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- た後(のち)、忌々(いまいま)しそうに唾(つば)をするが早いか、たちまち大きい石臼(いしうす)になった。そうしてごろごろ転がりながら闇の中に消え失(う)せてしまった。 じょあん孫七(まごしち)、じょあんなおすみ、まりやおぎんの三人は、土の牢(ろう)に投げこまれた上、天主(てんしゅ)の…24キロバイト (3,874 語) - 2019年9月29日 (日) 04:48
- この子 (カテゴリ 日本の短編小説)かあい)いといふ事(こと)を申(まを)したら、嘸(さぞ)皆樣(みなさま)は大笑(おほわら)ひを遊(あそ)ばしましやう、それは何方(どなた)だからとて我子(わがこ)の憎(にく)いはありませぬもの、取(とり)たてゝ何(なに)も斯(か)う自分(じぶん)ばかり美事(みごと)な寶(た…42キロバイト (6,806 語) - 2019年9月29日 (日) 04:49
- のすけ)お千代(ちよ)に向(むか)ふときはありし雛遊(ひなあそ)びの心(こゝろ)あらたまらず改(あらた)まりし姿(すがた)かたち気(き)にとめんとせねばとまりもせで良(りやう)さん千代(ちい)ちやんと他愛(たあい)もなき談笑(だんせふ)に果(は)ては引(ひ)き出(だ)す喧嘩(けんくわ)の…29キロバイト (5,017 語) - 2019年9月29日 (日) 05:32
- れバ、実ニ御蔵のにわとり とやらにて御座候。今一、二年 もくろふ致し候得バ、すこ しハやくにたち可申か、 まあ今の所でハ何も しよふのなき人ニて御座候。 当時他国ニ骨(ホネ)おり候人ニ ハなんぼあほふと云人でも、 お国の並〻の人の及所で ハこれなく、先日大坂の おやしきニ行て御用人 やら小役人ニであい候所、…12キロバイト (2,121 語) - 2014年1月11日 (土) 15:06
- 鹿踊りのはじまり 作者:宮沢賢治 1924年 書誌情報 そのとき西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだから、夕陽(ゆうひ)は赤くななめに苔(こけ)の野原に注ぎ、すすきはみんな白い火のようにゆれて光りました。わたくしが疲(つか)れてそこに睡(ねむ)りますと、ざあざあ吹(ふ)いていた風が、だんだん人の…20キロバイト (3,984 語) - 2023年10月17日 (火) 13:54
- のだった。 ――わたしは忘れられた、捨てられた。あのお方は、やっぱし世の常の芸の人で、いのちがけの女の恋なぞは、おわかりにならないのだ。いいえ、女の一人、百人、自分のためにこがれ死に死んだとて、わが身の罪と、嘆くことなぞはしていられないお人なのだ。芸ばかりがいのちの、氷よりも冷たい胸のお人だったのだ――…88キロバイト (16,550 語) - 2019年3月1日 (金) 06:32
- のかさなり合った庇(ひさし)のあいだから、海のような碧(あお)い大空が不規則に劃(しき)られて見えた。月はその空の上にかかっていなかったが、東の方の空の裾がうす黄色くかがやいているので、今夜の明月が思いやられた。露はいつの間にか降(お)りているらしく、この頃ではもう邪魔物の…51キロバイト (10,717 語) - 2019年2月27日 (水) 14:40
- 軒もる月 (カテゴリ 日本の短編小説)か、あれ、空(そら)に聞(きこ)ゆるは上野(うへの)の鐘(かね)ならん、二(ふた)つ三(み)つ四(よ)つ、八時(はちじ)か、否(いな)、九時(くじ)になりけり、さても遲(おそ)くおはします事(こと)かな、いつも九時(くじ)のかねは膳(ぜん)の上(うへ)にて聞(き)き給(たま…25キロバイト (4,375 語) - 2019年9月29日 (日) 05:29
- 我が父強し (カテゴリ 日本の小説)かたがない。 じつとがまんしてだまりこんでいたが、松蔵はくやしくてたまらなかった。 やがて日が暮れかかったので、河原からしょんぼりと、広島城下のわが家へかえった。 「松蔵どうかしたの。顔色がわるいではないの。お友だちにでもいじめられたのかえ。」 門口にいた姉のお若がしんぱいしてたずねた。 「ううん。なんでもない」…21キロバイト (4,108 語) - 2021年8月31日 (火) 22:22
- どんぐりと山猫 (カテゴリ 日本の近代文学)「それでは、文句はいままでのとおりにしましょう。そこで今日のお礼ですが、あなたは黄金(きん)のどんぐり一升(しょう)と、塩鮭(しおざけ)のあたまと、どっちをおすきですか。」 「黄金のどんぐりがすきです。」 山猫は、鮭(しゃけ)の頭でなくて、まあよかったというように、口早に馬車別当に云いました。…23キロバイト (3,695 語) - 2019年9月29日 (日) 04:50
- たことが、ばれてしまっているかも知れない。 ――あの坊主、あしたまで、ぐうぐう眠つていてくれればいいが、あいつだって、悪党だ――ことによったら、もう目をさまして、騒ぎ出しているかも知れぬ。そうすれば、闇太郎のことだもの、おいらのからだを、ほうり出して置くはずがない。 どこへ行ったものか…86キロバイト (16,141 語) - 2019年9月12日 (木) 12:49
- た。手習い一方でなく、十露盤(そろばん)も教えていたが、人物も手堅く、教授もなかなか親切であると云うので、親たちのあいだには評判がよかった。しかし弟子の仕付方(しつけかた)がすこぶる厳しい方で、かの寺小屋の芝居でもみる涎(よだれ)くりのように、水を持って立たされる手習子が毎日幾人もあった…52キロバイト (10,660 語) - 2019年2月27日 (水) 14:40
- の舞台すがたに、食い入るような瞳を投げつづけながら、罵しり、もがき、もだえているのだ。 ――意気地なし、甲斐性(かいしょう)なし!何という、しッこしの無いおいらなんだ!なぜ、あの小生意気な、上方(かみがた)ものを、あのままにほうって置くのだ?ああやって、昨夜(ゆうべ)の今日、平気なかお…79キロバイト (15,045 語) - 2019年9月13日 (金) 14:05
- お)へて後(のち)は、学校の向ひなる、「カッフェエ・ミネルワ」といふ店に入りて、珈琲(カッフェー)のみ、酒くみかはしなどして、おもひおもひの戯(たわぶれ)す。こよひも瓦斯燈(ガスとう)の光、半ば開きたる窓に映じて、内には笑ひさざめく声聞ゆるをり、かどにきかかりたる二人あり。 先に立ちたるは、か…58キロバイト (11,537 語) - 2021年6月3日 (木) 23:37
- すらんと。あいなくかたはらいたきそ。かたくなしきや。たは(丹波)のかみのわらはの。あをいしらつるはみ(橡)のかさみ。おかしと思ひたるに。藤宰相のわらはゝ。赤色をきせて。しもつかへのからきぬに。靑色ををしかへしきたる。ねたけなり。わらはのかたちも。ひとりはいとまほにはみえす。宰相の…450バイト (24,717 語) - 2020年7月26日 (日) 02:44
- の声は少し高くなった。 「だからおまえさんは意気地がないよ。一生に一度あることじゃないじゃないか」と、お留は罵るように云った。 「まあ、静かにしろよ」 「だってさ。あんまり口惜(くや)しいじゃあないか。こうと知ったら、わたしが行けばよかった」 「まあいいよ。人にきこえる」…59キロバイト (11,816 語) - 2021年12月14日 (火) 10:52
- お)り様(よう)とする。 足裏(あしうら)の摺(す)れる音(おと)がガサガサと聞(きこ)える。角燈(かくとう)が壁(かべ)を伝(つと)うて急速(きゅうそく)に降(お)りて来(く)る。と思(おも)う間(あいだ)もなく、博士(はかせ)は翻然(ひらり)と軽(かる)く天水桶(てんすいおけ)の…611キロバイト (98,208 語) - 2023年5月1日 (月) 15:22
- 怨じ顔の目元が、密酒の酔いに、薄すりと染まって、言うばかりなく艶だ。 雪之丞は、頭を揮って見せて、 「これは御難題――」 と、いったが、わざと冷たく戯れて、 「あまりに、御寵愛がおすぎあそばされて、そのためのお疲れでも――」 彼は容顔を、妖しくひそめたが、それは恐らく、あまりに汚らわしことをいわねばならなかった…58キロバイト (11,125 語) - 2019年3月1日 (金) 06:31
- おねずさんに嚙じられない用心をなずった方がようござんすよ――さあ、おはいり――」 ガラガラと、引き戸になっている、陥穽(おとしあな)への入口が、あいたらしく、やがて、顧みられぬ女のやけ腹な、おこりッぽい調子で、 「さあ、下りなと言ったら、下りないか…50キロバイト (9,683 語) - 2019年2月27日 (水) 15:15
- 黒髪 (カテゴリ 日本の近代文学)たままの人がおすさかい、なんでも好きなもんお着やすちゅうて、持ったもの皆な上げてしまいましたのどす」 「初めてそこへ来た時、わたし、人が恐(こお)うおしたえ」 「それはそうだったろう。ずぶの世間知らずが、何方(どっち)を向いても性(しょう)の知れない者ばかりのところへ入って来たの…74キロバイト (14,880 語) - 2021年8月31日 (火) 22:44