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  • うごかぬ おまへがこわい あき空を はが とぶ、 それでよい それで いいのだ わたしの まちがひだつた わたしのまちがひだつた こうして 草にわれば それがわかる くらげ くらげ くものかかつた 思ひきつた よるの月 この虹をみる わたし ちさい妻、 やすやすと この虹を讃めうる わたしら二人 けふのさひわひのおほいさ…
    29キロバイト (4,760 語) - 2023年10月22日 (日) 08:18
  • 口で教えるのにも気がひけたので、彼はわざと花火のあがる方を熱心なふりをして見ていた。 末遠いパノラマのなかで、花火は星水母(ほしくらげ)ほどのさやけさに光っては消えた。海は暮れかけていたが、その方はまだ明るみが残っていた。 しばらくすると少年たちもそれに気がついた。彼は心の中で喜んだ。 「四十九」 「ああ。四十九」…
    58キロバイト (11,645 語) - 2021年8月31日 (火) 22:16
  • 圭さんが幾重(いくえ)なく起伏する青い草の海を指(さ)。 「痛快でもないぜ。帽子が飛んじまった」 「帽子が飛んだ? いいじゃないか帽子が飛んだって。取ってくるさ。取って来てやろうか」  圭さんは、いきなり、自分の帽子の上へ蝙蝠傘を重(おも)しに置いて、颯、薄の中に飛び込んだ。…
    104キロバイト (18,180 語) - 2023年10月17日 (火) 13:38
  • やく)、日本にては清麿(きよまろ)などの流を汲みてくす。故に人の近付くべきは、いしや、智者、福者古人もいへり。くすし脉をこゝろ見て病源(びやうげん)を知る仔細有り。されども脉中に過現未(くわげんみ)、明らかに顕るゝ事はおぼつかなし。其上くすしは人の死生(しせい)を請(うけ)おひ給ふ事大事…
    438バイト (15,045 語) - 2024年2月1日 (木) 14:12
  • ものだから、主人もその気になって、いっしょに出掛けて行った。あとでは細君雪江さんが遠慮のない声でげらげらけらけらからから笑っていた。  床の間の前に碁盤を中に据()えて迷亭君独仙君が対坐している。 「ただはやらない。負けた方が何か奢(おご)るんだぜ。いいかい」迷亭君が念を押すと
    1.06メガバイト (208,385 語) - 2022年11月4日 (金) 04:57
  • 「去年の二月です。店の方にゃあ二人の異人三人の日本人を使っています。日本人は徳助(くすけ)、大助(だいけ)、儀兵衛(ぎへえ)といって、みんな若え奴らです。商売は異人館ですから、やっぱり糸茶を主に仕入れているようですが、異人仲間の噂󠄀じゃあ相当に金を持っているらしい云うことです。そこで、親分、いよいよ踏み出してくれますかえ」…
    65キロバイト (13,081 語) - 2019年2月27日 (水) 14:48
  • 「へえ」、千次はいよいよ恐れ入った。 「だが、千次」、半七は声をやわらげた。「三甚のことはともかくも、牢抜けの金蔵は人相書のまわったお尋ね者だ。おれもこれから踏み込んで探索をしなけりゃあならねえ。何か聞き込んだら教えてくれ。そこらで一杯飲ませるのだが、おれは急ぎ…
    67キロバイト (13,580 語) - 2019年2月27日 (水) 14:39
  • 寒気立つのをおぼえ、とにかく私一人の考えでは答えられぬから云って、尚お〔ママ〕も取縋ってくる彼を払い除けるようにして、ひとまず候補生殿の室を引上げてきた。早速、同僚達を召集してこの話をすると、彼等はくす〳〵笑いながら、君はまだいい所があるよ、あれは奴のおはこなんだよ、云って一笑に附してしまった。…
    1キロバイト (8,704 語) - 2019年11月8日 (金) 21:14
  • くられていて、一行を見るや慌て騒いで、しきりに身をもがいても動くことが出来ず、いたずらに電光のような眼を輝かすばかりであった。一行は先きを争って刃を突き立てたが、あたかも鉄石の如くである。しかも臍の下を刺すと、刃(やいば)は深く突き透って、そそぐが如くに血が流れた。 「ああ、天がおれを殺すのだ」
    38キロバイト (8,120 語) - 2019年7月2日 (火) 17:47
  •  外国にいた父から送ってくれた譜本を持って、小学校に行った。そして、たった独りいたまだ若い先生にオルガンを貸して下さい頼んだのである。  今でも思い出す顔の丸い、目の小さい人の好さそうなまだ二十三四ぐらいだった教師は、私の様子をジロジロ見下しながら、きっぱりと貸せません云った。  誰か一人に貸すと
    177キロバイト (35,166 語) - 2021年4月16日 (金) 23:39
  • どんなお方も、知ろうはずがありませぬ――でも、太夫、そなただけは、いくらか気付いてくれそうなものに――」 怨じ顔の目元が、密酒の酔いに、薄すり染まって、言うばかりなく艶だ。 雪之丞は、頭を揮って見せて、 「これは御難題――」 、いったが、わざと冷たく戯れて、 「あまりに、御寵愛がおすぎあそばされて、そのためのお疲れでも――」…
    58キロバイト (11,125 語) - 2019年3月1日 (金) 06:31
  • ろふる。すくやかなる時くすさゝれば病時悔る也。世の人のふるまひ、平生は油断(ゆだん)有つて、已(で)に存命不定(ぞんめいふぢやう)となり、俄に良薬を服すといへども、治る事かたし。渇(かつ)に臨んで、井をほる事たゞに力を費。あへて雪髪銀糸(せつばつぎんし)をまつ事なかれ
    424バイト (12,773 語) - 2024年2月1日 (木) 14:09
  • 叩いて、背後から抱きすくめた。、下の男が猛然とはね起きて坊主頭をぶん撲つた。 「馬鹿!」坊主を抱いた坂下が叫んだ。そして彼はいきなり坊主を放すと小兵な男の胸ぐらを摑んでぐいぐい当直寝台の上に押しつけた。「仲さいは時の氏神つてことをこの野郎、知らねえな!」 「おい、静かにしてくれないか。」…
    1キロバイト (10,858 語) - 2019年11月7日 (木) 21:21
  • た悪党でもないらしいことは、半七は多年の経験ですぐ察しらえた。 「おい、ご苦労」、半七は勝次郎に声をかけた。「よくすぐに来てくれたな」 「親分さんの御用だ云うことですから」、勝次郎はおとなしく答えた。 よく見る、彼の顔はどことなく窶(やつ)れて、眼のうちも陰(くも)っていた。…
    93キロバイト (18,524 語) - 2019年2月27日 (水) 14:50
  •  三四郎は一年生だから書庫へはいる権利がない。しかたなしに、大きな箱入りの札目録(ふだもくろく)を、こごんで一枚一枚調べてゆく、いくらめくってもあとから新しい本の名が出てくる。しまいに肩が痛くなった。顔を上げて、中休みに、館内を見回すと、さすがに図書館だけあって静かなものである。しかも人がたくさんいる。そうして向こうのはずれにい…
    534キロバイト (98,327 語) - 2023年10月17日 (火) 13:35
  • 、挨拶一つせずにさっさと別れて歩き出した。  玉蜀黍殻(とうきびがら)いたどりの茎で囲いをした二間半四方ほどの小屋が、前のめりにかしいで、海月(くらげ)のような低い勾配(こうばい)の小山の半腹に立っていた。物の饐()えた香積肥(つみごえ)の香が擅(ほしいまま)にただよっていた。小屋の中にはど…
    111キロバイト (23,376 語) - 2023年10月17日 (火) 13:37
  •  漕てゆく舟にて見れは足曳の山さへゆくをまつはしらすや ぞいへる。をさなきわらはのことにてはにつかはし。けふ海あらげにて。いそに雪ふりなみの花さけり。あるひとのよめる。  浪のみひとへにきけ色見れは雪にまかひける哉 廿三日。ひてりてくもりぬ。このわたりかいぞくのおそりありといへば。神ほけをいのる。 廿四日。きのふのおなじところなり。…
    426バイト (8,846 語) - 2020年7月26日 (日) 02:40
  •  さっきから松原を通ってるんだが、松原云うものは絵で見たよりもよっぽど長いもんだ。いつまで行っても松ばかり生(は)えていていっこう要領を得ない。こっちがいくら歩行(あるい)たって松の方で発展してくれなければ駄目な事だ。いっそ始めから突っ立ったまま松睨(にら)めっ子(こ)をしている方が増しだ。…
    484キロバイト (91,890 語) - 2023年10月17日 (火) 13:42
  • 」戦死の当日の所を見ると「今日限りの命だ。二竜山を崩(くず)大砲の声がしきりに響く。死んだらあの音も聞えぬだろう。耳は聞えなくなっても、誰か来て墓参りをしてくれるだろう。そうして白い小さい菊でもあげてくれるだろう。寂光院は閑静な所だ」ある。その次に「強い風だ。いよいよこれから死にに行く。丸(た…
    134キロバイト (26,387 語) - 2023年10月17日 (火) 13:50
  • て、そうして万事をそれから演繹(えんえき)してくるんだろう」 「うん」 「まさか根本に立ち返って、あなたの御考は出立点が間違っていますと誤謬(ごびゅう)を指摘する訳にも行かず……」 「そりゃ、あまり君が人が好過ぎるからじゃ。もう少し世の中に擦()れん損だぞ」…
    711キロバイト (133,899 語) - 2023年10月17日 (火) 13:49
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