コンテンツにスキップ

死刑宣告/女の唇は虚偽に割れてゐる

提供:Wikisource


女の唇は虚偽に割れてゐる
萩原恭次郎


生梅のやうなレストラントの女の投げ言葉は
ウヰスキーと強い粉煙草なぞでは消せない
私の悲しい神経を
紙のやうに燃やす

強度の焼火の下には
白い骨がくずれ残つてゐる
微笑も憎悪も陰毛も
柔い足で蹴らうとした女優の
タンバリンの音も消えて
霜げた薔薇ばつかが傷のやうに真赤だ
女の唇は虚偽に割れてゐる
胸にはゼンマイのやうな手段がまかれてゐる
生梅のやうな言葉で
胸の内部をしびれさす

私の衰弱してゐる空気の中を
私は骨だらけの部屋へ
質草を見つけに帰つて来る



この著作物は、1938年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。