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テサロニケ前書 (ラゲ訳)

提供:Wikisource

<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

テサロニケ前書

第1章

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1パウロ、シルヴァノおよびチモテオ、かみにてましまちちおよしゆイエズス、キリストにるテサロニケじん敎會けうくわいに[書簡しよかんおくる]。 2ねがはくは恩寵おんちよう平安へいあんとをなんぢたまはらんことを。われつねなんぢ一同いちどうためかみ感謝かんしやたてまつり、祈祷きたううちなんぢ記念きねんして、 3絕間たえまなくわがちちにてましまかみ御前みまへおいて、なんぢ信仰しんかうわざと、あい勞苦らうくと、我主わがしゆイエズス、キリストにおけ希望きぼう退轉たいてんなることとを記憶きおくす。 4かみあいせられたてまつ兄弟等きやうだいたちよ、われなんぢえらまれし次第しだいれり。 5すなはわれ福音ふくいんは、なんぢおいただことばのみにとどまらず、能力のうりよくおよ聖靈せいれいによりてまつた確信かくしんたりき、われなんぢうちりて、なんぢため如何いかなるものなりしかは、なんぢれるところごとし。 6なんぢまたおほいなる患難くわんなんりながら、聖靈せいれいよろこびもつことばけて、われしゆとをまなものり、 7マケドニア[しう]およびアカヤ[しう]におけ一切いつさい信者しんじや模範もはんたるにいたれり。 8けだししゆ御言おんことばは、なんぢよりしてマケドニアおよびアカヤにひびきしのみならず、かみおけなんぢ信仰しんかう[の風評ふうひやう]何處いづこにも行渡ゆきわたりたれば、われ何事なにごとをもふをえうせず、 9すなは彼等かれらみづか我々われわれことかたり、われなんぢうちりし次第しだいまたなんぢ偶像ぐうざうりてかみ歸依きえし、たまへるまことかみつかまつり、 10死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまひしその御子おんこすなはきたいかりよりわれすくたまひしイエズスの、てんよりくだたまふをてる次第しだい吹聽ふいちやうするなり。

第2章

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1兄弟等きやうだいたちよ、なんぢうちりしことむなしからざりしは、なんぢみづかこれれり。 2すなはなんぢれるごとく、われかつてフィリッピにおいくるしめられ、はづかしめけたりしも、わがかみ信賴しんらいたてまつりて、種々しゆじゆあらそひうちに、あへかみ福音ふくいんなんぢべたるなり。 3けだしわれすすめまよひにもけがれにもあざむきにもよることなく、 4ひとこころむかへんとするがごとくにせず、われこころみとたまかみ御旨みむねかなはんとて、かみよりみとめられて福音ふくいんたくせられたてまつりしままかたる。 5またわれ諂諛へつらひことばかつもちいしことなきはなんぢれるところにして、これ口實こうじつとしてむさぼりしことなきはかみしようたまところなり。 6またわれひとに、すなはなんぢにも他人たにんにも、名譽めいよもとめず、 7キリストの使徒しととしてなんぢおもんぜらるるをたれども、なんぢうちにては子兒こどもごとくにりて、あたかも、乳母にゆふぼその子兒こども愛育あいいくするごとくなりき。 8なんぢ戀慕こひしたひてなんぢわが至愛しあいものりたれば、われかみ福音ふくいんのみならず、生命いのちをもなんぢあたへんことをせつのぞれり。 9けだし兄弟等きやうだいたちよ、なんぢわれ勞苦らうく記憶きおくせり、なんぢ一人ひとりをもわづらはさざらんために、われ晝夜ちうや勞働らうどうして、なんぢうちかみ福音ふくいん宣傳のべつたへたり。 10われ如何いかせいにしてかつただしくかつとがなく、しんじたるなんぢたいしたるかは、なんぢこれしようし、かみまたこれしようたまところ11また如何いかちち子等こどもおけごとく、なんぢおのおのむかひて、 12その御國みくに光榮くわうえいとになんぢたまへるかみ相應ふさわしくあゆまんことをすすめ、かつ奬勵しやうれいし、かつこひねがひしかは、なんぢところなり。 13ゆゑまたなんぢが、かみ御言おんことばわれきしときこれもつひとことばず、事實じじつしかあるがごとく、しんじたるなんぢうちはたらたまかみ御言おんことばとしてけしことを、えずかみ感謝かんしやたてまつるなり。 14けだし兄弟等きやうだいたちよ、なんぢはユデアにおいてキリスト、イエズスにかみしよ敎會けうくわいれいしたがへるものれり、彼等かれらがユデアじんよりけしごとくるしみを、なんぢ同邦どうはうじんよりけたればなり。 15ユデアじんしゆイエズスをも預言よげんしやたちをもころし、またわれ迫害はくがいしたるに、なほかみ御意みこころかなはず、衆人しゆうじん敵對てきたいし、 16われ異邦いはうじんすくひさせんとてかたことこばみ、かくごとくにしてつねおのつみ滿たす、れどかみおんいかり彼等かれらうへおよびてそのきよくいたれり。 17兄弟等きやうだいたちよ、われ外見ぐわいけんじやう暫時しばしなんぢはなれしも、こころはなれず、一層ひとしほはやなんぢかほこと切望せつぼうせり。 18すなはわれなんぢいたらんとし、ことわれパウロは一度ひとたび二度ふたたびしかしたれど、サタンはわれさまたげたり。 19けだしわれ希望きぼうあるひよろこびあるひほこるべきかんむりなんぞ、我主わがしゆイエズス、キリストの降臨かうりんとき御前みまへおいなんぢそれなるにあらずや、 20なんぢじつわれ光榮くわうえいにしてかつよろこびなればなり。

第3章

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1このゆゑ最早もはやたへずして、われのみアデンスにとどまるをしとし、 2われ兄弟きやうだいにしてキリストの福音ふくいんおけかみ役者えきしやたるチモテオをなんぢつかはせり。これ信仰しんかうきてなんぢ堅固けんごならしめかつ奬勵しやうれいし、 3かか患難くわんなんうちりて一人ひとりだもうごかされざらしめんためなり、われ患難くわんなんさだめられたることは、なんぢみづかところ4けだしなんぢうちりしときも、われかなら患難くわんなんふべきをあらかじなんぢたりしが、はたしてなりきたれるはなんぢところなり。 5このゆゑわれ最早もはやたへずして、なんぢ信仰しんかう如何いかんらんためひとつかはせり、あるひいざなものなんぢいざなひて、われはたらきむなしくならんことおそれたればなり。 6しかるにチモテオなんぢもとよりわれもときたりて、なんぢ信仰しんかうあいとのよろこばしき音信おとづれつたへ、またなんぢつねわれきて記憶きおくたもち、われことのぞめるは、あたかわれなんぢことのぞめるにひとしとの福音ふくいんげたれば、 7これによりて兄弟等きやうだいたちよ、われもろもろ憂苦なやみ困難こんなんとのうちりながら、なんぢきて、なんぢ信仰しんかうもつなぐさめたり。 8すなはなんぢだにしゆおいたば、われいま生回いきかへるなり。 9けだしわがかみ御前みまへおいて、なんぢきてわれよろこべる一切いつさいよろこびは、如何いかなる感謝かんしやもつてかなんぢためかみむくたてまつるをべき。 10われなんぢかほことと、なんぢ信仰しんかうけたるところおぎなはんこととを、晝夜ちうやせついのるなり。 11ねがはくはわがちちにてましまかみおんみづから、また我主わがしゆイエズス、キリスト、われみちびきてなんぢいたらしめたまはんことを。 12ねがはくは相互あひたがひあひだおいても、また衆人しゆうじんたいしても、なんぢあいかつゆたかならしめたまはんことを。われなんぢたいするもまたかくごとし。 13これなんぢこころ聖德せいとくかため、我主わがしゆイエズス、キリストそのしよ聖人せいじんともきたたまはんときわがちちにてましまかみ御前みまへとがむべきところなからしめんためなり、アメン。

第4章

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1兄弟等きやうだいたちよ、われしゆイエズスにりてなんぢもとかつこひねがふ、如何いかあゆまばかみ御意みこころかなふべきかは、なんぢかつわれよりきたるところなれば、そのごとくにあゆみてますますすすまんことを。 2しゆイエズスをもつて、如何いかなる敎訓けうくんなんぢあたへしかは、なんぢこれればなり。 3けだしかみ御旨みむねなんぢせいたらんことり、すなはなんぢみづか私通しつうきんじ、 4おのおのかみらざる異邦いはうじんごと情慾じやうよくのぞみまかせずして、 5そのうつは神聖しんせいかつたふとたもことり、 6またたれこのこときて兄弟きやうだいあざむかずかつがいせざるにり、しゆこれ一切いつさいことむくたまへばなり、われすであらかじなんぢかたかつしようしたるがごとし。 7けだしかみわれたまひしは、不潔ふけつためあらずして、せいたらしめんためなり。 8ゆゑこれことかろんずるひとは、ひとかろんずるにあらず、われその聖靈せいれいをもたまひたるかみかろんじたてまつるなり。 9兄弟きやうだいてきあいきては、われなんぢ書遣かきおくるをえうせず、なんぢみづかかつあひあいすることかみよりまなびたればなり。 10けだしマケドニア一般いつぱんすべての兄弟きやうだいたいして、なんぢすでこれせり。れど兄弟等きやうだいたちよ、われなんぢますますゆたかにして、 11なんぢめいぜしごとく、つとめて、沈着おちつきておのげふいとなみ、手業てわざし、またそと人々ひとびとたいしてただしくあゆみ、ひとなにものをものぞまざらんことねがふなり。 12[11]なんぢめいぜしごとく、つとめて、沈着おちつきておのげふいとなみ、手業てわざし、またそと人々ひとびとたいしてただしくあゆみ、ひとなにものをものぞまざらんことねがふなり。 13[12]兄弟等きやうだいたちよ、永眠えいみんせる人々ひとびときては、なんぢ希望きぼうなき人々ひとびとごとなげかざらんために、なんぢらざるをこのまず、 14[13]けだしわれもしイエズスのたまかつ復活ふくくわつたまひしことをしんぜば、またかみ永眠えいみんせし人々ひとびとをイエズスにおいこれともたづさたまはん[ことをしんずべきなり]。 15[14]すなはわれしゆ御言おんことばりてなんぢぐ、しゆ再臨さいりんときいきのこわれは、永眠えいみんせし人々ひとびとさきだことなかるべし。 16[15]けだし號令ごうれいだい天使てんしこゑかみ喇叭らつぱ合圖あひづに、しゆみづかてんよりくだたまひ、キリストに死者ししやまづ復活ふくくわつすべし、 17[16]つぎいきのこわれは、彼等かれらともくもとりげられて空中くうちゆうにキリストをむかへ、かく何時いつしゆともるべし。 18[17]ればなんぢこれことばもつあひなぐさめよ。

第5章

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1兄弟等きやうだいたちよ、時代じだい時刻じこくとにきては、なんぢ書遣かきおくらるるをえうせず、 2しゆ夜中やちゆう盜人ぬすびとごとくにきたるべきことを、みづかたしかればなり。 3人々ひとびと安心あんしん安全あんぜんくちにせんときほろび妊婦にんぷおける陣痛ぢんつうごとにはかきたりて、彼等かれらのがれざるべし。 4兄弟等きやうだいたちよ、なんぢ暗黑くらやみあらざれば、かの盜人ぬすびとごとなんぢおそふまじ、 5なんぢみなひかりひるにして、われよるのもの暗黑くらやみのものにあらざればなり。 6ればわれ人々ひとびとごとねむるべからず、しかめて節制せつせいすべし。 7けだしねむひと夜中やちゆうねむり、ひと夜中やちゆうふ、 8れどひるのものたるわれ節制せつせいして、信仰しんかうあいとのよろひけ、救靈たすかり希望きぼうかぶとすべし。 9かみわれたまひしは、いかりはしめんためあらず、我主わがしゆイエズス、キリストにりて救靈たすかりさせんためなればなり。 10てイエズス、キリストのわれためたまひしは、われをしてさむるもねむるもかれとも生活せいくわつせしめんためなり。 11ゆゑなんぢすでせるがごとく、たがひなぐさめてたがひとくてしめよ。 12兄弟等きやうだいたちよ、ねがはくはなんぢうちはたらき、なんぢしゆおいつかさどり、かつ忠告ちゆうこくする人々ひとびとり、 13そのげふによりてもつとあつこれあいせよ、相互あひたがひ和合わがふせよ。 14兄弟等きやうだいたちよ、こひねがはくは沈着おちつかざる人々ひとびといましめ、落膽らくたんせるものなぐさめ、よわものたすけ、すべてのひと堪忍かんにんせよ。 15たれひとたいしてあくもつあくむくいざること心懸こころがけ、相互あひたがひまたすべてのひとたいして、何時いつきことを追求つゐきうせよ。 16つねよろこべ、 17えずいのれ、 18何事なにごとおいても感謝かんしやたてまつれ。これなんぢ一同いちどうおいてキリスト、イエズスにれるかみ御旨みむねなればなり。 19れいすことなかれ、 20預言よげんかろんずることなかれ、 21何事なにごとをもためしてきものをまもれ。 22一切いつさいあくたぐひよりとほざかれ。 23ねがはくは平安へいあんかみおんみづから、なんぢまつたせいならしめたまひて、ことごとなんぢ精神せいしん靈魂れいこん身體しんたいまもり、我主わがしゆイエズス、キリストの再臨さいりんときとがむべきところなからしめたまはんことを。 24なんぢたまひしものは眞實しんじつにてましませば、このことをもたまふべし。 25兄弟等きやうだいたちよ、われためいのれ。 26せいなる接吻せつぷんもつすべての兄弟きやうだいよろしくつたへよ。 27せいなるすべての兄弟きやうだいこの書簡しよかんよみかせんことを、われしゆによりてなんぢこひねがふ。 28ねがはくは我主わがしゆイエズス、キリストの恩寵おんちようなんぢともらんことを、アメン。