巻の一 隱公 ↓次巻 < 春秋左氏傳
巻の一 隱公[1]
【傳】 惠公[2]の元妃[3]は、孟子[4]なり。孟子卒せし[5]かば、室に繼ぐ[6]に聲子を以てし、隱公を生めり。(始め)宋の武公、仲子を生むや、仲子生れて文あり、其手に在り、曰く『魯の夫人たらん[7]』と。故に仲子、我[8]に歸ぎ、桓公[9]を生めり。而して惠公薨じぬ。是を以て隱公立ちて之を奉ぜり[10]。
- ↑ 隱公は名は息姑。惠公の長子。
- ↑ 惠公は、魯国第十二代の君。
- ↑ 元妃は正夫人。始めて娶りたるもの。
- ↑ 夫人は其生家の姓を稱す。孟は姉妹中の最も年長なる者。子は宋の姓。
- ↑ 薨と稱せざるは、喪を成さゞれば也。
- ↑ 室に繼ぐは、後妻とするをいふなり。
- ↑ 仲子の手の理に魯の字あり。武公、之を愛して曰く、是れ當に魯の夫人と爲るべしと。
- ↑ 我は魯をさす。
- ↑ 桓公は、隱公の弟、名は軌。
- ↑ 隱公立ちて君と爲り、桓公を奉じ、其の長ずるを待ちて、位を之に致さんとする也。