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雲をふんで、空をかけまわりもするのです。 「しゅ、あんまり行っていけないったら。」雪狼のうしろから白熊（しろくま）の毛皮の三角帽子（ぼうし）をあみだにかぶり、顔を苹果（りんご）のようにかがやかしながら、雪童子（ゆきわらす）がゆっくり歩いて来ました。 　雪狼どもは頭をふってくるりとまわり、またまっ赤な舌を吐いて走りました。…

った一疋は、しばらく首をさげて手拭を嗅（か）いでいましたが、もう心配もなにもないという風で、いきなりそれをくわえて戻（もど）ってきました。そこで鹿はみなぴょんぴょん跳（と）びあがりました。 「おう、うまい、うまい、そいづさい取ってしめば、あどは何（なん）っても怖（お）っかなぐない。」…

降節（たいこうせつ）とて、キリストの来臨（らいりん）を仰（あふ）ぐ四週間（しゅうかん）あり、御復活祭（ごふっかつさい）の前（まへ）には四旬節（じゅんせつ）叉御受難節（またごじゅなんせつ）あり、聖霊降臨祭（せいれいこうりんさい）の前（まへ）には九日間（かかん）の祈祷（いのり）あり、大祝日（だいしゅく…

公教要理説明（こうけうえうりせつめい） 第（だい）十七課（くわ）　聖霊降臨（せいれいこうりん） －80－ －81－ △イエズス、キリストは御約束（おんやくそく）の如（ごと）く使徒等（しとたち）に聖霊（せいれい）を遣（つかは）し給（たま）ふた、是（これ）を聖霊降臨（せいれいかうりん）と申（まう）します。…

む）いた事（こと）よりも、自分（じぶん）が天國（てんごく）に往（ゆ）かれず、地獄（ぢごく）に往（ゆ）くべきを主（おも）に悲（かなし）むやうな事（こと）である。 とは全（まった）からぬとの意味（いみ）で、之（これ）も前（まへ）に云（い）った通（とほ）り、心（こゝろ）からでもあり、一般叉超性的（ぱんまた…

　それはだんだん大きくなるようです。だいいち輪廓（りんかく）のぼんやり白く光ってぶるぶるぶるぶるふるえていることでもわかります。 　にわかにぱっと暗（くら）くなり、そこらの苔（こけ）はぐらぐらゆれ、蟻（あり）の歩哨（ほしょう）は夢中（むちゅう）で頭をかかえました。眼（め）をひらいてまた見ますと、あのま…

のである。其（それ）で世間（せけん）でも天禀（てんりん）、天才（てんさい）、天性等（てんせいなど）と云（い）って居（ゐ）る。又何処（またどこ）に行（ゆ）くかと云（い）ふに、親（おや）から得（え）た身体（からだ）は遺族（ゐぞく）に遺（のこ）して墓（はか）で腐（くさ）り、天主（てんしゅ）から得（え）た霊…

書誌情報の詳細は議論ページをご覧ください。 　林泉（りんせん）のほとりに今日（きょう）も若者（わかもの）はひとりうっそりしゃがんでいた。冠（かんむり）はほころびくつには穴（あな）があき、あごにははらはらとぶしょうひげがみられ、頬骨（ほおぼね）の下にはのみでえぐったようなくぼみがあった。そして凝視（ぎょうし…

1934年 書誌情報 姉妹プロジェクト：Wikipediaの記事 書誌情報の詳細は議論ページをご覧ください。 どっどど　どどうど　どどうど　どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど　どどうど　どどうど　どどう 　谷川の岸に小さな学校がありました。…

りん）の事（こと）。 >> ひとりハリストスの第一の臨格（りんかく）を報（ほう）ずるのみならず、前者（ぜんしゃ）よりは大（おほい）に卓越（たくえつ）なる再臨（さいりん）をも報（ほう）ぜん。彼（かれ）は容忍（ようにん）の実（じつ）を表（ひょう）するものなれども、此（これ）は神（か…

った。テラテラ光った拳大（こぶしだい）の肉塊が襟（カラー）と耳との間に盛上がっている。この男の横顔や首のあたりの・赤黒く汚れて毛穴の見える皮膚とは、まるで違って、洗い立ての熟したトマトの皮のように張切った銅赤色の光である。この男の意志を蹂躙（じゅうりん…

坊は、沈黙の海に囲まれた闇の砂漠の中で自分がひとりぼっちであることに気づきます。彼は足元に何かを感じます。空虚の外から幽霊のような手が彼に触れてきます。しかしそれは何の音もなく、まったく姿が見えず、それが何なのかといったこと全部に何ひとつ手がかりがないのです。…

った。すると二人に忘れられた、あの小さな三毛猫は、急に何か見つけたように、一飛びに戸口へ飛んで行った。そうしてまるで誰かの足に、体を摺（す）りつけるような身ぶりをした。が、部屋に拡がった暮色の中には、その三毛猫の二つの眼が、無気味な燐光（りんこう）を放つほかに、何もいるようなけはいは見えなかった。………………

ゆっくりお話しなさい。何かまた昔話でもしようじゃあありませんか」と、老人は食い荒しの皿小鉢を老婢に片付けさせながら云った。 踊り家台の見物よりも、強飯の御馳走よりも、わたしに取ってはそれが何よりも嬉しいので、すぐにその尾について又いつもの話をしてくれと甘えるように強請（せが）むと、また手柄話ですか…

った。猟師が猟犬を差し向けると逆に犬の方が追いまくられてしまった。猟師が驚いて鉄砲を構えると、大山猫はいきなり樹（き）の上から下の猟師目がけて小便をひっかけたというのである。私はこの簡単な記事を繰り返し読み、挿入（そうにゅう）されている大山猫の写真を飽か…

かなくなるぜ」 「まあ、うまいことばっかし――あたしなんざあ、もう散りかかった姥（うば）ざくら、見向きもしてくれる人はないと思っているよ。さあ、お坊さん、お酌、女のあたしが、一杯一杯のやりとりはきつすぎる――まあ、お重ねな」 すすめ上手に、いつか、法印、すっかり…

に御復活頃（ごふくくわつころ）は殊更告白（ことさらこくはく）を以（もっ）てイエズスと共（とも）に罪（つみ）に死（し）し、叉聖体拝領（またせいたいはいれう）を以（もっ）て共（とも）に生回（いきかへ）る筈（はず）の時（とき）である故（ゆゑ）であります。 （註（ちゅう））…

（どようび）は、公教会一般（こうけうくわいいっぱん）に大斎日（だいさいび）である。春（はる）は四旬節（じゅんせつ）の第（だい）一の日曜（にちえう）の次（つぎ）、夏（なつ）は聖霊降臨祭（せいれいかうりんさい）の次（つぎ）、秋（あき）は九月（ぐわつ）十四日（か）の次（つぎ）の水曜日（すゐえうび）から、冬（ふゆ）は…

った山々はいずれもわびしい灰色の霧につつまれて、薄い夕日の光がわずかにその頂をぬらしている。 　私は荒涼とした思いをいだきながら、この水のじくじくした沼の岸にたたずんでひとりでツルゲーネフの森の旅を考えた。そうして枯草の間に竜胆（りんどう）の青い花が夢見顔に咲いているのを見た時に、しみじみあの…

右（みぎ）に右上（みあ）げて親不（おやしら）知（ず）､ 幾（いく）百仭（じん）の絕壁（ぜっぺき）に､ 碎（くだ）くる濤（なみ）を窺（うかゞ）ひて､ 辛（から）くも隱（かく）るゝ岩窟（いはむろ）の､ 次󠄁（つぎ）より次󠄁（つぎ）へ走（はし）り行（ゆ）く､ 危（き）險（けん）も今（いま）はいと安（やす）し。…