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太閤記/巻二十

目次
 
オープンアクセス NDLJP:455此巻旧版題為二十二巻今除八物語二巻故改為二十巻
 
太閤記 巻二十
 
 
○黄母衣之衆
 
オープンアクセス NDLJP:456

戸田民部少輔 三好丹後守 井上忠右衛門尉 津田与左衛門尉 郡主馬正 松原五郎兵衛尉 野々村伊予守 長原雲沢軒 尾藤甚右衛門尉 青木民部大輔 伊藤丹後守 毛利壱岐守 一柳右近大夫 速水甲斐守 赤美平七郎 中島式部少輔 服部采女正 山田久三郎 荒川助八郎 山田忠兵衛尉 長坂三十郎 近藤九介 伊木七郎右衛門尉 石尾下野守

 
○御使番衆
 
佐久間河内守 滝川豊前守 山城宮内少輔 三上与三郎 熊谷内蔵允 佐藤駿河守 箕部隠岐守 布施屋隠岐守 布施屋飛騨守 竹中貞右衛門 尉水原石見守 杉原源兵衛尉 友松次右衛門尉 松井藤助 大谷弥八郎
 
○御馬廻七頭 亦七手組共云
 
郡主馬正 野々村伊予守 堀田図書助 中島式部少輔 真野蔵人 青木民部少輔 伊藤丹後守
 
○五奉行
 
是は其様子在第四巻、因て爰に略す、
 
○大年寄
 
家康公 加賀大納言利家 毛利中納言輝元 備前中納言秀秋 越後宰相景勝

此五人を秀頼卿御うしろみとし、殿下世を去給ひなば、万事頼入おほし給ふと有て、秀次公御切腹のゝち、かく定めおかれし也、

 
〇三人之小(小疑中)年寄衆
 
生駒雅楽助 中村式部少輔 堀尾帯刀先生

此三人は大年寄之内、五奉行と不和に成事有なば、非儀なる方へ強く諫を遂へき旨、堅く頼おほしめすと有し也、

 
○小姓頭衆
 
福原右馬助 蒔田権佐 別所豊後守 長谷川式部大輔 宮本右京亮 中江式部少輔
 
○普請奉行六人
 
佐久間河内守 滝川豊前守 佐藤駿河守 水野亀助 竹中貞右衛門尉 石尾下野守

右六人は、馬廻小姓与二千七百人之内より撰出されし故、其なす所遅速其理にかなひ、下々までも恨る事もなく、唯おしなへて其身のつとめを専にせし也、

秀次公命五岳者英聯句会之詩

    黄鸝語太平              南禅寺語心院

オープンアクセス NDLJP:457

城南正月囀黄鸝 一曲太平相賀来 出谷其知天下否 唐虞春也盛

   同 東福寺龍吟庵

一曲黄鶯出谷辰 尭紅舜紫物皆新 金衣亦似華袞 語到青雲天上春

   同 相国寺鹿苑院

鶯亦欣聖代時 太平天下万年基 声々高語弄春色 柳上奏歌花上詩

   同 相  普広院

黄鸝初出羽毛成 飛入梅辺太平 今為聖王賢相会 恩加翔詠摠歓声

   同 天龍寺禅昌院 

黄鸝出谷報新春 聖代祇今風俗淳 論唱太平功第一 金衣公子上麒麟

   同 建仁寺両足院

黄鳥出幽春意温 太平嘉象語村々 宮鶯百囀魯論学 都在思無邪一言

   同 東  天護庵

雪尽氷消鶯語温 太平声似二元 金衣宜江南策 高誦韓王半部論

   同 天  三章

天下服周朝洛城 花間鳥亦識威名 太平有象村々裏 呂望非熊幾数声

   同 天  梅真

春行万国歳華豊 聞得遷喬一曲中 聖代問鶯々有語 太平無処不尭風

   同 天  菊齢

聞得黄鸝語太平 聖朝無処不歓声 僧中今見来儀鳳 一曲綿蛮舜九成

   同 建  古㵎 

春来待得出幽鶯 日暖円吭語太平 梵雀一遷喬木後 万年枝上有斯声

   同 南  梅心

太平時太平 暖園語輭出幽鶯 聴奇百囀埀楊裏 高祝尭年

   同 南  梅印

幽黄鳥已遷喬 語報太平声正嬌 聖代祇今舜天下 綿蛮一曲奏簫詔

   同 南  英岳

黄鶯百囀報平安 花外柳辺春一般 非啻鳳鳴知聖代 綿蛮高唱万年歓

   同 南  悦叔

紫北紅南花満城 太平一曲属黄鶯 綿蛮似春皇寿 枝上高呼万歳声

   同    虎岩 

硼道雪消春色鮮 騒人停駕暁鶯辺 百花風静太平日 一曲調高舜五絃

   同 東  月渓

谷黄鸝語太平 近聴聖代独呼名 蒼周八百年天下 呂望非熊春誦声

   同 建  進月

オープンアクセス NDLJP:458黄鸝出谷雪初晴 日々春城語太平 一曲綿蛮同律度 認成聖代舜詔声

   同 東  友月

出幽黄鳥告春来 舜日尭風花亦開 炎漢太平如語尽 金衣公子是雛枚

   同 東  集雲

綿蛮語軽太平辰 喬木枝頭未春 十雨五風花有色 黄鶯亦道舜何人

   同 東  惟舟 

上苑黄鸝賀歳新 隔簾高語太平辰 尭紅舜紫花天下 百囀声中幾度春

   同 東  竹卿

黄鶯出谷雪初消 閑語太平喉舌調 百囀声中着心聴 半歌億舜半千尭

   同 相  瑞雲

聴始奇哉新哢鶯 柳陰梅場以春鳴 祇今聖徳及飛鳥 高語太平千万声

   同 東  圭叔

金衣出谷向春風 々不条花自紅 鶯語似開元得_玉 太平天下一声中

   同 東  剛外

谷黄鶯聴始奇 声々高報太平時 金衣亦似皇極 百囀鳴春元祐枝

   同 南  文叔

三請黄鸝語更新 太平有象洛陽浜 金衣相賀一枝上 天下再回元祐春

   同    光華 

黄鳥関々囀苑林 太平嘉瑞入新吟 湯王祝網亦多事 梅柳陰中徳及

秀次公命五岳耆英聯句

詩客尋梅到〈龍吟〉  似野賢   聖皇焼栢祝〈鹿苑〉  宜製齢仙

此奥以繁多略焉、南禅以心伝西堂、秉払寮中、故後出座矣、玄甫三長老、西咲兌長老、惟杏哲長老、与秀吉公肥州名護屋、故後出座矣、

殿下秀吉曰、今世のすき者共、其道の実を失ひ、美を以衒ふ也、然間伏見山里に茶屋を営み、諸侯大夫其外茶の道をすき侍る輩をあつめ、古しへよきすき者共の言の葉の露しめさんとて、此亭を立おかれしに、承兌長老記て曰、

 
○学問所記
 

城州伏見里者、天下勝境也、大相国相攸築大城華第、栽松竹深林、建高堂学問所、堂之四維、構第屋、々中一々賦倭歌、吟詠風景矣、集故人英豪、煎仙茶而為数奇可否、堂前有長橋、過此橋者、見江山烟景、不帰期、故名之以日昏、於数奇、其心親切者、臨此橋上、可希求、不親疎、咸景慕之深、招以欲賓客、大相国外隆作勝辺、内不干戈、大明已入貢、朝鮮悉往(往疑征)伐、四夷聞風来享、寔古今名相也、

 慶長三年戊戌孟春十一日 前南禅承兌謹誌焉

秀吉公御遺物、於加賀大納言利家卿舘下覚、如帳面写之、

オープンアクセス NDLJP:459一遠浦帰帆    内大臣家康卿    金子三百枚    同 一三好正宗    大納言利家     金子三百枚    同 一捨子茶壺    北庄中納言金吾殿也  金子百枚 吉光脇指 同 一枯木之絵    江戸中納言秀忠 一鴈之絵     会津中納言景勝 一最      備前中納言 一七台      安芸中納言 一国吉      岐阜中納言 一吉広の刀    越中宰相利長 一蕪なし井わきさし 毛利宰相 一則重厚藤四郎   結城宰相 一たいしや正宗 丹後宰相 吉光      大津宰相 金子三十枚 貞宗      若狭少将 一左の脇指    小松宰相 シノキ藤四郎わきさし 大崎少将政宗 一正宗      伊奈侍従毛利河内守也 一雪之絵     佐竹侍従 一金子三十枚   織田常真 一同 三十枚   織田有楽 一同 三十枚   同民部少輔穴津侍従 一同 三十枚   富田左近将監 一同 三十枚   宮部法印 一同 二十枚   有馬中務卿法印 一同 十五枚   桑山法印 一同 十五枚   羽柴下総守 一同 十枚    兌長老相国寺 一同 十枝    古田織部正 一同 十枚    寺西筑後守 一同 十枚    柘大炊助元尾川犬山之城主なりき 一同 十枚    稲葉兵頭庫 一同 十枚    新庄駿河守 一同 十枚    佐久間不干 一同 五枚    奥平美作守 一同 五枚    中川宗半 一同 五枚    住吉屋宗務 一同 五枚    山岡道阿弥 一同 三枚    前波半入 一同 三枚    江雪 一同 三枚    山名禅高

 自常真叟是まて二十二人は御咄の衆也

一金子三十枚   小出播磨守 一金子三十枚   木下肥後守 一同 二十枚   生駒雅楽助 一同 十五枚   石川紀伊守 一同 十五枚   杉原伯耆守 一同 同     大野修理亮 一同 同     片桐東市正 一同 同     木下宮内少輔 一同 同     石田木工頭 一同 拾枚    山雪 一同 拾枚    木下右衛門大夫 一同 同     石川掃部助 一同 同     糟谷内膳正 一同 五枚    土方勘兵衛尉 一同 五枚    戸田武蔵守 一同 同     堀田若狭守 一同 同     佐々淡路守 一同 同     分部左京亮 一同 同     斎村左兵衛尉 一同 同     木下周防守 一同 同     平塚因幡守 一同 三十枚   加藤主計頭 オープンアクセス NDLJP:460一同 三十枚   小西摂津守 一同 同     島津兵庫頭 一同 同     立花左近将監 一同 二十枚   毛利壱岐守 一同 二十枚   黒田甲斐守 一同 同     寺沢志摩守 一同 同     来目藤四郎侍従 一同 三十枚   鍋島加賀守 一吉光 わきさし  浅野弾正少弼    金子五十枚   同 一貞宗      徳善院       金子五十枚   同 一吉光 わきさし  石田治部少輔    同 五十枚   同 一国次      増田右衛門尉    同 五十枚   同 一吉光     長束大蔵大輔    同 三十枚   同 一吉久 宗近小鍛冶也 島津義久 一則重 わきさし  結城宰相 一左  わきさし  小松宰相 一村雲当麻 同 越後侍従 一貞宗      能登侍従 一正恒      最上侍従 一吉光      吉田侍従 一貞宗      清洲侍従 一太郎坊兼光   越府侍従 一真盛      土佐侍従 一元重      井伊侍従 一当麻      郡上侍従 一行秀      金山侍従 一信国      伊賀侍従 一よし家     吉川侍従 一景光      宇津宮侍従 来国俊      対馬侍従 一長光      安房侍俊 一大三原     浅野佐京大夫 一正恒      中村式部少輔 一兼氏      堀尾帯刀先生 一広光      蜂須賀阿波守 一大兼光     藤堂佐渡守 一左       賀藤左馬助 一長光      堀尾信濃守 一守家      田中兵部大輔 一則重      千石越前守 一来国光     溝口伯耆守 一国俊      堀監物 一国景      小出大和守 一三原      小川土佐守 ​はん​​一兼光​​ ​      脇坂中務大輔 一守家      中河修理亮 一吉光の剣    徳永式部卿法印 一しつかけ    長谷河可竹 一吉次      浮田安心法印 一元重      多賀出雲守 一景則      桑山相模守 一盛光      池田総次郎 一金光      宇多下野守 一村正      堀内阿波守 一則重      岸田伯耆守 一しつかけ    相良宮内少輔 一兼吉      横浜民部少輔 一国吉      松倉豊後守 一しつかけ    湯波次郎太郎 一千手院     桑山式部少輔 一信国      伊藤掃部助 一吉家      八幡甚兵衛尉 一国金      稲葉右近大夫 オープンアクセス NDLJP:461一三原      遠藤但馬守 一国宗      関次郎兵衛尉 一国吉      丸毛三郎兵衛尉 一来国俊     宮部兵部少輔 一左       村上周防守 一長光      有間修理亮 一国俊      日根野備中守 一景光      島大和守 一来国俊     大村新八郎 一宗次      相楽宮内大輔 一国俊      福原右馬助 一真盛      大田飛騨守 一長光      熊江半次 一正真      筧和泉守 一信国      早川主馬 一義光      竹中源介 一助広      毛利民部大輔 一恒家      来島右衛門尉 一長光      菅平右衛門尉 一景長      新庄越前守 一直江      山崎右京亮 一景光      中井式部大夫 一藤島      別所豊後守 一兼元      日根野織部 一国光      石川玄番允 一安吉      山内対馬守 一直綱      有馬玄番允 一法成寺     本田中務大輔 一兼貞      榊原式部大輔 一盛光      大久保治部少輔 一兼光      直江山城守 一雲次      南部大膳大夫 一文字      佐々島長門守 一助真      津軽右京 一青江      秋田太郎 一雲次      佐竹中務 一光忠      富田信濃守 一助光      伊藤長門守 一国俊      氏家内膳正 一国行      岡本下野守 一藤島      古田兵部少輔 一雲次      九鬼大隅守 一国行      大谷刑部少輔 一国宗      山中山城守 ​きり​​一兼吉​​ ​      寺西下野守 一国光      長谷川右兵衛尉 一兼光      市橋下総守 一助光      竹中丹後守 一兼長      津田長門守 一下坂      池田備中守 一三原      木下美作守 一兼貞      津田河内守 一国宗      山口玄番允 一藤島      溝江大炊助 一長光      長東伊賀守 一兼貞      青山修理亮 一村正      赤松上総守 一長光      垣屋隠岐守 一助真      西尾豊後守 一助真      羽柴美作守 一道永      山崎左馬進 一安光      賀藤左衛門尉 一兼元      松下兵部少輔 一道永      蒔田権佐 一国宗      松浦伊予守 一つりきり    谷出羽守 一守家      石川備後守 一盛光      高田河内守 オープンアクセス NDLJP:462一国光      木村伊勢守 一貞宗      生駒主殿助 一保昌五郎    寺西備中守 一吉光      氏家志摩守 一国友      生駒修理大夫 一長谷部     片桐主膳正 一盛光      川尻肥前守 一国吉      宮木長次 一兼元      服部土佐守 一国吉      朽木河内守 一直家      上田主水正 一左       水野和泉守 一兼光      一柳監物 一三池      原隠岐守 一てんかい    矢部豊後守 一道永      稲葉彦六 一国行      織田三十郎 一盛家      宮部勘兵衛尉 一一文字     丹羽勘介 一守家      秋田安房守 一村正      加賀野井弥八郎 一盛家      山岡主計頭 一国俊      真田伊豆守 一兼光      徳永左馬助 一よしひら    栃木兵部少輔 一兼元      九鬼孫次郎 一左       小川左馬 一さたつね    毛利豊前守 一兼光      鍋島信濃守 一鐘きり     大谷大覚 一関無銘物きれ     千石権兵衛尉 一長光      青木右衛門佐 一光忠      亀山侍従 一ゑんしゆ    金森出雲守

小瀬道喜は上野の人なり初め出雲の堀尾氏に事ひ元和年中去て易を江戸に授く後名を換へて甫菴と称せり善く織田豊臣二氏の時事を記し且つ尾張の人太田和泉守と友たる故を以て記聞頗る博く晩年に及ひて此書を著せり第一巻より第十七巻まては豆家の事蹟を述へ第十八巻は永禄以後の諸十の逸事を撫録し其第十九巻は山中鹿之助の事を述ふ此二巻必しも豊臣氏の事に関らす皆当時士気有る者の事を附録して伝ふるなり第二十二巻は豊臣氏奉行の名及ひ豊公の遺物を記載し中間五山僧侶の詩賦を収録せり其第二十巻第二十一巻は八物語と題して八条の題目を立ると雖とも文中綱目雑挙し頗る統紀なし概ね儒者の常談のみ按するに八物語の成るは元和二年にあり大閤記の成れるは寛永の初めに在り然れは両書の相距ること二十余年固より一書に非さるなり而して要旨毫も相渉るなし今参考太平記等唐土故事を削るの例に依て之を除く又按するに道喜が日吉金を攘む事を記してより後人其事に疑ひを容るゝ者なし而して朝日物語に信長嘗て清洲門楼に坐し小竹の過るを視て其頭に溺す小竹大に怒る信長曰く我汝を試る耳是に於て信長に仕へりとあり又太閤素生記に日吉初め松下氏の奴と為る其愛重せらるゝに及ひ之を嫉む者窃に物を匿し日吉を誣ゆ松下其罪無きを知り永楽銭三十疋を与へて遣り帰す是皆当時攘金の説と並ひ伝ふる所なり道喜豊公の父を記して竹阿弥と為し又其初て信長に謁するの語を記して其父嘗て織田氏に仕ふるを以て因て蔭を仰くとなす屋代弘賢甞て云ひることあり蔭を仰て仕を求むる者何そ攘金を贄と為すの後を待んやと然れは攘金の説は凡例に言へるか如オープンアクセス NDLJP:463く此書太田泉州の記に因て之を修む泉州愚直先入の言を信し後其誤りを知るも執て替へす予も亦耄耋有識に質正する能はすと云へるに当れるか之を要するに道喜か記する所豊家実録にして時に小誤あるのみ此書通行本三板あり一は字体古樸にして刊行年月なし蓋し古本なり一は正徳中刻する所一は挿画本なり此書頗ふる異同ありとす余素より徳島県士小瀬佳太郎氏を知れり乃ち道喜十世の孫なり家に一本を伝ふ請て校正することを得たり因て古本を以て道喜真本となし正徳本を以て参校す三本少異字あるのみ皆同書なり

 明治三十三年十月                  校訂者 近藤瓶城再識

 
 
 

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