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  • から響いて來るいろいろな物音に、耳を傾けたりしてゐるのである。  物音には、いろいろなものがある。づ、物賣りが鳴らして來る鳴り物の音がおもしろい。  床屋が通る。客の腰掛ける朱塗(しゆぬ)りの椅子(いす)や、洗面(せんめん)器や、道具を入れた、これも朱塗りの箱を、てんびん棒
    10キロバイト (1,901 語) - 2016年7月22日 (金) 09:21
  • したからと下女が二階へ案内をした。十五畳(じょう)の表二階で大きな床(とこ)の間()がついている。おれは生れてからまだこんな立派な座敷へはいった事はない。この後いつはいれるか分らないから、洋服を脱いで浴衣(ゆかた)一枚になって座敷の真中(まんなか)へ大の字に寝てみた。いい心持ちである。…
    318キロバイト (59,334 語) - 2023年10月17日 (火) 13:42
  • 「お祖母さんがぼけはったのはあれからでしたな」姉は声を少しひそせて意味の籠(こも)った眼を兄に向けた。 「それがあってからお祖母さんがちょっとぼけみたいになりましてなあ。いつまで経(た)ってもこれに(と云って姉を指し)よしやんに済まん、よしやんに済まんと云いましてなあ」…
    58キロバイト (11,645 語) - 2021年8月31日 (火) 22:16
  • 風の又三郎 (カテゴリ 青空文庫からインポートしたテキスト)
    「そだら早ぐ行ぐべすさ。おらまんつ水飲んでぐ。」三人は汗をふいてしゃがんで、まっ白な岩からごぼごぼ噴(ふ)きだす冷たい水を何べもすくってのみした。 「ぼくのうちはここからすぐなんだ。ちょうどあの谷の上あたりなんだ。みんなで帰りに寄ろうねえ。」 「うん。まんつ野原さ行ぐべすさ。」…
    94キロバイト (17,626 語) - 2023年10月17日 (火) 13:53
  • 満韓鉄道唱歌 作者:大和田建樹 天谷秀 1906年 姉妹プロジェクト:データ項目 表記は原文に従い引仮名遣とし、漢字制限はJIS X 0208に文字が収録されていれば元の漢字をそのまま使った。 底本: 大和田建樹 著『満韓鉄道唱歌』,金港堂,明39.12.…
    20キロバイト (3,661 語) - 2023年9月5日 (火) 15:11
  • したが、最初は鳥の形をこしらえたものだそうです。そこで、飴細工を飴の鳥と云います。ひと口に飴屋と云っても、むかしはいろいろの飴屋がありました。そのなかで変っているのは唐人飴で、唐人のような風俗をして売りに来るです。これは飴細工をするのでなく、ぶつ切りの飴ん棒を一本二本ずつ売るです」…
    74キロバイト (14,859 語) - 2019年2月27日 (水) 14:45
  • 由云った。女の小ざっぱりしているのはそんな彼女におかあはというのが気をつけてやるのであった。 「そんなわけやでうちも一生懸命にやってるの。こないだからもな、風邪(かぜ)ひいとるやけど、しんどうてな、おかあはは休めというけど、うちは休まんのや」 「薬は飲んでるのか」…
    23キロバイト (4,808 語) - 2021年12月9日 (木) 11:40
  • 熊「廢(よ)せよ、夫(そ)れだから汝(てめへ)の事(こと)をお煙草盆(たばこぼん)と云(い)ふのだ、何(な)て云(い)ふと人(ひと)より先(さき)へ出(で)たがる 留「默(だ)つて居(ゐ)ろ、ベラ(ぼう)め此方(こつち)は是(これ)でも江戶子(えどつこ)だ、人…
    364バイト (7,101 語) - 2022年5月25日 (水) 22:37
  • 壁の中につつ立つてゐる男 歪だ不具な醜婦 泥濘中の太陽を胸に燃やさない限り プラタヌナの葉のやうに 秋 離れてゆく秋 日比谷 詩七篇 日比谷 無題 廻転する生命 死は奴隷と主人に無関心である 自刻 沈着と無口の秋 地震の日に 祈禱はマツチの一本で足りる! 詩九篇 祈禱はマツチの一本で足りる 恋愛の一音信…
    24キロバイト (2,886 語) - 2023年4月21日 (金) 19:28
  • よく)も得(とく)もありません。金の蠟燭でも、金の伸べでも、あんな物を貰ったら、きっと執念が残って祟(たた)られますよ」 「三十二三で、小粋な女だそうだね」 「今は堅気(かたぎ)のおかみさんでも、若い時にゃあ泥水を飲だ女じゃあないかと思われした。木綿物じゃあありますが、小ざっぱりした装(なり)…
    67キロバイト (13,441 語) - 2019年2月27日 (水) 14:51
  • 吾輩は猫である (カテゴリ 青空文庫からインポートしたテキスト)
    校長  縫田針作(ぬいだしさく) 九拝 とある。主人はこの鄭重(ていちょう)なる書面を、冷淡に丸めてぽんと屑籠(くずかご)の中へ抛(ほう)り込だ。せっかくの針作君の九拝も臥薪甞胆も何の役にも立たなかったのは気の毒である。第三信にかかる。第三信はすこぶる風変りの光彩を放っている。状袋が紅白のだだらで、飴(あめ)ん棒
    1.06メガバイト (208,385 語) - 2022年11月4日 (金) 04:57
  • 琴のそら音 (カテゴリ 青空文庫からインポートしたテキスト)
    から蕭々(しょうしょう)と降る、容易に晴れそうにもない。  五六間先にたちまち白い者が見える。往来(おうらい)の真中に立ち留って、首を延(のば)してこの白い者をすかしているうちに、白い者は容赦もなく余の方へ進んでくる。半分(はぶん)と立たぬ間(
    73キロバイト (14,094 語) - 2023年10月17日 (火) 13:47
  • 十三夜 (カテゴリ 青空文庫からインポートしたテキスト)
    せぬ、名のみ立派の原田勇に離縁されたからとて夢さら殘りをしいとは思ひませぬけれど、何にも知らぬ彼の太郎が、片親に成るかと思ひますると意地もなく我慢もなく、詫て機嫌を取つて、何でも無い事に恐れ入つて、今日までも物言はず辛して居りした、御父樣(おとつさん)、御母樣(おつかさ
    41キロバイト (9,435 語) - 2023年10月17日 (火) 13:35
  • ですから、遠島にもなるべきところを江戸払いで軽く済みした。そうして、もう一度旅へ出るつもりで江戸をはなれますと、神奈川に泊った晩からまた俄かに大熱を発して、とうとうその宿で藻掻(もが)き死にに死んでしまったそうです。とんだ因果で可哀そうなことをしました。 それでも徳三郎は本人ですから
    54キロバイト (10,952 語) - 2019年2月27日 (水) 14:39
  • た樣な氣がする。一體何のための昂奮なんらだう。 シヤツとさるまたの若者達が道の眞中で押しをしてゐる。そのあちらには明るい通りがある。それは市場だつた。奥さんと一緒に銀杏を買ひに寄つたことのある市場だつた。京極からは何程も離れてゐない市場だつた。はじめて自分はどんな街をあるいてゐるかがはつきりした…
    16キロバイト (3,609 語) - 2021年12月14日 (火) 10:58
  • 檸檬 (カテゴリ 青空文庫からインポートしたテキスト)
    から鼠花火(ねずみはなび)というのは一つずつ輪になっていて箱に詰めてある。そんなものが変に私の心を唆(そそ)った。  それからまた、びいどろという色硝子(ガラス)で鯛や花を打ち出してあるおはじきが好きになったし、南京玉(なんきんだ
    17キロバイト (3,316 語) - 2023年10月24日 (火) 09:28
  • 「浅草、山ノ宿とやらまで――」 「へえ――」 先が、にやりと笑ったが、 「とやらまで――だとよ、さあ、いそごうぜ」 顎をしゃくったが、その顎の長さ――この寒気に、尻ッ切れ半纏(はてん)一枚、二の腕から、胸から、太股一めん、青黒い渦のようなものが見えるのは、定めて雲竜の文身(がまん)でもしているらしく、白目がきょろついている男だ。…
    88キロバイト (16,550 語) - 2019年3月1日 (金) 06:32
  • ぎれに手を取って道行、すべてが思い通りに運んで、その夜のうちに次の宿の日野(ひの)まで落ち延びした。しん吉は世間の人に覚られないように、その日の午過ぎに釜屋をいったん出立して、暗くなってからまた引っ返して来たのです。府中から
    74キロバイト (15,018 語) - 2019年2月27日 (水) 14:38
  • 二百十日 (小説) (カテゴリ 青空文庫からインポートしたテキスト)
    ゅうと絶間なく吹き卸(お)ろす風は、吹くたびに、黒い夜を遠い国から持ってくる。刻々と逼(せ)る暮色のなかに、嵐は卍(まんじ)に吹きすさむ。噴火孔(ふんかこう)から吹き出す幾万斛(いくまんごく)の煙りは卍のなかに万遍(まん)なく捲()き込まれて、嵐の世界を尽くして、どす黒く漲(みなぎ)り渡る。…
    104キロバイト (18,180 語) - 2023年10月17日 (火) 13:38
  • 「やい、ひょろ松。犬もあるけばにあたるとはこの事だ。雑司ヶ谷へ来たにも無にゃあならねえ。合羽坂の手がかりが少し付いたようだ。女中をちょいと呼んでくれ」 松吉が手を鳴らずと、年増(としま)の女がすぐに顔を出した。 「どうもお構い申しませんで、済みせん」…
    49キロバイト (9,969 語) - 2021年12月24日 (金) 08:42
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