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も聞（きこ）えず、是（これ）まで相焦（あいこが）れた者（もの）でも、猫（ねこ）に小判（こばん）のやう、薩張無頓着（さっぱりむとんちゃく）に成（な）って了（しま）った、味気（あじけ）ない事（こと）である。其所（そこ）が死（し）んだと云（い）ふ事（こと）なれば、死（し）は果（はた）して何（なん）であるか、矢張唯（やはりたゞ）…

どんぐりは、しいんとしてしまいました。それはそれはしいんとして、堅（かた）まってしまいました。 そこで山猫は、黒い繻子の服をぬいで、額の汗（あせ）をぬぐいながら、一郎の手をとりました。別当も大よろこびで、五六ぺん、鞭（むち）をひゅうぱちっ、ひゅうぱちっ、ひゅうひゅうぱちっと鳴らしました。やまねこが言いました。…

ち手が、あんまり短いためです。今度は向ふの三番書記の三毛猫が、朝仕事を始める前に、筆がポロポロころがつて、たうとう床に落ちました。三毛猫はすぐ立てばいいのを、骨惜みして早速前に虎猫（とらねこ）のやつた通り、両手を机越しに延ばして、それを拾ひ上げようとしました。今度もやつぱ…

△病人（べうにん）、産前産後（さんぜんさんご）の婦人（ふじん）、荒（あら）い仕事（しごと）を為（す）る人（ひと）、軍人（ぐんじん）、旅人（たびびと）、老人等（らうじんなど）であります。 即（すなは）ち病気（べうき）で臥込（ねこ）んだ 者（もの）ばかりでなく、回復（くゎいふく）しかゝった人（ひと）も、叉弱（またよわ）くして一食…

ん付けだけは全く新しい。何でも古いうちを買って二三日（にさんち）前から開業したに違（ちが）いなかろう。ねだん付の第一号に天麩羅（てんぷら）とある。おい天麩羅を持ってこいと大きな声を出した。するとこの時まで隅（すみ）の方に三人かたまって、何かつるつる、ち…

吾輩は猫である 作者：夏目漱石 明治三十八年 1905年 書誌情報 姉妹プロジェクト：Wikipediaの記事, データ項目 『吾輩は猫である』（わがはいはねこである）は、夏目漱石の長編小説であり、処女小説である。1905年1月、『ホトトギス』に発表され、好評を博したため、翌1906年8月まで継続した。中学…

うらさびしくもみえわたるかな 紀貫之 家集 いにしへはちるをや人のをしみけん いまははなこそむかしこふらし 一条摂政 仙家（せんか）　附道士隠倫 こちうのてんちはけんこんのほか、 むりのしんめいはたんぼのあひだ、 壺中（こちう）の天地（てんち）は乾坤（けんこん）の外（ほか）、 夢裏（むり）の身名（しんめい）は旦暮（たんぼ）の間（あひだ）、…

ん）の霊魂（れいこん）を迎（むか）へる為（ため）に門火（かどび）を焚（た）き、流行病（りうかうべう）や火難盗難（くわなんとうなん）を免（のが）れる為（ため）に守札（まもりふだ）を家（いへ）に貼（は）り或（あるひ）は身（み）に付（つ）け、商売繁昌（せうばいはんぜう）の為（ため）に招猫（まねきねこ…

れうしすゞり御座候土屋平八郎をめしてすゞりをよせすみをすり候へと被㆓仰付㆒其後筆と料紙をとつて則あそばしける 　さそはずはくやしからましさくら花さねこんころはゆきのふるてら　　　　源信玄 智勝国師此歌をとりて御覧じありてほめ給ひいたゝき其後短寮衆御覧しありほめて各僧達拝見ありこと〳〵く則座にて和韻…

めりか）か、或（あるい）は何処（どこ）かの植民地（しょくみんち）にでも突走（つっぱし）る企劃（たくらみ）であったのである。」 「併（しか）し汽艇（ランチ）の始末（しまつ）はどうするでしょう。まさか汽艇（ランチ）を宿屋（やどや）まで持（も）ち込（こ）むわけには行（ゆ）きますまい。」…

ねこ）の子（こ）の貰（もら）ひ主（ぬし）までが實家（さと）あしらひのえせ追從（つゐしよう）、槌（つち）で掃（は）く庭石（にはいし）の周旋（しゆうせん）を手（て）はじめに引（ひ）き入（い）れる工夫（くふう）算段（さんだん…

眼の下の長屋の一軒の戸が開いて、ねまき姿の若い女が喞筒（ぽんぷ）へ水を汲みに来た。 雨の脚（あし）が強くなって、とゆがごくりごくり喉（のど）を鳴らし出した。 気がつくと、白い猫（ねこ）が一匹、よその家の軒下（のきした）をわたって行った。 信子の着物が物干（ものほ）し竿（ざお）にかかったまま雨の中にあった。筒袖（つつそで）の平常（…

ち切（き）られざりしといはん、 44 彼（かれ）らのうちに爲（な）さるるは皆（みな）虛僞（いつはり）なり。されば彼（かれ）らはいかで神々（かみ〴〵）と思（おも）はれ、また言（い）はれ得（え）ん。 45 彼（かれ）らは木匠（こだくみ）と鍛冶（かぬち…

が出て我が手を取て引（ひき）入れ。所〳〵をことわけていゝきかせ給ひしが中〻結（けつ）構（かう）に奇麗（きれい）なる事かたらんとするに言葉（ことば）をしらず先地（ち）には白かねこがねなどの沙（すな）いさごを敷（しき）みて。所（ところ）〳〵には。いろ〳〵にひかる玉（たま）などにて。垣（かき）をしわたし…

ねこえ、我おとらじと二の丸につく、かなはじとや思ひけん、門をひらき、やりふすまをつくりてこみ入こみいだし、二三ど火花をちらしけるが、つけいれにさゝれて、かたはしくびをとられ、つめの丸へつぽむ所に、火やを雨のふるごとく八ぱ…

い）を折下（おりくだつ）て鬨音（ときのこゑ）をあわせ。両方へ分（わけ）て。せめたゝかふ。鉄砲（てつぱう）矢（や）さけびの音（をと）。天地をひゞかし。首をとつつ。とられつ。血（ち）けぶりを出し。半時（はんぢ）は勝負（せうぶ）も見えざりしが。つゐには義弘（よしひろ）討（うち）まけ。こと〳〵くはいぼくす。…

ねこまた）、人間（にんげん）を引掻（ひっか）いて殺（ころ）しをる！　一二三（ひふうみい）で劍（けん）を使（つか）ふ駄法螺吹家（だぼらふき）め！　破落戸（ごろつき）、惡黨（あくたう）！　何（なん）で眞中（まんなか）へ飛込（とびこ）んだん…

水仙月の四日 作者：宮沢賢治 1924年 書誌情報 　 　雪婆（ゆきば）んごは、遠くへ出かけて居（お）りました。 　猫（ねこ）のような耳をもち、ぼやぼやした灰いろの髪（かみ）をした雪婆んごは、西の山脈の、ちぢれたぎらぎらの雲を越（こ）えて、遠くへでかけていたのです。…

松吉は請合（うけあ）って帰ると、入れちがいに善八（ぜんぱち）が来た。 「おお、いいところへ来た。おめえにも少し用がある」 「今そこで松に逢いましたら、これから浅草のお化けへ、出かけるそうで……」 「そうだ。お化けの方は松に頼んだが、おめえは照降町へまわってくれ」…

んだ中に、円（まる）くなって、坐って居ります。――これが目くされの、皺（しわ）だらけの、腰のまがった、背の低い、六十ばかりの尼法師（あまほうし）でございました。しかも娘の思惑（おもわく）を知ってか知らないでか、膝（ひざ）で前へのり出しながら、見かけによらない猫撫声（ねこ…