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死刑宣告/俺は泥靴で泥の道を歩つてゆく

提供:Wikisource


俺は泥靴で泥の道を歩つてゆく
萩原恭次郎


カツト飛び出した太陽
街中を驚奇盤的光線の舞踏場にする
驚いた馬が飛び上つてゐる

古びたシルクハツトが馬車を走らしてゐる
道路は青黒い血だ
はねくり返る車輪の後から血のついた首がはねくり返つて落ちて来る
シルクハツトの眼鏡にまで血がとびつく
鵞鳥のやうな首は労働者の首だ

青黒い娘の顔はパチツと窓が開けて閉めた
くるくるくるつと三角形の眼ぶたと目玉が動いて
青い煙草の煙りがすつと流れた

俺は泥靴で泥の道を歩つてゆく
あやふくシルクハツトの目をよけて
誰も誰もが歩くやうに俺は泥靴で泥の道を歩つてゆく
太陽は死面デツトマスクのやうに笑つてゐる



この著作物は、1938年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。