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第十五課 救世主の復活
92●イエズス、キリストの御死去の後其霊魂と肉体とは如何なりましたか
△イエズス、キリストの御死骸は岩窟の墓に葬られ、御霊魂は古聖所に降り給ふたのであります。
死するとは身体と霊魂との分れる事なれば、イエズスに於ても然う成りました。其で翌日大祝日であったから、
御死骸
は間も無く十字架より下され、取急いで、国の習慣に従って、没薬約百斤を以て布に巻包まれ、近傍の墓所に
[下段]
拵へてあった
岩窟に葬られ、
其入口に大きな石が転された。前に云った通り、葬ったのは重立たる長ヨゼフと云ふ人と、夜中密にイエズスを伺に来たニコデモとである。
御霊魂
は所謂
古聖所に降り給ふたのであります
93●古聖所とは何であるか
△古聖所とは世の始から死んだ善人の霊魂の止って居た所でありました。
何故
善人の霊魂
が其所に
止って居
ったかと云へば、イエズスが罪の贖を未だ果し給はず、事業を終へて天に昇り給ふ前に、人は天国に入る事が出来なかったからであります。イエズスの霊魂の古聖所に赴き給ふたのは、義人の霊魂の往くべき所であって、善人等に天国に昇る時の近づいた事を告げて、之を慰める為でありました。
94●イエズス、キリストは死に給ふた侭でありますか
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▲イエズス、キリストは御約束の通り死んで三日目に蘇り給ふた、是を御復活と申します。
御約束の通り。
第八十の問に云はれた如く、イエズス度々御苦を予言し給ひ、叉復活する事を毎度約束し給ふた。偖て誰も人が生回った例は予て更に無いから、敵等は生回り給ふ事を考へたではあるまい、兎も角此約束を忘れず、恐らくは弟子が死骸を盗んで、生回ったと云ふかも知れずとて、イエズスの墓の入口の石に封印し、番兵を置いて之を堅く守らせた。
然るに
死んで三日目に、
即ち金曜日に死し給ふたが、日曜日の未明に
蘇り、
御霊魂は再び御肉身に合って、墓より出で給ふた、
是を御復活と申します。
(註)愈よ復活した体は原の体ながら、霊的に成ったので、イエズスは墓石を除かずに之を通抜け給ふた。墓より出で給ふや、天使現れて墓石を取除け、其上に坐したれば、番兵は其輝に恐れて、死人同様に成ったのである。軈て市
[下段]
街に往き、教師等に実際を届けたれば、教師等は協議して、番兵に金を遣って、寝入って居る間にキリストの死骸は盗ませたと云はせたが、是は一時流行談と成った。然れども番兵も寝入った罰を受けず、弟子も盗の罰を受けず、剰に寝入った者を証人にした事なれば、信ずるに足らぬ事は明かに知れた。
- 第六条及び第七条 天に昇りて全能の父なる天主の右に坐し、彼所より生ける人と死せる人とを審かん為に来り給ふ主を信ず。