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  • たくて、冷たくて、竹の子の皮のように、表には絨毛(じゅうもう)が生(は)えていて、裏はピカピカしている。硬(かた)いような、柔らかいような、あんともいえない一種特別の物質である。私は子供の時から、猫の耳というと、一度「切符切り」でパチンとやって見たくてたまらなかった。これは残酷な空想だろうか?…
    10キロバイト (1,930 語) - 2021年11月9日 (火) 13:13
  • うちのひと)がそれを聞きまして、そんな馬鹿な話はない。家にいもしない猫に高価(たか)い魚をたくさん持って来るには及ばないから、もう止した方がいいと七之助さんに意見しました」 「おふくろはその魚をどうしたんだろう」 「それは七之助さんにも判らないんだそうです。なんでも台所の戸棚のなかへ入れて置くと、あ…
    49キロバイト (10,076 語) - 2019年2月27日 (水) 14:44
  • )に往来の旅人を引摺り込んで、その懐中物や着物をみんな剝(は)ぎ取るのだろうと云うんです。まあ、どっちにしても気味のよくない所で、むかしは大変に広い池であったのを、江戸時代になってだんだんに狭(せば)められたのだそうで、わたくしどもの知っている時分には、岸の方はもう浅い泥沼のようになって、夏になる…
    49キロバイト (9,969 語) - 2021年12月24日 (金) 08:42
  • くろう)の声がきこえた。 「器量の悪い話をいつまで続けても仕方がありますまい。もうここらで御免を蒙(こうむ)りましょうか」と、半七老人は笑った。 「でも、ここまでじゃあ話が判りません」と、わたしは云った。「そこで、その金蔵はどうなりました」 「わたく
    67キロバイト (13,580 語) - 2019年2月27日 (水) 14:39
  • ろうと思ったんですが、まあ度胸でやってみろという気になって、どうにかこうにか段取りだけは付けて見たんですが、親分に逢っちゃ敵(かな)いませんよ。こうなりゃあみんな白状してしまいますがね。わたくしは深川(ふかがわ)で生れまして、おふくろは長唄の師匠をしていましたんです」…
    51キロバイト (10,717 語) - 2019年2月27日 (水) 14:40
  • 「そうだろうな」と、半七も溜息をついた。「そうして、その相手の二人侍(ににんざむれえ)は、何者だか判らねえのか」 「ひとりは本所の御旅所(おたびしょ)の近所に屋敷を持っている平井善九郎(ひらいぜんくろう)というお旗本ですが、連れの一人は判りません。刀を引ったく
    61キロバイト (12,383 語) - 2019年2月27日 (水) 14:39
  • 「だが、まあ話してみろ」 多吉の報告も源次の種とあまり違わなかった。そうして、紙屋の久次郎は色仕掛けでたくさんの祈禱料をまきあげられているに相違ないと云った。 「そうだろう。誰が考えても、落着くところは同じことだが、ただ困るのは、徒党の奴らだ」と、半七は云った。「夜なかに祈禱をたのむ振…
    52キロバイト (10,544 語) - 2019年2月27日 (水) 14:40
  • 「へえ、別にそんな噂もないんですが、わたくしはどうも気味が悪うございまして……。あすこで呼ばれると何だがぞっとして、逃げるように断わって来るんですよ」と、徳寿は鼻の頭の汗を手の甲で拭きながら云った。 「変な話だね」と、半七は笑った。「どういうわけで気味が悪いんだろう。判らねえな」 「わたく
    47キロバイト (9,542 語) - 2022年6月29日 (水) 13:13
  • 月に照らされると 月のひかりに こころがうたれて 芋(いも)の洗ったのや すすきや豆腐(とうふ)をならべたくなる お月見だお月見だとさわぎたくなる 花がふってくると思う 花がふってくるとおもう この てのひらにうけとろうとおもう つまらないから あかるい陽(ひ)のなかにたってなみだを ながしていた こころがたかぶってくる…
    18キロバイト (3,228 語) - 2023年10月22日 (日) 05:08
  • たくはなかった。その放埓(ほうらつ)の破局の後始末がつきさえすれば、そしてその理由が腑(ふ)におちるようにさえ出来れば、私は何もそんな残酷なことをせずに済ませたのであるが、私はもう全部総ぐるみ一つあまさず父と母との前に曝露(ばくろ
    11キロバイト (2,359 語) - 2023年2月16日 (木) 09:55
  • たくしどもは帰ることが出来ません。宿屋の者にも頼みまして、心当りを隈(くま)なく探させましたが、なんにも手がかりがございません。その晩はとうとう府中に泊りましたが、おかみさんは帰って参りません。店の方でも心配しているだろうと存じまして、三人相談の上で、孫太郎だけが府中に残り、若旦那とわたくしは早駕籠で江戸へ戻りました。…
    74キロバイト (15,018 語) - 2019年2月27日 (水) 14:38
  • ここまで本読みをすれば、誰でも登場人物を想像するであろう。老人は例の半七(はんしち)老人で、青年はわたしである。老人はわたしの問うにしたがって浅草あたりの昔話を聞かせてくれた。聖天様(しょうてんさま)や袖摺稲荷(そですりいなり)の話も出た。それからだんだんに花が咲いて、老人はとうとう私に釣り出された。 「いや、まったく
    57キロバイト (11,488 語) - 2021年8月31日 (火) 23:10
  • たくし)のは先生(せんせい)、其(その)様(よう)な些細(ささい)な事(こと)では厶(ござ)いません。ほんとに私(わたくし)、自分(じぶん)ながら私(わたくし)の話(はなし)ほど奇体(きたい)なことが世(よ)に有(あ)ろうかと思(おも)うので厶(ござ)いますよ。」…
    611キロバイト (98,208 語) - 2023年5月1日 (月) 15:22
  • ろう。相手がよろけながら捉える手を振り払って、今度は自分の脇腹へ突っ込んでしまったので、黒崎も途方にくれた。これが相当の年配の者ならば又なんとか分別もあったろうが、年は若いし、おまけに吉原帰りであるから、武士たる者が自分の腰の物を人に奪われたとあっては申訳が立たないので、あわててその脇差をひったく
    49キロバイト (10,344 語) - 2019年2月27日 (水) 14:39
  • あった。渓に沿って道は少し上りになっている。三、四町もあったであろうか。その間にはごく稀(まれ)にしか電燈がついていなかった。今でもその数が数えられるように思うくらいだ。最初の電燈は旅館から街道へ出たところにあった。夏はそれに虫がたくさん集まって来ていた。一匹の青蛙(あおがえる)がいつもそこにいた…
    13キロバイト (2,631 語) - 2021年11月10日 (水) 07:55
  • 「貴様たちは、ここにいて何もかも見ていたろう。あとから来た奴がどうして隠居を殺した」 「わたくしが女の髷をつかむと、女はぎゃっと云って、男に抱き付きました」と、源吉は説明した。「男は、なに大丈夫だと云って、女を抱えるようにして三之助さんの方へ歩いて来ました」 「わたく
    58キロバイト (11,752 語) - 2019年2月27日 (水) 14:47
  • うずら籠をかかえて店を出ると、表はもう暗かった。草履取りの中間(ちゅうげん)と話ししながら新宿の方へ急いでゆくうちに、細かい雨がふたりの額のうえに冷たく落ちて来た。 「とうとう降って来た」と、中間は舌打ちした。 「あしたもどうでしょうかな」 こんな話をしながら、ふたりは足を早めてゆくと、やがて新屋敷…
    25キロバイト (5,026 語) - 2024年2月4日 (日) 09:53
  • 「わたくしも不孝者で、若い時には阿母(おふくろ)をさんざん泣かせましたよ」 それが半七の懺悔(ざんげ)であった。肩揚げの下りないうちから道楽の味をおぼえた彼は、とうとう自分の家を飛び出して、神田の吉五郎(きちごろう)という岡っ引の子分になった。吉五郎は酒癖の…
    51キロバイト (10,308 語) - 2021年8月31日 (火) 23:11
  • 妹に頼んで半七はそこを出ると、どこの店でももう日除(ひよけ)をおろして、残暑の強い朝の日は蕎麦屋の店先に干(ほ)してあるたくさんの蒸籠(せいろう)をあかあかと照らしていた。 徳法寺をたずねて住職に逢うと、住職はもう七十くらいの品のいい老僧で、半七の質問に対していちいち明らかに答えた…
    48キロバイト (9,803 語) - 2019年2月27日 (水) 14:41
  • 「それにしても、おめえも識っている女だろう。名はなんと云うのだ」 「お磯(いそ)と申しまして、おなじ村の者ではございますが、家が離れて居りますのと、わたくしどもは久しい以前に村を出ましたのでよくは存じません。親の名を云われて、初めて気がついたくらいでございます。これも江戸へ奉公に出て来て、…
    71キロバイト (14,226 語) - 2019年2月27日 (水) 14:47
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