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  • 「冬猫もまた細心の注意を要す。函館(はこだて)付近、馬肉にて釣らるる危険あり。特に猫は充分に猫なることを表示しつつ旅行するに非(あらざ)れば、応々黒狐(くろぎつね)と誤認せられ、本気にて追跡さるることあり。」 「よし、いまの通りだ。貴殿は我輩のやうに猫ではないから、まあ大した心配はあるまい。函館で馬肉を警戒するぐらゐのところだ。」…
    20キロバイト (3,918 語) - 2023年10月17日 (火) 13:47
  • ← 小女郎 松茸 → 『半七捕物帳』(はんしちとりものちょう) 第四巻/ と僧 作者:岡本綺堂 底本:1999年10月10日春陽堂書店発行『半七捕物帳第四巻』 「これもの話ですよ。しかし、これはわたくしが自身に手がけた事件です」と、半七老人は笑った。 嘉永(かえい)二年の秋である。江戸の谷中(…
    28キロバイト (5,746 語) - 2022年7月13日 (水) 16:09
  • じゅうを毎日歩いて、一日も早く探し出したいと思っているので……。お前さんにも何分たのみます」 「承知いたしました」 半七に別れてすたすた行き過ぎたが、平助は時どきに立停まって、なんだか不安らしくこちらを見返っているらしかった。そののような態度がいよいよ半七の疑いを増したので、彼はすぐに平助のあとを…
    49キロバイト (9,828 語) - 2020年7月14日 (火) 14:25
  • それから二、三日経って、わたくしが宵の口に横網(よこあみ)の河岸を通ると、片側の竹藪のなかへ作さんがはいって行こうとするところで、今そこでを一匹見つけたから追っかけて行こうとするんだと云いました」 「はつかまえたのか」と、七兵衛は訊いた。 「わたくしと話しているうちに、もう遠くへ逃げてしまったから駄目だと云ってやめました」…
    48キロバイト (9,773 語) - 2019年2月27日 (水) 14:44
  • ませんが、江戸時代ではこういうたぐいの髷切りを、一種の魔物の仕業と云い、又は猿か(きつね)の仕業だと云い慣(なら)わしていました。そこで、前の鮎川に飛び付いたのは、猿の仕業らしくもある。後の増田に飛びかかったのは、らしくもある。まあ、なんにしても獣の仕業らしいと云うことになりました。屯所の方で…
    67キロバイト (13,250 語) - 2019年2月27日 (水) 14:47
  • 「藤さんが……」と、お新は眉をよせた。「今夜は一度も見えませんよ」 「あら、そうですか」 お徳は煙(けむ)にまかれてぼんやりと突っ立っていた。ゆうべからの事をかんがえると、かれはやはり夢でも見ているのか、それとも八幡の森のにでも化かされているのかと、自分で自分を疑うようにもなった。 「為さんはお内ですね」…
    52キロバイト (10,544 語) - 2020年7月17日 (金) 13:20
  • を退治したなどと一生の手柄話にしていたかも知れませんよ。まったくその頃の向島は今とはまるで違っていて、いつかもお話し申した通り、狸(たぬき)も出てば(きつね)も出る、河獺(かわうそ)も出る、河童だって出そうな所でしたからね」 「蛇も出たんでしょう」 「蛇……。いや、謎をかけないでもいい。ついでに…
    50キロバイト (10,195 語) - 2019年2月27日 (水) 14:48
  • ← 正雪の絵馬 妖伝 → 『半七捕物帳』(はんしちとりものちょう) 第五巻/大森の鶏 作者:岡本綺堂 底本:2000年7月10日春陽堂書店発行『半七捕物帳第五巻』 ある年の正月下旬である。寒い風のふく宵に半七老人を訪問すると、老人は近所の銭湯(せんとう)から帰って来たところであった。その頃はまだ…
    59キロバイト (11,846 語) - 2019年2月27日 (水) 14:45
  • ほうこう)して居(ゐ)るのです。お前(まへ)さんは私(わたし)がこの住居(すまゐ)の御主人(ごしゆじん)のやうなことを言(い)ひますが私(わたし)は唯(たゞ)こゝの番人(ばんにん)です。』 斯(か)う桃林和尚(たうりんをしやう)が答(こた)へましたので、(きつね)は頭(あたま)を掻(か)き/\裏(…
    284キロバイト (45,267 語) - 2019年9月29日 (日) 04:51
  • 乗物をかついだ男たちは逃げるようにどこへか立去った。 お蝶はが落ちた人のようにぼんやりと突っ立っていたが、急にまた何だか怖くなって一散(いっさん)にかけ出して、家へ駈け込んで母の顔を見るまでは、彼女もまだ半分は夢のような心持であった。に化かされたのだろうとお亀は云ったが、ふところに入れて来た目…
    51キロバイト (10,717 語) - 2019年2月27日 (水) 14:40
  • さんをここまで案内して来たのです」 「なんのために案内して来た」 「この大きい木の下に待っている人があるから、その人に逢わせてやれと云うのです」 「待っている人と云うのは誰だ」 「知りません。逢えば判ると云いました」 「子供のようなことを云うな。
    69キロバイト (14,020 語) - 2019年2月27日 (水) 14:48
  • さんに付(つ)け文(ぶみ)でもしたんですか、こりゃ愉快だ、新年になって逸話がまた一つ殖(ふ)えて話しの好材料になる」と一人で喜んでいる。「付け文じゃないんです、もっと烈しいんでさあ、御二人とも御承知じゃありませんか」と鼻子は乙(おつ)にからまって来る。「君知ってるか」と主人は
    1.06メガバイト (208,385 語) - 2022年11月4日 (金) 04:57
  • ているんだ。部屋へ帰ったら、みんなを狩りあつめて来て片っ端から手前たちの頸を絞めて、骨は叩きにしてやるからそう思え」 「なにを云いやあがるんだ。この野郎め」 二、三人が又なぐりに行こうとするのを、半七は制した。 「まあ、待ちなせえ。疵でも付けると面倒だ。そこでお中間、おめえはまったくこの一羽を取っただけかえ」…
    47キロバイト (9,713 語) - 2019年2月27日 (水) 14:44
  • なつて凍りつくやうな・石とならうと、私は思つた。 我はもはや石とならむず 石となりて  つめたき海を沈み行かばや 氷雨(ひさめ)降り日燃えむ 冬の夜に われ石となるき小石に 眼瞑(めと)づれば 氷の上を風が吹く われ石となりて転(まろ)び行くを 腐れたる魚のまなこは 光なし 石となる日を待ちて吾がいる…
    62キロバイト (12,617 語) - 2021年8月31日 (火) 22:09
  • さんはもう駒形へ行っているから、構わずに道具を搬(はこ)び出してくれと云って、自分はどこへか立去ってしまいました。なんにも知らない手伝いの連中は家主の酒屋にことわって、お俊の家財をどしどし積み出して、駒形の引っ越し先へ送り込むと、ここにもお俊は来ていない。まるでに化かされたような始末です。…
    61キロバイト (12,383 語) - 2019年2月27日 (水) 14:39
  • ※郷裏(こくてんきょうり)〈[#「甘+舌」、72-14]〉に晴らすための妄想(もうぞう)である。盲人は鼎(かなえ)を撫(な)でる。色が見えねばこそ形が究(きわ)めたくなる。手のない盲人は撫でる事をすらあえてせぬ。ものの本体を耳目のほかに求めんとするは、手のない盲人の所作(しょさ)である。小野さん
    711キロバイト (133,899 語) - 2023年10月17日 (火) 13:49
  •  とめてとまらぬ 色のみち 竹に雀は 仙台さんのご紋  中で小鳥が 痴話をする 色の道から 出て来た私  色でしくじりゃ 是非もない 色でしくじる 紺屋の染子  浅黄そめよとて 紺そめた 紺が色なら 浅黄も色よ  わしとお前と ねるも色 色で身をうる 西瓜でさえも  中に苦労()の 種がある 色でまよわせ 味では泣かせ…
    10キロバイト (2,036 語) - 2018年5月10日 (木) 10:46
  •  それでもお玉の退屈は、夕方になると、檀那が来て慰めてくれるから、まだ好い。可笑(おか)しいのは、池の端へ越した爺いさんの身の上で、これも渡世に追われていたのが、急に楽になり過ぎて、自分でも(きつね)に撮(つま)まれたようだと思っている。そして小さいランプの下(した)で、これまでお玉と世間話をして過し…
    240キロバイト (49,639 語) - 2021年5月20日 (木) 17:25
  • 谷中の怪庵 作者:三上於菟吉 底本:昭和35年8月5日新潮社発行『雪之丞変化(下)』 上野の堂坊のいらかが、冬がすみのかなたに、灰く煙つて、楼閣(ろうかく)の丹朱(たんしゅ)が、ずんだ緑の間に、ひっそりと沈んで見える、谷中(やなか)の林間だ。 このあたり一帯、人煙希薄(じんえんきはく)、枯すすきの原さ…
    86キロバイト (16,141 語) - 2019年9月12日 (木) 12:49
  • さんとす、われは払(はらっ)て出でんとす。その勢にこれ見そなはせ、尾の先少し齧(か)み取られて、痛きこと太(はなはだ)しく、生れも付かぬ不具にされたり。かくては大切なるこの尻尾も、老人(としより)の襟巻(えりまき)にさへ成らねば、いと口惜しく思ひ侍れど。他は犬われは
    133キロバイト (25,215 語) - 2023年10月17日 (火) 13:33
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