江談抄
内容は、第一巻は公事、摂関家事、仏神事、第二巻は雑事、第三巻は雑事、第四巻は詩事、第五巻は詩事、第六巻は長句事と、部門を立てゝ記せり。
本書作者につきては、本朝書籍目録に、江談抄六巻江匡房と見え、国書解題にも、江談抄写本五巻(国書解題の編者は、五巻本をのみ見て、六巻本を見ざりしなり)大江匡房と記せり。然るに伊庭時言の国書年表には、本書を鳥羽天皇の永久四年の条に標出せり。其の註に記して云、「蔵人藤実兼作蓋巻中年月止㆓此事㆒」と見えたり。真道按ずるに、本書の作者は、伊庭氏の記せる如く、蔵人実兼の作なることは、続世継巻十数島のうちぎゝの条に、「蔵人実兼ときこえし人の、匡房の中納言の物語をかける文にも」云々とあり。匡房の中納言の物語とは、江談抄をいへるなり。これによれば、実兼が江談抄の作者なること明らかなり。又江談抄本文中にも、匡房卿の談話を掲載せる条ありて、匡房卿の作にあらざること、一見よく知られたり。されば従来本書の作者は、本朝書籍目録に、匡房卿の作と誤り記ししを受伝へて、卿の作とのみ記しゝも、藤原実兼の作なりと知るべく、又其の時代は確には知られざれども。伊庭氏の記ししが如く、鳥羽天皇の永久四年と見て大差なかるべし。
本書は、群書類従本を底本とし、経済社本群書類従、外に写本二種を以て校訂採収す。
大正三年十二月
黑川眞道 識
【 NDLJP:8】例言一、江談抄は、群書類従本を定本とし、外写本の校合本二種に依つて対照したり。
一、原本の註記並に校合本の書入保存に努め、原本の註記は、小文 字にて割註せる外、()を以て本文中に挿入し、校合本の書入及び當編輯部にて の註記は、共に〔〕を以て區別し、又本文の左に縱線を施したるは、其下にある 括弧內の文字との對照を明にせんが爲めにして、單に縱線を施したる儘のもの は、異本悉く同一文字にして、而も疑しきものを示す。
この著作物は、1925年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)70年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。