死刑宣告/東京通信

提供:Wikisource


東京通信
萩原恭次郎


——大正十二年十二月——


飢えた腹の底で短気な悲哀が旗をふつてゐる
安い酒精も与へられない洋服君
十二月末の黄色い東洋的色彩の貧弱

力ない歩行のピエローの群れの中
景気の好いのは
救世軍士官と罹災民の女房の色目
眼鏡の角ばつた新婦人の黄色い歯と唇
接吻は危険な巡査の嗄れ声
ぼろタクシーのはねつける泥
訴訟 姦淫 電車通路 人 馬 ラツパ

昨今 東京は満艦飾の軍艦が
巷の波に動揺してゐるやうな賑かさ



この著作物は、1938年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。