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奴児干永寧寺二碑補考 作者：内藤湖南 昭和4年 1929年 底本: 内藤虎次郎 著『読史叢録』,弘文堂,昭和4. 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/1042280 Webブラウザ上でキーワード検索しやすくするために、「龍」を除く旧字を新字に変換し、いくつかの異体字を常用漢字に変換している。…

獄（ごく）より出（い）でて、其足（そのあし）を新（しん）世（せ）界（かい）の衢（ちまた）に立（た）て奇異（きい）にして新（あたら）しき空（くう）気（き）の香（かおり）を嗅（か）ぎ始（はじ）めたるを。其時（そのとき）は涙（なみだ）を流（なが）すを始（はじ）めん、何（なん）となれば霊（れい）児…

彼の妻はすこぶるおとなしい女だった。いまだに主人の前に出るとおずおずしてろくに口も利（き）けない。しかし、彼らの間に出来た男の児は、少しも父親を恐れないで、ヨチヨチと李陵の膝（ひざ）に匍（は）い上がって来る。その児の顔に見入りながら、数年前、長安に残してきた―そして結局母や祖母とともに殺されてしまった―子供の俤（おもか…

私 使 刺 始 姉 枝 祉 肢 姿 思 指 施 師 恣 紙 脂 視 紫 詞 歯 嗣 試 詩 資 飼 誌 雌 摯 賜 諮 示 字 寺 次 耳 自 似 児 事 侍 治 持 時 滋 慈 辞 磁 餌 璽 鹿 式 識 軸 七 叱 失 室 疾 執 湿 嫉 漆 質 実 芝 写 社 車 舎 者 射 捨 赦 斜 煮…

ちに、うまく取り出して来れば好いのです」 獄卒はその通りにやってみると、果たして金を見いだしたので、大喜びで帰って来て、あくる朝はひそかに酒と肉とを獄内に差し入れてやった。それから数日の後、彼はまた言った。 「わたしはいろいろの道具を瓶（かめ）に入れて、侍郎橋の水のなかに隠してあります」…

児㆒、何須㆓羞耻㆒、且休㆓浪語㆒、公為㆓内舎人㆒、出㆓入禁中㆒、見者欣㆓其徽猷㆒、交者尚㆓其温雅㆒、時人相語一作謂曰、人須㆑有㆑如㆓大臣長子㆒、其為㆓時人㆒、所㆑称如㆑斯也、二年正月遷㆓中判事㆒、公莅㆑官聴㆑事、公平无㆑私、察㆑言観㆑色、不㆑失㆓其実㆒、決㆑疑平㆑獄…

師年二十六歳宗頥首坐絵先師像求讃讃有典来的的付児孫之句頥公誤認為許可語而稍訓人先師聞此震怒忽欲把㡧子来付一火師出啓先師日頥兄老大久在和尚会裡人皆知之今遽火㡧子彼何面目之見人哉和尚百年後彼若漫称券開口則吾必横身破斥之勿為慮也先師怒少霽因把㡧子付頥兄曰兄能甞胆勿忘焉 　〈口呑仏祖眼乾坤手裡竹箆天魔魂一句語提三要印頥来的々付児孫〉 廿七年庚子…

。なぜこんな事が面白いと云うとその理由はいろいろある。まずひまつぶしに適している。退屈な時には髯（ひげ）の数さえ勘定して見たくなる者だ。昔（むか）し獄に投ぜられた囚人の一人は無聊（ぶりょう）のあまり、房（へや）の壁に三角形を重ねて画（か）いてその日をくらしたと云う話がある。世の中に退屈ほど我慢の出…

たす）くる恩寵（おんちょう）はこれを心（こころ）の中（うち）に造（つく）ること、或（あ）る天然（てんねん）なるものの如（ごと）くせん。それ嬰（えい）児（じ）は少年（しょうねん）の手（て）にあるならば、彼（かれ）を手（て）に持（ぢ）する者（もの）は欲（ほつ）する所（ところ）に彼（かれ）を抱（いだ）き…

しひ）の救（すくひ）を預（あらかじ）め録（ろく）されたればなり、けだし霊魂（たましひ）は暗中（あんちゅう）に幽（ゆう）せられ、縛（ばく）して地（ぢ）獄（ごく）の坑（あな）に匿（かくま）はれ、銅門（どうもん）を以（もつ）て閉（とざ）されたれば、ハリストスによりて救（すく）はるるなくんば免（まぬか）るあたはざりしなり。…

児屋根​（ノ）命㆒、世掌㆓天地之祭㆒、相㆓和人神之間㆒、仍命㆓其氏㆒曰㆓中臣㆒、美気古卿之長子也、母曰㆓大伴夫人㆒、大臣以㆓豊御食姫天皇廿二年、歳次甲戌㆒、生㆓於藤原之第㆒、大臣在孕、而哭声聞㆓於外㆒、十有二月子誕、外祖母語㆓夫人㆒曰、汝児…

、又硯を取寄せ、閑々と辞世の頌をぞ被書ける。逍遥生死。四十二年。山河一革。天地洞然。六月十九日某と書て、筆を抛て手を叉、座をなをし給ふとぞ見へし。田児六郎左衛門尉、後へ廻るかと思へば、御首は前にぞ落にける。哀と云も疎なり。入道泣々其遺骸を煙となし、様々の作善を致してぞ菩提を奉祈ける。糸惜哉、此卿は…

いたために川のなかへ転げ落ちて、あたかも張とおなじ場所で死んだ。 知る者はみな張に背いた報いであると言った。世の訴訟事件には往々こうした秘密がある。獄を断ずる者は深く考えなければならない。 烏魯木斉（うろぼくせい）は新彊（しんきょう）の一地方で、甚だ未開辺僻（へんぺき）の地である。（註。筆者、紀暁…

きしもとを打振て追て走る。人の中間若党は、主の女房を舁負て逃る者を、打物の鞘をはづして追懸る。返し合て切合処もあり。被切朱に成者もあり。脩羅の闘諍、獄率の呵責、眼の前に有が如し。梶井宮も御腰を打損ぜさせ給ひたりと聞へしかば、一首の狂歌を四条川原に立たり。釘付にしたる桟敷の倒るは梶井宮の不覚なりけり…

珍材朝臣従㆓美作㆒上道之路、寄㆓宿備後国上〈沼治イ〉郡㆒召㆓郡司女㆒、令㆑打㆑腰之間懐孕畢。其児至㆓七歳㆒之時、郡司相具前㆓立之㆒、参㆓珍材之許㆒、述㆓仔細㆒。珍材思㆓出件事㆒涕泣。 珍材者極相人也。仍見㆓此児㆒、可㆑至㆓二位中納言㆒の相ありといひて養育、果如㆓父相㆒云々。鰯の数をかぞへさせて、令㆑知…

「繁（しげる）さん、お遊びなさいな」 　と表口から呼ぶ近所の女の児の声がした。繁は岸本の二番目の子供だ。 「繁さんは遊びに行きましたよ」 　と節子は勝手口に近い部屋に居て答えた。彼女はよく遊びに通って来る一人の女の児に髪を結ってやっていた。その女の児は近くに住む針医の娘であった。…

余は明治三十三年に於て永寧寺記〈今浦塩斯徳に移蔵せる碑記〉を考証し、其後吉林通志を読みて、此磨崖あることを知りたるを以て、明治四十一年九月、吉林地方を旅行せる際、松花江辺の江沿児といへる地にて、遥かに磨崖らしき者を望みたれば、数日の後、同行の法学士大里武八郎君と共に往きて之を探りしに磨崖と見えしは、石上に苔蘚の生じたるに過ぎ…

も亦た槌の長柄に身を支へて、うんと働いた腰を延ばして、濃く青い空気を呼吸した。 『これ、お作や。』と細君の児を叱る声が起つた。『どうして其様（そん）な悪戯（いたづら）するんだい。女の児は女の児らしくするもんだぞ。真個（ほんと）に、どいつもこいつも碌なものはありやあしねえ。自分の子ながら愛想（あいそ…

之嗔怨叫馳乃走赴相府府門堅関大衆呼号扣門至穿門柱下地相大怒使能州刺史平真方率兵射大衆衆中亦有挑戦者定勢有膂力抜大刀撃官兵官兵衆徒死傷両多十九日定勢付獄以降見資治表 如此五箇度黜争為両門確執報根本其後白河院御時賜戒壇勅許之綸旨於園城寺因玆山門蜂起而以大軍推寄三井寺始金堂三院仏閣僧房不残一宇悉焼払凡自…

死。時呉逆将馬保降命。九卿会鞫。有某将軍。為被所敗。時亦在坐。保昻首目。某帥慎勿多言。吾雖不識汝面。而熟識汝之背矣。蓋譏其敗潰也。某将軍為之靦顔。在獄時必以呉逆所賜袍蒙衣上、曰吾不忘其旧徳。蓋効小説家関帝覆旧袍之故事。亦可謂愍不畏死矣。 馬保は即ち馬宝なり、後梟首せらる。二人の跡を観て呉三桂部下の…