ここなほ一人ひとり最愛さいあいありければ、彼等かれらわがをばうやまふならん、とて最後さいごこれをもつかはししに、 7小作こさくにんかたりひけるは、これ相続さうぞくにんなり、いざきたれかしかれころさん、しからば家督かとくわれものるべし、と。 8すなはとらへてこれころし、葡萄ぶだうばたけそとなげうてり。 9れば葡萄ぶだうばたけぬし如何いかこれ處分しよぶんせんか。かれまさきたりて、小作こさくにんうちほろぼし、葡萄ぶだうばたけ他人たにんかしあたふべし。 10なんぢいまだこの[せい]しよまざるか、すなはちいへつる人々ひとびとてしいしは、すみ首石おやいしられたり。 11しゆされしことにて、われには不思議ふしぎなり」とあるなり、と。 12司祭しさいちやう律法りつぱふ學士がくしは、イエズスがおのれしてこのたとへかたたまひしことさとりたれば、これとらへんとはかりたりしも、群衆ぐんしゆうおそれたり。かくつひかれきてりしが、 13言質ことばじりとらへんために、ファリザイじんとヘロデのともがらとのうちより、ある人々ひとびとをイエズスのもとつかはししに、彼等かれらいたりてこれひけるは、よ、なんぢ眞實しんじつにしてたれをもはばからざることはわれこれる、ひとおもてず、眞理しんりによりてかみみちをしたまへばなり。 14セザルにはぜいおさむべきか、またこれおさめざるべきか、と。 15イエズス彼等かれら狡猾かうくわつりて、なんぢなんわれこころむるや。デナリオをもちきたりてわれせよ、とのたまひしかば、 16彼等かれらこれもたらせり。のたまひけるは、このざうめいとはたれのなるぞ、と。彼等かれらセザルのなりとひしに、 17イエズスこたへて、らばセザルのものはセザルにかへし、かみものかみかへせ、とのたまひしかば、彼等かれらおほいにイエズスを感歎かんたんたり。 18復活ふくくわつなしと主張しゆちようせるサドカイじん、イエズスのもといたり、ひてひけるは、 19よ、モイゼのわれかきのこししところによれば、もしひと兄弟きやうだいしてつまあとのこし、のこさざるときは、その兄弟きやうだいかれつまめとりて兄弟きやうだいためぐべし、とあり。 20しかるに兄弟きやうだいにんありて、あにつまめとのこさずしてし、 21そのつぎものこれめとりてまたのこさずしてし、だい三のものまたかくごとくにして、 22にんおなやうこれめとりしかど、のこさず、最後さいごをんなまたせり。 23かく復活ふくくわつとき彼等かれら復活ふくくわつせば、かのをんなたれつまとなるべきか、は七にんみなこれめとりたればなり、と。 24イエズスこたへてのたまひけるは、なんぢ聖書せいしよをもかみ能力のうりよくをもらざるがゆゑあやまれるにあらずや。 25けだし死者ししやうちより復活ふくくわつしたらんときには、めとらずとつがずてんおけ天使等てんしたちごとし。 26なんぢ死者ししや復活ふくくわつすることきては、モイゼのしよちゆう荊棘いばらへんかみかれのたまひしところまざりしか、すなはちのたまへらく「われはアブラハムのかみ、イザアクのかみヤコブのかみなり」と、 27死者ししやかみにはあらず、生者せいしやかみにてまします。ればなんぢおほいにあやまれり、と。 28一人ひとり律法りつぱふ學士がくしは、サドカイじんろんへるをき、イエズスの彼等かれらこたたまひしをて、これちかづき、すべてのおきてうちだい一なるものはいづれぞ、とひしに、 29イエズスこたへてのたまひけるは、すべてのおきてうちだい一なるものはすなはち、「イスラエルよけ、しゆなるなんぢかみゆゐいつかみなり。 30なんぢこころつくし、たましひつくし、こころつくし、つくして能力のうりよくつくして、しゆなるなんぢかみあいすべし」と、これだい一のおきてなり。 31だい二もこれおなじく、「なんぢちかものおのれごとあいすべし」とこれなり。これよりおほいなるおきてことなし、と。 32律法りつぱふ學士がくしひけるは、し、よ、なんぢのたまへるところまことなり。かみゆゐいつにして、かれほかの[かみ]なし。 33またこころつくし、智恵ちゑつくし、たましひつくし、ちからつくしてこれあいすべし、またちかものおのれごとあいするは、すべての燔祭はんさいおよび犠牲ぎせいまされり、と。 34イエズスかれかしここたへしをて、なんぢかみくにとほからず、とのたまひしが、こののちあへてイエズスにものなかりき。 35イエズス[しん]殿でんおいをしへつつたまひしときこたへてのたまひけるは、律法りつぱふ學士がくし如何いかんぞキリストをダヴィドのなりとふや。 36けだしダヴィド聖霊せいれいによりてみづかいはく「しゆ我主わがしゆのたまへらく、われなんぢてきなんぢあしだいすまで、わがみぎせよ」と。 37くダヴィドみづからキリストをしゆとなふるに、これ如何いかにしてそのならんや、と。おびただしき群衆ぐんしゆうよろこびてこれけり。 38イエズスをしへきて人々ひとびとのたまひけるは、律法りつぱふ學士がくし用心ようじんせよ、彼等かれらながころもあることちまたにて敬禮けいれいせらるること39會堂くわいどうにて上座じやうざむること宴席えんせきにて上席じやうせきことこのみ、 40ながいのりかこつけて寡婦やもめいへ食盡くひつくすなり。彼等かれら一入ひとしおなが審判しんぱんくべし、と。 41イエズス、賽銭さいせんばこむかひして、群衆ぐんしゆうぜに投入なげいるるさまながたまへるに、富者ふしやおほくは多分たぶん投入なげいれたりしが、 42一人ひとりまづしき寡婦やもめきたりて、二ミスタすなはちさんりんばかりれしかば、 43イエズス弟子でしたち呼集よびあつめてのたまひけるは、われまことなんぢぐ、このまずしき寡婦やもめは、賽銭さいせんばこ投入なげいれたるすべてのひとよりもおほれたり。 44すべてのひとは、そのあまれるうちよりれしに、このをんなそのとぼしきうちより、すべてるものおの生計くらししろことごとれたればなり、と。

第13章[編集]

1イエズス[しん]殿でんたまふに、弟子でし一人ひとりよ、たまへ、このいし如何いかに、この構造こうざう如何いかに、とひしかば、 2イエズスこたへてのたまひけるは、この一切いつさいだい建築けんちくるか、ひとついしくずれずしていしうへのこされじ、と。 3イエズス橄欖かんらんざんおいて、[しん]殿でんむかひてたまへるに、ペトロヤコボヨハネアンデリアことこれひけるは、 4このことども何時いつあるべきぞ。しかしてことみなはたされめんときに、如何いかなるしるしあるべきぞ、われたまへ、と。 5イエズスこたへて彼等かれらのたまひけるは、なんぢひとまどはされじと注意ちゆういせよ。 6おほくのひとわがおかきたりて、われはキリストなりとひて、おほくのひとまどはすべければなり。 7なんぢ戰争いくさおよび戰争いくさうはさきておそるるなかれ、このことどもけだしるべし、れどをはりいまだいたらざるなり。 8すなはちたみたみに、くにくにたちさからひ、地震ぢしん飢饉ききん處々しよしよにあらん、これくるしみはじめなり。 9なんぢみづからかへりみよ、けだし人々ひとびとなんぢ衆議所しゆうぎしよわたし、なんぢしよ會堂くわいどうにてむちうたれ、わがため證據しようことして、総督そうとく王侯わうこうとのまへたんとす。 10福音ふくいんまづ萬民ばんみん宣傳のべつたへられるべし。 11人々ひとびとなんぢきてわたさんときなにはんかとあらかじめあんずることなかれ、ただそのときなんぢたまはらんことへ、ものなんぢあらずして聖霊せいれいなればなり。 12兄弟きやうだい兄弟きやうだいを、ちちわたし、子等こども兩親ふたおやたちさからひ、かつこれころさん。 13なんぢわがためすべてのひとにくまれん。れどをはりまで耐忍たへしのひとすくはるべし。 14なんぢいとにくむべき荒廃くわうはい」の、つべからざるところ厳然げんぜんたるをば、ひとさとるべし。ときユデアに人々ひとびとやまのがるべし、 15やねうへひといへうちくだり、いへよりなにものをか取出とりいださんとてうちるべからず。 16はたけひとその上衣うはぎらんとてかへるべからず。 17そのあたりて懐胎くわいたいせるひとちちのまするひとわざはひなるかな18このことふゆおこらざらんこといのれ。 19そのさいして、かみが[萬物ばんぶつを]創造さうざうたまひし開闢かいびやくはじめよりいまいたるまでかつらず、のちにもまたらざらんほどなやみあるべければなり。 20しゆもしそのちぢたまはずは、すくはるるひとなからん。れどことえらたまひし、えらまれたる人々ひとびとために、そのちぢたまへり。 21そのときなんぢむかひて、よキリスト此處ここり、彼處かしこり、とものありともこれしんずることなかれ。 22キリスト、預言よげんしやたちおこりて、あたふべくば、えらまれたる人々ひとびとをさへまどはさんとて、おほいなるしるし不思議ふしぎなるわざとをすべければなり。 23ればなんぢかへりみよ。われあらかじ一切いつさいなんぢげたるぞ。 24そのときかか患難くわんなんのちくらみ、つきそのひかりあたへず、 25そらほしち、てんおけ能力のうりよく動揺どうえうせん、 26そのとき人々ひとびとは、ひとおほいなる権力けんりよく榮光えいくわうとをもつて、くもきたるをん。 27ときかれその使つかひたちつかはし、はてよりてんはてまで、四方しほうよりそのえらまれたるひと蒐集かりあつめしめん。 28なんぢ無花果いちじくのよりたとへまなべ、そのえだすでやはらぎてしやうずれば、なつちかきをる。 29かくごとく、このことどもるをば、なんぢまたそのちかくしてかどいたれるをれ。 30われまことなんぢぐ、このことどもみなるまでは現代げんだいぎざらん。 31天地てんちぎん、れどわがことばぎざるべし。 32そのそのときをば、てんおけ天使等てんしたちも、も、何人なにびとらず、ただちちのみ[これたまふ]。 33なんぢ注意ちゆういし、警戒けいかいし、かつ祈祷きたうせよ、けだしとき何時いつなるかをらざればなり。 34あたかひとそのいへりて遠方えんぱう旅立たびだつにあたり、しもべめいじて、おのおのそのつとめわかて、門番もんばんには警戒けいかいすることめいじたるがごとし。 35ればなんぢ警戒けいかいせよ、いへあるじきたるは何時いつなるべきか、夕暮ゆふぐれなるか夜半よなかなるか、はたとりころなるかあさなるか、これらざればなり。 36おそらくは、かれにはかきたりてなんぢねたるをん。 37われなんぢところすべてのひとふ、警戒けいかいせよ[、とのたまへり]。

第14章[編集]

1過越すぎこし無酵たねなきぱんとのいはひ最早もはや二日ふつかのちにあるべければ、司祭しさいちやう律法りつぱふ學士がくし如何いかたばかりてかイエズスをとらかつころすべき、とあひはかりたりしが、 2祝日いはひびにはこれすべからず、おそらくは人民じんみんうち騒動さうどうおこらん」とたり。 3イエズスベタニアにりて、らい病者びやうしやシモンのいへにて食卓しよくたくたまへるに、一人ひとりをんなあたひたかナルドの香油かうゆりたるうつはちてきたり、そのうつはりてかれかうべそそぎしかば、 4ある人々ひとびとこころいきどほりて、なんため香油かうゆかくつひやしたるぞ、 5この香油かうゆは三百デナリオ以上いじやうりて、貧者ひんしやほどこたりしものを、とひて、身顫みぶるひしつつこのをんないかりたるに、 6イエズスのたまひけるは、このをんなさしおけ、なんこれわづらはすや。かれわれ善業ぜんげふししなり。 7貧者ひんしやつねなんぢうちれば、随時ずゐじこれめぐむことをべけれど、われつねなんぢうちらざればなり。 8このをんなは、そのちからかぎりして、はうむりためあらかじわがあぶらそそぎたるなり。 9われまことなんぢぐ、ぜん世界せかい何處いづくにもあれ、福音ふくいん宣傳のべつたへられんところには、このをんなししことその記念きねんとしてかたらるべし、と。 10ときに十二にん一人ひとりなるイスカリオテのユダ、イエズスを司祭しさいちやうらんとて、彼等かれらもといたりしが、 11彼等かれらこれきてよろこび、かねあたへんとやくせしかば、ユダ如何いかにしてをりくイエズスをわたさんかと、たくたり。 12かく無酵たねなきぱんいはひはじめすなはち過越すぎこし[のこひつじ]をほふ弟子でしたちイエズスにむかひ、われ何處いづこきて過越すぎこししよくなんぢためそなへんことほつたまふか、とひしかば、 13イエズス二人ふたり弟子でしつかはすとて、これのたまひけるは、まちけ、しからば水瓶みづがめかたにせるひとなんぢはん、そのあとしたがひてき、 14何處いづこにもあれ、かれいへあるじむかひてへ、いはく、弟子でしとも過越すぎこししよくすべきせき何處いづこなるぞ、と。 15らば、かれすでととのえたるおほいなる高間たかまなんぢしめさん、其處そこにてわれためそなへよ、と。 16弟子でしでてまちいたりしに、ところイエズスののたまひしごとくなりしかば、食事しよくじ準備じゆんびせり。 17夕暮ゆふぐれおよびて、イエズス十二にんともいたり、 18一同いちどうせききてしよくしつつあるに、イエズスのたまひけるは、われまことなんぢぐ、なんぢうち一人ひとりわれともしよくするもの、われわたさんとす、と。 19彼等かれらうれひて、おのおのわれなるかと云出いひいでしに、 20イエズス彼等かれらのたまひけるは、十二にん一人ひとりにして、われともはちくるもの、すなはちこれなり。 21そもそもひとは、おのれきてかきしるされたるごとくといへどもひとわたものわざはひなるかなこのひとうまれざりしならば、むしろそのりてかりしものを、と。 22弟子でしたちしよくするに、イエズスぱんり、しゆくしてこれき、彼等かれらあたへてのたまひけるは、れよなんぢこれわがからだなり、と。 23またさかづきり、しやして彼等かれらあたたまひ、みなこれもつみしが、 24イエズス彼等かれらのたまひけるは、これ衆人しゆうじんためながさるべき新約しんやくわがなり。 25われまことなんぢぐ、かみくににて、なんぢともあらたなるものをまんまでは、われいまよりまたこの葡萄ぶだうしるまじ、と。 26かく賛美歌さんびかとなをはり、彼等かれら橄欖かんらんざんいできしが、 27イエズスのたまひけるは、なんぢみな今夜こよひわれきてつまづかん、かきしるして「われ牧者ぼくしやたん、かくひつじらされん」とあればなり、 28れどわれ復活ふくくわつしたるのちなんぢさきだちてガリレアにかん、と。 29ペトロイエズスにむかひ、假令たとひみななんぢきてつまづくとも、われしからず、とへるを、 30イエズスのたまひけるは、われまことなんぢぐ、なんぢ今日けふ今夜こよひにわとり二次ふたたびまへに、かなら三次みたびわれいなまん、と。 31かれなほ言張いひはりて、假令たとひなんぢともすとも、われなんぢいなまじ、とひければ、一同いちどうまたひとしくたり。 32彼等かれらゲッセマニとへる田舎家いなかやいたるや、イエズス弟子でしたちむかひ、いのあひだなんぢ此處ここせよ、とのたまひて、 33ペトロとヤコボとヨハネとをしたがたまひしに、おそかつしのびがたくなりて、 34彼等かれらのたまひけるは、わがたましひぬばかりにうれふ。なんぢ此處こことどまりてめさめてれ、と。 35かくすこしくすすみて、平伏ひれふし、かなふべくばおのれよりこのときらんこといのたまひしが、 36またのたまひけるは、アバ、ちちよ、なんぢすべあたはざることなし、このさかづきわれよりらしめたまへ、れどおもところごとくにはあらで、思召おぼしめしままなれかし、と。 37かくきたたまひて、弟子でしたちねむれるを、ペトロにのたまひけるは、シモンなんぢねむれるか、われともに一時間じかんめさあたはざりしか。 38なんぢ誘惑いうわくらざらんためめさめていのれ、精神せいしんはやれども肉身にくしんよわし、と。 39またきて、おなことばもついのたまひしが、 40またかへりて弟子でしたちねむれるをたまへり。けだし彼等かれらつかれて、イエズスに如何いかこたふべきかをらざりしなり。 41たびきたりて彼等かれらのたまひけるは、いまはやねむりてやすめ、事足ことたりれり、とききたれり、いまひと罪人つみびとわたされんとす、 42きよ、われかん、すはわれわたさんとするものちかづけり、と。 43イエズスなほかたたまふに、十二にん一人ひとりなるイスカリオテのユダきたり、司祭しさいちやう律法りつぱふ學士がくし長老ちやうらうもとよりきたれるおびただしき群衆ぐんしゆうつるぎぼうなどをちてこれともなへり。 44イエズスをりたるものかつ彼等かれら合圖あひづあたへて、接吻せつぷんするところひとそれなり、とらへてしか引行ひきゆけ、とひいたりしが、 45きたりてただちにイエズスにちかづき、ラビやすかれ、とひて接吻せつぷんせしかば、 46彼等かれらイエズスにけて、これとらへたり。 47かたはらてるもの一人ひとりつるぎき、大司祭だいしさいしもべちてそのみみきりおとししが、 48イエズスこたへて群衆ぐんしゆうのたまひけるは、なんぢ強盗がうとうに[むかふ]ごとく、つるぎぼうとをちてわれとらへに出來いできたりしか、 49われ日々ひびに[しん]殿でんおいて、なんぢうちりてをしへたりしに、なんぢわれとらへざりき。ただしこれ[せい]しよ成就じやうじゆせんためなり、と。 50ときに、弟子でしたちかれきて、みなにげれり。 51一人ひとり青年せいねんはだひろぬのまとひたるままイエズスにしたがひたりしが、人々ひとびとこれをもとらへしかば、 52ひろぬのなげて、はだかにてのがれり。 53かく彼等かれら、イエズスを大司祭だいしさいもと引行ひきゆきしに、司祭しさい律法りつぱふ學士がくし長老ちやうらうみな此處ここあつまりしが、 54ペトロはるかにイエズスにしたがひて、大司祭だいしさい中庭なかにはまでもいりみ、しもべともしてあたれり。 55大司祭だいしさいおよび議會ぎくわいこぞりて、イエズスをわたさんとし、これ證據しようこもとむれども、ざりき。 56けだし數多あまたひとかれたいして僞證ぎしようすれども、その證據しようこ一致いつちせず、 57またあるものどもちてかれたいして僞證ぎしようし、 58かれにてつくれるこの[しん]殿でんこぼち、三日みつかうちべつにてつくらざるものをてんとへるを、われけり、とひしも、 59彼等かれら證言しようげん一致いつちせざりき。 60大司祭だいしさい眞中まんなか立上たちあがり、イエズスにひて、彼等かれらよりとがめらるるところたいして、なんぢ何事なにごとをもこたへざるか、とひたれど、 61イエズス黙然もくぜんとして、一言いちごんこたたまはず、大司祭だいしさいふたたびひて、なんぢしゆくすべきかみキリストなるか、とひしかば、 62イエズスこれのたまひけるは、しかり、しかしてなんぢひと全能ぜんのうましまかみみぎして、そらくもきたるをん、と。 63ここおい大司祭だいしさいおの衣服いふくき、われなんなほ證人しようにんもとめんや。 64なんぢ冒涜ばうとくことばけり。これ如何いかおもへるぞ、とひしに一同いちどう、イエズスのつみあたるとさだめたり。 65かくあるものはイエズスにつばきし、御顔みかほおほひ、預言よげんせよ、とひて、こぶしにてちなどしはじめ、しもべ平手ひらてにてこれたり。 66てペトロはしたなるにはりしが、大司祭だいしさい下女げぢよ一人ひとりきたりて、 67ペトロのあたれるをしかば、これ熟視みつめて、なんぢもナザレトのイエズスとともりき、とひたるに、 68かれいなみて、われらず、なんぢところせず、とひしが、やがにはまへいできしに、にはとりけり。 69またある下女げぢよかれて、かたはらてる人々ひとびとむかひ、このひと彼等かれらともがらなり、と云出いひいでけるを、 70ペトロまたいなめり。暫時しばらくありて、かたはらてる人々ひとびとまたペトロにむかひ、なんぢ彼等かれらともがらなり、ひとしくガリレアじんなれば、とひしかば、 71ペトロのろかつちかひでて、われなんぢへるかのひとらず、とひしが、 72たちまちにはとり二次ふたたびけり。かくてペトロ、にわとり二次ふたたびまへなんぢ三次みたびわれいなまん、とイエズスののたまひたりし御言おんことばおもひでて、なきいだせり。