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小学校令 (明治23年勅令第215号)

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条文構成

朕小学校令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム



明治二十三年十月六日

文部大臣 芳川顕正


勅令第二百十五号

小学校令

第一章 小学校ノ本旨及種類

第一条 小学校ハ児童身体ノ発達ニ留意シテ道徳教育及国民教育ノ基礎並其生活ニ必須ナル普通ノ知識技能ヲ授クルヲ以テ本旨トス

第二条 小学校ハ之ヲ分テ尋常小学校及高等小学校トス

市町村若クハ町村学校組合又ハ其区ノ負担ヲ以テ設置スルモノヲ市町村立小学校トシ一人若クハ数人ノ費用ヲ以テ設置スルモノヲ私立小学校トス

徒弟学校及実業補習学校モ亦小学校ノ種類トス

第二章 小学校ノ編制

第三条 尋常小学校ノ教科目ハ修身読書作文習字算術体操トス

土地ノ情況ニ依リ体操ヲ欠クコトヲ得又日本地理日本歴史図画唱歌手工ノ一科目若クハ数科目ヲ加ヘ女児ノ為ニハ裁縫ヲ加フルコトヲ得

第四条 高等小学校ノ教科目ハ修身読書作文習字算術日本地理日本歴史外国地理理科図画唱歌体操トス女児ノ為ニハ裁縫ヲ加フルモノトス

土地ノ情況ニ依リ外国地理唱歌ノ一科目若クハ二科目ヲ欠クコトヲ得又幾何ノ初歩外国語農業商業手工ノ一科目若クハ数科目ヲ加フルコトヲ得

第五条 尋常小学校ノ教科ト高等小学校ノ教科トヲ一校ニ併セ置クコトヲ得

第六条 高等小学校ニ於テハ土地ノ情況ニ依リ農科商科工科ノ一科若クハ数科ノ専修科ヲ置クコトヲ得其専修科ハ正教科ニ併セ置キ又ハ之ニ代フルモノトス

第七条 尋常小学校又ハ高等小学校ニ補習科ヲ置クコトヲ得

第八条 尋常小学校ノ修業年限ハ三箇年又ハ四箇年トシ高等小学校ノ修業年限ハ二箇年三箇年又ハ四箇年トス

第九条 専修科補習科徒弟学校及実業補習学校ノ教科目及修業年限ハ文部大臣之ヲ定ム

第十条 小学校ノ某教科目ハ文部大臣定ムル所ノ規則ニ従ヒ之ヲ随意科目トナシ又ハ之ヲ学習シ能ハサル児童ニ課セサルコトヲ得

第十一条 第三条又ハ第四条ニ依リ小学校ノ教科目ヲ加除スルニハ市町村立小学校ニ就キテハ其市参事会又ハ町村長ニ於テ私立小学校ニ就キテハ其設立者ニ於テ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

第五条ニ依リ尋常小学校ノ教科ト高等小学校ノ教科トヲ一校ニ併セ置キ又ハ其併置ヲ止ムルニハ市町村立小学校ニ就キテハ其市町村ニ於テ私立小学校ニ就キテハ其設立者ニ於テ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

第六条第七条又ハ第八条ニ依リ正教科専修科若クハ補習科ヲ設置廃止シ又ハ修業年限ヲ定ムルニハ市町村立小学校ニ就キテハ其市町村ニ於テ私立小学校ニ就キテハ其設立者ニ於テ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

第十二条 小学校教則ノ大綱ハ文部大臣之ヲ定ム

府県知事ハ小学校教則ノ大綱ニ基キ其府県ノ小学校教則ヲ定メ文部大臣ノ許可ヲ受クヘシ

第十三条 小学校ノ単級多級ノ制男女ヲ区別シ教授スヘキ場合多級ノ学校ニ学校長ヲ置クヘキ場合一教員ノ教授シ得ヘキ児童ノ数等ニ関シテハ文部大臣之ヲ規定ス

第十四条 小学校ノ休業ハ日曜日ヲ除クノ外毎年九十日ヲ超エサルモノトス但徒弟学校実業補習学校補習科等ニ就キテハ此限ニ在ラス

特別ノ事情アルトキハ府県知事ニ於テ文部大臣ノ許可ヲ受ケテ前項ニ依ラサルコトヲ得

伝染病ノ流行其他非常変災アルトキハ市内ニ在ル小学校ニ就キテハ府県知事町村内ニ在ル小学校ニ就キテハ郡長ニ於テ一時之ヲ閉サシムヘシ其急迫ナル場合ニ於テハ市町村長ニ於テモ亦之ヲ閉ツルコトヲ得

第十五条 小学校ノ毎週教授時間ノ制限及祝日大祭日ノ儀式等ニ関シテハ文部大臣之ヲ規定ス

第十六条 小学校ノ教科用図書ハ文部大臣ノ検定シタルモノニ就キ小学校図書審査委員ニ於テ審査シ府県知事ノ許可ヲ受ケタルモノニ限ルヘシ

審査委員ハ府県ニ置キ府県官吏府県参事会員尋常師範学校長教員及小学校教員ヲ以テ之ヲ組織ス

審査委員及審査ニ関スル規則ハ文部大臣之ヲ定ム

第十七条 小学校ニ於テハ校舎校地校具体操場ヲ備ヘ又農科ヲ設クル小学校ニ於テハ農業練習場ヲ備フヘキモノトス

特別ノ事情アルトキハ体操場農業練習場ヲ備ヘサルコトヲ得此場合ニ於テハ市町村立小学校ニ就キテハ其市町村ニ於テ監督官庁ノ許可ヲ受クヘク市内ニ在ル私立小学校ニ就キテハ其設立者ニ於テ府県知事町村内ニ在ル私立小学校ニ就キテハ其設立者ニ於テ郡長ノ許可ヲ受クヘシ

第十八条 校舎校地校具体操場農業練習場ハ非常変災ノ場合ヲ除クノ外小学校ノ目的ニ関セサル事件ノ為使用スルコトヲ得ス若シ特別ノ事情アリテ之ヲ使用セントスルトキハ市町村立小学校ニ就キテハ其市町村長ニ於テ監督官庁ノ許可ヲ受クヘク市内ニ在ル私立小学校ニ就キテハ其設立者ニ於テ府県知事町村内ニ在ル私立小学校ニ就キテハ其設立者ニ於テ郡長ノ許可ヲ受クヘシ

第十九条 校舎校地校具体操場農業練習場ノ設備ニ関スル規則ハ文部大臣定ムル所ノ準則ニ基キ府県知事ニ於テ土地ノ情況ヲ量リ之ヲ定ムヘシ

第三章 就学

第二十条 児童満六歳ヨリ満十四歳ニ至ル八箇年ヲ以テ学齢トス

学齢児童ヲ保護スヘキ者ハ其学齢児童ヲシテ尋常小学校ノ教科ヲ卒ラサル間ハ就学セシムルノ義務アルモノトス

前項ノ義務ハ児童ノ学齢ニ達シタル年ノ学年ノ始メヨリ生スルモノトス

学齢児童ヲ保護スヘキ者ト認ムヘキ要件ハ文部大臣之ヲ規定ス

第二十一条 貧窮ノ為又ハ児童ノ疾病ノ為其他已ムヲ得サル事故ノ為学齢児童ヲ就学セシムルコト能ハサルトキハ学齢児童ヲ保護スヘキ者ハ就学ノ猶予又ハ免除ヲ市町村長ニ申立ツヘシ

市町村長ハ前項ノ申立ニ依リ必要ナリト認ムルトキ又ハ前項ノ申立ナキモ猶必要ナリト認ムルトキハ学齢児童若クハ学齢児童ヲ保護スヘキ者ニ就キテ検査ヲ行フコトヲ得

市町村長ハ本条第一項ノ申立又ハ第二項ノ検査ニ依リ就学ヲ猶予シ又ハ免除スルトキハ監督官庁ノ許可ヲ受クヘシ

第二十二条 学齢児童ヲ保護スヘキ者ハ其学齢児童ヲ市町村立小学校又ハ之ニ代用スル私立小学校ニ出席セシムヘシ若シ家庭又ハ其他ニ於テ尋常小学校ノ教科ヲ修メシメントスルトキハ其市町村長ノ許可ヲ受クヘシ

第二十三条 伝染病若クハ厭悪スヘキ疾病ニ罹ル児童又ハ一家中ニ伝染病者アル児童又ハ不良ノ行為アル児童又ハ課業ニ堪ヘサル児童等ハ小学校ニ出席スルコトヲ許サス

前項ニ関スル規則ハ府県知事之ヲ定ム

第二十四条 学齢児童ノ就学及家庭教育等ニ関スル規則ハ府県知事之ヲ定メ文部大臣ノ許可ヲ受クヘシ

第四章 小学校ノ設置

第二十五条 各市町村ニ於テ其市町村内ノ学齢児童ヲ就学セシムルニ足ルヘキ尋常小学校ヲ設置ス

町村組合ニシテ組合会ヲ設ケ其町村一切ノ事務ヲ共同処分スルモノハ本令ニ関シテハ之ヲ一町村ト同視ス

第二十六条 市ニ於テ設置スヘキ尋常小学校ノ校数並位置ハ府県知事其市ノ意見ヲ聞キ之ヲ定ムヘシ

町村ニ於テ設置スヘキ尋常小学校ノ校数並位置ハ郡長其町村ノ意見ヲ聞キ之ヲ定メ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

第二十七条 郡長ハ一町村ノ資力其町ニ相当スヘキ尋常小学校設置ノ負担ニ堪ヘスト認定スル場合ニ於テハ其町村ヲシテ尋常小学校設置ノ為他ノ町村ト学校組合ヲ設ケシメ及其学校組合ニ於テ設置スヘキ尋常小学校ノ校数並位置ヲ定ムヘシ

第二十八条 郡長ハ一町村内ノ就学スヘキ学齢児童ノ数一尋常小学校ヲ構成スルニ足ラスト認定スル場合又ハ一町村内ノ就学スヘキ学齢児童ノ数一尋常小学校ヲ構成スルニ足ルモ道路ノ遠隔若クハ困難ナルカ為適度ノ通学路程内ニ於テ一尋常小学校ヲ構成スルニ足ルヘキ数ヲ得ルコト能ハスト認定スル場合ニ於テハ左ノ例ニ依ルヘシ

一 其町村ヲシテ尋常小学校設置ノ為他ノ町村ト学校組合ヲ設ケシメ及其学校組合ニ於テ設置スヘキ尋常小学校ノ校数並位置ヲ定ムヘシ

二 其町村ヲシテ其町村内ノ就学スヘキ学齢児童ノ全部若クハ一部ノ教育事務ヲ他町村又ハ町村学校組合若クハ其区ニ委託セシムヘシ

郡長ハ町村ノ一部ニシテ前項ノ事情アルモノ道路ノ遠隔若クハ困難ナルカ為其児童ヲシテ其町村ノ尋常小学校ニ通学セシムルコト能ハサル事情アリト認定スル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ルヘシ

郡長ハ町村学校組合ニシテ前項ノ事情アリト認定スル場合ニ於テハ本条第一項第二ノ例ニ依ルヘシ

第二十九条 郡長ハ第二十七条第二十八条ニ依リ町村学校組合ヲ設ケシムルトキハ関係町村及郡参事会ノ意見ヲ聞キ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ其学校組合ニ於テ設置スヘキ尋常小学校ノ校数並位置ヲ定ムルトキモ亦同シ

郡長ハ第二十八条ニ依リ児童教育事務ヲ委託セシムルトキハ関係町村町村学校組合及郡参事会ノ意見ヲ聞キ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

第三十条 府県知事ハ市ニ於テ設置スヘキ尋常小学校数校アルトキハ市内ノ一区若クハ数区ニ対シ又ハ市ヲ分画シテ数区トナシ其一区若クハ数区ニ対シ小学校設置ニ関スル負担ノ為其使用スヘキ小学校ヲ指定スルコトヲ得

郡長ハ町村若クハ町村学校組合ニシテ左ノ場合ニ該当スルモノアルトキ其他必要ノ事情アルトキハ町村内若クハ町村学校組合内ノ一区若クハ数区ニ対シ又ハ町村若クハ町村学校組合ヲ分画シテ数区トナシ其一区若クハ数区ニ対シ小学校設置ニ関スル負担若クハ児童教育事務委託ノ為其使用スヘキ小学校ヲ指定スルコトヲ得

一 町村若クハ町村学校組合ニ於テ設置スヘキ尋常小学校数校アルトキ

二 町村内若クハ其一部内又ハ町村学校組合ノ一部内ノ就学スヘキ児童ノ全部若クハ一部ノ教育事務ヲ他町村又ハ町村学校組合若クハ其区ニ委託スルコトヲ要スル場所数箇所アルトキ

三 町村若クハ町村学校組合ニ於テ設置スヘキ尋常小学校ト其一部内ノ児童ノ全部若クハ一部ノ教育事務ヲ他町村又ハ町村学校組合若クハ其区ニ委託スルコトヲ要スル場所トアルトキ

本条第一項ノ処分ヲナシ又ハ之ヲ止ムルトキハ関係市及区ノ意見ヲ聞クヘシ

本条第二項ノ処分ヲナシ又ハ之ヲ止ムルトキハ関係町村町村学校組合及区ノ意見ヲ聞キ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

第三十一条 郡長ハ第二十八条第一項ノ事情アルモ同項ニ依ルコトヲ得スト認定スルトキハ府県知事ノ許可ヲ受ケ其町村ヲシテ尋常小学校ノ設置又ハ児童教育事務ノ委託ニ関ル義務ヲ免レシムルコトヲ得

郡長ハ第二十八条第二項若クハ第三項ノ事情アルモ同項ニ依ルコトヲ得スト認定スルトキハ府県知事ノ許可ヲ受ケ其町村若クハ町村学校組合ヲシテ其一部ニ関シテハ尋常小学校ノ設置又ハ児童教育事務ノ委託ニ関ル義務ヲ免レシムルコトヲ得

本条ノ場合ニ於テモ町村若クハ町村学校組合ハ特別ノ事情アルトキハ猶郡長ノ許可ヲ受ケテ尋常小学校ヲ設置スルコトヲ得其小学校ノ位置ハ其町村若クハ町村学校組合ニ於テ之ヲ定メ郡長ノ許可ヲ受クヘシ

第三十二条 郡長ハ町村学校組合ヲ解カシムルトキハ関係町村及郡参事会ノ意見ヲ聞キ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

郡長ハ町村内若クハ其一部内又ハ町村学校組合ノ一部内ノ就学スヘキ学齢児童ノ全部若クハ一部ノ教育事務ヲ他町村又ハ町村学校組合若クハ其区ニ委託セシムルコトヲ止ムルトキハ関係町村町村学校組合及区ノ意見ヲ聞キ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

第三十三条 町村ハ一町村限リノ負担ヲ以テ尋常小学校ヲ設置スルニ比シ猶優等ナル尋常小学校ヲ得ヘキ場合又ハ其費用を軽減シ得ヘキ場合ニ於テハ数町村ノ協議ニ依リ郡長ノ許可ヲ受ケテ学校組合ヲ設ケ其学校組合ニ相当スル尋常小学校ヲ設置スルコトヲ得

前項ノ場合ニ於テ設置スヘキ尋常小学校ノ校数並位置ハ其学校組合ヲ設クルノ協議ヲナスノ際併セテ之ヲ定メ郡長ノ許可ヲ受クヘシ

第三十四条 前条ノ町村学校組合ハ郡長ノ許可ヲ得ルニアラサレハ之ヲ解クコトヲ得ス

郡長ハ前条本条ノ場合ニ於テハ府県知事ノ指揮ヲ受クヘシ

第三十五条 府県知事ハ市内ニ私立尋常小学校アルトキハ其市立小学校ノ設置若クハ其一部ノ設備ヲ猶予シ其私立小学校ヲ以テ之ニ代用セシムルコトヲ得

郡長ハ町村内若クハ町内学校組合内ニ私立尋常小学校アルトキハ其町村立小学校ノ設置若クハ其一部ノ設備又ハ児童教育事務委託ノ事ヲ猶予シ其私立小学校ヲ以テ之ニ代用セシムルコトヲ得

私立小学校代用ニ関スル規則ハ文部大臣之ヲ定ム

第三十六条 市町村ハ府県知事ノ許可ヲ受ケ高等小学校ヲ設置シ又ハ其区ヲシテ之ヲ設置セシムルコトヲ得

第三十七条 町村ハ数町村ノ協議ニ依リ郡長ノ許可ヲ受ケテ町村学校組合ヲ設ケ府県知事ノ許可ヲ受ケテ高等小学校ヲ設置スルコトヲ得

郡長ハ前項ノ場合ニ於テハ府県知事ノ指揮ヲ受クヘシ

本条ノ学校組合ニ就キテハ第三十四条ヲ適用ス

第三十八条 第三十六条第三十七条ノ規程ハ徒弟学校及実業補習学校ニ関シ之ヲ適用ス

第三十九条 第三十一条末項第三十三条第三十六条第三十七条第三十八条ニ掲クル小学校ノ廃止ハ其設立ノ例ニ依ルヘシ

第四十条 市町村ハ幼稚園図書館盲唖学校其他小学校ニ類スル各種学校等ヲ設置スルコトヲ得此場合ニ於テハ第三十六条第三十七条第三十九条ノ規程ヲ適用ス

第四十一条 私立ノ小学校幼稚園図書館盲唖学校其他小学校ニ類スル各種学校等ノ設立ハ其設立者ニ於テ府県知事ノ許可ヲ受ケ其廃止ハ之ヲ府県知事ニ上申スヘシ

第四十二条 第四十条第四十一条ノ学校等ニ関スル規則ハ文部大臣之ヲ定ム

第五章 小学校ニ関スル府県郡市町村ノ負担及授業料

第四十三条 市町村立小学校ノ設置ニ関ル市町村及町村学校組合並区ノ負担ノ概目左ノ如シ

一 校舎校地校具体操場農業練習場ノ供給及支持

二 小学校教員ノ俸給旅費等

三 小学校ニ関スル諸費

第四十四条 市町村立小学校ニ就学スル児童ヲ保護スヘキ者ハ授業料規則ニ依リ授業料ヲ納ムヘシ

授業料ハ市町村ニ属スル収入トス

一家ノ児童同時ニ数名就学スルトキハ授業料ヲ減スルコトヲ得

市町村長ハ児童ヲ保護スヘキ者貧窮ナル場合ニ於テハ授業料ノ全額若クハ一部ヲ免除スヘシ

授業料ハ物品若クハ労力ヲ以テ之ニ代フルヲ許スコトヲ得

授業料規則ハ府県知事之ヲ定メ文部大臣ノ許可ヲ受クヘシ

第四十五条 郡長ハ町村学校組合ニ於テ設置スヘキ尋常小学校数校アルトキハ学校組合内ノ某町村ヲシテ其数校中ノ一校若クハ若干校ノ設置ヲ一町村限リ負担セシムルコトヲ得

郡長ハ第二十八条ニ依リ町村学校組合ヲシテ児童教育事務ヲ委託セシムルトキハ其学校組合内某町村ヲシテ其委託ノ事ヲ一町村限リ負担セシムルコトヲ得

本条ノ処分ヲナシ又ハ之ヲ止ムルトキハ関係町村及町村学校組合ノ意見ヲ聞キ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ

第四十六条 郡長ニ於テ町村学校組合ノ資力其学校組合ニ相当スル尋常小学校設置ノ負担ニ堪ヘスト認定シ又ハ町村学校組合ノ一部タル町村ノ資力其学校組合費用ノ分担ニ堪ヘスト認定スルトキハ郡ハ郡費ヲ以テ其学校組合若クハ町村ニ相当ノ補助ヲ与フヘシ

前項ノ認定ニ就キテハ郡長ハ郡参事会ノ意見ヲ聞キ府県知事ノ指揮ヲ受クヘシ

第四十七条 郡長ニ於テ第二十七条ノ事情アルモ同条ニ依ルコトヲ得スト認定スルトキハ郡ハ郡費ヲ以テ其町村ニ相当ノ補助ヲ与フヘシ前項ノ認定ニ就キテハ郡長ハ郡参事会ノ意見ヲ聞キ府県知事ノ指揮ヲ受クヘシ

第四十八条 府県知事ニ於テ市ノ資力其市ニ相当スル尋常小学校設置ノ負担ニ堪ヘスト認定スルトキハ府県ハ府県費ヲ以テ其市ニ相当ノ補助ヲ与フヘシ

前項ノ認定ニ就キテハ府県知事ハ府県参事会ノ意見ヲ聞キ文部大臣ノ指揮ヲ受クヘシ

第四十九条 府県知事ニ於テ郡ノ資力第四十六条又ハ第四十七条ノ補助ヲ負担スルニ堪ヘスト認定スルトキハ府県ハ府県費ヲ以テ其郡ニ相当ノ補助ヲ与フヘシ

前項ノ認定ニ就キテハ府県知事ハ府県参事会ノ意見ヲ聞キ文部大臣ノ指揮ヲ受クヘシ

第五十条 区長並其代理者及学務委員ニ於テ国ノ教育事務ヲ執行スルカ為ニ要スル費用ハ市町村若クハ町村学校組合ノ負担トス但区長並其代理者及区ノ学務委員ニ関スルモノハ市町村会又ハ町村学校組合会ノ議決ヲ以テ区ノ負担トナスコトヲ得

第五十一条 郡視学ノ給料旅費退隠料等ハ郡ノ負担トス其額及支給方法ハ郡会ノ議決ニ依リ府県知事ノ許可ヲ受ケテ之ヲ定ムヘシ

第五十二条 小学校教員検定委員及検定ニ関スル費用ニシテ府県ニ属スルモノ並小学校教科用図書審査委員及審査ニ関スル費用ハ府県ノ負担トス

第六章 小学校長及教員

第五十三条 小学校ノ教員中小学校ノ某教科目ヲ教授スル者ヲ専科教員トシ其他ノ者ヲ本科教員トス

小学校ノ教員中小学校ノ教科目ヲ補助教授シ又ハ一時教授スル者ヲ准教員トシ其他ノ者ヲ正教員トス

第五十四条 小学校ノ教員ハ小学校教員免許状ヲ有スル者タルヘシ

第五十五条 小学校教員免許状ヲ得ルニハ検定ニ合格スルコトヲ要ス

検定ハ府県ニ小学校教員検定委員ヲ置キ之ヲ施行ス但某種ノ小学校教員ノ検定ハ文部省ニ於テ之ヲ施行ス

検定委員ノ組織権限検定ノ科目方法受検者ノ資格教員免許状教員候補者等ニ関スル規則ハ文部大臣之ヲ定ム

第五十六条 小学校長及教員ノ任用解職其他進退ニ関スル規則ハ文部大臣之ヲ定ム

第五十七条 市町村立小学校長及教員ノ名称及待遇法ハ別ニ定ムル所ニ依ル

第五十八条 市町村立小学校長及教員ノ任用解職ハ府県知事之ヲ行フ

第五十九条 市町村立小学校ノ教員ハ市町村長ニ於テ薦挙スル所ノ三名以下ノ侯補者ニ就キ府県知事之ヲ任スルモノトス

府県知事ハ前項ノ候補者適当ナラスト認ムルトキハ再ヒ薦挙ヲナサシメ猶適当ナラスト認ムルトキハ薦挙ニ依ラスシテ直ニ之ヲ任スヘシ

本条第一項ノ薦挙ハ教員ノ欠員ヲ生シ又ハ新ニ其位地ヲ設ケタル日ヨリ二十八日以内ニ之ヲ施行シ第二項ノ薦挙ハ其薦挙ヲ命セラレタル日ヨリ十四日以内ニ之ヲ施行スヘシ若シ此期限内ニ施行セサルトキハ府県知事ハ薦挙ニ依ラスシテ直ニ之ヲ任スヘシ

市町村立小学校長ハ府県知事其学校ノ教員中ニ就キテ之ヲ兼任スルモノトス

第六十条 市町村立小学校教員ノ給料額及旅費額ノ標準並給料旅費其他諸給与ノ支給方法ハ府県知事ニ於テ之ヲ規定シ文部大臣ノ許可ヲ受クヘシ

前項ノ給料額及旅費額標準ノ範囲内ニ於テ教員ニ交付スヘキ給料及旅費ノ額ハ市参事会又ハ町村長ノ意見ヲ聞キ府県知事之ヲ確定ス

市町村立小学校教員ノ給料ノ若干分ハ土地ノ使用又ハ物品ヲ以テ之ヲ換給スルコトヲ得但其歩合ハ府県知事ニ於テ之ヲ規定シ文部大臣ノ許可ヲ受クヘシ

前項ニ依リ換給スル土地ノ使用又ハ物品ノ価格ハ市町村ノ申出ニ依リ監督官庁之ヲ確定ス其確定シタル価格ハ監督官庁ニ於テ必要ナリト認ムルトキハ何時ニテモ之ヲ訂正スルコトヲ得又監督官庁ハ前項ノ換給ヲ適当ナラスト認ムルトキハ之ヲ許サヽルコトヲ得

第六十一条 小学校長及教員ノ職務及服務規則ハ文部大臣之ヲ定ム

第六十二条 市町村立小学校教員ハ学務委員ニ任セラレタルトキハ之ヲ辞スルコトヲ得ス

第六十三条 小学校長及教員ハ児童ニ体罰ヲ加フルコトヲ得ス

第六十四条 市町村立小学校長及教員職務ヲ粗略ニシ若クハ職務上遵奉スヘキ指命ニ違背シ又ハ体面ヲ汚辱スルノ行為アルトキハ府県知事懲戒処分ヲ行フヘシ其処分ハ譴責罰俸免職免許状褫奪トス

私立小学校長及教員ニシテ前項ノ行為アルトキハ其情状ニ依リ府県知事ニ於テ其業務ヲ停止シ又ハ免許状ヲ褫奪スヘシ

免職若クハ業務停止又ハ免許状褫奪ノ処分ニ不服アル者ハ十四日以内ニ文部大臣ニ訴願スルコトヲ得

市町村立小学校長及教員ノ懲戒処分ニ関スル規則並私立小学校長及教員ノ業務停止及免許状褫奪ニ関スル規則ハ文部大臣之ヲ定ム

第六十五条 小学校教員禁錮以上ノ刑ニ処セラレ又ハ信用若クハ風俗ヲ害スル罪ヲ犯シテ罰金ノ刑ニ処セラレ又ハ監視ニ付セラレタルトキハ其職ヲ失ヒ免許状ヲ褫奪セラル丶モノトス

第七章 管理及監督

第六十六条 郡ニ郡視学一名ヲ置キ府県知事之ヲ任免ス

郡視学ハ府県税ヲ以テ支弁スル郡吏員ト同一ノ待遇ヲ受クルモノトス

第六十七条 郡視学ハ郡長ノ指揮命令ヲ受ケテ郡内ノ教育事務ヲ監督ス

第六十八条 府県知事ハ郡ノ申出ニ依リ特ニ郡視学ヲ置カサルコトヲ得此場合ニ於テハ府県知事ハ府県税ヲ以テ支弁スル郡吏員ノ一名ニ命シテ郡視学ノ名義ヲ以テ其職務ヲ行ハシム

第六十九条 郡視学ニ対スル懲戒処分ハ官吏懲戒例ニ依リ府県知事之ヲ行フ

第七十条 市町村長ハ市町村ニ属スル国ノ教育事務ヲ管掌シ市町村立小学校ヲ管理ス但学校長若クハ首席教員ノ管理ニ属スル事務ハ之ヲ監督ス

第七十一条 市町村長ニ対スル懲戒処分ニシテ国ノ教育事務取扱ニ関スルモノニ就キテハ市制第百二十四条町村制第百二十八条ヲ適用ス

第七十二条 市ハ教育事務ノ為市制第六十一条ニ依リ学務委員ヲ置クヘシ但市会ノ議決ニ依ルノ限ニ在ラス

委員ニハ市立小学校男教員ヲ加フヘキモノトス其数ハ委員総数ノ四分一ニ下ルコトヲ得ス

委員中教員ヨリ出ツル者ハ市長之ヲ任免ス

第七十三条 市ノ学務委員ハ市ニ属スル国ノ教育事務ニ就キ市長ヲ補助ス

第七十四条 府県知事ハ市ノ区長及其代理者ヲシテ市長ノ機関トナリ其指揮命令ヲ受ケテ区ニ属スル国ノ教育事務ヲ補助執行セシムルコトヲ得

第七十五条 市ハ教育事務ノ為市条例ノ規程ニ依リ市内ノ区ニ学務委員ヲ置クコトヲ得

委員ニハ市立小学校男教員ヲ加フヘキモノトス

第七十六条 府県知事ハ前条ノ学務委員ヲシテ其区ニ属スル国ノ教育事務ニ就キ市長区長並其代理者ヲ補助セシムルコトヲ得

第七十七条 市ノ区長及其代理者並第七十二条第七十五条ノ学務委員ニ対スル懲戒処分ニシテ国ノ教育事務取扱ニ関スルモノニ就キテハ左ノ例ニ依ル

一 市制第六十四条第五ノ規程ニ依リ市長ニ於テ懲戒処分ヲ行フ此場合ニ於テハ市制第百二十四条第二項第一ノ規程ヲ適用ス

二 市制第百二十四条第一項第二項第二第三第四ノ規程ヲ適用ス

第七十八条 第七十三条第七十六条ノ事務執行ニ関スル市長区長及其代理者並学務委員ノ関係及其他必要ナル規則ハ府県知事之ヲ定ムルコトヲ得

第七十九条 町村ハ教育事務ノ為町村制第六十五条ニ依リ学務委員ヲ置クヘシ但町村会ノ議決ニ依ルノ限ニ在ラス

委員ニハ町村立小学校男教員ヲ加フヘキモノトス其数ハ委員総数ノ四分一ニ下ルコトヲ得ス

委員中教員ヨリ出ツル者ハ町村長之ヲ任免ス

第八十条 町村ノ学務委員ハ町村ニ属スル国ノ教育事務ニ就キ町村長ヲ補助ス

第八十一条 府県知事ハ町村ノ区長及其代理者ヲシテ町村長ノ機関トナリ其指揮命令ヲ受ケテ区ニ属スル国ノ教育事務ヲ補助執行セシムルコトヲ得

第八十二条 町村ハ教育事務ノ為町村条例ノ規程ニ依リ町村内ノ区ニ学務委員ヲ置クコトヲ得

委員ニハ町村立小学校男教員ヲ加フヘキモノトス

第八十三条 府県知事ハ前条ノ学務委員ヲシテ其区ニ属スル国ノ教育事務ニ就キ町村長区長並其代理者ヲ補助セシムルコトヲ得

第八十四条 町村ノ区長及其代理者並第七十九条第八十二条ノ学務委員ニ対スル懲戒処分ニシテ国ノ教育事務取扱ニ関スルモノニ就キテハ左ノ例ニ依ル

一 町村制第六十八条第五ノ規程ニ依リ町村長ニ於テ懲戒処分ヲ行フ此場合ニ於テハ町村制第百二十八条第二項第一ノ規程ヲ適用ス

二 町村制第百二十八条第一項第二項第二第三第四ノ規程ヲ適用ス

第八十五条 第八十条第八十三条ノ事務執行ニ関スル町村長区長及其代理者並学務委員ノ関係及其他必要ナル規則ハ府県知事之ヲ定ムルコトヲ得

第八十六条 町村学校組合ハ教育事務ノ為条例ノ規程ニ依リ学務委員ヲ置クヘシ

町村学校組合ハ教育事務ノ為条例ノ規程ニ依リ学校組合内ノ区ニ学務委員ヲ置クコトヲ得

本条ノ委員ニハ町村立小学校男教員ヲ加フヘキモノトス

第八十七条 町村学校組合ノ学務委員ハ町村学校組合ニ属スル国ノ教育事務ニ就キ組合長ヲ補助ス

府県知事ハ町村学校組合内ノ区ノ学務委員ヲシテ区ニ属スル国ノ教育事務ニ就キ組合長ヲ補助セシムルコトヲ得

第八十八条 第八十六条ノ学務委員ニ対スル懲戒処分ニシテ国ノ教育事務取扱ニ関スルモノニ就キテハ左ノ例ニ依ル

一 町村制第六十八条第五ノ規程ニ依リ組合長ニ於テ懲戒処分ヲ行フ此場合ニ於テハ町村制第百二十八条第二項第一ノ規程ヲ適用ス

二 町村制第百二十八条第一項第二項第二第三第四ノ規程ヲ適用ス

第八十九条 第八十七条ノ事務執行ニ関スル組合長及学務委員ノ関係及其他必要ナル規則ハ府県知事之ヲ定ムルコトヲ得

第九十条 特別ノ事情アル町村若クハ町村学校組合ニ於テハ府県知事ノ許可ヲ受ケ学務委員ヲ置カサルコトヲ得

第九十一条 文部大臣ハ私立小学校ニシテ法律命令ノ規程ニ戻ルモノアルトキハ府県知事ニ命シテ之ヲ閉鎖セシムルコトヲ得

第九十二条 前諸条ニ掲クル教育事務トハ専ラ小学校教育ノ範囲ニ属スル事務ヲ謂フ

第八章 附則

第九十三条 本令ハ市制町村制ヲ施行シタル府県ニ施行スルモノトス其施行ノ時期ハ府県知事ノ具申ニ依リ文部大臣之ヲ定ム

第九十四条 幼稚園図書館盲唖学校其他小学校ニ類スル各種学校等ニ就キテハ本令ノ規程ヲ適用スルコトヲ得但尋常小学校設置ノ義務就学ノ義務等ニ関スル規程ハ此限ニ在ラス

第九十五条 本令ニ依ラスシテ授与シタル小学校教員免許状ハ仍其効力ヲ有スルモノトス但正教員准教員ノ別ハ文部大臣之ヲ定ム

第九十六条 明治十九年四月勅令第十四号小学校令其他本令ニ牴触スル成規ハ本令施行ノ府県ニ於テ其施行ノ時期ヨリ総テ之ヲ廃止ス


関連項目

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外部リンク

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この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。