第五「カフィズマ」

提供: Wikisource
ナビゲーションに移動 検索に移動

<聖詠経

第三十二聖詠

(ダワィドの詠)
義人よ、主の爲に喜べ、讃詠するは義者に適う。
瑟を以て主を崇め讃めよ、十弦の琴を以て彼に歌え、
新たなる歌を彼に歌え、聲を揃え、歓び呼んで彼に歌えよ。
蓋主の言葉は正直にして、其の悉くの行爲は真実なり。
彼は公義と審判とを好み、主の慈憐は地に満てり。
天は主の言葉にて造られ、天の全軍は其の口の気にて造られたり。
彼は海の水を聚めしこと塁の如く、淵を庫に蔵めたり。
全地は主を畏るべし、凡そ世界に居る者は彼の前に戦くべし。
蓋彼言えば則成り、命ずれば則顕れたり。
主は異邦人の議する所を廃し、諸民の謀る所を破り、牧伯の議する所を破る。
惟主の議する所は永く立ち、其の心の意いは世々に立つ。
主を以て神となす民は福なり、主の選びて己の嗣業となす族は福なり。
主は天より鑑みて悉くの人の子を視、
其の宝座より悉くの地に居る者を顧みる。
彼は衆人の心を造り、凡そ彼等の行う所を鑑察す。
王は大軍に依りて救われず、勇士は大力に依りて衛られず。
馬は救いの爲に虚し、其の大力を以て援くる能わず。
夫れ主の目は彼を畏るる者と、彼の憐れみを恃む者と顧み、
主は彼等の霊を死より救い、飢饉の時に彼等を養わん。
我等の霊は主を恃む、彼は我が助けなり、我が衛なり、
我が心は彼の爲に楽しむ、蓋我等は其の聖なる名を頼めり。
主よ、我等爾を頼むが如く、爾の憐れみを我等に垂れ給え。

第三十三聖詠

ダワィドの詠、ダワィド、アワィメレフの前に在りて佯狂し、彼に追われて去り、乃ち此を作れり、
我何れの時にも主を讃め揚げん、彼を讃むるは恒に我が口に在り、
我が霊は主を以て誇らん、温柔なる者は聞きて楽しまん。
我と偕に主を尊め、偕に彼の名を崇め讃めん。
我嘗て主を尋ねしに、彼は我に聆き納れて、我が総ての危うきより我を免れしめ給えり。
目を挙げて彼を仰ぐ者は照らされたり、彼等の面は愧を受けざらん。
此の貧しき者呼びしに、主は聆き納れて、之を其の悉くの艱難より救えり。
主の使いは主を畏るる者を環り衛りて、彼等を援く。
味わえよ、主の如何に仁慈なるを見ん、彼を恃む人は福なり。
凡そ主の聖人よ、主を畏れよ、蓋彼を畏るる者は乏しきことなし。
少き獅子は乏しくして餓え、唯主を尋ぬる者は何の幸福にも缺くるなし。
小子よ、来たりて我に聴け、主を畏るる畏れを爾等に訓えん。
人、生くるを望み、又寿らえて幸福を見んことを欲するか、
爾の舌をより、爾の口を偽りの言葉より止めよ。
悪を避けて善を行い、和平を尋ねて之に従え。
主の目は義人を顧み、其の耳は彼等の呼ぶを聆く。
唯主の面は悪を爲す者に対う、其の名を地より滅ぼさん爲なり。
義人は呼ぶに、主は之を聴き、彼等を悉くの憂いより免れしむ。
主は心の傷める者に近し、霊の謙る者を救わん。
義人には憂い多し、然れども主は之を悉く免れしめん。
主は彼が悉くの骨を護り、其の一も折れざらん。
悪は罪人を殺し、義人を憎む者は亡びん。
主は其の諸僕の霊を救い、彼を頼む者は一人も亡びざらん。

光榮讃詞
第三十四聖詠

ダワィドの詠。
主よ、我と争う者と争い、我と戦う者と戦い給え。
盾と甲とを執り、起ちて我を助け、
剣を抜きて、我を逐う者の途を遮り、我が霊に向かいて、我は爾の救いなりと曰え。
我が霊を求むる者は、願わくは恥を得て辱しめを受けん、我を害せんと謀る者は、願わくは退けられて辱しめられん、
願わくは彼等は風前の塵の如くなり、主の使い彼等を払わん、
願わくは彼等の途は暗くして滑らかになり、主の使い彼等を追わん、
蓋彼等は故なくして密かに我が爲に其の網なる落とし穴を設け、故なくして之を我が爲に穿てり。
願わくは滅びは俄に彼に至り、其の密かに我が爲に設けし網は彼を掩い、彼自ら之に陥りて亡びん。
唯我が霊は主の爲に喜び、其の施せる救いの爲に楽しまん。
我が悉くの骨曰わん、主よ、誰か爾弱き者を強き者より救い、貧しき者乏しき者を掠むる者より救う者に似たる。
不義なる証者は起ちて我を責め、我が知らざる事を我に詰り問う。
彼等は悪を以て我が善に報い、我が霊を孤独の者と爲す。
彼等の病める時我麻を衣、斎を以て我が霊を卑くし、我の祈祷は我が懐に帰れり。
我彼を待ちしこと、我が友我が兄弟の如し、我憂いて行き、首を垂れしこと、母を喪するが如し。
唯我躓きたれば、彼等は喜びて集まり、詬る者は集まりて我を攻めたり、我何の所以を知らず、我を謗りて息めざりき、
偽りなる嘲笑者と偕に我に向かいて切歯せり。
主よ、爾之を観ること何れの時に至るか、我が霊を彼等の悪事より逃れしめ、我の独りなる者を獅子より逃れしめ給え。
我爾を大会の中に讃榮し、爾を衆民の間に讃揚せん、
不義にして我に仇する者の我に勝ちて喜ばず、我に咎なくして我を憎む者の互いに目配せせざらん爲なり。
蓋彼等の言う所は和平に非ず、乃ち地上の和平を好む者に向かいて詐りの謀を設く。
其の口を開きて我に向かいて曰く、良し良し、我が目已に見たり。
主よ、爾已に見て黙す毋れ、主よ、我に離るる毋れ。
我が神我が主よ、起ちて、寤めて我が爲に裁きを行い、我が訴えを理めよ。
主我が神よ、爾の義に依りて我を裁き給え、彼等をして我に勝ちて喜ばしむる毋れ、
其の心の中に、良し良し、我等の望みの如しと謂わしむる毋れ、其れをして我等已に之を呑めりと謂わしむる毋れ。
凡そ我が災いを喜ぶ者は、願わくは耻を得て辱めを受けん、我に向かいて高ぶる者は、願わくは耻と侮りとを被らん。
我が義とせらるるを望む者は、喜び楽しみて恒に云わん、其の僕の平安を望む主は尊み讃めらるべし。
我が舌も爾の義を伝え、日々に爾を讃め揚げん。

第三十五聖詠

伶長に歌わしむ、主の僕ダワィドの詠。
悪者の不法は我が心の中に曰う、其の目の前に神を畏るる畏れなし、
蓋彼自ら己の目前に諂いて、其の不法を疾まんとして、之を糺すに似たり、
其の口の言葉は不実にして偽りなり、彼は悟りて善を行うを望まず、
其の床に在りて不法を謀り、自ら不善の途に立ちて、悪を憎まず。
主よ、爾の慈憐は天に戻り、爾の真実は雲に戻る。
爾の義は神の山の如く、爾の裁きは大いなる淵の如し。主よ、爾は人と獣とを守る。
神よ、爾の憐れみは何ぞ貴き、人の子は爾が翼の蔭に安んじ、
爾が家の腴に飫く、爾は彼等に爾の甘味の流れより飲ましむ、
蓋生命の源は爾に在り、我等爾の光に於いて光を見る。
爾の憐れみを知る者に、爾の義を心の直き者に恒に垂れ給え。
願わくは驕りの足は我を踏まず、罪人の手は我を逐わざらん。
不法を行う者は彼処に倒れ、隕されて起つ能わず。

光榮讃詞
第三十六聖詠

ダワィドの詠。
悪者を妬む毋れ、不法を行う者を猜む毋れ、
蓋彼等は草の如く早く刈られ、青草の如く萎まん。
主を恃みて善を行え、地に住みて真実を守れ。
主を以て慰めと爲せ、彼は爾が心の望みを適えん。
爾の途を主に託して彼を恃め、彼は成さん、
爾の義を光の如く、爾の正しきを真昼の如く著さん。
主に順いて彼を頼め、其の道に利達を得る偽りなる人を妬む毋れ。
怒りを息め、恨みを捨てよ、妬みて悪を爲す毋れ、
蓋悪を爲す者は絶たれん、惟主を恃む者は地を嗣がん。
久しからずして悪者は無きに帰せん、爾其の処を見れば有るなし。
惟温柔なる者は地を嗣ぎ、平安の多きを楽しまん。
悪者は謀りて義人を攻め、之に向かいて切歯みす、
然れども主は之を嗤う、其の日の至るを見ればなり。
悪者はツルギを抜き、弓を張りて、乏しき者と貧しき者とを倒し、直き道を行く者を刺さんと欲す、
其の剣は反りて其の心を貫き、其の弓は折られん。
義人の所有の少なきは多くの悪者の富に勝る、
蓋悪者の肱は折られん、惟義人は主之を扶く。
主は瑕なき者の日を知る、彼等の嗣業は永く存せん、
彼等は患難の時に羞を被らず、飢饉の日に飫くことを得ん、
惟悪者は滅び、主の敵は羔の脂の如く消え、烟の中に消えん。
悪者は借りて償わず、義人は憐れみて予う、
蓋主に降福せられし者は地を嗣ぎ、彼に詛われし者は絶たれん。
主は義人の足を固め、其の行く途を喜ぶ、
彼は躓けども倒れず、主其の手を執りて之を扶くればなり。
我幼なきより今老ゆるに至るまで、未だ義人の遺てられ、其の裔の食を丐うを見ざりき、
彼は毎日憐れみを施し、又貸し与う、彼の裔は福を受けん。
悪を避けて善を行え、然からば永く生きん、
蓋主は義を愛し、其の聖者を遺てず、彼等は永く護られん、惟不法の者は倒され、悪者の裔は絶たれん。
義人は地を嗣ぎ、永く之に居らん。
義人の口は睿智を言い、其の舌は義を語る。
其の神の法は其の心に在り、其の足は撼かざらん。
悪者は義人を窺い、之を殺さんと欲す、
惟主は彼を其の手に付さず、彼が裁きを受くる時、彼を罪するを赦さざらん。
主を恃み、其の道を守れ、然からば彼爾を挙げて、爾に地を嗣がしめん、悪者の絶たるる時爾之を見ん。
我嘗て悪者の誇大にして、蔓延ること根の深き茂りたる樹の如きを見たり、
然れども彼過ぎて、視よ、無に帰せり、我之を尋ねて得ず。
瑕なき者を鑑み、義人を視よ、蓋此くの如き人の将来は平安なり、
惟不法の者は皆絶たれ、悪者の将来は滅びん。
義人の救いは主よりす、其の憂いの時に於いて主は其の防固なり、
主は彼等を援け彼等を逃さん、彼等を悪者より逃し彼等を救わん、彼等主を恃めばなり。

光榮讃詞