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んなさい。とびどぐもたないでくなさい。 山ねこ　拝 こんなのです。字はまるでへたで、墨（すみ）もがさがさして指につくくらいでした。けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。はがきをそっと学校のかばんにしまって、うちじゅうとんだりはねたりしました。 ね床（どこ）にもぐってからも…

　　君(きみ)も　なよら 又　比嘉(ひが)の金(かな)杜(もり)に 58 一　屋宜(やぎ)の金(かな)杜(もり)に あけ加那志(がなし)　手(て)摩(づ)て 世勝(まさ)る見(み)揚(や)がり 誇(ほこ)りよわちへ 又　比嘉(ひが)の金(かな)杜(もり)に 59 一　屋宜(やぎ)の金(かな)杜(もり)に…

ります、伯父樣御全快にならば表店（おもて）に出るも譯なき事なれば、一日も早く快く成つて下され、伯父樣に何ぞと存じたれど、道は遠し心は急く、車夫（くるまや）の足が何時より遲いやうに思はれて、御好物の飴屋が軒も見はぐりました、此金（これ）は少々なれど私が小遣の殘り…

けやげたる、つよは〔〕、 つよからど、かば〔〕し〔〕や、ある 一 は〔〕なぐす〔〕くあんじつきの、大や 又 花城ちやらつきの、大や 又 ひとりぐわ〔〕の、やぐさぐわ〔〕は〔〕、なちへ、おちゑ 又 ほか、あたりに〔〕、うち、あたりに〔〕、あへる 又 は〔〕つかりやが、し〔〕たし〔〕らびよは〔〕、ゑらで…

女の髪も段々堪らないのが多くなりました。――あなたにお貸しした化物の本のなかに、こんな絵があつたのを御存じですか。それは女のお化けです。顔はあたり前ですが、後頭部に――その部分がお化けなのです。貪婪（どんらん）な口を持つてゐます。そして解（ほぐ…

日向（ひなた）のお部屋（へや）にや笛（ふえ）を吹（ふ）く。 蝸牛（まゐまゐ）、螺旋卷（ねぢまき）、マ、ミ、ム、メ、モ。 梅（うめ）の實（み）落（お）ちても見（み）もしまい。 燒栗（やきぐり）、ゆで栗（ぐり）。ヤ、イ、ユ、エ、ヨ。 山田（やまだ）に灯（ひ）のつく宵（よひ）の家（いへ）。 雷鳥（らいてう）は寒（さむ）かろ、ラ、リ、ル、レ、ロ。…

一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。 關西 參宮 南海各線 汽（き）車（しや）をたよりに思（おも）ひ立（た）つ 伊勢（いせ）や大和（やまと）の國（くに）めぐり 網島（あみじま）いでゝ關（くわん）西（さい）の 線（せん）路（ろ）を旅（たび）の始（はじめ）にて 造幣（ぞうへい）局（きよく）の朝（あさ）ざくら…

　敎經、早わざにはおとりけん、續いても飛び得ず。今はかうと思ひ定め、太刀・長刀も海へ投げ、かぶとも脱いで海へ捨てたり。甲の袖、草ずりもかなぐり捨て、胴ばかり着て、大手をひろげて船の屋形に立ち出で、大音聲あげて、 「源氏の方にわれと思はん者あらば、敎經組んで生け捕りにせよ。寄れや、寄れ。」 といひけれども、寄る者一人もなかりけり。…

もたづさはりて、みたりのをのこゞ〈爲顯爲相爲守〉ども、もゝちのうたのふるほぐどもを、いかなるえにかありけむ、あづかりもたることあれど、「道を助けよ、子をはぐゝめ、後の世をとへ」とて深きちぎりをむすびおかれし細川のながれも、ゆゑなくせきとめられしかば、あととふのりのともしびも、道をまもり…

も）みくちやにして掃（はき）だめの隅に、投げ出す様（やう）な罰（ばち）しらずが、其処等（そこら）あたりに珍らしからぬ世の中、憤るほど管（くだ）なるべし。「さりとも我れは我が観念あり。握り初（そ）めたる筆の因果、よし狂（きやう）といはゞ言へ、愚（ぐ…

もいはず。たゞことなる事なきげすなどのさへこそゆかしくて。なにぞとはとはるれ。ぢもく（除目）のつとめて。しる人のなるべきあるおりはさらなり。さらぬおりもまづきかまほしうて。たづねらるかし。ゑりぐさをきてそゝぐも。 そめはぎ。かいねりうたせたるをもてきたる。おもふ人のふみ。 心も…

「親分。案の通り、金造は切疵（きりきず）のくすりを買って行きました。金創（きんそう）いっさいの妙薬という煉薬（ねりぐすり）だそうで……」 勇二は金造の家（うち）にかくれて疵養生をしているのであろうと、半七は推量した。鈴ケ森で侍を殺した時に、彼も手疵を負ったらしい。自分の家へ帰って療治すると、秘密露顕の虞（おそ）れがあるので、金…

）ないのを確（たしか）め便所󠄁（べんじよ）の入口（いりぐち）に母（はゝ）が見張（みは）りに立（た）つ。それでも母（はゝ）の留守（るす）の間（あひだ）に便所󠄁（べんじよ）へ立（た）つて、うつかり隣家（りんか）の子供（こども）に見つかつたこともあつたのであらう、或時（あるとき）、隣家（りんか）の子…

:制作日時は推定である。 小鳥に わが宿の いぢけたるもみぢも 春（はる）は　けさは 爪のごとき 朱き芽（め）をふき ふと見れば なにか木の葉（は）の 小鳥（とり）一羽來て 枝くぐり あちこちわたり ちちと鳴（な）けり 硯（すずり）にほこりつもり 筆（ふで）こちこちになりて この宿（やど）のあるじ うたよまぬ幾（いく）日か…

も煙りも一度に揺れて、余勢が横なぐりに、悄然（しょうぜん）と立つ碌さんの体躯（からだ）へ突き当るように思われる。草は眼を走らす限りを尽くしてことごとく煙りのなかに靡（なび）く上を、さあさあと雨が走って行く。草と雨の間を大きな雲が遠慮も…

りぐち）と、入口（いりぐち）が二つになつて居（ゐ）ましたが、その臺所（だいどころ）の入口（いりぐち）から見（み）ますと、爐邊（ろばた）ではもう夕飯（ゆふはん）が始（はじ）まつて居（ゐ）ました。ところが誰（だれ）も父（とう）さんに『お入（はい）り…

奥州線―磐城線 汽（き）車（しや）は烟（けむり）を噴（は）き立（た）てゝ 今（いま）ぞ上（うへ）野（の）を出（い）でゝゆく ゆくへは何（いづ）く陸奧（みちのく）の 青森（あをもり）までも一飛（ひととび）に 王（わう）子（じ）に着（つ）きて仰（あふ）ぎみる 森（もり）は花（はな）見（み）し飛鳥（あすか）山（やま）…

響殷々、澄みわたる 大氣搖るがし亂るれば 鳥は驚き友をよび 綠天葢ゆるがして 百千（も　ち）に亂れ、白銀の 箙背に負ふ神將が 引番へ射る千束矢（ちづかや）の 白羽のごとく光射（さ）し 紫雲たなびく九重の 大宮めぐり鳴きかはし 靄の御幕（みとばり）ひきかゝげ 東をさせば、天津宮 闇の夢戶を押ひらき いま日の神のいでましに…

藍（あゐ）の如（ごと）くに流（なが）れたる 中（なか）を白（しら）帆（ほ）の四（よ）つ五（いつ）つ ゆくもしづけき御（み）代（よ）のさま 鹿（か）島（しま）香（か）取（とり）の宮（みや）めぐり すまして渡（わた）る舟（ふね）の道（みち） 霞（かすみ）が浦（うら）のほの〴〵と かすむもうれし日（ひ）はいでゝ…

いとゝしくなけかしきよを神無月旅の空にもふる時雨哉 御山につくほどに。木のもとごとに手向の神おほかれば。水のみにとまる夜。 萬代の神てふかみにたむけしつ思ひと思ふことはなりなん それより三日といふ日御山につきぬ。こゝかしこめぐりて見れば。あむじち（庵室）ども二三百ばかりをのがおもひ〳〵にしたるさまもいとおかし。したしうしりたる人のも…