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んぺらどる彼が木像を大きに作り◦ちぶれといふ河のほとりなる諸國往返の道筋に立おき給ひ◦之は*しまん◦まごといふ尊き人の御影也と額（がく）を打（うて）り。その時分*さん◦ぺいとろもろうまへ上り給ひ◦每日みいさを行はせられ◦さんた◦ちりんだあでの御談義を述給ふ也。その御談義を以てきりしたん…

んぺらどる彼が木像を大きに作り◦ちぶれといふ河のほとりなる諸国往返の道筋に立おき給ひ◦之は*しまん◦まごといふ尊き人の御影也と額（がく）を打（うて）り。その時分*さん◦ぺいとろもろうまへ上り給ひ◦毎日みいさを行はせられ◦さんた◦ちりんだあでの御談義を述（のべ）給ふ也。その御談義を以てきりしたん…

んぺい）は其輝（そのかがやき）に恐（おそ）れて、死人同様（しにんどうやう）に成（な）ったのである。軈（やが）て市（ま） [下段] 街（ち）に往（ゆ）き、教師等（けうしら）に実際（じっさい）を届（とゞ）けたれば、教師等（けうしら）は協議（けうぎ）して、番兵（ばんぺ…

・追記 / 99 ・第一　さんぺいとろの御作業 / 3 ・第二　さんふらんしすこの御作業 / 15 ・第三　さんばるらあんと聖じよさはつの御作業 / 51 ・第四　さんゑうすたきよの御作業 / 89 〈第一から第四は「さんとすの御作業」より〉 ・第五　こんてむつすむんぢ抄 / 110 ・第六　でうすの御性體と御善徳の事…

3其（その）容（かたち）は電光（いなづま）の如（ごと）く、其（その）衣服（いふく）は雪（ゆき）の如（ごと）し。 4番兵（ばんぺい）等（ら）怖（おそ）れ慄（おのの）きて死人（しにん）の如（ごと）くなれり。 5天使（てんし）婦人（ふじん）等（ら）に答（こた）へて云（い）ひけるは、汝（なんぢ）等（ら）懼（おそ）るること勿（なか）れ…

何（ど）うしても盗（ぬす）む仕様（しやう）がない。（七）叉言（またい）はれた通（とほ）り番兵（ばんぺい）の寝入（ねい）った間（あひだ）に盗（ぬす）まれたとすれば、寝入（ねい）った者（もの）を証人（せうにん）とするのは不条理（ふでうり）ではないか。（八）其（それ）でも盗（ぬす）まれたのを蘇（よみがへ）…

んぴにん）の運平（うんぺい）の娘（むすめ）を妻（つま）に持（も）つ芳之助（よしのすけ）と思（おも）ふかよしや芳之助（よしのすけ）が持（も）つといふとも我（わ）れある以上（いじやう）は嫁（よめ）にすること毛頭（もうとう）ならぬ汚（けが）らはしゝ運平（うんぺ…

『母親 断片』（ははおや　だんぺん） 作者：梶井基次郎 底本：2008年11月10日筑摩書房発行『ちくま日本文学028 梶井基次郎』 母が近頃（ちかごろ）になってめっきり弱ったように思われた。――針仕事をするのにも針に糸を通すことが出来なくなった。老眼鏡をかけながら心許（こころもと）ない様子で、電気…

『海 (斷片)』(うみ (だんぺん)） 作者：梶井基次郎 1930年 底本：昭和四十一年五月二十五日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第二卷』 ………らすほど＜そのなかから＞赤や靑や朽葉の色が湧いて來る。今にもその岸にある溫泉〔の村〕や港町がメダイヨンのなかに彫り込まれた風景のやうに見えて來るのぢやない…

『凧斷片』（たこだんぺん 作者：梶井基次郎 1925年 底本：昭和四十一年四月二十日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第一卷』 ……彼は最近大阪から越して來た家族の子供で、東京の凧が珍らしく、毎日原っぱの隅へ來て小賢しい子供達のすることを見てゐた。お二枚半といふ名前は左うして覺えてしまつた。…

(斷片)』(ほうこう (だんぺん)） 作者：梶井基次郎 1923年 底本：昭和四十一年四月二十日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第一卷』 「酒が惡魔的な昂奮劑で、紅茶が道德的昂奮劑か。成程、三杯も飮んだ加減か知らないが、變に俺は何だか考え〔ママ〕えてゐる。考え〔ママ〕ざらん…

『雲 (斷片)』(くも (だんぺん)） 作者：梶井基次郎 1931年 底本：昭和四十一年五月二十五日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第二卷』 若しその名前をつけるなら、白雲郷とでも云つたところへ私は住〔み度い〕〔んでゐたいのだ。〕み度いと思つてゐるのだ。私は輕い寐椅子を持ち出してひねもす溪の空を渡つて…

『卑怯者―斷片―』（ひきようもの―だんぺん―） 作者：梶井基次郎 底本：昭和46年４月20日筑摩書房発行『梶井基次郎全集第一巻』 眠りとは一體どうして起るんだらう。 一體なんだらう。 考え（ﾏﾏ）たり、見たり、聞いたりしてゐた人間が急にそれらの能力を奪はれてしまふ。―生ける屍になつてしまふ。―何だが變な氣がする。…

『闇の書 (断片)』（やみのしょ (だんぺん)） 作者：梶井基次郎 1928年 底本：昭和四十一年五月二十五日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第二卷』 私は村の街道を若い母と步いてゐた。この弟達の母は紫色の衣服を着てゐるので私には種々のちがつた女性に見えるのだつた。第一に彼女は私の娘であるやうな氣を起…

『夕燒雲 (斷片)』（ゆうやけぐも (だんぺん)） 作者：梶井基次郎 1927年 底本：昭和四十一年五月二十五日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第二卷』 私は日の暮方を愛した。そして幾度となくその經驗を繰りかへしてゐるうちに、私はいひやうもなく陰氣なことを結論してしまつたのだ。…

『小さき良心断片』（ちいさきりょうしんだんぺん） 作者：梶井基次郎 底本：昭和46年４月20日筑摩書房発行『梶井基次郎全集第一巻』 自分は人通りを除（よ）けて暗い路をあるいた。 耳がシーンと鳴つてゐる。夢中にあるいてゐる。自分はどの道をどう來たのかも知らない。つく杖の音が戛（カツ）々とする。この太い櫻の杖で今人を撲つて來たんだ。…

『雪の日斷片』（ゆきのひだんぺん 作者：梶井基次郎 1925年 底本：昭和四十一年四月二十日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第一卷』 或る朝明り窓のそと近くで羽搏つ雀の羽音がした。「米はなかつた筈だ」と床のなかで純一は思つてゐた。微かなものがさらさらと戸に觸れる氣配がした。それを聞くともなしに聞きなが…

『猫 (断片)』(ねこ (だんぺん)） 作者：梶井基次郎 1929年 底本：昭和四十一年五月二十五日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第二卷』 朝寐の主人が起きて、顏を洗つて飯を食つて、また蒲團の敷いてある部屋へ歸つてゆく。さあ床をあげようか〔な〕と〔思つて〕掛蒲團を剝ぎにかかる。すると敷布の上でぬウウ…

『藥 (斷片)』(くすり (だんぺん)） 作者：梶井基次郎 1930年 底本：昭和四十一年五月二十五日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第二卷』 私が身體を惡して東京から歸つて來たとき、一日母がなんともつかぬ變な顏で、 「またお前が怒る思うて云はなんだんやけど、お前の病氣にええ云ふて、人から藥が貰うたあるのやが、お前飮んで見るか」…

『歸宅前後斷片』（きたくぜんごだんぺん） 作者：梶井基次郎 1924年 底本：昭和四十一年四月二十日筑摩書房発行『梶井基次郎全集 第一卷』 民哉の放蕩――それは放蕩と云ふよりは寧ろ誇張された氣持から、前後を辨へずに、やけで選び取られた破滅の道なのであつたがそれも遂には行き着くところまで行つてしまつた。…