合里兀荅兒カリウダル 追驅オヒカけて、捕トふる心コヽロ 遂トげずして、彼カレの前後マヘシリヘを橫ヨコぎり行ユく時トキ、察忽兒罕チヤクルカンの馬ウマは遲オソくありき。後シリヘより箭ヤの到イタる先サキにて(箭の達する距離にて)、亦禿兒堅イトルゲンの金コガネの鞍クラある黑クロ合喇き騸馬センバの臀シリの根ネを坐スワるべく(尻をつくほどに)射イたりき。そこに亦禿兒堅イトルゲンを合里兀荅兒カリウダル 察忽兒罕チヤクルカン 二人フタリ 捕トへて、成吉思 合罕チンギス カガンの處トコロに率ヰて來キぬ。成吉思 合罕チンギス カガンは、亦禿兒堅イトルゲンに話ハナシし合アはず、「合撒兒カツサルの處トコロに率ヰて往ユけ。合撒兒カツサル 知シれ」と云イへり。率ヰて往ユきたれば、合撒兒カツサルは、亦禿兒堅イトルゲンに話ハナし合アはず、すぐ其處ソコに斬キりて棄スてたり。
§185(06:50:05)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
合里兀荅兒カリウダル、察忽兒罕チヤクルカン 二人フタリ、成吉思 合罕チンギス カガンに申マウさく「王罕ワンカンは、不意フイにてあり(明譯不ズ㆓隄防テイバウセ㆒)。金コガネの天幕テンマクを起オコして筵會ウタゲしてあり。速ハヤく支度シタクして、夜夜ヨナヨナ 夜通ヨドホし行ユきて襲オソひ圍カコまん」と云イへり。この言コトバを善ヨしとして、主兒扯歹ヂユルチエダイ 阿兒孩アルカイ 二人フタリを先驅サキガケせしめて、夜夜ヨナヨナ 夜通ヨドオし到イタりて、者︀折額兒 溫都︀兒ヂエヂエエル ウンドル(卷五の者︀者︀額兒 溫都︀兒、親征錄 徹徹兒 運都︀ 山、元史 折折 運都︀ 山)の折兒 合卜赤孩ヂエル カブチカイ(折兒のはさま)の口クチに居ヲるを圍カコみたり。三夜ミヨ 三日ミカ 禦フセがれ、圍カコみて立タちたれば、第三ダイサンの日ヒ 窮追キウハクして彼等カレラ 降クダれり。王罕ワンカン 桑昆サングン 二人フタリは、夜ヨル いかに出イでたるをも知シられざりき。この禦フセぎ合アひたる者︀モノに、只兒斤ヂルギンの合荅黑 巴阿禿兒カダク バアトル(前の合荅黑)ありき。
合荅黑 巴阿禿兒カダク バアトル〈[#ルビの「カダク バアトル」は底本では「カタク バアトル」。昭和18年復刻版に倣い修正]〉 降クダりて來キて言イはく「三夜ミヨ 三日ミカ 禦フセぎ合アへるに、「正主セイシユの君キミを見ミると、拏トラへて