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死刑宣告/静物は欠伸をする

提供:Wikisource


静物は欠伸をする
萩原恭次郎


腐つたアツプル・パイのやうな細君と
旧式の山高帽の愛情深い宣教師S氏と
けいれんする羞恥の赤さをもつた午後の庭に
柔い目をした犬の愛撫を見つつ
天国の話を初めてゐる
泣きはらした目のやうな山茶花が
無益な顔をしてゐる私に照つている
紅い花と————蒼白い顔
空に剥製の白鳥が飛んでゐる
饐んでゆく一日を
挽歌も知らず過してゐる男
明るく————そして暗い太陽の面に
愛と歓びは燃え切れてゆく
胸の中で青い虫が
果実をむしばんでゆく



この著作物は、1938年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。