聖金口イオアン教訓下/第15講話

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第15講話[編集]

<<生涯しょうがいおけ徳行とくこうみち>>


せまみちもの窮困きゅうこんしのばざるべからざるはすこしもめづしきことにあらず、またとするにらざるなり。徳行とくこう本来ほんらい性質せいしつもかくのごとし、みち勤労きんろうと、くるしき骨折ほねおりと、刑罰けいばつと、なんとをもつおほはるゝなり。さりながらみちかくごとくなるも、のちには栄冠えいかんと、報酬ほうしゅうと、いひつくされぬげん幸福こうふくとあり。かゝればこれもつおのれなぐさめよ。いはんやながれゆく生命いのちよろこびも、かなしみも、生命いのちともにながれりて生命いのちともおわらん。ゆえよろこびもほこるにらず、かなしみのためにも落胆らくたんしてなげくにおよばざるなり。舵師かぢとり平穏へいおんときにも欠伸あくびのびせず、さりながら暴風ぼうふうおいてもおどろかざるなり。のすべてをりておのれをなぐさめよ、また最良さいりょうなる救援きゅうえんここおいたづねよ。