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  • 更け歩いた。それは岡崎公園にあった博覧会の朝鮮館で友人が買って来たものだった。銀の地にや赤の七宝(しっぽう)がおいてあり、美しい枯れた音がした。人びとのなかでは聞こえなくなり、夜更けの道で鳴り出すそれは、彼のの象徴のように思えた。 ここでも町は、窓辺から見る風景のように、歩いている彼に展(ひら)けてゆくのであった。…
    23キロバイト (4,808 語) - 2021年12月9日 (木) 11:40
  • そのものは第二段として、あの安っぽい絵具で赤や紫や黄やや、さまざまの縞模様(しまもよう)を持った花火の束、中山寺の星下り、花合戦、枯れすすき。それから鼠花火(ねずみはなび)というのは一つずつ輪になっていて箱に詰めてある。そんなものが変に私のを唆(そそ)った。…
    17キロバイト (3,316 語) - 2023年10月24日 (火) 09:28
  • ばらばらになってしまって、変な錯誤の感じとともに、訝(いぶ)かしい魅惑が私のを充(み)たして来るのだった。 私はそれによく似た感情を、露草の青い花を眼にするとき経験することがある。草叢(くさむら)の緑とまぎれやすいそのは不思議な惑わしを持っている。私はそれを、露草の花が青空や海と共通の色を持っ…
    7キロバイト (1,484 語) - 2021年12月11日 (土) 23:41
  • に煙らせている木の若芽も、ただそれだけでは、もうろうとした心象に過ぎない。俺には惨劇が必要なんだ。その平衡があって、はじめて俺の心象は明確になって来る。俺のは悪鬼のように憂鬱に渇いている。俺のに憂鬱が完成するときにばかり、俺のは和(なご)んでくる。…
    6キロバイト (1,311 語) - 2023年11月1日 (水) 07:30
  • 猫 作者:萩原朔太郎 1923年 書誌情報 書誌情報の詳細は議論ページをご覧ください。   序       ◉  私の情緒は、激情(パツシヨン)といふ範疇に屬しない。むしろそれはしづかな靈魂ののすたるぢやであり、かの春の夜に聽く横笛のひびきである。  ある人は私の詩を官能的であるといふ。或はさう…
    134キロバイト (26,710 語) - 2023年10月17日 (火) 13:53
  • 第一卷』 船は岬から岬へ、島から島へと麗しい航路を進んでゐた。瀨戸内海の日沒――艫の一條の泡が白い路となつて消えてゆく西には太陽の榮光はもう大方は濃いに染んでしまつた雲の緣を彩つてゐたが、船の進んでゆく東の方はもう全く暮れてしまつて、美しい星が燦き初めてゐた。…
    11キロバイト (2,606 語) - 2021年8月31日 (火) 22:31
  • 買うようになっていることをきかねばならなかった。私は泣いて両親に詫(わ)びた。 感傷的な父は一緒に泣いた。しかし母は泣いてはいなかった。私は母の顔がざめて堪(た)えられない苦悩(くのう)に歪(ゆが)められていたのを覚えている。私は出来るなら母にその苦しみの最後の一滴(ひとたら)しまではのませたく…
    11キロバイト (2,359 語) - 2023年2月16日 (木) 09:55
  • る。しかし入江の眺めはそれを過ぎていた。そこに限って気韻が生動している。そんな風に思えた。―― 空が秋らしく青空に澄む日には、海はそのよりやや温(あたた)かい深に映った。白い雲がある時は海も白く光って見えた。今日は先ほどの入道雲が水平線の上へ拡がってザボンの内皮の色がして、海も入江の真近までそ…
    58キロバイト (11,645 語) - 2021年8月31日 (火) 22:16
  • シャボンだま)が、蒼ざめた人と街とを昇天させながら、その空気のなかへパッと七彩に浮かび上る瞬間を想像した。 く澄み透(とお)った空では浮雲が次から次へ美しく燃えていった。みたされない尭のの燠(おき)にも、やがてその火は燃えうつった。 「こんなに美しいときが、なぜこんなに短いのだろう」…
    37キロバイト (7,629 語) - 2021年12月10日 (金) 09:31
  • りました。私は母の寝台の前まで走りました。そして自分のざめた顔をうつしました。それは醜くひきつゝてゐました。何故そこまで走つたのか――それは自分にも判然(はつきり)しません。その苦しさを眼で見ておかうとしたのかも知れません。顔を見て或る場合の激動の静まるときもあります。…
    32キロバイト (7,119 語) - 2021年9月8日 (水) 07:59
  • するものであるということを信ぜしめるに充分であった。真暗な闇にもかかわらず私はそれが昼間と同じであるような感じを抱(いだ)いた。星の光っている空は真であった。道を見分けてゆく方法は昼間の方法と何の変ったこともなかった。道を染めている昼間のほとぼりはなおさらその感じを強くした。…
    33キロバイト (6,841 語) - 2021年12月11日 (土) 23:52
  • い茄子(なす)色の影の中で私は昼寝をしていたのである。頭上の枝葉はぎっしりと密生(こ)んでいて、葉洩日もほとんど落ちて来ない。 起上って沖を見た時、鯖(さば)色の水を切って走る朱の三角帆の鮮やかさが、私の目をハッキリと醒(さ)めさせた。その帆掛独木船(カヌー)は、今ちょうど外海から堡礁(リーフ)…
    11キロバイト (2,262 語) - 2023年7月29日 (土) 05:18
  • た関係からビスマルクなどというのも時にあったが、ナポレオンは珍しい。しかし、私の知っている他の島民の名前、シチガツ(七月に生れたのであろう)ココロ(?)、ハミガキなどと比べれば、何といっても堂々たる名前には違いない。もっとも、その余り堂々とし過ぎている点が可笑(おか)しいのには違いないが。…
    24キロバイト (4,838 語) - 2021年8月31日 (火) 22:10
  • 此処(こゝ)東京の地にばかり二百に余る画工のうち、天晴(あつぱれ)道の奥を極めて、万里海外の(あを)眼玉(めだま)に、日本固有の技芸の妙、見せつけくれんの腸(はらわた)もつものなく、手に筆は取り習らへど、は小利小欲のかたまり。「美とは何(なん)ぞ儲(まう)け口(ぐち)か、乃至(ないし)吉原(よし…
    942バイト (16,772 語) - 2020年8月20日 (木) 14:11
  • どとは、灰色の夢ですよ」と弟子の一人言つた。 「を深く潜ませて自然を御覧なさい。雲、空、風、雪、うす碧(あを)い氷、紅藻の揺れ、夜水中でこまかくきらめく珪藻類の光、鸚鵡貝(あうむがひ)の螺旋(らせん)、紫水晶の結晶、柘榴石(ざくろいし)の紅、螢石の。何と美しく其等が自然の秘密を語つてゐるやうに見…
    57キロバイト (12,283 語) - 2021年8月31日 (火) 22:21
  • とほとんど見分けの付かない・ちょっと蝉の抜(ぬ)け殻(がら)のような感じの・小さな蟹が無数に逃げ走るのである。南洋には、マングローブ地帯に多い・赤とのペンキを塗ったような汐招き蟹なら到る所にいるが、この淡い影のような蟹は珍しい。初めてパラオ本島のガラルド海岸でこれを見た時、一つ一つ蟹の形は見えず…
    12キロバイト (2,441 語) - 2021年8月31日 (火) 22:18
  • (ほこり)のにほひが冷たく鼻を襲ふ。闇の奥から、大きな鷹頭神の立像が、硬い表情でこちらを覗いてゐる。近くの壁書を見れば、豺(やまいぬ)や鰐(わに)や鷲などの奇怪な動物の頭をつけた神々の憂鬱な行列である。顔も胴もない巨(おほ)きな眼(ウチヤト)が一つ、細長い足と手とを生(は)やして、其の行列に加はつてゐる。…
    14キロバイト (3,024 語) - 2021年8月31日 (火) 22:25
  • ご)呼吸(こきふ)せまりて見(み)る/\顔色(かほいろ)(あほ)み行(ゆ)くは露(つゆ)の玉(たま)の緒(を)今宵(こよひ)はよもと思(おも)ふに良之助(りやうのすけ)起(た)つべき(こゝろ)はさらにもなけれど臨終(いまは)に迄(まで)も(こゝろ)づかひさせんことのいとをしくて屏風(べうぶ)の…
    29キロバイト (5,017 語) - 2019年9月29日 (日) 05:32
  • る観衆の中に、ハモニカを持った二人の現代風の青年の交っていたことである。二人とも、最近コロールの町に出て購(もと)めたに違いない・揃(そろ)いの・真な新しいワイシャツを着込み、縮れた髪に香油(ポマード)をべっとりと塗りつけて、足こそ跣足(はだし)ながら、なかなかハイカラないでたちである。彼らは、…
    25キロバイト (5,021 語) - 2021年8月31日 (火) 22:17
  • 古物に、お前の好きな冷奴(ひやゝつこ)にしましたとて小丼に豆腐を浮かせて紫蘇の香たかく持出せば、太吉は何時しか臺より飯櫃取おろして、よつちよいよつちよいと擔ぎ出す、坊主は我れが傍に來いとて頭(つむり)を撫でつゝ箸を取るに、は何を思ふとなけれど舌に覺えの無くて咽の穴はれたる如く、もう止めにすると…
    64キロバイト (14,846 語) - 2023年10月17日 (火) 13:37
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