死刑宣告/屋根裏の鴨
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屋根裏の鴨
萩原恭次郎
鴨は長い独身のサラリーマンだ!
毎夜 鴨は屋根裏から
遠く————黄色い心臓に向つて
吠え 喋り 囀つてゐる
——今夜こそ手紙の中に
幾らか金をつゝんで送るらしい
彼女は貧しい黄色い心臓の少女である
——鼠が壁に張つた新聞紙を破つてゐる
誰かが闇の中で怖ろしいキスをしてゐる
部屋の隅に長い独白を思ひ出して青年が立つてゐる
——闇はあらゆる心臓をはつきりさせる
俺は梯子段の下で
「ふるさとのなまりで語つてゐる」
——今夜この家にお産があるかも知れないね
——いや たれか死人になるかもしれないよ
鴨は古洋服をたゝんだ
かたい寝台が細い身体をまつてゐた
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この著作物は、1938年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。