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  • )いなかろう。ねだん付の第一号に天麩羅(てんぷら)とある。おい天麩羅を持ってこいと大きな声を出した。するとこの時まで隅(すみ)の方に三人かたまって、何かつるつる、ちゅちゅう食ってた連中(れんじゅう)、ひとしくおれの方を見た。部屋(へや)暗いので、ちょっと気つかなかった
    318キロバイト (59,334 語) - 2023年10月17日 (火) 13:42
  • 「いわんばってん、顔色はよかなかごたる。先生顔色黄(きい)ですばい。近頃はいいです。品川から舟を一艘雇うて——私はこの前の日曜に行きました」 「何かれたかい」 「何もれません」 「れなくっても面白いのかい」 「浩然(こうぜん)の気を養うたい、あなた。どうですあなたた。に行った事
    1.06メガバイト (208,385 語) - 2022年11月4日 (金) 04:57
  • 働きに行こうとする農夫、番小屋の側にションボリ立っている線路番人、霧に湿りながら貨物の車を押す中牛馬(ちゅうぎうば)の男なぞに逢った。そして私は――私自身それを感ずるように――この人達の手なぞ真紅(まっか)に腫(は)れるほどの寒い朝でも、皆な見かけほど気候に臆してはいないということを知った。…
    282キロバイト (56,209 語) - 2021年5月19日 (水) 16:05
  • 重なるのを見て、大いに驚ろいた。  しかし健三に対する夫婦は金の点に掛けてむしろ不思議な位寛大であった。外へ出る時は黄八丈(きはじょう)の羽織(はおり)を着せたり、縮緬(ちりめん)の着物を買うために、わざわざ越後屋(えちご
    501キロバイト (98,507 語) - 2023年10月17日 (火) 13:51
  • 「お父(とっ)さん、大丈夫ですかね。」  親子はこんな言葉をかわした。道中奉行所から渡された御印書によって、越後(えちご)越中(えっちゅう)の方面からも六十六万石の高に相当する人足この御通行筋へ加勢に来ることになった、よく調べて見ると、それでも足りそうもないと言う父の話は半蔵を驚かした。…
    704キロバイト (133,425 語) - 2019年9月29日 (日) 05:04
  •  山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。  智()に働けば角(かど)立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。  住みにくさ高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩生れて、画(え)出来る。…
    315キロバイト (58,693 語) - 2023年10月17日 (火) 13:49
  • く)よ、やれそれと摺鉢(すりばち)を鳴しているうちに、若布売(わかめうり)の女の群参るようになります。越後訛(えちごなまり)で、「若布はようござんすかねえ」と呼んで来る声を聞くと、もう春蚕(はるこ)で忙しい時になるのでした。  御承知の通、小諸は養蚕地(どこ)ですから、寺の坊さんまで
    129キロバイト (24,703 語) - 2019年9月29日 (日) 05:15
  • 、越後(えちご)方面を警戒する必要ありとして、まず松本辺をさして通り過ぎて行った後には、なんとなくゆききの人の足音も落ち着かない。飛脚荷物を持って来るものの名古屋便(だよ)りまで気にかかって、半蔵はしばらくその門前に立ってなめた。午後の日の光は街道に満
    622キロバイト (119,815 語) - 2019年9月29日 (日) 05:04
  • 「占(うら)ないは私するのです」  敬太郎は意外の感に打たれた。この小()いさい丸髷(まるまげ)に結(ゆ)った。黒繻子(くろじす)の襟(えり)のかかった着物の上に、地味な縞(しま)の羽織を着た、一心に縫物をしている、純然家庭的の女
    677キロバイト (132,287 語) - 2022年4月2日 (土) 11:15
  •  細君の様子は本気なのか調戯(からか)うのかちょっと要領を得なかった。医者の専門、自分の病気以外の或方面に属するので、婦人などはあまりそこへ近づかない方いいと云おうとした津田は、少し口籠(くちごも)って躊躇(ちゅうちょ)した。細君は虚に乗じて肉薄した。 「行きますよ、少しあなたに話す事あるから。お延さんの前じゃ話しにくい事なんだから」…
    1.06メガバイト (208,097 語) - 2023年10月17日 (火) 13:45
  • 、二階回しの中年の女には、初心な人ということすぐ知られた。かれはただ酒を飲んだ。  厠(かわや)は階段(はしご)を下りたところにあった。やはり石菖(せきしょう)の鉢(は置いてあったり、(つ)り荵(しのぶ)掛けてあったりした。硝子(らす)の箱の中に五分心の洋燈(らんぷ)
    509キロバイト (98,550 語) - 2023年11月4日 (土) 14:56
  •  この「賢いものじゃないと見える」子供を(つ)った。子供は彼のそばへ走り寄った。その時、彼は自分の袂(たもと)に入れていた巴旦杏(はたんきょう)を取り出して、青い光沢のある色も甘そうに熟したやつを子供の手に握らせた。そして彼の隠宅の方へとその子供を連れて行った。  こんな調子で、半蔵は『童蒙入学門(どうもうに
    731キロバイト (142,362 語) - 2019年9月29日 (日) 05:05
  •  さてまた団子坂の景況は、例の招牌(かんばん)から込む植木屋は家々の招きの旗幟(はた)を翩翻(へんぽん)と金風(あきかぜ)に飄(ひるえ)し、木戸々々で客を呼ぶ声はかれこれからみ合て乱合(みだれあっ)て、入我我入(にう)でメッチャラコ、唯逆上(のぼせあ)ッた木戸番の口だらけにした面(かお)
    429キロバイト (83,606 語) - 2023年10月20日 (金) 13:54
  • て、よく鎗錆(やりさび)を持出した画家と勧進帳(かんじんちょう)を得意にした画家とはダンフェール・ロシュルュウの方面から、口三味線(くじゃみせん)の越後獅子(えちごじし)に毎々人を驚かした画家はモン・パルナッスから、追分(おいわけ)、端唄(はうた)、浪花節(なにわぶし)、あほだら経、その他の隠し芸…
    1メガバイト (204,909 語) - 2019年9月29日 (日) 05:14
  • 倉地からもしっくり似合うと讃(ほ)められるので、その朝も芸者のちょいちょい着らしい、黒繻子(くろじす)の襟の着いた、伝法な棒縞(ぼうじま)の身幅の狭い着物に、黒繻子と水色匹田(ひきた)の昼夜帯(ちゅうやおび)をしめて、どてらを引かけていたばかりでなく、髪まで矢張り櫛巻(くしま)きにしていたのだっ…
    1.07メガバイト (224,993 語) - 2023年3月24日 (金) 10:36
  • 「お助けでございます」始まると、お鳥はきッと障子のそばへ行った。そして御成門(おなりもん)の電車停留所の方から傾斜をのぼって来る男あると、どの男を見ても、先ず義雄の客ではないかと思った。 「違(ちご)てた」と、失望した様子で、「うちへ来るんかおもたら」 「東京にゃア、人は多くいるから、ね」…
    258キロバイト (51,635 語) - 2021年8月31日 (火) 22:28
  • という形容あり。続いて眼を閉じ、毛髪と両手とを力無く垂下したる亡者、或は逆立(さかだ)し、或は飜筋斗返(とんぼえ)りし、斜立(しゃりつ)したるまま静止し、又は行歩(こうほ)し、丸太転び、尺蠖歩(しゃくとりあゆ)み、宙釣り、逆(さかづ)り、錐揉(きりも)み、文廻(ぶんまわ)し廻転、逆反(さか…
    1.34メガバイト (257,350 語) - 2023年10月17日 (火) 13:34
  • 見えた。学士は風呂敷包から古い杖まで忘れずに持って、上田行の汽車に乗り後(おく)れまいとした。  これと擦違(すれ)いに越後(えちご)の方からやって来た上り汽車やがて汽笛の音を残して、東京を指して行って了った頃は、高瀬も塾の庭を帰って行った。周囲(あたり)にはあたかも船
    91キロバイト (18,380 語) - 2023年10月17日 (火) 13:43
  • 、袋持様の御朋輩なら、味方であろうかの」  七瀬は、こういって (百城様のような、無口な人は却って頼もしい。益満様とは、丸で打ってちごうた性質なり、振舞なり――)  と、思った。そして、そう思うと、早く、綱手に、よい聟をとって、孫を見たい、と思っていたこと、まるで、
    1.47メガバイト (284,070 語) - 2023年11月2日 (木) 05:59