を、泰赤兀惕タイチウト 見ミて遂オひて、[帖木眞テムヂンは]帖兒古捏テルグネ 溫都︀兒ウンドル(帖兒古 岡)の森モリの中ナカに鑽キりて入イりたれば、泰赤兀惕タイチウトは入イりかねて、森モリを圍カコみ守マモりて、
§80(02:15:01)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
帖木眞テムヂン、森モリの中ナカに三ミたび宿トマりて、出イでんとて馬ウマを牽ヒきて來クる時トキ、馬ウマよりその鞍クラ 脫ハヅれて落オちけり。囘カヘりて見ミれば、鞍クラは、扳胷ムナガイしたるまゝにて肚帶ハラオビしたるまゝにて脫ハヅれて落オちけり。「肚帶ハラオビは、ともあれ。扳胷ムナガイあるに、又マタいかで脫ハヅれたりけん。皇天アマツカミ 止トヾめ給タマへるか」と云イひて囘カヘりて、又マタ 三ミたび宿トマれり。又マタ 出イでて來キつるに、森モリの口クチに帳房チヤウバウほどの白石シライシ、口クチを塞フサぎ倒タフれたりき。「皇天アマツカミ 止トヾめ給タマへるか」と云イひて回りて、又マタ 三ミたび宿トマれり。又マタ「九宿コヽノトマり食物クヒモノなく居ヰて、名ナも無ナく何ナンぞ死シなん。出イでん」と云イひて、彼カの口クチを塞フサぎ倒タフれたる帳房チヤウバウほどの白石シライシの周圍マハリに出イづれば出イでられず、木キどもを箭削ヤケヅり小刀コガタナにて切斷キリタち、馬ウマを滑スベらして出イでたれば、泰赤兀惕タイチウト 守マモりて居ヲりき。拏トラへて率ヰて去サれり。
§81(02:16:10)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
虜︀トラはれを脫ニげて水澑ミヅタマリの仰ぎ臥し
帖木眞テムヂンを塔兒忽台 乞哩勒禿黑タルクタイ キリルトク〈[#「塔兒忽台 乞哩勒禿黑」は底本では「塔忽忽台 乞哩勒禿黑」。昭和18年復刻版に倣い修正]〉 率ヰて去サりて、その部落ブラクの民タミに命令メイレイして隣トナリごとに一ヒトたび宿ヤドし廻マハして行ユく時トキ、夏ナツの首ハジメの月ツキ(四月)の第十六ダイジフロクの紅アカく照テる日ヒに、泰赤兀惕タイチウトは、斡難︀オナンの岸キシの上ウヘに筵會ウタゲし合アひて、日ヒ 落オつれば散チりたり。帖木眞テムヂンをその筵會ウタゲに弱カヨワき子人コビト 率ヒキゐてありき。筵會ウタゲの