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死刑宣告/死は奴隷と主人に無関心である

提供:Wikisource


死は奴隷と主人に無関心である
萩原恭次郎


恐怖の昼と夜だ
 ———蟋蟀と雨と 憂欝な秋だ
怖ろしい影に追はれてゐる
眠れない飢餓はつづく秋だ

私は
血の気のない戦慄にふるえてゐる
愛は焼きつくされた
驚愕を取り去られた後の塊りが
文学も哲学も排斥した胸に
力なく動いてゐる

雨は流れてゐる
  蟋蟀は啼きつづけてゐる
生命は赤い痣のやうに痛む
血は血を————復讐は復讐を
夜は夜を————死は死を

生は剣によつて救はれるのみだ
死は奴隷と主人に無関心である
私の発砲は
私の全目的である



この著作物は、1938年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。