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小学校令施行規則

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文部省令第十四号

小学校令施行規則ヲ定ムルコト左ノ如シ

明治三十三年八月二十一日文部大臣 伯爵樺山資紀

小学校令施行規則

第一章 教科及編制
第二章 設備準則
第三章 就学
第四章 教員検定及免許状
第五章 職員
第六章 授業料
第七章 学務委員
第八章 代用私立小学校
第九章 幼稚園及小学校ニ類スル各種学校
第十章 附則

小学校令施行規則

第一章 教科及編制
第一節 教則

第一条 小学校ニ於テハ小学校令第一条ノ旨趣ヲ遵守シテ児童ヲ教育スヘシ

道徳教育及国民教育ニ関聨セル事項ハ何レノ教科目ニ於テモ常ニ留意シテ教授センコトヲ要ス

知識技能ハ常ニ生活ニ必須ナル事項ヲ選ヒテ之ヲ教授シ反覆練習シテ応用自在ナラシメンコトヲ務ムヘシ

児童ノ身体ヲ健全ニ発達セシメンコトヲ期シ何レノ教科目ニ於テモ其ノ教授ハ児童ノ心身発達ノ程度ニ副ハシメンコトヲ要ス

男女ノ特性及其ノ将来ノ生活ニ注意シテ各〻適当ノ教育ヲ施サンコトヲ務ムヘシ

各教科目ノ教授ハ其ノ目的及方法ヲ誤ルコトナク互ニ相聯絡シテ補益センコトヲ要ス

第二条 修身ハ教育ニ関スル勅語ノ旨趣ニ基キテ児童ノ徳性ヲ涵養シ道徳ノ実践ヲ指導スルヲ以テ要旨トス

尋常小学校ニ於テハ初ハ孝悌、親愛、勤倹、恭敬、信実、義勇等ニ就キ実践ニ適切ナル近易ノ事項ヲ授ケ漸ク進ミテハ国家及社会ニ対スル責務ノ一斑ニ及ホシ以テ品位ヲ高メ志操ヲ固クシ且進取ノ気象ヲ長シ公徳ヲ尚ハシメ忠君愛国ノ志気ヲ養ハンコトヲ務ムヘシ

高等小学校ニ於テハ前項ノ旨趣ヲ拡メテ一層陶冶ノ功ヲ堅実ナラシメンコトヲ務ムヘシ

女児ニ在リテハ特ニ貞淑ノ徳ヲ養ハンコトニ注意スヘシ

修身ヲ授クルニハ嘉言善行及諺辞等ニ基キテ勧戒シ常ニ之ヲ服膺セシメンコトヲ務ムヘシ

第三条 国語ハ普通ノ言語、日常須知ノ文字及文章ヲ知ラシメ正確ニ思想ヲ表彰スルノ能ヲ養ヒ兼テ智徳ヲ啓発スルヲ以テ要旨トス

尋常小学校ニ於テハ初ハ発音ヲ正シ仮名ノ読ミ方、書キ方、綴リ方ヲ知ラシメ漸ク進ミテハ日常須知ノ文字及近易ナル普通文ニ及ホシ又言語ヲ練習セシムヘシ

高等小学校ニ於テハ稍〻進ミタル程度ニ於テ日常須知ノ文字及普通文ノ読ミ方、書キ方、綴リ方ヲ授ケ又言語ヲ練習セシムヘシ

読ミ方、書キ方、綴リ方ハ各〻其ノ主トスル所ニ依リ教授時間ヲ区別スルコトヲ得ルモ特ニ注意シテ相聯絡セシメンコトヲ要ス

読本ノ文章ハ平易ニシテ国語ノ模範ト為リ且児童ノ心情ヲ快活純正ナラシムルモノナルヲ要シ其ノ材料ハ修身、歴史、地理、理科其ノ他生活ニ必須ナル事項ニ取リ趣味ニ富ムモノタルヘシ

女児ノ学級ニ用フル読本ニハ特ニ家事上ノ事項ヲ交フヘシ

文章ノ綴リ方ハ読ミ方又ハ他ノ教科目ニ於テ授ケタル事項児童ノ日常見聞セル事項及処世ニ必須ナル事項ヲ記述セシメ其ノ行文ハ平易ニシテ旨趣明瞭ナランコトヲ要ス

書キ方ニ用フル漢字ノ書体ハ楷書行書ノ一種若ハ二種トス

国語ヲ授クル際ニハ常ニ其ノ意義ヲ明瞭ニシ且既修ノ文字ヲ以テ通常ノ人名、地名等ニ応用セシメ単語、短句、短文ヲ書取ラシメ若ハ改作セシメテ仮名及語句ノ用法ニ習熟セシメンコトヲ務ムヘシ

他ノ教科目ヲ授クル際ニ於テモ常ニ言語ノ練習ニ注意シ又文字ヲ書カシムルトキハ其ノ字形及字行ヲ正シクセシメンコトヲ要ス

第四条 算術ハ日常ノ計算ニ習熟セシメ生活上必須ナル知識ヲ与ヘ兼テ思考ヲ精確ナラシムルヲ以テ要旨トス

尋常小学校ニ於テハ初ハ十以下ノ数ノ範囲内ニ於ケル数ヘ方、書キ方及加減乗除ヲ授ケ漸ク其ノ範囲ヲ拡メテ百以下ノ数ニ及ホシ更ニ進ミテ通常ノ加減乗除並ニ小数ノ呼ヒ方、書キ方及簡易ナル加減ヲ授ケ漸次本邦度量衡、貨幣及時ノ制ノ大要ヲ授クヘシ

高等小学校ニ於テハ初ハ尋常小学校ニ於テ授ケタル事項ヲ拡メテ学習セシメ漸ク進ミテハ簡易ナル小数、分数及比例ヲ授ケ又学校ノ修業年限ニ応シ更ニ稍〻複雑ナル比例及日常適切ノ百分算ニ及ホシ土地ノ情況ニ依リテハ簡易ナル求積若ハ日用簿記ノ大要ヲ授ケ又ハ之ヲ併セ授クヘシ

算術ハ筆算ヲ用フヘシ土地ノ情況ニ依リテハ珠算ヲ併セ用フルコトヲ得

算術ヲ授クルニハ理会ヲ精確ニシ運算ニ習熟シテ応用自在ナラシメンコトヲ務メ又運算ノ方法及理由ヲ正確ニ説明セシメ且暗算ニ習熟セシメンコトヲ要ス

算術ノ問題ハ他ノ教科目ニ於テ授ケタル事項及土地ノ情況ヲ斟酌シテ日常適切ナルモノヲ選フヘシ

第五条 日本歴史ハ国体ノ大要ヲ知ラシメ兼テ国民タルノ志操ヲ養フヲ以テ要旨トス

日本歴史ハ建国ノ体制、皇統ノ無窮、歴代天皇ノ盛業、忠良賢哲ノ事蹟、国民ノ武勇、文化ノ由来、外国トノ関係等ノ大要ヲ授ケ以テ国初ヨリ現時ニ至ルマテノ事歴ヲ知ラシムヘシ

日本歴史ヲ授クルニハ成ルヘク図画、地図、標本等ヲ示シ児童ヲシテ当時ノ実状ヲ想像シ易カラシメ特ニ修身ノ教授事項ト聯絡セシメンコトヲ要ス

第六条 地理ハ地球ノ表面及人類生活ノ状態ニ関スル知識ノ一斑ヲ得シメ又本邦国勢ノ大要ヲ理会セシメ兼テ愛国心ノ養成ニ資スルヲ以テ要旨トス

地理ハ本邦ノ地勢、気候、区劃、都会、産物、交通等並ニ地球ノ形状、運動等ノ大要ヲ理会セシメ又学校ノ修業年限ニ応シ各大洲ノ地勢、気候、区劃、交通等ノ概略ヨリ進ミテ本邦トノ関係ニ於テ重要ナル諸国ノ都会、産物等ヲ知ラシメ且本邦ノ政治経済上ノ状態並ニ外国ニ対スル地位等ノ大要ヲ授クヘシ

地理ヲ授クルニハ成ルヘク実地ノ観察ニ基キ又地球儀、地図、標本、写真等ヲ示シテ確実ナル知識ヲ得シメ特ニ歴史及理科ノ教授事項ト聯絡セシメンコトヲ要ス

第七条 理科ハ通常ノ天然物及自然ノ現象ニ関スル知識ノ一斑ヲ得シメ其ノ相互及人生ニ対スル関係ノ大要ヲ理会セシメ兼テ観察ヲ精密ニシ自然ヲ愛スルノ心ヲ養フヲ以テ要旨トス

理科ハ植物、動物、鉱物及自然ノ現象ニ就キ主トシテ児童ノ目撃シ得ル事項ヲ授ケ特ニ重要ナル植物、動物ノ名称、形状、効用及発育ノ大要ヲ知ラシメ又学校ノ修業年限ニ応シ更ニ通常ノ物理化学上ノ現象、重要ナル元素及化合物、簡易ナル器械ノ構造、作用、人身ノ生理衛生ノ大要ヲ授ケ兼テ植物、動物、鉱物ノ相互及人生ニ対スル関係ノ大要ヲ理会セシムヘシ

理科ニ於テハ務メテ農事、水産、工業、家事等ニ適切ナル事項ヲ授ケ特ニ植物、動物等ニ就キ教授スル際ニハ之ヲ以テ製スル重要ナル加工品ノ製法、効用等ノ概略ヲ知ラシムヘシ

理科ヲ授クルニハ成ルヘク実地ノ観察ニ基キ若ハ標本、模型、図画等ヲ示シ又簡単ナル実験ヲ施シ明瞭ニ理会セシメンコトヲ要ス

第八条 図画ハ通常ノ形体ヲ看取シ正シク之ヲ画クノ能ヲ得シメ兼テ美感ヲ養フヲ以テ要旨トス

尋常小学校ノ教科ニ図画ヲ加フルトキハ単形ヨリ始メ漸ク簡単ナル形体ニ及ホシ時々直線、曲線ニ基キタル諸形ヲ工夫シテ之ヲ画カシムヘシ

高等小学校ニ於テハ初ハ前項ニ準シ漸ク其ノ程度ヲ進メ実物若ハ手本ニ就キ又時々自己ノ工夫ヲ以テ画カシムヘシ土地ノ情況ニ依リテハ簡易ナル幾何画ヲ授クルコトヲ得

図画ヲ授クルニハ成ルヘク他ノ教科目ニ於テ授ケタル物体及児童ノ日常目撃セル物体中ニ就キテ之ヲ画カシメ兼テ清潔ヲ好ミ綿密ヲ尚フノ習慣ヲ養ハンコトニ注意スヘシ

第九条 唱歌ハ平易ナル歌曲ヲ唱フコトヲ得シメ兼テ美感ヲ養ヒ徳性ノ涵養ニ資スルヲ以テ要旨トス

尋常小学校ノ教科ニ唱歌ヲ加フルトキハ譜表ヲ用フルコトナク平易ナル単音唱歌ヲ授クヘシ

高等小学校ニ於テハ初ハ前項ニ準シ漸ク譜表ヲ用ヒテ単音唱歌ヲ授クヘシ

歌詞及楽譜ハ平易雅正ニシテ児童ノ心情ヲ快活純美ナラシムルモノタルヘシ

第十条 体操ハ身体ノ各部ヲ均斉ニ発育セシメ四肢ノ動作ヲ機敏ナラシメ以テ全身ノ健康ヲ保護増進シ精神ヲ快活ニシテ剛毅ナラシメ兼テ規律ヲ守リ協同ヲ尚フノ習慣ヲ養フヲ以テ要旨トス

尋常小学校ニ於テハ初ハ適宜ニ遊戯ヲ為サシメ漸ク普通体操ヲ加ヘ授クヘシ

高等小学校ニ於テハ普通体操ヲ授ケ又遊戯ヲ為サシメ男児ニハ兵式体操ヲ加ヘ授クヘシ

土地ノ情況ニ依リ体操ノ教授時間ノ一部若ハ教授時間ノ外ニ於テ適宜ノ戸外運動ヲ為サシメ又水泳ヲ授クルコトアルヘシ

体操ノ教授ニ依リテ習成シタル姿勢ハ常ニ之ヲ保タシメンコトヲ務ムヘシ

第十一条 裁縫ハ通常ノ衣類ノ縫ヒ方及裁チ方等ニ習熟セシメ兼テ節約利用ノ習慣ヲ養フヲ以テ要旨トス

尋常小学校ノ教科ニ裁縫ヲ加フルトキハ運針法ヨリ始メ漸ク簡易ナル衣類ノ縫ヒ方ヲ授ケ又便宜通常ノ衣類ノ繕ヒ方等ヲ授クヘシ

高等小学校ニ於テハ初ハ前項ニ準シ漸ク其ノ程度ヲ進メ通常ノ衣類ノ縫ヒ方、裁チ方、繕ヒ方ヲ授クヘシ

裁縫ハ其ノ材料ヲ日常所用ノモノニ取リ之ヲ授クル際用具ノ使用方、材料ノ品類、性質及衣類ノ保存方、洗濯方等ヲ教示スヘシ

第十二条 手工ハ簡易ナル物品ヲ製作スルノ能ヲ得シメ勤労ヲ好ムノ習慣ヲ養フヲ以テ要旨トス

手工ハ紙、糸、粘土、麦稈、木、竹、金属等其ノ土地ニ適切ナル材料ヲ用ヒテ簡易ナル細工ヲ授クヘシ

手工ヲ授クル際ニハ用具ノ使用方、材料ノ品類性質等ヲ教示スヘシ

第十三条 農業ハ農業ニ関スル普通ノ知識ヲ得シメ農業ノ趣味ヲ長シ勤勉利用ノ心ヲ養フヲ以テ要旨トス

農業ハ土壌、水利、肥料、農具、耕耘、栽培、養蚕、養畜等ニ就キ土地ノ情況ニ適切ニシテ児童ノ理会シ易キ事項ヲ授クヘシ

水産ヲ加フルトキハ漁撈、養殖、製造等ニ就キ其ノ土地ノ業務ニ適切ナルモノヲ授クヘシ

農業ヲ授クルニハ特ニ地理、理科等ノ教授事項ト関聯シ時々其ノ土地実際ノ業務ニ就キテ示教シ其ノ知識ヲ確実ナラシメンコトヲ務ムヘシ

第十四条 商業ハ商業ニ関スル普通ノ知識ヲ得シメ勤勉敏捷ニシテ且信用ヲ重スルノ習慣ヲ養フヲ以テ要旨トス

商業ハ学校所在ノ地方ニ於ケル売買、金融、運輸、保険其ノ他商業ニ関スル重要ナル事項ニシテ児童ノ理会シ易キモノヲ選ヒ国語、算術、地理、理科等ノ教授事項ト関聯シテ之ヲ授ケ又簡易ナル商用簿記ヲ授クヘシ

第十五条 英語ハ簡易ナル会話ヲ為シ又近易ナル文章ヲ理解スルヲ得シメ処世ニ資スルヲ以テ要旨トス

英語ハ発音ヨリ始メ進ミテ単語、短句及近易ナル文章ノ読ミ方、書キ方、綴リ方並ニ話シ方ヲ授クヘシ

英語ノ文章ハ純正ナルモノヲ選ヒ其ノ事項ハ児童ノ知識ノ程度ニ伴ヒ趣味ニ富ムモノタルヘシ

英語ヲ授クルニハ常ニ実用ヲ主トシ又発音ニ注意シ正シキ国語ヲ以テ訳解セシメンコトヲ務ムヘシ

第十六条 小学校ニ於テ教授ニ用フル仮名及其ノ字体ハ第一号表ニ、字音仮名遣ハ第二号表下欄ニ依リ又漢字ハ成ルヘク其ノ数ヲ節減シテ応用広キモノヲ選フヘシ

尋常小学校ニ於テ教授ニ用フル漢字ハ成ルヘク第三号表ニ掲クル文字ノ範囲内ニ於テ之ヲ選フヘシ

第十七条 尋常小学校各学年ノ教授ノ程度及毎週教授時数ハ第四号表ニ依ルヘシ但シ土地ノ情況ニ依リ学校長ニ於テ体操ノ毎週教授時数中ヨリ一時ヲ減スルコトヲ得

図画、唱歌、手工、裁縫ノ一科目若ハ数科目ヲ加フルトキハ其ノ毎週教授時数ハ学校長ニ於テ他ノ教科目ノ毎週教授時数中ヨリ四時以下ヲ減シ之ニ充ツヘシ

半日小学校ノ教科目ノ毎週教授時数ハ管理者又ハ設立者ニ於テ之ヲ定メ府県知事ノ認可ヲ受クヘシ

第十八条 高等小学校各学年ノ教授ノ程度及毎週教授時数ハ第五号表乃至第七号表ニ依ルヘシ

理科、唱歌ノ一科目若ハ二科目ヲ闕クトキハ其ノ毎週教授時数ハ学校長ニ於テ他ノ教科目ニ配当スルコトヲ得

手工、農業、商業、英語ノ一科目若ハ数科目ヲ加フルトキハ其ノ毎週教授時数ハ学校長ニ於テ他ノ教科目中ノ毎週教授時数中ヨリ二時ヲ減シテ之ニ充テ尚不足スルトキハ男児ニ限リ毎週教授時数ニ二時ヲ加ヘ之ニ充ツヘシ

第十九条 前二条ノ規定ニ依リ難キ事情アルトキハ管理者又ハ設立者ハ其ノ事情ヲ具シ府県知事ノ認可ヲ受ケ左ノ制限内ニ於テ其ノ時数ヲ増減スルコトヲ得

一 尋常小学校ノ毎週教授時数ハ二十八時ヲ超エ又十八時ヲ下ルコトヲ得ス
 但シ半日小学校ニ在リテハ此ノ限ニアラス[1]

二 高等小学校ノ毎週教授時数ハ三十時ヲ超エ又二十四時ヲ下ルコトを得ス

第二十条 学校長ハ夏季冬季休業日ノ前後各〻二十日以内ニ於テ毎日ノ教授時数ヲ減スルコトヲ得

前項ノ規定ニ依リ教授時数ヲ減スルトキハ学校長ニ於テ便宜各教科目ノ毎週教授時数ヲ斟酌スヘシ

第二十一条 尋常小学校若ハ高等小学校ニ於テ数学年ノ児童ヲ一学級ニ編制スルトキハ各学年ノ程度ニ拘ラス全部又ハ一部ノ児童ヲ同一ノ程度ニ依リ教授スルコトヲ得

第二十二条 学校長ハ其ノ小学校ニ於テ教授スヘキ各教科目ノ教授細目ヲ定ムヘシ

第二十三条 小学校ニ於テ各学年ノ課程ノ修了若ハ全教科ノ卒業ヲ認ムルニハ別ニ試験ヲ用フルコトナク児童平素ノ成績ヲ考査シテ之ヲ定ムヘシ

第二十四条 学校長ハ修業年限ノ終ニ於テ尋常小学校若ハ高等小学校ノ教科ヲ修了セリト認メタル者ニハ卒業証書ヲ授与スヘシ

学校長ハ学年末ニ於テ各学年ノ課程ヲ修了セリト認メタル者ニハ修業証書、第二十一条ノ規定ニ依リ一学年間学習セシ者ニハ学習証書ヲ与フルコトヲ得

第二節 学年、休業日及式日

第二十五条 小学校ノ学年ハ四月一日ニ始リ翌年三月三十一日ニ終ル

小学校ノ学期ハ府県知事之ヲ定ムヘシ

第二十六条 毎日ノ教授終始ノ時刻ハ府県知事之ヲ定ムヘシ

第二十七条 小学校ノ休業日ハ左ノ如シ

一 祝日、大祭日

二 日曜日

三 夏季休業日

四 冬季休業日

五 学年末休業日

六 其ノ他府県知事ノ定ムル休業日

前項第三号乃至第五号ノ休業日数ハ府県知事之ヲ定ムヘシ

第二十八条 紀元節、天長節及一月一日ニ於テハ職員及児童、学校ニ参集シテ左ノ式ヲ行フヘシ

一 職員及児童「君カ代」ヲ合唱ス

二 職員及児童ハ
 天皇陛下[1]
 皇后陛下ノ御影ニ対シ奉リ最敬礼ヲ行フ[1]

三 学校長ハ教育ニ関スル勅語ヲ奉読ス

四 学校長ハ教育ニ関スル勅語ニ基キ聖旨ノ在ル所ヲ誨告ス

五 職員及児童ハ其ノ祝日ニ相当スル唱歌ヲ合唱ス

御影ヲ拝戴セサル学校及特ニ府県知事ノ認可ヲ受ケ複写シタル御影若ハ府県知事ニ於テ適当ト認メタル御影ヲ奉蔵セサル学校ニ於テハ前項第二号ノ式ヲ闕ク又唱歌ヲ課セサル学校ニ於テハ第一号第五号ノ式ヲ闕クコトヲ得

第三節 編制

第二十九条 小学校ノ学級数ハ十二学級以下トス

特別ノ事情ニ依リ小学校ニ於テ分教場ヲ設クルトキハ一分教場ノ学級数ハ二学級以下トシ前項ノ制限外ト為スコトヲ得

第三十条 一学級ノ児童数ハ尋常小学校ニ在リテハ七十人以下、高等小学校ニ在リテハ六十人以下トス

特別ノ事情アルトキハ前項ノ制限ヲ超過シテ各〻十人マテヲ増スコトヲ得

第三十一条 尋常小学校若ハ其ノ分教場ニ於テ同一学年ノ女児ノ数一学級ヲ編制スルニ足ルトキハ男女ニ依リ該学年ノ学級ヲ別ツヘシ

第一学年及第二学年ニ在リテハ前項ノ規定ニ依ラサルコトヲ得

高等小学校若ハ其ノ分教場ニ於テ全校女児ノ数一学級ヲ編制スルニ足ルトキハ男女ニ依リ学級ヲ別ツヘシ

第三十二条 正教科ノ児童ト補習科ノ児童トヲ合シテ学級ヲ編制スルコトヲ得ス但シ特別ノ事情アルトキハ此ノ限ニアラス

第三十三条 修身、体操、唱歌、裁縫又ハ手工ハ数学級ノ全部又ハ一部ノ児童ヲ合シテ同時ニ之ヲ教授スルコトヲ得

第三十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ尋常小学校若ハ其ノ分教場ニ於テハ児童ヲ二部ニ分チ其ノ一部ノ教授了リタル後他ノ一部ヲ教授スルコトヲ得

一 児童ノ数七十人以上百四十人未満ニシテ本科正教員一人及准教員一人ヲ置クコト能ハサルトキ

二 児童ヲ同時ニ容ルヽニ足ルヘキ校舎ノ設ナキトキ

前項ノ場合ニ於テハ毎日ノ教授時数ヲ各部三時以上トス但シ年少ノ部ニ在リテハ之ヲ二時ト為スコトヲ得

第三十五条 小学校ニ於テハ各学級ニ本科正教員一人ヲ置クヘシ

小学校ニ於テ各学級ニ置クヘキ本科正教員ヲ得難キトキハ二学級毎ニ本科正教員一人及准教員一人ヲ置クコトヲ得此ノ場合ニ於テハ准教員ハ正教員ノ指揮ヲ承ケ児童ヲ教授スヘシ

特別ノ事情アルトキハ前二項ノ規定ニ依ル外尚准教員ヲ置キ児童ノ教授ヲ補助セシムルコトヲ得

第三十六条 六学級以上ノ小学校ニ於テハ学校長ノ担任スル教授ヲ補助スル為正教員一人若ハ准教員一人ヲ置クコトを得

第三十七条 小学校ニ於テハ適宜専科正教員ヲ置クコトを得

第三十八条 補習科ノ学級数ハ第二十九条ニ規定シタル学級数ノ制限外トス

但シ其ノ教授時間ヲ正教科ノ教授時間内ニ定メタルトキハ此ノ限ニアラス

第三十九条 全校児童ヲ一学級ニ編制スル学校ヲ単級小学校トシ二学級以上ニ編制スル学校ヲ多級小学校トス

第三十四条ノ規定ニ依リ児童ヲ二部ニ分テ教授スル学校ヲ半日小学校トス

第四十条 第三十二条但書ノ規定ニ依リ正教科ノ児童ト補習科ノ児童トヲ合シテ学級ヲ編制スルトキ及第三十四条ノ規定ニ依リ半日小学校ヲ設クルトキハ市町村立小学校ニ在リテハ市町村又ハ町村学校組合ニ於テ、代用私立小学校ニ在リテハ設立者ニ於テ府県知事ノ認可ヲ受クヘシ

第四十一条 小学校ノ学級ヲ編制シ又[1]変更シタルトキハ遅滞ナク管理者又ハ設立者ニ於テ府県知事ニ届出ツヘシ

第四節 補習科

第四十二条 補習科ハ分テ尋常小学校補習科及高等小学校補習科トス

尋常小学校補習科ハ尋常小学校ヲ卒業シタル者及之ト同等以上ノ学力ヲ有スル者ヲシテ尋常小学校ノ教科目ヲ補習セシムルヲ以テ目的トス

高等小学校補習科ハ高等小学校ヲ卒業シタル者及之ト同等以上ノ学力ヲ有スル者ヲシテ高等小学校ノ教科目ヲ補習セシムルヲ以テ目的トス

第四十三条 補習科ノ教科目ハ管理者又ハ設立者ニ於テ之ヲ定ムヘシ

前項ノ規定ニ依リ定メタル教科目ハ管理者又ハ設立者ニ於テ之ヲ随意科目ト為スコトヲ得

第四十四条 補習科ノ教科用図書ハ学校長ニ於テ之ヲ定ムヘシ

第四十五条 補習科ノ教科ヲ授クルニハ其ノ土地ノ業務ニ適切ナル事項ヲ交フヘシ

第四十六条 補習科ノ修業年限ハ二箇年以下トシ市町村町村学校組合又ハ設立者ニ於テ之ヲ定ムヘシ

第四十七条 補習科ノ教授ハ一定ノ季節ヲ選ヒテ之ヲ為スコトヲ得

第四十八条 補習科ノ教授日及教授時間ハ児童ノ便宜ヲ図リ管理者又ハ設立者ニ於テ之ヲ定ムヘシ

補習科ノ毎週教授時数ハ三時以上十二時以下トス但シ裁縫ノ為ニハ尚毎週十二時以下ニ於テ教授時数ヲ増スコトヲ得

第四十九条 高等小学校補習科ノ学級ハ男女ヲ合シテ之ヲ編制スルコトヲ得ス但シ其ノ教授時間ヲ正教科ノ教授時間内ニ定メタルトキハ此ノ限ニアラス

第五十条 補習科ノ教場ハ正教科ヲ授クル校舎外ニ之ヲ設クルコトヲ得

第五十一条 補習科ノ教授ハ正教科ヲ教授スル教員又ハ代用教員ニ於テ之ヲ担任スヘシ

補習科ノ教授時間ヲ正教科ノ教授時間内ニ定メタルトキハ前項ノ規定ヲ適用セス

特別ノ事情アルトキハ前二項ノ規定ニ依ラサルコトヲ得

第五十二条 第四十三条第一項第四十四条第四十六条第四十八条第一項ノ場合ニ於テハ府県知事ノ認可ヲ受クヘシ

第五節 図書審査及採定

第五十三条 小学校図書審査委員会ノ開閉ハ府県知事之ヲ命ス

第五十四条 小学校図書審査委員ハ職務上当然委員タル者ヲ除ク外小学校図書審査委員会開会毎ニ府県知事之ヲ命ス

第五十五条 小学校図書審査委員会ニ会長ヲ置キ府県書記官ヲ以テ之ニ充ツ

会長ハ会務ヲ整理シ審査ノ顛末ヲ府県知事ニ報告ス

会長事故アルトキハ府県知事ノ指名シタル委員其ノ職務ヲ代理ス

第五十六条 小学校図書審査委員会ニ書記ヲ置クコトヲ得

書記ハ府県判任官ヲ以テ之ニ充ツ

書記ハ会長ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス

第五十七条 会長、委員及書記ニハ手当ヲ給スルコトヲ得

第五十八条 委員ハ自己又ハ親族ノ著作、校閲、出版ニ係ル図書ノ審査ニ参与スルコトヲ得ス

第五十九条 小学校図書審査委員会ハ其ノ地方ノ情況ニ適当ナル図書ヲ選定スヘシ

小学校教科用図書ハ学校ノ種類、男女ノ区別又ハ学校所在地ノ情況ニ依リ各別ニ之ヲ選定スルコトヲ得

第六十条 府県知事ニ於テ小学校図書審査委員会ノ選定シタル図書ヲ採定シタルトキハ之ヲ使用セントスル学年ノ開始ヨリ九十日以前ニ其ノ旨ヲ公布スヘシ此ノ場合ニ於テハ五日以内ニ文部大臣ニ報告スルコトヲ要ス

第六十一条 府県知事ニ於テ小学校令第二十五条ノ規定ニ依リ一部修正ノ図書ニ採定ノ効力ヲ継続セシメタルトキハ遅滞ナク文部大臣ニ報告スヘシ

第六十二条 府県知事ニ於テ採定シタル小学校教科用図書ノ定価増加シタルトキハ其ノ採定ハ効力ヲ失フ

第六十三条 小学校教科用図書ハ採定後四箇年ヲ経ルニアラサレハ之ヲ更定スルコトヲ得ス

小学校教科用図書ヲ更定シタル場合ニ於テハ其ノ図書ハ最下学年ノ児童ヨリ用ヒシメ其ノ他ノ児童ニハ従来ノ教科用図書ヲ襲用セシムヘシ

特別ノ事情アルトキハ府県知事ハ文部大臣ノ認可ヲ受ケ前二項ノ規定ニ依ラサルコトヲ得

第二章 設備準則

第六十四条 校地ハ学校ノ規模ニ適応セル面積ヲ有シ開豁乾燥ニシテ衛生ニ適シ且児童ノ通学ニ便利ナル場所ヲ選フヘシ

校地ハ道徳上嫌忌スヘキ場所、喧閙ニシテ教授ニ妨アル場所及危険ナル場所ニ接近セサルコトヲ要ス

第六十五条 体操場ハ分テ屋外体操場及屋内体操場トス

屋外体操場ハ方形若ハ之ニ類スル形状ニシテ其ノ面積ハ左ノ例ニ依ルヘシ

一 尋常小学校ニ於テハ児童百人未満ハ百坪以上トシ児童百人以上ハ一人ニ付一坪以上ノ割合トス

二 高等小学校ニ於テハ児童百人未満ハ百五十坪以上トシ児童百人以上ハ一名ニ付一坪半以上ノ割合トス

三 尋常高等小学校ニ於テハ児童百人未満ハ百五十坪以上トシ児童百人以上ハ尋常小学校ノ教科ヲ修ムル児童一人ニ付一坪以上、高等小学校ノ教科ヲ修ムル児童一人ニ付一坪半以上ノ割合トス但シ児童百人以上ニシテ高等小学校ノ教科ヲ修ムル児童百人未満ナルトキハ百五十坪ノ外全校児童中百人ヲ超ユル児童一人ニ付一坪以上ノ割合ヲ以テ増スモノトス

四 特別ノ事情アルトキハ第二号第三号ノ規定中一坪半ヲ一坪マテニ減スルコトヲ得

屋内体操場ハ雨雪ニ堪フヘキ設備ヲ為スコトヲ要ス

屋内体操場ハ土地ノ情況ニ依リ之ヲ設ケサルコトヲ得

第六十六条 校地内ニハ善良ナル飲料水ヲ供給スルノ備ヲ為シ又下水渠ヲ設クヘシ

第六十七条 校舎ノ建築ハ授業上、管理上、衛生上ノ便ヲ図リ質朴堅牢ナランコトヲ要ス

校舎ハ平屋造ト為スヘシ但シ特別ノ事情アルトキハ二階造トナスコトヲ得

第六十八条 校舎ニハ各学級ニ応スル通常教室並教員室ヲ設クヘシ

前項ノ外唱歌、裁縫等ヲ課スル学校ニ於テハ便宜特別教室ヲ設ケ又必要ナル場合ニ於テハ講堂、児童控所、宿直室、湯沸所、小使室、物置等ヲ設クヘシ

第六十九条 教室ノ構造ハ左ノ各項ニ準拠スヘシ

多級小学校ノ教室ハ幅三間以上四間以下長四間以上五間以下、単級小学校ノ教室ハ幅及長各〻四間以上五間以下ヲ常例トシ其ノ大ハ児童一人ニ付三尺平方ノ割合ヨリ小ナルコトヲ得ス

天井ハ牀面ヲ距ルコト九尺以上トスヘシ

牀ノ高ハ二尺以上トシ牀下ノ四方ニ風抜ヲ設クヘシ

採光窓ノ総面積ハ牀面積ノ六分ノ一以上トシ其ノ下縁ノ位置ハ牀上凡二尺五寸ニ定メ其ノ上縁ハ牀上八尺五寸以上ニシテ成ルヘク天井ニ接近セシムヘシ但採光窓ノ上部ハ欄間ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得

窓ハ児童座席ノ前面ニ設クルコトヲ得ス

教室内ノ壁ハ灰色、淡黄色其ノ他ノ中性色ト為スヘシ

土地ノ情況ニ依リ成ルヘク煖房ノ装置ヲ為シ又ハ煖房器ヲ備フヘシ

各教室ニハ通常二箇ノ出入口ヲ設クヘシ

第七十条 廊下ハ片廊下ヲ常例トシ其ノ幅ハ六尺以上タルヘシ

二階造ノ校舎ニハ二箇以上ノ階段ヲ設クルヲ常例トス

階段ハ幅四尺五寸以上蹴上ケ五寸乃至六寸踏面八寸乃至一尺トシ成ルヘク曲折構造ト為シ中間ニ踊場ヲ設ケ且手欄ヲ附スヘシ

第七十一条 昇降口ハ成ルヘク男女ヲ区別シ常風ノ方向ヲ避クヘシ

第七十二条 便所ハ別棟トシ夏季常風ノ方向ニ注意シ又井ヲ距ルコト四間以上ノ位置ニ之ヲ設クヘシ

糞壺、尿溝、注壁等ハ不滲透物ヲ以テ之ヲ造ルヘシ

便所ハ男女ヲ区別シ男児百人ニ付大便所二以上小便所四以上、女児百人ニ付五以上ノ割合ヲ以テ設クルヲ常例トス

第七十三条 尋常小学校ニ於テハ教科用図書、地図、度量衡、黒板、机、腰掛、時計、塞暖計其ノ他必要ナル器具、参考用図書及小学校ニ関スル法令等ヲ備フヘシ

高等小学校ニ於テハ前項ノ外歴史、地理及理科ノ教授用具、体操器械、中学校、高等女学校及実業学校ニ関スル法令等ヲ備フヘシ

第七十四条 児童用机及腰掛ノ寸法ハ第八号表ノ標準ニ依リ児童ノ身長ニ適応セシメンコトヲ要ス

第七十五条 土地ノ情況ニ依リ成ルヘク教員ノ住宅ヲ設クヘシ

第七十六条 校舎ヲ新築、増築、改築シ若ハ市町村立高等小学校及私立小学校ノ校地ヲ選定シ又ハ変更セントスルトキハ市町村、町村学校組合又ハ設立者ニ於テ府県知事ノ認可ヲ受クヘシ

第七十七条 本章ノ規定中校舎ノ新築、改築、校具ノ新調等ニ際スルニアラサレハ適用シ難キモノハ其ノ時ヲ待テ之ニ依ルコトヲ得

第七十八条 土地ノ情況ニ依リ本章ノ規定ニ依リ難キトキハ府県知事ハ文部大臣ノ認可ヲ受ケ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得

第七十九条 本章ノ規定ハ補習科ノ設備ニ関シ之ヲ適用セス

第三章 就学

第八十条 市町村長ハ其ノ市町村内ニ居住シ翌年四月ニ於テ就学ノ始期ニ達スヘキ児童ヲ調査シ第九号表ノ様式ニ依リ毎年十二月末日マテニ其ノ学齢簿ヲ編製スヘシ

第八十一条 市町村長ハ学齢簿編製後三月三十一日マテニ其ノ年四月ニ於テ就学ノ始期ニ達スヘキ児童ニシテ其ノ市町村ニ来住シタル者アルトキハ遅滞ナク之ヲ学齢簿ニ記入スヘシ

市町村長ハ就学期間中ニ在ル児童ニシテ其ノ市町村ニ来住シタル者アルトキハ遅滞ナク其ノ児童ノ就学ノ始期ニ達シタル年ノ学齢簿ニ記入スヘシ

市町村長ハ学齢簿ニ登載ノ児童ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者アルトキハ遅滞ナク之ヲ抹消スヘシ

一 児童死亡シタルトキ

二 児童市町村外ニ転住シタルトキ

三 児童ノ居所一箇年以上分明ナラサルトキ

前二項ノ外学齢簿ニ記載ノ事項ニ異動ヲ生シタルトキハ遅滞ナク之ヲ加除訂正スヘシ

第八十二条 市町村長ハ児童ヲシテ市町村立尋常小学校ニ入学セシムヘキ期日ヲ予メ其ノ保護者ニ通知スヘシ

市町村、町村学校組合又ハ区ノ使用ニ係ル尋常小学校二校以上アル場合ニ於テハ市町村長ハ前項ノ通知ヲ為スニ当リ児童ノ入学スヘキ尋常小学校ヲ指定スルコトヲ得但シ児童ノ保護者ハ其ノ児童ヲ入学セシメントスル尋常小学校ヲ選定シテ之ヲ市町村長ニ申立ツルコトヲ得

第八十三条 市町村長ハ前条ノ規定ニ依リ通知シタル児童ノ氏名及入学期日ヲ関係学校長ニ通知スヘシ其ノ通知ヲ為シタル後児童ノ就学ニ関シ異動ヲ生シタルトキ亦同シ

第八十四条 就学スヘキ児童又ハ其ノ保護者ニシテ小学校令第三十三条ニ掲クル事由アルトキハ其ノ保護者ハ就学義務ノ免除又ハ就学ノ猶予ヲ市町村長ニ申立ツヘシ但シ貧窮ニ因ル場合ヲ除ク外医師ノ証明書ヲ添フルコトヲ要ス

第八十五条 就学猶予ノ期間ハ其ノ年四月ニ於テ就学ノ始期ニ達スヘキ児童ニ在リテハ一箇年トシ既ニ就学ノ始期ニ達シタル児童ニ在リテハ一箇年以下トス

第八十六条 市町村長ハ小学校令第三十六条第一項但書ノ規定ニ依リ尋常小学校ノ教科ヲ修ムル児童ノ教育ヲ監督スヘシ必要ト認メタルトキハ其ノ児童ニ就キ試験ヲ行フコトヲ得

第八十七条 市町村長ハ前条ノ児童ノ教育ヲ不適当ナリト認メタルトキハ小学校令第三十六条第一項但書ノ規定ニ依リ与ヘタル認可ヲ取消スヘシ

第八十八条 児童ノ保護者ニ於テ其ノ児童ヲ当然入学セシムヘキ学校以外ノ市町村立尋常小学校ニ入学セシメ又ハ官立、府県立学校ニ於テ尋常小学校ノ教科ヲ修メシメントスルトキハ其ノ学校ノ管理者又ハ学校長ノ承認書ヲ添ヘ関係市町村長ニ届出ツヘシ

第八十九条 市町村立尋常小学校長ハ第十号表ノ様式ニ依リ学年ノ始ニ於テ入学シタル児童ノ学籍簿ヲ編製スヘシ

学籍簿ハ入学ノ児童ニ異動ヲ生シタルトキハ遅滞ナク之ヲ加除訂正スヘシ

第九十条 市町村立尋常小学校長ハ在学児童ノ出席簿ヲ作リ其ノ出席欠席ヲ明ニスヘシ

第九十一条 市町村立尋常小学校長ハ第八十三条ノ規定ニ依リ通知ヲ受ケタル児童中入学期日後七日以内ニ其ノ小学校ニ入学セサル者アルトキハ其ノ氏名ヲ関係市町村長ニ報告スヘシ

第九十二条 在学児童ニシテ正当ノ事由ナク引続キ七日間欠席シタルトキハ関係学校長ハ遅滞ナク其ノ保護者ニ対シ児童ヲシテ出席セシムヘキ旨ヲ通知シ仍引続キ七日以上出席セシメサルトキハ其ノ旨ヲ関係市町村長ニ報告スヘシ

第九十三条 市町村長ニ於テ前二条ノ規定ニ依リ報告ヲ受ケタルトキハ関係児童ノ保護者ニ対シ其ノ児童ノ就学又ハ出席ヲ督促スヘシ

前項ノ規定ニ依リ二回以上ノ督促ヲ為スモ仍就学又ハ出席セシメサルトキハ市町村長ハ其ノ旨ヲ監督官庁ニ報告スヘシ

第九十四条 郡長又ハ府県知事ニ於テ前条第二項ノ規定ニ依リ報告ヲ受ケタルトキハ関係児童ノ保護者ニ対シ其ノ児童ノ就学又ハ出席ヲ督促スヘシ

第九十五条 市町村立尋常小学校長ハ毎学年ノ終ニ卒業シタル児童ノ氏名ヲ遅滞ナク関係市町村長ニ報告スヘシ

第九十六条 第八十八条ノ規定又ハ小学校令第三十六条第一項但書ノ規定ニ依リ当然入学スヘキ学校以外ニ於テ尋常小学校ノ教科ヲ修ムル児童ニシテ其ノ教科ヲ卒リタルトキ又ハ其ノ教科ヲ卒ラスシテ退学シ若ハ廃学シタルトキハ関係学校長又ハ児童ノ保護者ハ其ノ旨ヲ関係市町村長ニ届出ツヘシ

第九十七条 本章ニ於テ市町村立尋常小学校トアルハ代用私立尋常小学校ヲ包含ス

第四章 教員検定及免許状
第一節 教員ノ検定

第九十八条 小学校教員検定委員会ハ左ノ職員ヲ以テ之ヲ組織ス

一 会長

一 常任委員

一 臨時委員

第九十九条 会長ハ府県視学官ヲ以テ之ニ充ツ

常任委員及臨時委員ハ府県知事之ヲ命ス

臨時委員ハ試験施行ノ際之ヲ命ス

第百条 会長ハ会務ヲ整理シ検定ノ成績ヲ府県知事ニ報告ス

会長事故アルトキハ府県知事ノ指名シタル委員其ノ職務ヲ代理ス

第百一条 常任委員ハ会長ノ指揮ヲ承ケ教員検定ニ関スル事ヲ掌ル

臨時委員ハ会長ノ指揮ヲ承ケ試験検定ニ関スル事ヲ掌ル

第百二条 小学校教員検定委員会ニ書記ヲ置キ府県判任官ヲ以テ之ニ充ツ

書記ハ会長ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス

第百三条 会長、常任委員、臨時委員及書記ニハ手当ヲ給スルコトヲ得

第百四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ教員ノ検定ヲ受クルコトヲ得ス

一 禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者但シ国事犯ニシテ復権シタル者ハ此ノ限ニアラス

二 信用若ハ風俗ヲ害スル罪ヲ犯シテ罰金ノ刑ニ処セラレ又ハ監視ニ付セラレタル者

三 破産若ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復権セサルモノ又ハ身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者

四 免許状褫奪ノ処分ヲ受ケ三箇年ヲ経過セサル者

第百五条 教員ノ検定ハ分テ無試験検定及試験検定トス

第百六条 試験検定ハ毎年少クトモ一回之ヲ行ヒ無試験検定ハ随時之ヲ行フ

第百七条 無試験検定ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ就キ第百八条乃至第百十二条ノ規定ニ対照シテ之ヲ行フ

一 師範学校、中学校、高等女学校教員免許状ヲ有スル者

二 他ノ府県ニ於テ授与シタル小学校教員免許状ヲ有スル者

三 文部省直轄学校ニ於テ某科目ニ関シ特ニ教員ノ職ニ適スル教育ヲ受ケテ卒業シタル者

四 中学校又ハ明治三十二年文部省令第三十四号ニ依リ文部大臣ニ於テ中学校ト同等以上ト認メタル学校ヲ卒業シタル者

五 高等女学校ヲ卒業シタル者

六 其ノ他府県知事ニ於テ特ニ適任ト認メタル者

第百八条 小学校本科正教員ノ試験科目及其ノ程度ハ男子ニ在リテハ師範学校男生徒、女子ニ在リテハ師範学校女生徒ニ課スル学科程度ニ準ス但シ図画、音楽、手工、農業、商業、英語ノ一科目若ハ数科目ハ之ヲ闕キ女子ノ為ニハ尚体操ヲ闕クコトヲ得

本条ニ小学校本科正教員トアルハ尋常小学校及高等小学校ニ於テ本科正教員タルコトヲ得ヘキ者ヲ謂フ

第百九条 小学校准教員ノ試験科目及其ノ程度ハ左ノ如シ但シ裁縫ハ女子ニ限ル

修身 道徳ノ要旨

教育 教授法ノ大要

国語 普通文及小学校教科用読本ノ講読並ニ作文、習字

算術 整数、分数及小数ノ加減乗除、比例、百分算

歴史 日本歴史ノ大要

地理 日本地理及外国地理ノ大要

理科 博物、物理、化学ノ大要

図画 自在画及簡易ナル幾何画

唱歌 単音唱歌

体操 普通体操及兵式体操ノ初歩

裁縫 通常ノ衣類ノ裁チ方、縫ヒ方、繕ヒ方

図画、唱歌ノ一科目若ハ二科目ハ之ヲ闕キ女子ノ為ニハ尚体操ヲ闕クコトヲ得

本条ニ小学校准教員トアルハ尋常小学校及高等小学校ニ於テ准教員タルコトヲ得ヘキ者ヲ謂フ

第百十条 小学校専科正教員ノ試験科目ハ図画、音楽、体操、裁縫、手工、農業、商業、英語ノ一科目若ハ数科目トス其ノ程度ハ師範学校生徒ニ課スル各科目ノ程度ニ準ス

前項ニ規定シタル科目ノ試験ハ受験科目ノ教授法ヲ附帯シテ之ヲ行フ

小学校専科正教員ノ試験ハ小学校教員検定委員会ニ於テ修身、国語、算術ニ関シ普通ノ学力ヲ有スト認メタル者ニアラサレハ之ヲ行ハス

本条ニ小学校専科正教員トアルハ尋常小学校及高等小学校ニ於テ専科正教員タルコトヲ得ヘキ者ヲ謂フ

第百十一条 尋常小学校本科正教員ノ試験科目及其ノ程度ハ師範学校簡易科ノ学科程度ニ準ス但シ漢文、図画、音楽ノ一科目若ハ数科目ヲ闕キ数学ハ算術、歴史ハ日本歴史ニ限ルコトヲ得又女子ノ為ニハ尚体操ヲ闕クコトヲ得

女子ノ為ニハ裁縫ヲ加フルコトヲ得其ノ程度ハ普通ノ衣類ノ裁チ方、縫ヒ方、繕ヒ方トス

第百十二条 尋常小学校准教員ノ試験科目及其ノ程度ハ左ノ如シ

修身 道徳ノ要旨

教育 教授法ノ大要

国語 小学校教科用読本ノ講読並ニ作文、習字

算術 整数、分数及小数ノ加減乗除、単比例

歴史、地理 日本歴史及日本地理ノ大要

理科 博物、物理、化学ノ初歩

図画 簡易ナル自在画

唱歌 単音唱歌

体操 普通体操

理科、図画、唱歌ノ一科目若ハ数科目ハ之ヲ闕キ女子ノ為ニハ尚体操ヲ闕クコトヲ得

第百十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ就キ試験検定ヲ行フトキハ小学校教員検定委員会ニ於テ第百八条乃至第百十二条ノ規定ニ対照シテ某科目ニ関シ同等以上ノ学力アリト認メタル者ニ対シテハ其ノ科目ノ試験ヲ闕クコトヲ得

一 師範学校、中学校、高等女学校教員免許状ヲ有スル者

二 他ノ府県ニ於テ授与シタル小学校教員免許状ヲ有スル者

三 文部省直轄学校ニ於テ某科目ニ関シ特ニ教員ノ職ニ適スル教育ヲ受ケテ卒業シタル者

四 小学校教員免許状又ハ小学師範学科卒業証書ヲ有シ其ノ有効期間満チタル者

五 小学校教員講習科ヲ卒リタル者

六 中学校又ハ明治三十二年文部省令第三十四号ニ依リ文部大臣ニ於テ中学校ト同等以上ト認メタル学校ヲ卒業シタル者

七 高等女学校ヲ卒業シタル者

第百十四条 試験検定ヲ受ケタル者ニシテ其ノ試験ニ合格セサルモ某科目ニ関シ成績佳良ナルトキハ府県知事ハ其ノ科目ノ成績ニ関シ証明書ヲ授与スルコトヲ得

前項ノ証明書ヲ受ケタル者ニシテ三箇年以内ニ更ニ試験検定ヲ出願スルトキハ其ノ証明書ニ記載シタル科目ノ試験ヲ闕ク

第百十五条 府県知事ハ検定手数料ヲ徴収スルコトヲ得

第二節 教員ノ免許状

第百十六条 府県知事又ハ文部省直轄学校長ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ就キ普通免許状ノ授与ヲ文部大臣ニ申請スルコトヲ得

一 小学校正教員府県免許状ヲ有シ十箇年以上市町村立小学校正教員ノ職ニ在リ成績佳良ナル者

二 高等師範学校又ハ女子高等師範学校ヲ卒業シ三箇年以上市町村立小学校正教員ノ職ニ在ル者

三 文部省直轄学校ニ於テ某科目ニ関シ特ニ教員ノ職ニ適スル教育ヲ受ケテ卒業シ三箇年以上市町村立小学校正教員ノ職ニ在ル者

第百十七条 師範学校長ハ師範学校ヲ卒業シタル者ニ対シ小学校教員府県免許状ノ授与ヲ府県知事ニ申請スヘシ

第百十八条 府県知事ニ於テ第百七条第六号ニ該当スル者ニ小学校正教員免許状ヲ授与セントスルトキハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ

第百十九条 府県知事ハ小学校教員免許状登録簿ヲ作リ免許状ヲ授与シタル者ノ氏名其ノ他必要ナル事項ヲ記入スヘシ

第百二十条 普通免許状又ハ府県免許状ヲ有スル者其ノ氏名ヲ変更シ又ハ免許状ヲ毀損亡失シタルトキハ其ノ書換若ハ再渡ヲ文部大臣又ハ府県知事ニ出願スルコトヲ得

前項ニ依リ免許状ノ書換若ハ再渡ヲ出願スル者ハ手数料トシテ普通免許状ニ就キテハ金一円、府県免許状ニ就キテハ府県知事ノ定メタル金額ヲ納ムヘシ

普通免許状ノ書換若ハ再渡ニ関スル手数料ハ登記[1]印紙ヲ以テ之ヲ納ムヘシ

第百二十一条 普通免許状又ハ府県免許状ヲ受ケタル者ノ氏名及免許状ノ種類ハ文部大臣又ハ府県知事之ヲ公告ス

第五章 職員
第一節 学校長及教員ノ進退

第百二十二条 市町村立小学校正教員左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ府県知事ハ之ニ休職ヲ命スルコトヲ得

一 傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リタルニ因リ職務ヲ行フニ妨アルトキ

二 学校編制ノ変更又ハ訴願ノ裁決ニ因リ過員ヲ生シタルトキ

三 教員養成ヲ目的トスル官立、府県立学校ニ入学スルトキ

四 刑事事件ニ関シ告訴若ハ告発セラレタルトキ

第百二十三条 市町村立小学校正教員ニシテ陸海軍現役ニ服シ又ハ戦時事変ニ際シ召集セラレタル者ハ当然休職者トス但シ陸軍六週間現役ニ服スル者ハ此ノ限ニアラス

第百二十四条 休職ノ期間ハ第百二十二条第一号第二号ノ場合ニ在リテハ一箇年トシ同条第四号ノ場合ニ在リテハ其ノ事件ノ裁判所ニ繋属中トシ同条第三号第百二十三条ノ場合ニ在リテハ其ノ事故止ミタル後尚三箇月トス

第百二十五条 休職者ハ職務ニ従事セサル外総テ在職者ト異ナルコトナシ但シ別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニアラス

第百二十六条 市町村立小学校正教員左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ府県知事ハ之ニ退職ヲ命スルコトヲ得

一 不具、癈疾ニ因リ又ハ身体若ハ精神ノ衰弱ニ因リ職務ヲ執ルニ堪ヘサルトキ

二 傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リ其ノ職ニ堪ヘサルニ因リ又ハ自己ノ便宜ニ因リ退職ヲ出願シタルトキ

三 休職者復職シタル為其ノ代員ヲ要セサルトキ

第百二十七条 第百二十二条又ハ第百二十六条ノ事由ニ因ラスシテ休職又ハ退職ヲ命スル必要アリト認メタルトキハ府県知事ハ文部大臣ノ指揮ヲ受ケ特別ノ処分ヲ為スコトヲ得但シ休職ノ場合ニ於テハ予メ期間ヲ定メテ具申スルコトヲ要ス

第百二十八条 市町村立小学校正教員左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ当然退職者トス

一 当該学校ノ廃セラレタルトキ

二 休職期間満チタルトキ

第百二十九条 市町村立小学校教員ニシテ免許状褫奪ノ処分ヲ受ケ又ハ其ノ免許状ニシテ効力ヲ失ヒタルトキハ当然其ノ職ヲ失フ

第百三十条 市町村立小学校准教員ノ進退ニ関スル規程ハ府県知事之ヲ定ム

第百三十一条 第百二十二条第一号第百二十六条第一号第二号前段ノ事由ニ因リ処分セントスルトキハ府県知事ハ其ノ府県恩給顧問医ノ意見ヲ聞クコトヲ要ス

第百三十二条 私立小学校長及教員ノ採用解職ハ設立者ニ於テ遅滞ナク府県知事ニ届出ツヘシ

第二節 学校長及教員ノ職務及服務

第百三十三条 学校長及教員ハ教育ニ関スル勅語ノ旨趣ヲ奉体シ法律命令ニ従ヒ誠実ニ其ノ職務ニ服スヘシ

第百三十四条 学校長ハ校務ヲ整理シ所属職員ヲ統督ス

第百三十五条 正教員ハ児童ノ教育ヲ担任シ且之ニ属スル事務ヲ掌ル

第百三十六条 准教員ハ本科正教員ノ職務ヲ助ク

第百三十七条 市町村立小学校長及教員ハ当該学校所在ノ市町村ニ居住スヘシ但シ監督官庁ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニアラス

学校長及教員ハ擅ニ其ノ職務ヲ離レ又ハ職務上居住スヘキ地ヲ離ルヽコトヲ得ス

第百三十八条 学校長及教員ハ営利ヲ目的トスル会社ノ業務執行社員、取締役、監査役ト為リ又ハ給料ヲ受ケテ他ノ事務ヲ行フコトヲ得ス但シ府県知事ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニアラス

学校長及教員ハ府県知事ノ認可ヲ受クルニアラサレハ営利ヲ目的トスル業務ヲ為スコトヲ得ス

第三節 懲戒処分、業務停止及免許状褫奪

第百三十九条 市町村立小学校長及教員ニ対シ懲戒処分ヲ行ハントスルトキハ府県知事ハ期間ヲ定メテ本人ヨリ手続書ヲ徴スルコトヲ要ス但シ之ヲ徴スルコト能ハサル事由アルトキハ此ノ限ニアラス

第百四十条 懲戒処分ヲ行フヘキ事件刑事裁判所ニ繋属スル間ハ同一事件ニ関シ懲戒処分ヲ行フコトヲ得ス

第百四十一条 市町村立小学校長及教員ノ[1]懲戒処分ヲ行フトキハ府県知事ハ本人ニ処分書ヲ交付スヘシ

第百四十二条 市町村立小学校長及教員ノ減俸ハ一箇月以上一箇年以下減俸ノ処分ヲ受ケタル当時ノ俸給月額ノ三分ノ一以下ヲ減給ス

第百四十三条 市町村立小学校教員ニシテ免職ノ処分ヲ受ケタル者ハ二箇年ヲ経ルニアラサレハ教員ノ職ニ就クコトヲ得ス

第百四十四条 第百三十九条乃至第百四十一条ノ規定ハ業務停止及免許状褫奪ノ処分ニ関シ之ヲ準用ス

第百四十五条 私立小学校長及教員ノ業務停止ハ一箇月以上二箇年以下トス

第百四十六条 府県知事ニ於テ学校長又ハ教員ニ対シ免職、業務停止又ハ免許状褫奪ノ処分ヲ行ヒタルトキハ其ノ氏名、職名及事由ヲ具シ文部大臣ニ報告スヘシ

第百四十七条 府県知事ハ免職又ハ業務停止ノ処分ヲ受ケタル学校長及教員ニシテ改悛ノ実顕著ナリト認メタル者ニハ第百四十三条ノ期間内又ハ業務停止ノ期間内ト雖モ文部大臣ノ認可ヲ受ケ教員ノ職ニ就クコトヲ得シメ又ハ業務停止ヲ解クコトヲ得

第四節 俸給、旅費及諸給与準則

第百四十八条 教員ノ月俸額ハ左表ニ依リ之ヲ定ムヘシ但シ土地ノ情況ニ依リ本科正教員及准教員ノ俸給額ハ明治三十年勅令第二号第六条ノ金額マテニ減スルコトヲ得

一級 二級 三級 四級 五級 六級 七級 八級 九級 十級
本科正教員 七十五円 六十 五十 四十 三十 二十四円 二十 十六 十三 十一
六十五円 五十五円 四十五円 三十五円 二十七円 二十二円 十八 十四 十二
専科正教員 四十 三十 二十四円 二十 十六 十三 十一
三十五円 二十七円 二十二円 十八 十四 十二
准教 二十 十六 十三 十一
十八 十四 十二

第百四十九条 本科正教員ニシテ一級上俸ヲ受ケ特ニ功労アル者ニハ漸次百円マテ増スコトヲ得

第百五十条 専科正教員ノ俸給ハ其ノ教授時数ニ応シ等級相当ノ俸給額ヲ減スルコトヲ得

第百五十一条 専科正教員ニシテ他ノ小学校ノ専科正教員ヲ兼ヌル者ニハ関係学校ノ経費ヨリ其ノ俸給ヲ分割シテ給スルコトヲ得

第百五十二条 教員ノ俸給ハ其ノ意ニ反シテ之ヲ減スルコトヲ得ス

第百五十三条 休職者ニハ俸給ヲ給セス但シ府県知事ニ於テ市町村、町村学校組合又ハ区ノ同意ヲ得タルトキハ其ノ一部若ハ全部ヲ給スルコトヲ得

第百五十四条 教員ニシテ在職ノ儘小学校教員講習科ニ入学スル者ニハ前条ノ規定ヲ準用ス

第百五十五条 教員ニシテ陸軍給与令又ハ海軍軍人俸給令ニ依リ俸給ヲ受クル者ニハ其ノ間俸給ヲ給セス但シ其ノ額本職ノ俸給額ヨリ寡少ナルトキハ其ノ不足額ヲ給スルコトヲ得

第百五十六条 教員左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ当月分ノ俸給ハ日割ヲ以テ給スヘシ

一 懲戒ニ因リ免職ニ処セラレタルトキ

二 免許状褫奪又ハ免許状ノ失効ニ因リ教員ノ職ヲ失ヒタルトキ

第百五十七条 教員死亡シタルトキハ其ノ在職中ト休職中トニ拘ラス在職最終ノ俸給月額三箇月分ヲ其ノ遺族ニ給スヘシ

第百五十八条 正教員ノ旅費額ハ判任文官ノ例ニ準シ之ヲ定メ准教員ノ旅費額ハ地方ノ情況ヲ量リ之ヲ定ムヘシ

第百五十九条 教員ニシテ一週三十時ヲ超エ教授ヲ担任スル者ニハ手当ヲ給スヘシ

第百六十条 学校長又ハ教員ニシテ特ニ勤労アル者ニハ慰労金ヲ給スルコトヲ得

第百六十一条 教員ニシテ宿直スル者ニハ賄料ヲ給スヘシ

第百六十二条 学校長又ハ教員ニシテ職務ノ為傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リタル者ニハ療治料ヲ給スヘシ

第百六十三条 教員ニハ土地ノ情況ニ依リ住宅料ヲ給スヘシ

第百六十四条 第百五十九条第百六十条ニ依リ給スル金額ハ府県知事ニ於テ管理者ノ意見ヲ聞キテ之ヲ決定シ第百六十一条乃至第百六十三条ニ依リ給スル金額ハ管理者ニ於テ之ヲ決定スヘシ

第百六十五条 本節ニ規定アルモノヲ除ク外俸給及旅費ノ支給方法ハ判任文官ノ例ニ準シ地方ノ情況ヲ量リ之ヲ定ムヘシ

第百六十六条 第百四十八条ニ掲クル表ニ依リ難キ事情アルトキハ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得

第百六十七条 本節ニ学校長、教員トアルハ市町村立小学校ノ学校長、教員ヲ謂フ

第五節 代用教員

第百六十八条 代用教員ノ進退ハ市立小学校ニ在リテハ市長、町村立小学校ニ在リテハ郡長之ヲ行フ

第百六十九条 市町村立小学校代用教員職務上ノ義務ニ違背シ若ハ職務ヲ怠リタルトキ又ハ職務ノ内外ヲ問ハス体面ヲ汚辱スルノ所為アリタルトキハ懲戒処分ヲ行フヘシ其ノ処分ハ譴責、減俸及免職トス

懲戒処分ハ市立小学校ニ在リテハ市長、町村立小学校ニ在リテハ郡長之ヲ行フ

第百七十条 代用教員ノ採用、解職及懲戒処分ハ郡市長又ハ設立者ニ於テ遅滞ナク府県知事ニ報告スヘシ

第百七十一条 小学校令第四十七条ノ規定並ニ本令第五章第二節ノ規定中准教員ニ関スルモノハ代用教員ニ準用ス

第百七十二条 府県知事ニ於テ代用教員ヲ不穏当ト認メタルトキハ之ヲ解職セシムルコトヲ得

第百七十三条 市町村立小学校代用教員ノ俸給、旅費其ノ他諸給与ニ関スル規程ハ府県知事之ヲ定ム

第六章 授業料

第百七十四条 尋常小学校ニ於テ授業料ヲ徴収セントスルトキハ市ニ在リテハ一箇月二十銭以下、町村又ハ町村学校組合ニ在リテハ一箇月十銭以下ニ於テ其ノ金額ヲ定メ府県知事ノ認可ヲ受クヘシ

第百七十五条 高等小学校ニ於テ徴収スル授業料ハ市ニ在リテハ一箇月六十銭以下、町村又ハ町村学校組合ニ在リテハ一箇月三十銭以下ニ於テ其ノ金額ヲ定メ監督官庁ノ認可ヲ受クヘシ

第百七十六条 特別ノ事情アル市町村又ハ町村学校組合ニ於テハ文部大臣ノ認可ヲ受ケ期限ヲ定メテ前二条ノ制限ヲ超エタル授業料ヲ徴収スルコトヲ得

第百七十七条 小学校補習科ノ授業料額ハ市町村又ハ町村学校組合ニ於テ之ヲ定ムヘシ

第百七十八条 小学校ニ於テハ学年ニ依リ授業料額ニ差等ヲ設クルコトヲ得ス

第百七十九条 他ノ小学校設置負担ノ区域ヨリ入学スル児童ニ就キテハ第百七十四条第百七十五条ノ制限以内ニ於テ授業料額ヲ増スコトヲ得但シ児童教育事務ヲ委託シタル市町村、町村学校組合又ハ区ヨリ入学スル児童ニ就キテハ此ノ限ニアラス

第百八十条 貧窮ノ為授業料ヲ納ムルコト能ハサル者ニ対シテハ管理者ハ授業料ノ全部又ハ一部ヲ免除スヘシ

一家ノ児童二人以上同時ニ小学校ニ就学スルトキハ管理者ハ授業料額ヲ減スルコトヲ得

第百八十一条 本章ノ規定ハ私立小学校ニ関シ之ヲ適用セス

第七章 学務委員

第百八十二条 市町村、町村学校組合並ニ区ノ学務委員ハ十人以下トス但シ東京市ニ在リテハ十五人マテニ増スコトヲ得

第百八十三条 学務委員ハ左ニ掲クル事項ニ就キ市長、市参事会、町村長、町村学校組合長、区長並ニ其ノ代理者ヲ補助シ又ハ其ノ諮問ニ応シテ意見ヲ陳述ス

一 就学督促ニ関スルコト

二 家庭又ハ其ノ他ニ於テ尋常小学校ノ教科ヲ修ムル者ノ認可ニ関スルコト

三 就学義務ノ免除又ハ就学ノ猶予ニ関スルコト

四 設備ニ関スルコト

五 経費予算ノ調製ニ関スルコト

六 授業料ニ関スルコト

七 学校基本財産ニ関スルコト

八 教科目ノ加除ニ関スルコト

九 修業年限ニ関スルコト

十 補習科ノ設置廃止ニ関スルコト

十一 私立尋常小学校代用ニ関スルコト

第百八十四条 公民中ヨリ選挙セラレタル学務委員ノ任期ハ四箇年トス

補闕選挙ニ依リ就任シタル者ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス

第百八十五条 学務委員ニシテ資格ノ要件ヲ失ヒタル者ハ当然其ノ職ヲ失フ

第八章 代用私立小学校

第百八十六条 市ハ其ノ区域内ニ在ル私立尋常小学校ヲ以テ市立尋常小学校ニ代用セントスルトキハ其ノ事由ヲ具シ府県知事ノ認可ヲ受クヘシ

町村又ハ町村学校組合ハ其ノ区域内ニ在ル私立尋常小学校ヲ以テ町村立尋常小学校ニ代用セントスルトキハ其ノ事由ヲ具シ郡長ノ認可ヲ受クヘシ

第百八十七条 前条ニ依リ認可ヲ受ケントスルトキハ市町村又ハ町村学校組合ハ左ノ事項ニ就キ私立小学校設立者ト協議ヲ遂ケ監督官庁ニ具申スヘシ

一 代用ノ期間

二 入学ヲ許スヘキ児童ノ定員

三 授業料ヲ徴収セントスルトキハ其ノ金額

四 補助金ヲ給スルトキハ其ノ金額

五 其ノ他必要ノ事項

前条ノ認可ヲ受ケタル後協議ノ事項ヲ変更セントスルトキハ其ノ事項ニ就キ更ニ認可ヲ受クヘシ

第百八十八条 代用ノ期間ハ四箇年ヲ超過スルコトヲ得ス但監督官庁ノ認可ヲ受ケ之ヲ更新スルコトヲ得

第百八十九条 私立尋常小学校ニシテ教授上、管理上、衛生上適当ナル設備ヲ備ヘ成績佳良ナルモノニアラサレハ之ヲ代用私立小学校ト為スコトヲ得ス

第百九十条 左ノ場合ニ於テハ代用私立小学校設立者ハ市町村又ハ町村学校組合ノ承認ヲ受ルコトヲ要ス

一 高等小学校ノ教科ヲ併置シ若ハ之ヲ廃止セントスルトキ

二 補習科ヲ設置シ若ハ之ヲ廃止セントスルトキ

三 補習科ノ児童ヲ正教科ノ児童ト合シテ学級ヲ編制セントスルトキ

四 多級ノ編制ヲ単級ノ編制ニ改メントスルトキ

五 半日小学校ニ編制セントスルトキ

六 学校ノ位置ヲ変更セントスルトキ

第百九十一条 左ノ場合ニ於テハ代用私立小学校設立者ハ市町村長又ハ町村学校組合長ノ承認ヲ受クルコトヲ要ス

一 尋常小学校ノ教科目ヲ加除シ又ハ随意科目ト為サントスルトキ

二 学校長、教員又ハ代用教員ヲ採用若ハ解職セントスルトキ

第百九十二条 小学校令第五十七条ノ規定並本令第百七十四条第百七十六条第百七十八条乃至第百八十条ノ規定ハ代用私立小学校ニ関シ之ヲ準用ス

第百九十三条 監督官庁ハ私立小学校ノ代用ヲ以テ不利ナリト認メタルトキハ其ノ代用ノ認可ヲ取消スヘシ

第百九十四条 私立小学校ノ代用ヲ止メントスルトキハ市町村又ハ町村学校組合ハ代用私立小学校設立者ト協議ノ上三十日以前ニ監督官庁ノ認可ヲ受クヘシ

第九章 幼稚園及小学校ニ類スル各種学校

第百九十五条 幼稚園ハ満三歳ヨリ尋常小学校ニ入学スルマテノ幼児ヲ保育スルヲ以テ目的トス

第百九十六条 幼児ヲ保育スルニハ其ノ心身ヲシテ健全ニ発達セシメ善良ナル習慣ヲ得シメ以テ家庭教育ヲ補ハンコトヲ要ス

幼児ノ保育ハ其ノ心身発達ノ程度ニ副ハシムヘク其ノ会得シ難キ事項ヲ授ケ又ハ過度ノ業ヲ為サシムルコトヲ得ス

常ニ幼児ノ心情及行儀ニ注意シテ之ヲ正シクセシメ又常ニ善良ナル事例ヲ示シテ之ニ傚ハシメンコトヲ務ムヘシ

第百九十七条 幼児保育ノ項目ハ遊戯、唱歌、談話及手技トス

第百九十八条 遊戯ハ分テ随意遊戯及共同遊戯トス

随意遊戯ハ幼児ヲシテ各自ニ運動セシメ共同遊戯ハ歌曲ニ合ヘル諸種ノ運動等ヲ為サシメ心情ヲ快活ニシ身体ヲ健全ナラシメンコトヲ要ス

第百九十九条 唱歌ハ平易ナル歌曲ヲ唱ハシメ聴器、発声器及呼吸器ヲ練習シテ其ノ発声ヲ助ケ心情ヲ快活純美ナラシメ兼テ徳性ノ涵養ニ資セシメンコトヲ要ス

第二百条 談話ハ有益ニシテ興味アル事実及寓言、通常ノ天然物及加工品等ニ就キテ之ヲ為シ徳性ヲ涵養シ観察注意ノ力ヲ養ヒ兼テ発声ヲ正シクシ言語ヲ練習セシメンコトヲ要ス

第二百一条 手技ハ幼稚園恩物ヲ用ヒテ手及眼ヲ練習シ心意ノ発育ニ資セシメンコトヲ要ス

第二百二条 保育ノ時数ハ一日五時以下トス

前項ノ時数ニハ食事時間ヲ包含ス

第二百三条 幼稚園ニ園長ヲ置クコトヲ得

第二百四条 幼稚園ニ於テ幼児ヲ保育スル者ヲ保姆トス

保姆ハ女子ニシテ尋常小学校本科正教員又ハ准教員タルヘキ資格ヲ有スル者又ハ府県知事ノ免許ヲ得タル者タルヘシ

第二百五条 幼稚園長及保姆ノ採用、解職ハ市町村立幼稚園ニ在リテハ府県知事之ヲ行ヒ私立幼稚園ニ在リテハ設立者ニ於テ府県知事ニ届出ツヘシ

第二百六条 幼稚園ノ幼児数ハ百人以下トス但シ特別ノ事情アルトキハ百五十人マテニ増スコトヲ得

第二百七条 保姆一人ノ保育スル幼児数ハ四十人以下トス

第二百八条 幼稚園ノ設備ハ左ノ各号ノ規定ニ依ルヘシ

一 建物ハ平屋造トシ保育室、遊戯室其ノ他必要ナル諸室ヲ備フヘシ

二 保育室ノ大ハ幼児五人ニ付一坪ヨリ小ナルコトヲ得ス

三 遊園ハ幼児一人ニ付一坪ノ割合ヲ以テ設クルヲ常例トス

四 恩物、絵画、遊戯道具、楽器、黒板、机、腰掛、時計、寒暖計、煖房器其ノ他必要ナル器具ヲ備フヘシ

五 敷地、飲料水及採光窓ニ関シテハ小学校ノ例ニ依ルヘシ

第二百九条 盲唖学校其ノ他小学校ニ類スル各種学校ニハ学校長ヲ置クコトヲ得

第二百十条 盲唖学校其ノ他小学校ニ類スル各種学校教員ハ小学校教員タルヘキ資格ヲ有スル者又ハ府県知事ノ免許ヲ得タル者タルヘシ

第二百十一条 盲唖学校其ノ他小学校ニ類スル各種学校ノ学校長及教員ノ採用、解職ニ関シテハ第二百五条ノ規定ヲ準用ス

第十章 附則

第二百十二条 本令ハ明治三十三年九月一日ヨリ施行ス但シ第一章第一節乃至第四節第五章第四節第五節第六章第八章ノ規定ハ明治三十四年四月一日ヨリ施行ス

第二百十三条 小学校ニ於テ第三十五条ノ規定ニ依リ難キ事情アルトキハ明治三十四年四月一日ヨリ五箇年間ハ三学級毎ニ本科正教員一人及准教員二人ヲ置クコトヲ得

既設小学校ノ編制ニシテ第三十五条ヲ除ク外第一章第三節ノ規定二牴触スル場合ニ於テ特別ノ事情アルトキハ市町村、町村学校組合又ハ設立者ニ於テ期間ヲ定メ府県知事ノ認可ヲ受ケ同節ノ規定ニ依ラサルコトヲ得

第二百十四条 既設ノ補習科ニ於テ第一章第四節ノ規定施行ノ際現ニ其ノ教科ヲ学習スル児童ニ就キテハ其ノ児童ノ修了スルニ至ルマテ仍従前ノ例ニ依ルコトヲ得

第二百十五条 本令施行前府県知事ニ於テ採定シタル小学校教科用図書ハ本令施行後仍其ノ効力ヲ有ス

第六十条ノ規定ニ依リ学年開始前公布ヲ為スヘキ期間ハ本令施行ノ日ヨリ明治三十四年三月三十一日マテハ六十日トス

第二百十六条 本令施行前府県知事ニ於テ定メタル規程ニ依リ編製シタル学齢簿及学籍簿ハ第三章ノ規程ニ依リ編製シタルモノト看做ス

第二百十七条 本令施行前ニ授与シタル小学校教員免許状及之ト同一ノ効力ヲ有スル小学師範学科卒業証書ハ本令ノ規定ニ依ル小学校教員免許状中之ニ相当スルモノト同一ノ効力ヲ有ス

第二百十八条 本令施行前従前ノ規程ニ依リ休職ヲ命セラレタル教員ノ休職期間ハ仍従前ノ例ニ依ル

第二百十九条 市町村立小学校教員ノ俸給、旅費其ノ他諸給与ニ関シテハ本令施行ノ日ヨリ明治三十四年三月三十一日マテニ[1]府県知事ニ於テ定メタル従前ノ規程ニ係ル[1]

第二百二十条 本令施行ノ際現ニ学務委員ノ職ニ在ル者ニシテ公民中ヨリ選挙セラレ任期アル者ハ任期ノ満了マテ其ノ職ヲ失フコトナシ其ノ任期ナキ者ハ本令施行ノ日ヨリ第百八十四条第一項ノ任期ヲ起算ス

本令施行ノ際現ニ学務委員ノ職ニ在ル者ノ数第百八十二条ニ規定シタル制限ニ超過スルトキハ抽籤ニ依リテ退職者ヲ定ムヘシ

第二百二十一条 第八章ノ規定施行ノ際現ニ代用中ノ私立小学校ノ代用ニ関シテハ協議ニ依リ定メタル期間ノ満了マテ仍従前ノ例ニ依ル

第二百二十二条 既設幼稚園ニシテ第二百六条第二百八条ノ規定ニ依リ難キトキハ期間ヲ定メ府県知事ノ認可ヲ受ケ之ニ依ラサルコトヲ得

第一号表

平仮 片仮
あいうえお アイウエオ
かきくけこ カキクケコ
さしすせそ サシスセソ
たちつてと タチツテト
なにぬねの ナニヌネノ
はひふへほ ハヒフヘホ
まみむめも マミムメモ
やいゆえよ ヤイユエヨ
平仮 片仮
らりるれろ ラリルレロ
わゐうゑを [1]ウヱヲ
がぎぐげご ガギグゲゴ
ざじずぜぞ ザジズゼゾ
だぢづでど ダヂヅデド
ばびぶべぼ バビブベボ
ぱぴぷぺぽ パピプペポ

第二号表

従来用ヒ来レル字音仮名遣
新定ノ字
音仮名遣
い(あ行及や行)ゐ
う(あ行及わ行)
[2](あ行及や行)ゑ
[2] を
か くわ
が ぐわ

} 従来慣用
ノ例ニ依
ルモ妨ナ
け くゑ
げ ぐゑ
じ ぢ
ず づ

} 従来慣用
ノ例ニ依
ルモ妨ナ
いゆ(いあ行及や行)
あう あふ おう[2]
おふ[2] わう をう
おー
かう かふ こう
こふ くわう
こー
がう がふ ごう
ごふ ぐわう
ごー
さう さふ そう そー
ざう ざふ ぞう ぞー
たう たふ とう とー
だう だふ どう どー
なう なふ のう のー
はう はふ ほう
ほふ
ほー
ばう ばふ ぼう ぼー
ぱう ぱふ ぽう ぽー
まう もう もー
ゆう いう いふ(い
あ行及や行)
ゆー
やう よう えう[2]
えふ[2] ( [2]ハあ行
及や行
)
よー
従来用ヒ来レル字音仮名遣
新定ノ字
音仮名遣
らう らふ ろう ろー
きやう きよう けう
けふ
きょー
ぎやう ぎよう げう
げふ
ぎょー
しやう しよう せう
せふ
しょー
じやう じよう ぜう じょー
ちやう ちよう てう
てふ
ちょー
ぢやう ぢよう でう
でふ
じょー
にやう によう ねう
ねふ
にょー
ひやう ひよう へう ひょー
びやう びよう べう びょー
ぴやう ぴよう ぺう ぴょー
みやう めう みょー
りやう りよう れう
れふ
りょー
きう きふ きゅー
ぎう ぎふ ぎゅー
しう しふ しゅー
じう じふ じゅー
ちう ちふ ちゅー
ぢう ぢふ じゅー
にう にふ にゅー
りう りふ りゅー
あむ あん ( 其他語尾ノ発音
ニむんヲ区別ス
ルモノ皆之ニ準
)
あん
備考 本表ハ平仮名ヲ以テ示シタリト雖モ片仮名ヲ用フル場合モ亦同シ

第三号表

丿使便寿姿宿广殿湿綿西西調退

備考 本表ノ漢字中略字ニテ広ク通用セルモノハ之ヲ使用スルモ妨ナシ
人名地名及本表ニ掲ケサル物名等ニシテ特ニ漢字ニテ示スヘキ必要アルモノハ之ヲ加ヘ授クルモ妨ケナシ

第四号表

[1] 毎週
教授
時数
第一学 毎週
教授
時数
第二学 毎週
教授
時数
第三学 毎週
教授
時数
第四学
道徳ノ要旨 道徳ノ要旨 道徳ノ要旨 道徳ノ要旨
一〇 発音
仮名及近易ナル
普通文ノ読
方、書キ方、綴リ

話シ方
一二 日常須知ノ文字
及近易ナル普通
文ノ読ミ方、書
キ方、綴リ方
話シ方
一五 日常須知ノ文字
及近易ナル普通
文ノ読ミ方、書
キ方、綴リ方
話シ方
一五 日常須知ノ文字
及近易ナル普通
文ノ読ミ方、書
キ方、綴リ方
話シ方
二十以下ノ数ノ
範囲内ニ於ケル
数ヘ方、書キ方
及加減乗除
百以下ノ数ノ範
囲内ニ於ケル数
ヘ方、書キ方及
加減乗除
通常ノ加減乗除 通常ノ加減乗除
及小数ノ呼
方、書キ方及加

(珠算 加減)
遊戯 遊戯
普通体操
遊戯
普通体操
遊戯
普通体操
単形 簡易ナル形体 簡易ナル形体
平易ナル単音唱
平易ナル単音唱
平易ナル単音唱
平易ナル短音唱
運針法
通常ノ衣類ノ縫
ヒ方
通常ノ衣類ノ縫
ヒ方、繕ヒ方
簡易ナル細工 簡易ナル細工 簡易ナル細工 簡易ナル細工
二一 二四 二七 二七
( )及図画手[1]以下手工マテノ各欄ハ朱書トス

第五号表









第一学




第二学
道徳ノ要旨 道徳ノ要旨
一〇 日常須知ノ文字及普通文ノ読
ミ方、書キ方、綴リ方
一〇 日常須知ノ文字及普通文ノ読
ミ方、書キ方、綴リ方
加減乗除
度量衡、貨幣及時ノ計算
簡易ナル小数
(珠算 加減)
小数、分数
簡易ナル比例
(珠算 加減乗除)
日本歴 日本歴史ノ大要 前学年ノ続キ
日本地理ノ大要 前学年ノ続キ
植物、動物、鉱物及自然ノ現象 植物、動物、鉱物及自然ノ現象


簡単ナル形体

簡単ナル形体
単音唱歌 単音唱歌
普通体操
遊戯

兵式体操
普通体操
遊戯

兵式体操
運針法、通常ノ衣類ノ縫ヒ方 通常ノ衣類ノ縫ヒ方、裁チ方、
繕ヒ方
簡易チル[1]細工 簡易ナル細工
二八

三〇
二八

三〇
( )及手工ノ各欄ハ朱書トス

第六号表









第一学




第二学




第三学
道徳ノ要旨 道徳ノ要旨 道徳ノ要旨
一〇 日常須知ノ文字及普
通文ノ読ミ方、書キ
方、綴リ方
一〇 日常須知ノ文字及普
通文ノ読ミ方、書キ
方、綴リ方
一〇 日常須知ノ文字及普
通文ノ読ミ方、書キ
方、綴リ方
加減乗除
度量衡、貨幣及時ノ
計算
簡易ナル小数
(珠算 加減)
小数、分数
簡易ナル比例
(珠算 加減乗除)
分数
比例
百分算
(珠算 加減乗除)
日本歴 日本歴史ノ大要 前学年ノ続キ 前学年ノ続キ
日本地理ノ大要 前学年ノ続キ 外国地理ノ大要
植物、動物、鉱物及自
然ノ現象
植物、動物、鉱物及自
然ノ現象
通常ノ物理化学上ノ
現象、元素及化合物、
簡易ナル器械ノ構造
作用、人身生理衛生
ノ大要

簡単ナル形体
簡単ナル形体
諸般ノ形体
単音唱歌 単音唱歌 単音唱歌
普通体操
遊戯

兵式体操
普通体操
遊戯

兵式体操
普通体操
遊戯

兵式体操
運針法、通常ノ衣類
ノ縫ヒ方
通常ノ衣類ノ縫ヒ
方、裁チ方、繕ヒ方
通常ノ衣類ノ縫ヒ
方、裁チ方、繕ヒ方
簡易ナル細工 簡易ナル細工 簡易ナル細工
農事
農事ノ大要
農事
農事ノ大要
水産
水産ノ大要
農事
農事ノ大要
水産
水産ノ大要
商業ノ大要 商業ノ大要 商業ノ大要
二八
三〇
二八
三〇
二八
三〇
( )及手工以下商業マテノ各欄ハ朱書トス

第七号表









第一学




第二学




第三学




第四学
道徳ノ要旨 道徳ノ要旨 道徳ノ要旨 道徳ノ要旨
一〇 日常須知ノ文字
及普通文ノ読ミ
方、書キ方、綴リ
一〇 日常須知ノ文字
及普通文ノ読ミ
方、書キ方、綴リ
一〇 日常須知ノ文字
及普通文ノ読ミ
方、書キ方、綴リ
一〇 日常須知ノ文字
及普通文ノ読ミ
方、書キ方、綴リ
加減乗除
度量衡、貨幣及
時ノ計算
簡易ナル小数
(珠算 加減)
小数、分数
簡易ナル比例
(珠算 加減乗
除)
分数
比例
百分算
(珠算 加減乗
除)
比例
百分算
(求積、日用簿記、
珠算 加減乗除)
日本歴史 日本歴史ノ大要 前学年ノ続キ 前学年ノ続キ 日本歴史ノ補習
日本地理ノ大要 前学年ノ続キ 外国地理ノ大要 日本地理及外国
地理ノ補習
植物、動物、鉱物
及自然ノ現象
植物、動物、鉱物
及自然ノ現象
通常ノ物理化学
上ノ現象、元素
及化合物、簡易
ナル器械ノ構造
作用、人身生理
衛生ノ大要
通常ノ物理化学
上ノ現象、元素
及化合物、簡易
ナル器械ノ構造
作用、植物、動物、
鉱物ノ相互及人
生ニ対スル関
係、人身生理衛
生ノ大要


簡単ナル形体

簡単ナル形体

諸般ノ形体

諸般ノ形体
(簡易ナル幾何画)
単音唱歌 単音唱歌 単音唱歌 単音唱歌
普通体操
遊戯

兵式体操
普通体操
遊戯

兵式体操
普通体操
遊戯

兵式体操
普通体操
遊戯

兵式体操
運針法、通常ノ
衣類ノ縫ヒ方
通常ノ衣類ノ縫
ヒ方、裁チ方、繕
ヒ方
通常ノ衣類ノ縫
ヒ方、裁チ方、繕
ヒ方
通常ノ衣類ノ縫
ヒ方、裁チ方、繕
ヒ方
簡易ナル細工 簡易ナル細工 簡易ナル細工 簡易ナル細工
農事
農事ノ大要
農事
農事ノ大要
水産
水産ノ大要
農事
農事ノ大要
水産
水産ノ大要
農事
農事ノ大要
水産
水産ノ大要
商業ノ大要 商業ノ大要 商業ノ大要 商業ノ大要
読ミ方、書キ方、
綴リ方、話シ方
読ミ方、書キ方、
綴リ方、話シ方
読ミ方、書キ方、
綴リ方、話シ方
読ミ方、書キ方、
綴リ方、話シ方
男二八

女三〇
男二八

女三〇
男二八

女三〇
男二八

女三〇
( )及手工以下英語マテノ各欄ハ朱書トス

第八号表



一〇〇以上
一一〇未満
( 三三、〇〇以上
三六、三〇未満
)
一一〇以上
一二〇未満
( 三六、三〇以上
三九、六〇未満
)
一二〇以上
一三〇未満
( 三九、六〇以上
四二、九〇未満
)
一三〇以上
一四〇未満
( 四二、九〇以上
四六、二〇未満
)
一四〇以上
一五〇未満
( 四六、二〇以上
四九、五〇未満
)
机ノ 一五、五〇 一七、〇〇 一八、五〇 二〇、〇〇 二一、五〇
机ノ 一二、〇〇
机ノ
(二人掛)
三〇、〇〇乃至
三六、〇〇
三六、〇〇
腰掛ノ 八、六〇 九、四〇 一〇、二〇 一一、〇〇 一一、八〇
腰掛ノ 八、二〇 五、〇〇 九、八〇 一〇、六〇 一一、四〇
腰掛ノ
(二人掛)
二六、〇〇乃至
三二、〇〇
三二、〇〇



横木ノ 五、〇〇 五、四〇 五、八〇 六、二〇 六、六〇


第一横木ノ高 四、〇〇 四、四〇 四、八〇 五、二〇 五、六〇
第二横木ノ高 一〇、〇〇 一〇、八〇 一一、六〇 一二、四〇 一三、二〇
本表中身長欄ハ「センチメートル」其括弧内ノ数及机ノ高以下ハ曲尺ノ寸ヲ以テ一位トス

第九号表


生年
学齢
終ル年月


児童ト
ノ関係

入学シタル学校又
ハ教授者氏名
就学シタル年月日
尋常小学校ノ教科
ヲ了リタル年月



年月

年月

第十号表


入学年月日
入学
ノ経
卒業年月日
退学年月日
生年月
退学
理由





児童
トノ
関係
学業成 在学中出席及欠席 身体ノ状





修了
ノ年
月日
出席日数 欠席日数







病気 事故 当時 盈虚
ノ差
第一学年
第二学年
第三学年
第四学年

備考 学校医ヲ置カサル学校ニ於テ[1]身体ノ状況ノ欄ハ之ヲ闕クコトヲ得

正誤

昨二十一日文部省令第十四号中第十九条第一項第一号ノ但書ハ本文ニ続ク第二十八条第一項第二号二三行ハ各〻一字上ケ第四十一条「又」ハ「又ハ」第百二十条第三項登記(﹅﹅)ハ収入(○○)第百四十一条教員ノ(﹅)ハ教員ニ対シ(○○○)第二百十九条「三十一日マテニ」ハ「三十一日マテハ」「係ル」ハ「依ル」ノ孰モ誤第二号表新定ノ字音仮名遣ノ上ニ横線並ニ第四号表ノ首欄ニヲ加フ同表欄外図書手(﹅﹅﹅)ハ図書(○○)第五号表手工欄内「チル」ハ「ナル」又第一号表第二号表と(﹅)ハと(○)[3]ゐ(﹅)ハゐ(○)[3]しじ(﹅﹅)ハしじ(○○)[3](﹅)ハヰ(○)第十号表備考「於テ」ハ「於テハ」ノ孰モ誤

文部参事官


  1. 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 正誤の箇所。
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 「え」「お」は変体仮名。
  3. 3.0 3.1 3.2 字形の変更。

関連項目

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外部リンク

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この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。