小倉百人一首
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歌番号 | 句 (括弧内は歴史的仮名遣による読み、 太字は決まり字) |
作者 (括弧内は歴史的仮名遣による読み) |
出典 | かるた 読み札 |
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一 | 秋の田の かりほの庵の とまをあらみ わが衣手は 露にぬれつつ (あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ) |
天智天皇 (てんちてんわう) |
後撰集秋中302 | |
二 | 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 (はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま) |
持統天皇 (ぢとうてんわう) |
新古今集夏175 | |
三 | 足引きの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ (あしびきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ) |
柿本人麿 (かきのもとのひとまろ) |
拾遺集恋三778 | |
四 | 田子の浦に 打出でてみれば 白妙の ふじの高嶺に 雪は降りつつ (たごのうらに うちいでてみれば しろたへの ふじのたかねに ゆきはふりつつ) |
山部赤人 (やまべのあかひと) |
新古今集冬675 | |
五 | 奥山に 紅葉ふみ分け なく鹿の 聲きく時ぞ 秋は悲しき (おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こゑきくときぞ あきはかなしき) |
猿丸太夫 (さるまるだいふ) |
古今集秋上215 | |
六 | かさゝぎの 渡せる橋に おく霜の しろきを見れば 夜ぞふけにける (かさゝぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける) |
中納言家持 (ちゆうなごんやかもち) |
新古今集冬620 | |
七 | 天の原 ふりさけ見れば 春日なる みかさの山に 出でし月かも (あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも) |
阿倍仲麻呂 (あべのなかまろ) |
古今集羇旅406 | |
八 | わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり (わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり) |
喜撰法師 (きせんほふし) |
古今集雑下983 | |
九 | 花の色は 移りにけりな 徒に 我が身世にふる ながめせしまに (はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに) |
小野小町 (をののこまち) |
古今集春下113 | |
十 | これや此の 行くも帰るも 別かれては 知るも知らぬも 逢坂の関 (これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき) |
蝉丸 (せみまる) |
後撰集雑一1089 | |
十一 | わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人にはつげよ あまの釣舟 (わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね) |
参議篁 (さんぎたかむら) |
古今集羇旅407 | |
十二 | 天つ風 雲のかよひぢ 吹きとぢよ をとめの姿 しばし留めむ (あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ) |
僧正遍昭 (そうじやうへんぜう) |
古今集雑上872 | |
十三 | 筑波嶺の 峯より落つる みなの川 戀ぞつもりて 淵となりぬる (つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる) |
陽成院 (やうぜいゐん) |
後撰集恋三776 | |
十四 | 陸奥の しのぶもぢずり 誰故に みだれ初めにし 我ならなくに (みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに) |
河原左大臣 (かはらのさだいじん) |
古今集恋四724 | |
十五 | 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ (きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ) |
光孝天皇 (くわうかうてんわう) |
古今集春上21 | |
十六 | 立別れ いなばの山の 嶺におふる まつとし聞かば 今帰り来む (たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ) |
中納言行平 (ちゆうなごんゆきひら) |
古今集離別365 | |
十七 | ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 から紅に 水くくるとは (ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは) |
在原業平朝臣 (ありはらのなりひらあそん) |
古今集秋下294 | |
十八 | 住の江の 岸に寄る浪 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ (すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ) |
藤原敏行朝臣 (ふぢはらのとしゆきあそん) |
古今集恋二559 | |
十九 | 難波潟 短き葦の ふしのまも あはで此の世を すぐしてよとや (なにはがた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや) |
伊勢 (いせ) |
新古今集恋一1049 | |
二十 | 侘びぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ (わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ) |
元良親王 (もとよししんわう) |
後撰集恋五961 | |
二十一 | 今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな (いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな) |
素性法師 (そせいほふし) |
古今集恋四691 | |
二十二 | 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ (ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ) |
文屋康秀 (ふんやのやすひで) |
古今集秋下249 | |
二十三 | 月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど (つきみれば ちゞにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど) |
大江千里 (おほえのちさと) |
古今集秋上193 | |
二十四 | 此の度は 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに (このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみぢのにしき かみのまにまに) |
菅家 (かんけ) |
古今集羇旅420 | |
二十五 | 名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人にしられで くるよしもがな (なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな) |
三条右大臣 (さんでうのうだいじん) |
後撰集恋三701 | |
二十六 | 小倉山 峯のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ (をぐらやま みねのもみぢば こゝろあらば いまひとたびの みゆきまたなむ) |
貞信公 (ていしんこう) |
拾遺集雑秋1128 | |
二十七 | みかの原 わきて流るる 泉川 いつみきとてか 戀しかるらむ (みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ) |
中納言兼輔 (ちゆうなごんかねすけ) |
新古今集恋一996 | |
二十八 | 山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば (やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば) |
源宗行朝臣 (みなもとのむねゆきあそん) |
古今集冬315 | |
二十九 | 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花 (こゝろあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな) |
凡河内躬恒 (おほしかふちのみつね) |
古今集秋下277 | |
三十 | 有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし (ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし) |
壬生忠岑 (みぶのただみね) |
古今集恋三625 | |
三十一 | 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 (あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき) |
坂上是則 (さかのうへのこれのり) |
古今集冬332 | |
三十二 | 山がはに 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり (やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり) |
春道列樹 (はるみちのつらき) |
古今集秋下303 | |
三十三 | 久方の 光のどけき 春の日に しづごころなく 花の散るらむ (ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづごころなく はなのちるらむ) |
紀友則 (きのとものり) |
古今集春下84 | |
三十四 | 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに (たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに) |
藤原興風 (ふぢはらのおきかぜ) |
古今集雑上909 | |
三十五 | 人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける (ひとはいさ こゝろもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける) |
紀貫之 (きのつらゆき) |
古今集春上42 | |
三十六 | 夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ (なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ) |
清原深養父 (きよはらのふかやぶ) |
古今集夏166 | |
三十七 | 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける (しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける) |
文屋朝康 (ふんやのあさやす) |
後撰集秋中308 | |
三十八 | 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな (わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな) |
右近 (うこん) |
拾遺集恋四870 | |
三十九 | 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の戀しき (あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき) |
参議等 (さんぎひとし) |
後撰集恋一578 | |
四十 | 忍ぶれど 色に出にけり 我が戀は ものや思ふと 人の問ふまで (しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで) |
平兼盛 (たひらのかねもり) |
拾遺集恋一622 | |
四十一 | 戀すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか (こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか) |
壬生忠見 (みぶのただみ) |
拾遺集恋一621 | |
四十二 | 契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪こさじとは (ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すゑのまつやま なみこさじとは) |
清原元輔 (きよはらのもとすけ) |
後拾遺集恋四770 | |
四十三 | 逢ひみての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり (あひみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもはざりけり) |
権中納言敦忠 (ごんちゆうなごんあつただ) |
拾遺集恋二710 | |
四十四 | 逢ふことの 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし (あふことの たえてしなくば なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし) |
中納言朝忠 (ちゆうなごんあさただ) |
拾遺集恋一678 | |
四十五 | 哀れとも いふべき人は おもほえで 身のいたづらに なりぬべきかな (あはれとも いふべきひとは おもほえで みのいたづらに なりぬべきかな) |
謙徳公 (けんとくこう) |
拾遺集恋五950 | |
四十六 | 由良の戸を わたる舟人 楫をたえ 行方もしらぬ 戀の道かな (ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな) |
曽根好忠 (そねのよしただ) |
新古今集恋一1071 | |
四十七 | 八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋はきにけり (やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり) |
恵慶法師 (ゑぎやうほふし) |
拾遺集秋140 | |
四十八 | 風をいたみ 岩うつ浪の おのれのみ 砕けてものを 思ふ頃かな (かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな) |
源重之 (みなもとのしげゆき) |
詞花集恋上210 | |
四十九 | 御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ 晝は消えつつ ものをこそ思へ (みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ) |
大中臣能宣朝臣 (おほなかとみのよしのぶあそん) |
詞花集恋上224 | |
五十 | 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな (きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな) |
藤原義孝 (ふぢはらのよしたか) |
後拾遺集恋二669 | |
五十一 | かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを (かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを) |
藤原実方朝臣 (ふぢはらのさねかたあそん) |
後拾遺集恋一612 | |
五十二 | 明けぬれば くるるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな (あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな) |
藤原道信朝臣 (ふぢはらのみちのぶあそん) |
後拾遺集恋二672 | |
五十三 | 嘆きつつ 獨りぬる夜の 明くるまは いかに久しき ものとかは知る (なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる) |
右大将道綱母 (うだいしやうみちつなのはは) |
拾遺集恋四912 | |
五十四 | 忘れじの 行末までは 難ければ 今日を限りの 命ともがな (わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな) |
儀同三司母 (ぎどうさんしのはは) |
新古今集恋三1149 | |
五十五 | 瀧の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞えけれ (たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ) |
大納言公任 (だいなごんきんとう) |
千載集雑上1035 | |
五十六 | あらざらむ 此の世のほかの 思ひ出に 今一たびの 逢ふこともがな (あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな) |
和泉式部 (いづみしきぶ) |
後拾遺集恋三763 | |
五十七 | 廻り逢ひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな (めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな) |
紫式部 (むらさきしきぶ) |
新古今集雑上1497 | |
五十八 | 有馬山 ゐなのささ原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする (ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする) |
大貮三位 (だいにのさんゐ) |
後拾遺集恋二709 | |
五十九 | やすらはで 寝なましものを 小夜更けて 傾くまでの 月を見しかな (やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな) |
赤染衛門 (あかぞめゑもん) |
後拾遺集恋二680 | |
六十 | 大江山 いくのの道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立 (おほえやま いくののみちの とほければ まだふみもみず あまのはしだて) |
小式部内侍 (こしきぶのないし) |
金葉集雑上586 | |
六十一 | 古への 奈良の都の 八重ざくら 今日九重に 匂ひぬるかな (いにしへの ならのみやこの やへざくら けふここのへに にほひぬるかな) |
伊勢大輔 (いせのおほすけ) |
詞花集春27 | |
六十二 | 夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも 世に逢坂の 関はゆるさじ (よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ) |
清少納言 (せいせうなごん) |
後拾遺集雑二940 | |
六十三 | 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな (いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな) |
左京大夫道雅 (さきやうだいぶみちまさ) |
後拾遺集恋三750 | |
六十四 | 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木 (あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ) |
権中納言定頼 (ごんちゆうなごんさだより) |
千載集冬419 | |
六十五 | 恨み侘び ほさぬ袖だに あるものを 戀に朽ちなむ 名こそ惜しけれ (うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ) |
相模 (さがみ) |
後拾遺集恋四815 | |
六十六 | 諸共に あはれと思へ 山ざくら 花よりほかに 知る人もなし (もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし) |
大僧正行尊 (だいそうじやうぎやうそん) |
金葉集雑上556 | |
六十七 | 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ (はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ) |
周防内侍 (すはうのないし) |
千載集雑上961 | |
六十八 | 心にも あらで憂世に ながらへば 戀しかるべき 夜半の月かな (こゝろにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな) |
三条院 (さんでうゐん) |
後拾遺集雑一861 | |
六十九 | 嵐ふく 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり (あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり) |
能因法師 (のういんほふし) |
後拾遺集秋下366 | |
七十 | 寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづくも同じ 秋の夕暮 (さびしさに やどをたちいでて ながむれば いづくもおなじ あきのゆふぐれ) |
良暹法師 (りやうせんほふし) |
後拾遺集秋上333 | |
七十一 | 夕されば 門田の稲葉 おとづれて あしのまろやに 秋風ぞ吹く (ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく) |
大納言経信 (だいなごんつねのぶ) |
金葉集秋183 | |
七十二 | 音に聞く 高師の濱の あだ浪は かけじや袖の ぬれもこそすれ (おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ) |
祐子内親王家紀伊 (ゆうしないしんわうけのきい) |
金葉集恋下501 | |
七十三 | 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ (たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ) |
権中納言匡房 (ごんちゆうなごんまさふさ) |
後拾遺集春上120 | |
七十四 | うかりける 人を初瀬の 山おろし はげしかれとは 祈らぬものを (うかりける ひとをはつせの やまおろし はげしかれとは いのらぬものを) |
源俊頼朝臣 (みなもとのとしよりあそん) |
千載集恋二707 | |
七十五 | 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋も去ぬめり (ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり) |
藤原基俊 (ふぢはらのもととし) |
千載集雑上1023 | |
七十六 | わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白浪 (わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ) |
法性寺入道前関白太政大臣 (ほふしやうじにふだうさきのかんぱくだじやうだいじん) |
詞花集雑下380 | |
七十七 | 瀬を早み 岩にせかるる 瀧川の われても末に 逢はむとぞ思ふ (せをはやみ いはにせかるる たきがはの われてもすゑに あはむとぞおもふ) |
崇徳院 (すとくゐん) |
詞花集恋上228 | |
七十八 | 淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いくよ寝覚めぬ 須磨の関守 (あはぢしま かよふちどりの なくこゑに いくよねざめぬ すまのせきもり) |
源兼昌 (みなもとのかねまさ) |
金葉集冬288 | |
七十九 | 秋風に たなびく雲の 絶間より もれ出づる月の 影のさやけさ (あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ) |
左京大夫顕輔 (さきやうだいぶあきすけ) |
新古今集秋上413 | |
八十 | ながからむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ (ながからむ こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ) |
待賢門院堀河 (たいけんもんゐんのほりかわ) |
千載集恋三801 | |
八十一 | ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる (ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる) |
後徳大寺左大臣 (ごとくだいじのさだいじん) |
千載集夏161 | |
八十二 | 思ひわび さても命は あるものを 憂きに堪へぬは 涙なりけり (おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり) |
道因法師 (だういんほふし) |
千載集恋三817 | |
八十三 | 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞなくなる (よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる) |
皇太后宮大夫俊成 (くわうたいごうぐうのたいぶとしなり) |
千載集雑中1148 | |
八十四 | ながらへば また此の頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は戀しき (ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき) |
藤原清輔朝臣 (ふぢはらのきよすけあそん) |
新古今集雑下1843 | |
八十五 | 夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり (よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり) |
俊恵法師 (しゆんゑほふし) |
千載集恋二765 | |
八十六 | 嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな (なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな) |
西行法師 (さいぎやうほふし) |
千載集恋五926 | |
八十七 | 村雨の 露もまだひぬ 槙の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮 (むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ) |
寂蓮法師 (じやくれんほふし) |
新古今集秋下491 | |
八十八 | 難波江の あしのかりねの 一夜ゆゑ みをつくしてや 戀ひわたるべき (なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるべき) |
皇嘉門院別当 (くわうかもんゐんのべつたう) |
千載集恋三806 | |
八十九 | 玉の緒よ たえなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする (たまのをよ たえなばたえね ながらへば しのぶることの よはりもぞする) |
式子内親王 (しきしないしんわう) |
新古今集恋一1034 | |
九十 | 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色はかはらず (みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず) |
殷富門院大輔 (いんぶもんゐんのたいふ) |
千載集恋四884 | |
九十一 | きりぎりす なくや霜夜の さむしろに 衣かたしき 獨りかも寝む (きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ) |
後京極摂政前太政大臣 (ごきやうごくせふしやうさきのだじやうだいじん) |
新古今集秋下518 | |
九十二 | わが袖は 汐干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし (わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし) |
二条院讃岐 (にでうゐんのさぬき) |
千載集恋二759 | |
九十三 | 世の中は 常にもがもな 渚こぐ 海士の小舟の 綱手かなしも (よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのをぶねの つなでかなしも) |
鎌倉右大臣 (かまくらのうだいじん) |
新勅撰集羇旅525 | |
九十四 | みよし野の 山の秋風 小夜更けて 故郷寒く 衣うつなり (みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり) |
参議雅経 (さんぎまさつね) |
新古今集秋下483 | |
九十五 | おほけなく うき世の民に おほふかな 我が立つ杣に 墨染の袖 (おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつそまに すみぞめのそで) |
前大僧正慈圓 (さきのだいそうじやうじゑん) |
千載集雑中1134 | |
九十六 | 花さそふ あらしの庭の 雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり (はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり) |
入道前太政大臣 (にふだうさきのだじやうだいじん) |
新勅撰集雑一1052 | |
九十七 | 来ぬ人を 松帆の浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ (こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ) |
権中納言定家 (ごんちゆうなごんさだいへ) |
新勅撰集恋三849 | |
九十八 | 風そよぐ 楢の小川の 夕ぐれは みそぎぞ夏の しるしなりける (かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける) |
従二位家隆 (じゆにゐいへたか) |
新勅撰集夏192 | |
九十九 | 人もをし 人もうらめし あぢきなく 世を思ふ故に もの思ふ身は (ひともをし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは) |
後鳥羽院 (ごとばのゐん) |
続後撰集雑中1199 | |
百 | 百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり (ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり) |
順徳院 (じゆんとくゐん) |
続後撰集雑下1202 |
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