コンテンツにスキップ

検索結果

  • (ひ)には、もう涙(なみだ)を見(み)せませんでした。 伯父(をぢ)さんに附(つ)いて東京(とうきやう)へ行(ゆ)く父(とう)さんの道連(みちづれ)には、吉(きち)さんといふ少年(せうねん)もありました。吉(きち)さんはお隣(とな)りの大黒屋(だいこくや)の子息(むすこ)さんで、鐵(てつ)さんやお…
    284キロバイト (45,267 語) - 2019年9月29日 (日) 04:51
  • ぬは、小佛(こぼとけ)さゝ子(ご)の難處を越して猿橋のながれに眩(めくる)めき、鶴瀬(つるせ)、駒飼(こまかひ)見るほどの里もなきに、勝沼の町とても東京(こゝ)にての場末ぞかし、甲府は流石に大厦(たいか)高樓、躑躅(つゝじ)が崎の城跡など見る處のありとは言へど、汽車の便りよき頃にならば知らず、こと更…
    29キロバイト (6,777 語) - 2023年10月17日 (火) 13:37
  • ひでしま)某、海軍大佐に至った笠間直(かさまちょく)等があった。慶応義塾は社頭が福沢諭吉、副社頭が小幡篤次郎(おばたとくじろう)、校長が浜野定四郎(はまのさだしろう)で、教師中に門野幾之進(かどのいくのしん)、鎌田栄吉(かまだえいきち)等があり、生徒中に池辺吉太郎(いけべきち
    642キロバイト (126,753 語) - 2022年3月23日 (水) 18:11
  • それとなく 郷里(くに)のことなど語り出(い)でて 秋の夜(よ)に焼く餅(もち)のにほひかな かにかくに渋民村(しぶたみむら)は恋しかり おもひでの山 おもひでの川 田も畑(はた)も売りて酒のみ ほろびゆくふるさと人(びと)に 心寄する日 あはれかの我の教へし 子等(こら)もまた やがてふるさとを棄(す)てて出(い)づるらむ…
    67キロバイト (13,278 語) - 2022年4月5日 (火) 21:39
  • のは、七月の八日であつた。夏帽子一つ、洋傘一本、東京を出る前の日に「出來(でき)」で間に合はせて來た編あげの靴も草鞋をはいた思ひで、身輕な旅となつた。  こんなに無雜作に山陰行の旅に上ることの出來たのはうれしい。もつとも、今度は私一人の旅でもない。東京から次男の鷄二をも伴つて來た。手荷物も少なく、と…
    158キロバイト (34,214 語) - 2019年9月29日 (日) 05:09
  • 瓦解(がかい)し、三藩の兵のうちで動かないものは長州兵のみであった。明治七年一月には、ついに征韓派たる高知県士族武市熊吉(たけちくまきち)以下八人のものの手によって東京赤坂(あかさか)の途上に右大臣岩倉具視(ともみ)を要撃し、その身を傷つくるまでに及んで行った。そればかりではない。この勢いの激すると…
    731キロバイト (142,362 語) - 2019年9月29日 (日) 05:05
  • の病気の習ひ、あるひは其故(そのせゐ)かとも思はれるが、まあ想像したと見たとは大違ひで、血を吐く程の苦痛(くるしみ)をする重い病人のやうには受取れなかつた。早速丑松は其事を言出して、『実は新聞で見ました』から、『東京の御宅へ宛てゝ手紙を上げました』まで、真実を顔に表して話した。…
    731キロバイト (142,452 語) - 2019年9月29日 (日) 05:22
  • 臭い子だと数々(しばしば)小言(こごと)を言い、僧侶(ぼうず)なら寺へ与(やっ)て了(しま)うなど怒鳴ったこともあります。それに引かえ僕の弟の秀輔(ひですけ)は腕白小僧で、僕より二ツ年齢(とし)が下でしたが骨格も父に肖(に)て逞(たく)ましく、気象もまるで僕とは変(ちが)っていたのです。…
    62キロバイト (12,304 語) - 2021年8月31日 (火) 22:40
  • らへんの茶を飮む店へ入つて少し休むことにした。 安藤は制服制帽できちんとしてゐた。二年前に駿介を驛へ見送つてくれた時の彼から見ればよほどおとなびてゐた。それはさうだ。彼等ももう來年は卒業なのだ。二人はその後の自分達のこと、田舎のこと、東京のこと、二人に共通な友達のこと、本のこと、敎授のこと、就職のこ…
    805キロバイト (171,063 語) - 2019年10月21日 (月) 00:52
  •      四 大作家  僕は上に書いた通り、頗(すこぶ)る雑駁(ざつぱく)な作家である。が、雑駁な作家であることは必しも僕の患(わづら)ひではない。いや、何びとの患ひでもない。古来の大作家と称するものは悉(ことごと)く雑駁な作家である。彼等は彼等の作品の中にあらゆるものを抛(はふ)りこんだ。ゲエテを古…
    159キロバイト (31,170 語) - 2023年10月17日 (火) 13:45
  • 「十一日。晴。」一戸の記に拠れば、是日伊庭八郎秀頴(ひでさと)等は江刺を回復せむと欲して果さなかつた。香亭はかう云つてゐる。「先是秀頴率遊撃隊在松前。欲復江差。与諸隊合力。進撃敵根武田。散兵山野大破之。追北数里。敵焼茂草村而走。会本営之令至。二股木古内急矣。当退松前応機援之。乃収兵還松前。」秀頴は伊庭軍兵衛秀業(ひで
    1.54メガバイト (342,889 語) - 2024年3月25日 (月) 01:52
  • なってしまっていた。それでも思いっ切りアルプスの絶頂に乗り上ったとき、溺死者(できししゃ)が両手を振っているように、揺られに揺られている二本のマストだけが遠くに見えることがあった。煙草の煙ほどの煙が、波とすれずれに吹きちぎられて、飛んでいた。……波浪と叫喚のなかから、確かにその船が鳴らしているらし…
    198キロバイト (37,515 語) - 2023年10月16日 (月) 19:49
  • 彼女の髪の毛一と筋が落ちて来ても、ヒヤリとしないではいられませんでした。 それのみならず夫人の体には一種の甘い匂(におい)がありました。 「あの女アひでえ腋臭(わきが)だ、とてもくせえや!」 と、例のマンドリン倶楽部(クラブ)の学生たちがそんな悪口を云(い)っているのを、私は後で聞いたことがあります…
    576キロバイト (106,275 語) - 2023年10月17日 (火) 13:48
  • 立てて、心地悪き微温(ぬくもり)の四方に溢(あふ)るるとともに、垢臭(あかくさ)き悪気の盛(さかん)に迸(ほとばし)るに遭(あ)へる綱引の車あり。勢ひで角(かど)より曲り来にければ、避くべき遑無(いとまな)くてその中を駈抜(かけぬ)けたり。 「うむ、臭い」  車の上に声して行過ぎし跡には、葉巻の吸殻の捨てたるが赤く見えて煙れり。…
    1.02メガバイト (208,408 語) - 2024年1月28日 (日) 21:05