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  • さき良心断片』(ちいさきりょうしんだんぺん) 作者:梶井基次郎 底本:昭和46年4月20日筑摩書房発行『梶井基次郎全集第一巻』 自分は人通りを除(よ)けて暗い路をあるいた。 耳がシーンと鳴つてゐる。夢中にあるいてゐる。自分はどの道をどう來たのかも知らない。つく杖の音が戛(カツ)々とする。この太い櫻の杖で今人を撲つて來たんだ。…
    16キロバイト (3,609 語) - 2021年12月14日 (火) 10:58
  •                      ​阿蘭陀小通詞助​​  吉雄忠二郎​​    寅四十四歳​ 総而日本人ゟ阿蘭陀人へ音信贈答者、容易に不㆓相成㆒段弁乍㆓罷在㆒、去戌年江戸詰中阿蘭陀人参府に付、【同請書】天文方高橋作左衛門願申上、対話いたし候節に附添参り、弁いたし候上者、同人儀外科シーボルトと懇意…
    85バイト (27,071 語) - 2024年3月24日 (日) 09:32
  • つてゆく。そして凧の唸りが空に聞えて來る。眞二は凧を眺めながら少年期の自分を想ひ出す。 「あのお二枚半にはどんな繪が書いてあつたらう」そんなことを思ふ。 家の橫についた臺所。御用聞。昔の匂ひは至〔ママ〕る所にあつた。彼のつてゐた學校は二本榎に近い去(さ)る地主の建てた
    7キロバイト (1,613 語) - 2021年8月31日 (火) 22:13
  • 「若し恙なく暮してゐるのだつたら、もう學校へあがつてゐる筈だ。あの娘等の様に」 他郷の町の娘等は歌を歌つたり、毬をついたり、幸福そうに(ママ)学校へつてゐた。――幸福そう(ママ)に。 そのうちに彼は、父に捨てられた幼い者の姿で、毬をついてゐる、自分の娘を感じる瞬間を持つ様になつた。そこには何時も…
    8キロバイト (1,800 語) - 2021年8月31日 (火) 22:20
  • 私はこの静けさのなかをことにしばしば歩いた。私が目ざしてゆくのは杉林の間からいつも氷室(ひむろ)から来るような冷気が径へっているところだった。一本の古びた筧(かけい)がその奥の暗いなかからおりて来ていた。耳を澄まして聴(き)くと、幽(かす)かなせせらぎの音がそのなかにきこえた。私の期待はその水音だった。…
    7キロバイト (1,484 語) - 2021年12月11日 (土) 23:41
  • 婢(こおんな)の利休の音も、すぐ表ての四条通りではこんな風に響かなかった。 喬は四条通りを歩いていた何分か前の自分、――そこでは自由に物を考えていた自分、――と同じ自分をこの部屋の中で感じていた。 「とうとうやって来た」と思った。
    23キロバイト (4,808 語) - 2021年12月9日 (木) 11:40
  • 大阪の堺筋にも夜店が出るやうになつた。新聞はひとしきりそれの景氣や不景氣の記事で賑つた。此頃はときどき夜店に關した畫家や文人の文章を載せてゐる。銀座(つう)の文人の書いた銀座の夜店の話をこの間も讀んだが、「銀座の夜店が二百六十八軒、額緣屋や、扇子屋や、古本屋や、呼鈴屋や、玩具屋や、刃物屋や、表札…
    9キロバイト (1,937 語) - 2021年8月31日 (火) 22:32
  • しょう。僕の窓は崖の近くにあって、僕の部屋からはもう崖ばかりしか見えないんです。僕はよくそこから崖路を通る人を注意しているんですが、元来めったに人のらない路で、通る人があったって、全く僕みたいにそこでながい間町を見ているというような人は決してありません。実際僕みたいな男はよくよくの閑人(ひまじん)なんだ」…
    36キロバイト (7,227 語) - 2021年12月13日 (月) 13:44
  • 當な敗北者の背に無眼(限)の親しみを感じながら、横路へ外れてしまつた。彼のその濕つぽい路をとぼとぼ歩きながら考えてゐた。 「あれは弱小なものと弱少()なものゝ團栗の背比べだつたんだ。强く、慧(叡)智な人が見れば丸でとるの度(足)りない蝸牛角上の爭ひに過ぎないんだ。」…
    19キロバイト (4,184 語) - 2023年9月6日 (水) 16:05
  • それでゐて眼や耳はまだ内臓程の衰へをみせず、齒も拔け切つてはゐなかつた。その後とり娘の三十になる學校の先生は、そのお婆さんの姪かなにかに當り、未だに配偶(つれあ)ふ人もなくそのお婆さんの世話と、學校ひをしてゐるのだつた。顏立ちのよくない然し健康そ〔ママ〕うな人だつた。私は覺えてゐる。この二人の…
    15キロバイト (3,494 語) - 2021年8月31日 (火) 22:39
  • 浮模様を持った琥珀色や翡翠色(ひすいいろ)の香水壜(こうすいびん)。煙管(きせる)、小刀、石鹸(せっけん)、煙草(たばこ)。私はそんなものを見るのに一時間も費すことがあった。そして結局一等いい鉛筆を一本買うくらいの贅沢をするのだった。しかしここももうその頃の私にとっては重くるしい場所に過ぎなかっ…
    17キロバイト (3,316 語) - 2023年10月24日 (火) 09:28
  • 持に似てる樣でもあるのだが――それは睡眠が襲つて來る前の朦朧とした意識の中の出來事で物事のなだらかな進行がふと意地の惡い邪マに會ふ(一體あの齒がゆい惡魔奴はどんな奴んんらだう!)こんなことがある――着物の端に汚ないものがついてゐる、みんなとつた筈だのにまだ破片がついてゐる、怪しみながらまた何の氣…
    68キロバイト (15,044 語) - 2021年8月31日 (火) 22:31
  • 上に、二つ、眼の樣に燈を寫してゐた。そんなものにさえ〔ママ〕常になくおびえた。彼は神苑の竹垣からよく枯れてゐそうな竹を拔いた。そして用を足した。 冷〔た〕い廊下をつて取亂した自分の部屋へ純一は歸つた。最近酒氣なしでは歸つたことのない部屋の匂ひが冷たく澄んで、鼻に浸みた。以前一まとめにしてあつた…
    18キロバイト (4,006 語) - 2021年8月31日 (火) 22:42
  • 北海道土人語 作者:渡辺勝用 明治二十三年 1890年 底本:渡辺勝用(1934年以前没)編著『北海道土人語』(発芽堂、明治23年)国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/869581 『財界二千五百人集』(財界二千五百人集編纂部、昭和9年)p641、渡邊勝秀の項目に「…
    708バイト (3,142 語) - 2023年8月17日 (木) 18:00
  • 「ハリケンハッチのオートバイ」 「ハリケンハッチのオートバイ」 先ほどの女の子らしい声が峻の足の下で次つぎに高く響いた。丸の内の街道をってゆくらしい自動自転車の爆音がきこえていた。 この町のある医者がそれに乗って帰って来る時刻であった。その爆音を聞くと峻の家の近所にいる女の子は我が…
    58キロバイト (11,645 語) - 2021年8月31日 (火) 22:16
  • 詩顎にとうとう谿が姿をあらわした。杉の秀(ほ)が細胞のように密生しているはるかな谿!何というそれは巨大な谿だったろう。遠靄(とおもや)のなかには音もきこえない水も動かない滝がさくさく懸(か)かっていた。眩暈(めまい)を感じさせるような谿底には丸太を組んだ橇道(そりみち)が寒ざむと白く匍っていた。日は谿向うの尾根へ沈んだとこ…
    33キロバイト (6,841 語) - 2021年12月11日 (土) 23:52
  • 民哉は倭(矮)な、容貌のあがらない生徒であつた。運動も得意ではなかつたし、操行にしても學課にしても、それが取り立てゝ敎師に認められる程良くも惡くもなかつた。 然し島村は運動の花形であつた。――と云つて身體は民哉程倭(矮)なのであつたがそれだけ敏捷な動作を持つてゐた…
    35キロバイト (7,864 語) - 2021年8月31日 (火) 22:27
  • 為から私自身を責め過ぎることはありませんでした。 しばらくして私達はAの家を出ました。外は快い雨あがりでした。まだ宵の口の町を私は友の一人と霊南坂をつて帰つて来ました。私の処へ寄つて本を借りて帰るといふのです。ついでに七葉樹の花を見ると云ひます。この友一人がそれを見はぐしてゐたからです。…
    32キロバイト (7,119 語) - 2021年9月8日 (水) 07:59
  • 「おやすみなさい、お母さん」 撃柝の音は坂や邸(やしき)の多い尭の家のあたりを、微妙に変ってゆく反響の工合で、それがってゆく先ざきを髣髴(ほうふつ)させた。肺の軋(きし)む音だと思っていた杳(はる)かな犬の遠吠(とおぼ)え。…
    37キロバイト (7,629 語) - 2021年12月10日 (金) 09:31
  • 其樣な事、とくるり後を向いて壁の腰ばりを指でたゝきながら、廻れ/\水車を音に唱ひ出す、美登利は衆人(おほく)の細螺(きしやご)を集めて、さあ最う一度はじめからと、これは顏をも赤らめざりき。 十二  信如が何時も田町へふ時、らでも事は濟めども言はゞ近道の土手々前に、假初の格子門、のぞけば鞍馬の石…
    93キロバイト (21,243 語) - 2023年10月17日 (火) 13:34
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