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じいさんばあさん 作者：森鴎外 書誌情報 書誌情報の詳細は議論ページをご覧ください。 　文化六年の春が暮れて行く頃であった。麻布竜土町（あざぶりゅうどちょう）の、今歩兵第三聯隊（れんたい）の兵営になっている地所の南隣で、三河国奥殿（みかわのくにおくとの）の領主松平左七郎乗羨（のりのぶ）と云う大名の…

さん）すること能（あた）はず、然（しか）り此（こ）の兄弟（けいてい）が毎夜（まいや）重（かさ）ねたる叩拝（こうはい）を誰（たれ）か能（よ）く数（かぞ）へんや。敬虔（けいけん）と熱切（ねつせつ）と虔恭（けんきょう）を以（もっ）て融和（ゆうわ）せられたる愛（あい…

主（しゅ）よわが口唇（くちびる）をひらき給（たま）へ 然（さら）ばわが口（くち）なんぢの誉（ほまれ）をあらはさん 16 なんぢは祭物（そなへもの）をこのみ給（たま）はず、もし然（しか）らずば我（われ）これを献（ささ）げん なんぢまた燔祭（はんさい）をも喜（よろ）こびたまはず 17 神（かみ）の求（もと）めたまふ祭物（そなへもの）はくだけたる霊魂（たましひ）なり…

のを出（だ）し給（たま）ふたのではなく思召（おぼしめし）を実際（じっさい）に顕（あらは）し給（たま）ふた訳（わけ）である。叉六日（またむいか）の間（あいだ）に地上（ちぜう）の万物（ばんぶつ）を造（つく）り給（たま）ふたとはあれど、今日（こんにち）のやうな二十四時間（じかん）の六日（むいか）ではない、…

なんぢ燔祭（はんさい）と罪祭（ざいさい）を悦（よろこ）ばず 7 厥（その）時（とき）われ曰（いひ）けるは神（かみ）よ我（われ）なんぢの旨（むね）を行（おこな）はんとて來（きた）る即（すなは）ち我（われ）について書（ふみ）に録（しる）されたり 8 先（さき）には犧牲（いけにへ）と禮物（そなへもの）と燔祭（はんさ…

によりて相続権（そうぞくけん）の吾人（われら）に拒絶（きょぜつ）されし場（ば）合（あい）に於（おい）て、自己（じこ）に属（ぞく）する財産（ざいさん）を慮（おもんばか）るが如（ごと）くに遺（い）産（さん）を穿鑿（せんさく）し、或（あるひ）は其（その）證書（しょうしょ）を尋（たづね）求（もと）め、或（…

爰（ここ）に一人（ひとり）の愛子（あいし）ありけるが此（この）わが子（こ）は敬（うやま）ふならんと曰（いひ）て遂（つひ）に其（その）子（こ）を遣（つかは）ししに 7 農夫（のうふ）等（ら）たがひに曰（いひ）けるは此（こ）は嗣子（あとつぎ）なり率（いで）これを殺（ころ）さん然（さら）ば産業（さんげふ）は我儕（われら）の者（もの）とならん…

いさん）から渡（わた）された砂糖（さとう）の塊（かたまり）で吊（とむら）って馬車（ばしゃ）へ一所（いっしょ）に入（い）れる。夫（それ）から急（いそ）いで砂村（すなむら）へ着（つ）いたのは正（しょう）三時（さんじ）。予（よ）の不在（ふざい）の間（あい…

森松下（もりまつお）るれば土佐街道（とさかいどう）　伊豫名産（いよめいさん）の一（ひと）つなる　雪（ゆき）より白（しろ）き砥部燒（とべやき）の　産地南（さんちみなみ）に約一里（やくいちり） 郡中線（ぐんちゅうせん）は松山（まつやま）を　出（い）でて餘戸驛（ようごえき） 出合驛（であいえき）　餘戸（ようご）には履脱天神（くつぬ…

）に祈（き）祷（とう）に専（もっぱ）らなる者（もの）の晩餐（ばんさん）は麝香（じゃこう）より発（はっ）する如何（いか）なる香（こう）気（き）よりも香（こう）油（ゆ）より発（はっ）する薫香（くんこう）よりも愉（ゆ）快（かい）なり、愛神（あいしん）者（しゃ）は之（これ）を願（ねが）ふこと値（あたい）すべ…

欲（ほっ）す。』『基（もとい）壊（やぶ）られたらば、義（ぎ）人（じん）何（なに）をか為（な）さん』。他（た）の訳者（やくしゃ）は『律法（りっぽう）にして壊（やぶ）られたらば』〔シムマフ〕となし、第三（だいさん）の訳者（やくしゃ）は『教（おしえ）にして投（なげ）棄（す）てられたらば』〔不明の訳者〕とな…

（もくそう）の道徳（どうとく）を確（かく）として愛（あい）し、神（しん）父（ぷ）等（ら）に擬（ぎ）して彼（かれ）等（ら）の行状（ぎょうじょう）を自己（じこ）に表（あら）はさんとするならば、かかる場（ば）合（あい）に於（おい）ては賞（しょう）讃（さん）すべき願（ねがひ）の達（たつ）し得（え）らるべきを…

阮籍嘯場人歩月。子猷看処鳥栖煙。 竹枝詞　章孝標 しんのきへいさんぐんわうしいう、 うゑてこのきみとしようす、 たうのたいしのひんかくはくらくてんは、 あいしてわがともとなす、 晋（しん）の騎兵（きへい）参軍（さんぐん）王子猷（わうしいう）、 栽（う）ゑて此（こ）の君（きみ）と称（しよう）す、…

さんとすればなり。不（ふ）信者（しんじゃ）等（ら）、某々（ぼうぼう）は放蕩者（ほうとうしゃ）なり、不（ふ）行状（ぎょうじょう）者（しゃ）なりといふをばきかず、かへりて過（か）失（しつ）ある者（もの）に代（か）へて、悉（ことごと）くの「ハリステアニン」を誣（し）ひんとす。第三（だいさん…

あい）しけるが、神（かみ）を愛（あい）するにより山間（さんかん）、巌窟（がんくつ）又（また）は地（ち）の深所（ふかみ）を住居（じゅうきょ）となせり、而（しか）して彼（かれ）等（ら）が地（ち）に属（ぞく）するものをすてて天（てん）に属（ぞく）するものを愛（あい…

ら）き給（たま）へる主（しゅ）の栄光（えいこう）は頌讃（しょうさん）せらる、願（ねが）はくは彼（かれ）に向（むか）ふ願望（がんぼう）の外（ほか）他（た）の願求（がんきゅう）は我（われ）等（ら）にあらざらん。けだし此（こ）の場（ば）合（あい）に我（われ）等（ら）は一切（いつさい）を棄（す）て、霊魂（れ…

んさつ）とをなさん。けだし機（き）密（みつ）を成（な）す者（もの）の来（きた）りて顕然（けんぜん）と之（これ）を啓示（けいし）するを賜（たま）ふに至（いた）る迄（まで）は、信仰（しんこう）は神（かみ）と聖者（せいしゃ）との間（あい…

ハリストスと対談（たいだん）するを愛（あい）する者（もの）は、遁世者（とんせいしゃ）となるを愛（あい）さん。之（これ）に反（はん）して衆人（しゅうじん）と共（とも）に居（お）るを愛（あい）する者（もの）は此世（このよ）の友（とも）なり。もし悔改（かいかい）を愛（あい）するならば、黙想（もくそう）をも愛（あい…

さんを見（み）に行（い）って、暇（ひま）さえあれば一緒（いっしょ）に折（お）り紙（がみ）を畳（たた）んだり、お手玉（てだま）をついたりして遊（あそ）んだものだ。そういう時（とき）の二人（ふたり）の相手（あいて）は、いつでもあの人形（にんぎょう）だった。そんなに抱愛（ほうあい…

こう）を與（あた）へ給（たま）ひしものに讃美（さんび）を奉（たてまつ）れり。 56 彼等（かれら）祭壇（さいだん）の奉献禮（ほうけんれい）を八日（か）の間（あひだ）行（おこな）ひ、歡喜（よろこび）をもて燔祭（はんさい）をささげ、救（すくひ）と讃美（さんび）の犧牲（いけにへ）を献（さゝ）げたり。 57…