コンテンツにスキップ

検索結果

(前の20件 | ) (20 | 50 | 100 | 250 | 500 件) を表示
  • 「ホーホケキヨ」 「あ、鶯か知ら」 雀が二羽檜葉(ひば)を揺すつて、転がるやうに青木のへかくれた。 「ホーホケキヨ」 口笛だ。小鳥を飼つてゐる近くの散髪の小僧だと思ふ。行一はそれに軽い好意を感じた。 「まあほんとに口笛だわ。憎らしいのね」…
    18キロバイト (3,911 語) - 2021年9月8日 (水) 08:04
  • この樣にして犬は段々私の眼に親しく寫る樣になつた。 落花生の主人は時には夜泣きうどんの車からうどんを運ばせたりする。古本は南京豆の袋入りを買つて鼻の下の祭をする。萬年筆やインキ消しは絕えず喋つてゐる樣だし、人足を止めてゐることも美人會葉書に次いでゐる。然し犬
    19キロバイト (4,194 語) - 2021年8月31日 (火) 22:31
  • いる。ぼんやりしていれば河鹿は渓(たに)の石と見わけにくい色をしているから何も見えないことになってしまうのである。やっとしばらくすると水の中やら石の(かげ)から河鹿がそろそろと首を擡(もた)げはじめる。気をつけて見ていると実にいろんなところから――それが皆申し合わせたように同じぐらいずつ――恐る…
    19キロバイト (3,854 語) - 2021年12月13日 (月) 13:47
  • 遠く海岸に沿って斜めに入り込んだ入江が見えた。―峻はこの城跡へ登るたび、幾度となくその入江を見るのが癖になっていた。 海岸にしては大きい立木がところどころ繁(しげ)っている。その(かげ)にちょっぴり人家の屋根が覗(のぞ)いている。そして入江には舟が舫(もや)っている気持。 それはただそれだけの眺めであった。どこを取り立て特別…
    58キロバイト (11,645 語) - 2021年8月31日 (火) 22:16
  • 三吉は運動が出来ない少年であっつたが、やはりそんな生徒は一団を造って毎日申し合わせたように風の吹(ふ)かない(かげ)に寄合って雑談に耽(ふけ)るのであった。―― その日も三吉はその群の中にいた。そして話しに耳を傾(かたむ)けながらも、運動場に揉み合っている生徒達を眺めていた。…
    21キロバイト (4,288 語) - 2023年2月15日 (水) 18:51
  • かいもく)判らぬ。とにかく、私の中には色んな奇妙な奴らがゴチャゴチャと雑居しているらしい。浅間しい、唾棄(だき)すべき奴までが。 海岸のタマナ並木ののはずれまで来た時、向うから陽に灼(や)けた砂の上を素裸の小さい男の子が駆けて来た。私の前まで来ると、立止ってキチンと足を揃え、頭が膝(ひざ)}の所…
    11キロバイト (2,262 語) - 2023年7月29日 (土) 05:18
  • 性撓(し)ない踊りながら、風を揺りおろして来た。容貌(ようぼう)をかえた低地にはカサコソと枯葉が骸骨(がいこつ)の踊りを鳴らした。 そんなとき蒼桐のは今にも消されそうに見えた。もう日向とは思えないそこに、気のせいほどの影がまだ残っている。そしてそれは凩(こがらし)に追われて、砂漠(さばく)のよう…
    37キロバイト (7,629 語) - 2021年12月10日 (金) 09:31
  • 黑田。 芳枝さん、今日は。 芳枝。 あら黑田さん、いらっしやいませ、どうぞ御上り下さいな。 黑田靴をぬぐ。上る。一寸、芳枝をまねく。二人にてひそひそ話してゐる。やゝ長き間。手代、空を眺める。 黑田。 畫箋堂のお方、失禮ですが僕はかういふ者です。 手代。 は。…
    24キロバイト (4,860 語) - 2022年4月3日 (日) 03:06
  • 落ちている。夏草の茂った中洲(なかす)の彼方で、浅瀬は輝きながらサラサラ鳴っていた。鶺鴒(せきれい)が飛んでいた。 背を指すような日表(ひなた)は、となるとさすが秋の冷たさが跼(くぐま)っていた。喬はそこに腰を下した。 「人が通る、車が通る」と思った。また 「町では自分は苦しい」と思った。…
    23キロバイト (4,808 語) - 2021年12月9日 (木) 11:40
  • っかりと眺めてると、女は帰るときにお徳に云った。 「どうもありがとうございました。今のわたくしとしては別にお礼の致しようもございませんが、これからはながらおまえさん方夫婦の身の上を守ります」 かれは足音もしないように表へ出て、その姿は五月(さつき)の闇に隠されてしまった。それを見送って、お徳はほ…
    52キロバイト (10,544 語) - 2020年7月17日 (金) 13:20
  • ないので、お紋は焦(じ)れて怨んで、この頃ではなんだか半病人のようになっていた。 倉田の親たちも無論に怒っていた。しかし自分の娘と藤太郎との関係がそんな峠まで登りつめているとはさすがに気がつかないで、いたずらに口(かげぐち)を云うくらいですごしていたが、若い娘の胸の火はこの頃の暑さ以上に燃えて熱…
    52キロバイト (10,660 語) - 2019年2月27日 (水) 14:40
  • く成りて、帶は腰の先に、返事は鼻の先にていふ物と定め、にくらしき風俗、あれが頭の子でなくばと鳶人足が女房の口に聞えぬ、心一ぱいに我がまゝを徹(とほ)して身に合はぬ巾をも廣げしが、表町に田中の正太郎とて歳は我れに三つ劣れど、家に金あり身に愛嬌あれば人も憎くまぬ當の敵(かたき)あり、我れは私立の學…
    93キロバイト (21,243 語) - 2023年10月17日 (火) 13:34
  • をあけなかった。御用があるならばあしたの朝出直してくださいと内から答えると、外ではやはり叩きつづけていた。銀座(ぎんざ)の山口(やまぐちや)から急用で来たと云った。山口は嫁の里方(さとかた)であるので、もしや急病人でも出来たかのかと、店の者も思わず戸をあけると、黒い覆面の男がふたり無提灯(むぢ…
    51キロバイト (10,203 語) - 2019年2月27日 (水) 14:41
  • これらの事件のには、善八の眼が絶えず光っていた。半七もいちいちその報告を聞いていた。さしあたりはどこへむかって手を着けることも出来なかったが、事件の筋道はだんだんに明るくなって来るように思われた。 九月二十日の夜なかに、下谷坂本の煙草
    74キロバイト (15,299 語) - 2019年2月27日 (水) 14:46
  • 底本:2000年710日春陽堂書店発行『半七捕物帳第六巻』 極(ごくげつ)の十三日――極などという言葉はこのごろ流行(はや)らないが、この話は極十三日と大時代に云った方が何だか釣合いがいいようである。その十三日の午後四時ごろに赤坂の半七老人宅を訪問すると、わたしよりもひと足先に立って、蕎麦
    72キロバイト (14,531 語) - 2019年2月27日 (水) 14:47
  • 底本:1999年1010日春陽堂書店発行『半七捕物帳第二巻』 歴史小説の老大家T先生のお宅に訪問して、江戸のむかしのお話をいろいろ伺ったので、わたしは又かの半七老人に逢いたくなった。T先生のお宅を出たのは午後三時頃で、赤坂の大通りでは仕事師が家々のまえに門松(かどまつ)を立てていた。砂糖
    50キロバイト (10,115 語) - 2024年2月5日 (月) 11:32
  • 松吉の報告によると、その古着も師匠の家もみな平屋(ひらや)の狭い間取りで、どこにも隠れているような場所がありそうもない。古着の店にもおふくろが毎日坐っている。師匠の家でも毎日稽古をしている。ほかには何も変ったことはないと云った。 「師匠の家じゃあ相変らず稽古をしているんだな。あそこの家の浚(つぎざら)いはいつだ」と、半七は訊いた。…
    49キロバイト (9,969 語) - 2021年12月24日 (金) 08:42
  • 「すです。住職も納所も虚無僧も女も、みんな一緒に寄り集まって、ここで酒を飲み始めました」 「おめえはそれを何処で覗いていた」 「庭から廻って、あの大きい芭蕉ので……。すると、だしぬけに袂(たもと)を摑んで引っ張る奴があるので、驚いて振返ると……」 「お鎌婆さんか」と、半七は笑った。…
    66キロバイト (13,394 語) - 2019年2月27日 (水) 14:49
  • よく行き届いたせいか、勘蔵の腕の痛みどころもだんだんに快(よ)くなるという噂󠄀を聞いて、半七もながら喜んでいた。 そのうちに今年の春もあわただしく過ぎて、初鰹(はつがつお)を売る四月になった。そのの晴れた日に勘蔵が新しい袷(あわせ)を着て、干菓子の折(おり)を持って、神田三河町の半七の家へ先ごろの礼を云いに来た。…
    50キロバイト (10,175 語) - 2019年2月27日 (水) 14:50
  • 「わっしの列(なら)べ方じゃあ、鳥亀の女房が店の客の折助と出来合って、亭主の釣り好きを幸いに、暗いうちから下矢切へ鮒釣りに出してやる。折助は先廻りをして、芦の間か柳のにでも隠れていて、不意に亭主を突き落す……。と、まあ、云ったような段取りでしょうね。土地にいちゃあ面倒だから、浅草の店をしめて品川へ引っ越して、桂庵…
    59キロバイト (11,846 語) - 2019年2月27日 (水) 14:45
(前の20件 | ) (20 | 50 | 100 | 250 | 500 件) を表示