第六「カフィズマ」

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<聖詠経

第三十七聖詠

ダワィドの詠。(「スボタ」の)記念の爲に此を作れり。
主よ、爾の憤りを以て我を責むる毋れ、爾の怒りを以て我を罰する毋れ、
蓋爾の矢は我に刺さり、爾の手は重く我に加わる。
爾の怒りに依りて我が肉に傷まざる所なく、我の罪に因りて我が骨は安きを得ず、
蓋我が不法は我が首に溢れ、重荷の如く我を圧す、
我の無知に依り我が傷腐れて且つ臭し。
我屈まりて倒れんとし、終日憂いて行く、
蓋我が腰は熱に悩まされ、我が肉に傷まざる所なし。
我力衰えて痛く憊れ、我が心の裂くるによりて號ぶ。
主よ、我が悉くの願いは爾の前に在り、我が嘆息は爾に隠るるなし。
我が心は震い戦き、我が力は我より抜け、我が目の光も已に我にあるなし。
我が朋と親しき者とは我が傷を見て離れ、我が親戚は遠ざかりて立つ。
我が生命を求むる者は網を設け、我を損なわんと欲する者は我が滅びのことを言いて、毎日悪しき謀を企む、
然れども我は聾の如く聴かず、唖の如く己の口を啓かず、
是に於いて我は聞くなく、其の口に答うる所なき人の如くなれり、
蓋主よ、我爾を恃む、主我が神よ、爾に聴き給わん。
我言えり、願わくは敵は我に勝たざらん、我が足の躓く時、彼等は我に向かいて誇り高ぶる。
我殆ど倒れんとす、我の憂いは常に我が前に在り。
我は我が不法を認め、我が罪の爲に甚だ哀しむ。
我が敵は生きていよいよ強く、故なくして我を憎む者は益々多し、
悪を以て我の善に報ゆる者は、我が善に従うに因りて我の敵となれり。
主我が神よ、我を遺つる毋れ、我に遠ざかる毋れ、
主我の救主よ、速やかに来たりて我を救い給え。

第三十八聖詠

伶長イディフムに歌わしむ。ダワィドの詠。
我言えり、我舌を以て罪を犯さざらん爲に、我が途を慎み、悪者の前に在る間、我が口を箝まん。
我唖にして言葉なく、善事と雖も黙せり、我が憂いは猶動けり。
我が心は我の中に焼け、我が意いの中に火燃えたり、我舌を以て初めて云えり、
主よ、我に我が終わりと我が日の数の幾ばくなるとを告げて、我に我が代の如何を知らしめよ。
視よ、爾我に日を与えしこと指尺の如く、我が代は爾の前に有るなきが如し。誠に凡そ生ける人は全く虚し。
誠に人は行くこと幻の如く、彼徒に煩劇をなし、貯えて誰に獲らるるを知らず。
主よ、今我何をか俟たん、我が望みは爾に在り。
我を我が悉くの不法より逃し、我を愚人の辱めに任す毋れ。
我唖となりて我が口を啓かず、爾是を爲したればなり。
爾の打撃を我より去れ、爾の手の撃つに因りて我殆ど消ゆ。
若し爾責めを以て人を其の罪の爲に罰せば、其の美麗は虫食みの如くに散らん。誠なる哉、人皆虚し。
主よ、我が祈祷を聆き、我が呼ぶ聲に耳を傾けよ、我が涙に黙す毋れ、蓋我は爾の前に旅人たり、寄寓者たり、我が列祖の如し。
我より退きて、我に世を逝りて没する先に安んずるを得しめ給え。

第三十九聖詠

伶長に歌わしむ。ダワィドの詠。
我切に主を恃みしに、彼我に傾きて、我が呼ぶ聲を聆き納れ給えり。
我を畏るべき陥坑より泥の沢より出して、我が足を磐の上に立て、我が歩みを固めたり、
我が口に新たなる歌を納れて、我等の神を讃美せしめ給えり。多くの者は之を見て畏れ、且つ主を恃まん。
其の恃みを主に負わしめて、驕る者と偽りに傾く者とに向かわざる人は福なり。
主我が神よ、爾が行いし事は多し、誰か爾に比ぶるを得ん、爾の奇迹と爾が我等を念う事とは、我之を陳べて言わんと欲すれども、其の数計る可からず。
祭祀と禮物とは、爾之を欲せざりき、然れども肉体を我が爲に備えたり。全燔と罪祭とは、爾之を悦ばざりき。
其の時我言えり、視よ、我往く、書巻の中に我の事を記せるが如し、
神よ、我爾の旨を行わんことを望む、爾の法は我が心に在り。
我爾の義を大会の中に伝えたり、我が口を禁ぜざりき、主よ、爾之を知る。
我爾の義を我が心に隠さず、爾の誠と爾の救いとを伝えたり、爾の慈憐と爾の真実とを大会の前に秘せざりき。
主よ、爾の恩を我に禁ずる毋れ、願わくは爾の慈憐と爾の真実とは常に我を護らん、
蓋数え難き禍いは我を環り、我が不法は我に及びて、我に見ることを得ざらしむ、其の数は我が首の髪より多し、我が心は我を離れたり。
主よ、我を救い給え、主よ、速やかに我を佑け給え。
我が霊を滅ぼさんことを求むる者は、願わくは皆恥を得て辱めを受けん、禍を我に望む者は、願わくは退けられて嘲られん、
我に向かいて良し良しと云う者は、願わくは其の辱めに縁りて亂されん。
凡そ爾を求むる者は、願わくは爾の爲に喜び楽しまん、爾の救いを愛する者は、願わくは常に主は大いなりと言わん。
我は貧しくして乏し、然れども主は我を慮る。爾は我の助けなり、我を救う者なり、我が神よ、遅なわる毋れ。

光榮讃詞
第四十聖詠

伶長に歌わしむ。ダワィドの詠。
貧しき者乏しき者を顧みる人は福なり、患難の日に主は彼を救わん。
主は彼を護りて其の生命を保たん、彼は地に在りて福を得ん。爾彼を其の敵の望みに任せざらん。
其の病の床に於いて主は彼を扶けん、其の病の時爾全く其の床を易えん。
我言えり、主よ、我を憐れみ、我が霊を癒し給え、我罪を爾に得たればなり。
我の敵は我が事を悪言して曰う、彼は何れの時に死して其の名滅びん。
若し人我を見ん爲に来たらば偽りを言い、其の中心に不義を蓄え、外に出でて之を述ぶ。
我を憎む者は皆耳を相接して我を讒し、相謀りて我を害せんと欲す。
ワェリアルの言葉は彼に至れり、彼已に臥し、復起くる能わず。
我と親しき者、我が恃みし者、我が餅を食らいし者も亦我に向かいて其の踵を挙げたり。
主よ、爾我を憐れみ、我を起こし給え、我彼等に報いん。
若し我が敵我に勝ちて喜ばず、
若し爾我を全うして守り、爾が顔の前に永く立てば、我此を以て爾が我を悦ぶを知らん。
主イズライリの神は崇め讃められて世より世に至らん。「アミン」、「アミン」。

第四十一聖詠

伶長に歌わしむ。コレイの諸子の教訓。
神よ、我がたましい爾をしたうこと、鹿しかみづながれをしたう如し。
我がたましいゆう生活せいかつかみかわく、我いづれの時にか至りてかみかんばせの前にでん。
人毎日我に向かいて、爾の神は何処いづこると言いし時、涙はちゅう我のしょくとなれり。
我此を記憶して、我がたましいそそぐ、けだしかつて大衆のうちに行き、彼等とともけいする会のきん讃榮さんえいこえもつて神の家に入れり。
我がたましいよ、爾何ぞもだえ、何ぞみだるる、神をたのめ、けだしなお彼我が救主我が神を讃榮せん。
我がたましい我のうちもだゆ、故に我イオルダンの地より、エルモンよりツォアルの山より爾を記憶す。
爾が瀑布たきこえもつて淵は淵を呼ぶ、爾のことごとくのみづ、爾の波は我が上にわたれり。
ひるに主はの憐れみを顕わし、よるに我彼に歌い、我が生命いのちかみいのらん。
われかみ我をまもものげん、なんぢ何ぞ我を忘れたる、我何ぞ敵のあなどりにりてうれいてく。
我が敵は我をはづかしむること、我が骨を撃つが如く、毎日我に向かいて、なんぢかみ何処いづこると言う。
我がたましいよ、何ぞもだえ、何ぞみだるる、神をたのめ、けだしわれなおかれ我が救主我が神を讃榮せん。

第四十二聖詠

神よ、我を裁き、不善の民に於ける我が訴えを理めよ。詭譎及び不義なる人より我を逃れしめ給え、
蓋爾は我を固むる神なり。爾何ぞ我を棄てたる、我何ぞ敵の侮りに因りて憂いて行く。
爾の光と爾の真実とを遣わし、其れをして我を導きて、爾の聖山爾の住所に至らしめ給え。
我神の祭壇に就き、我が忻喜歓楽の神に就かん、神我が神よ、我悉く以て爾を讃榮せん。
我が霊よ、何ぞ悶え、何ぞ擾るる、神を恃め、蓋我仍彼我が救主我が神を讃榮せん。

光榮讃詞
第四十三聖詠

伶長に歌わしむ。コレイり諸子の教訓。
神よ、我等は己の耳にて聞けり、我が列祖は爾が彼等の日。即古の日に行いし事を我等に述べたり。
爾は己の手にて諸民を滅ぼして、彼等に植え、諸族を撃ちて、之を逐い出せり、
蓋彼等は己の剣を以て地を得たるに非ず、彼等を救いし者は己の臂に非ず、即爾が右の手、爾の臂、爾が顔の光なり、蓋爾は彼等を愛せり。
神我が王よ、爾は古に異ならず、願わくは救いをイアコフに賜え。
我等爾と偕に角を以て我が敵を衝き破らん、爾の名に頼りて我等を攻むる者を践まん、
蓋我は我が弓を頼むに非ず、我が剣は我を救わんとするに非ず、
乃ち爾は我等を我が敵より救い、我等を憎む者を辱しめん。
我等は日々神を以て己の誉れとなし、永く爾の名を讃榮せん。
然れども今爾は我等を棄て、我等を辱しめ、我が軍と偕に出でず、
我等をして敵の前より退かしめたり、我等を憎む者は我等を掠む、
爾は我等を羊の如く食らわるるに任せ、我等を諸民の間に散らせり、
利なくして爾の民を売り、其の価を高くせざりき、
我等の隣の辱しめに任せ、我等を環る者の嘲りと戯れとに任せたり、
爾我等を諸民の諺となし、異邦民は我等を見て首を揺かす。
我が辱しめは毎日我の前に在り、愧は我が面を蔽う、
我を侮り我を謗る者の聲に因り、我に敵し我に仇する者の視るに因りてなり。
是れ皆我等に臨めり、然れども我等爾を忘れず、爾の約を破らざりき。
我が心退かず、我が足爾の途を離れざりき。
是れ爾が我等を龍の地に傷め、我等の死の蔭にて蔽いし時にあり。
我等若し我が神の名を忘れ、手を伸べて他の神に向かはば、
神豈に之を糺さざらんや、彼は心の密事を知ればなり。
爾の爲に我等毎日殺され、人の我等を視ること、屠りに定められたる羊の如し。
主よ、起きよ、何ぞねる、覚めよ、永く棄つる毋れ。
何爲れぞ爾の顔を隠し、我等の苦難と我等の迫害とを忘るる、
蓋我が霊は塵に俯し、我が腹は地に貼きたり。
起きて我等を佑けよ、爾の憐れみに因りて我等を救い給え。

第四十四聖詠

伶長に「ソサン」の楽器を以て歌わしむ。コレイの諸子の教訓。愛の歌。
我が心善言を湧き出せり、我曰う、我が歌は王の事なり、我が舌は迅書者の筆なりる
爾は人の子より麗し、恩寵は爾の口より湧き出でたり、故に神は爾に降福して世々に至る。
剛き者よ、爾の剣を、爾の光榮と爾の美麗とを股に佩びよ、
此の飾りにて真実と温柔と公義の爲に急ぎて車に乗れ、爾の右の手は爾に奇妙なる事を顕わさん。
剛き者よ、爾の箭は銛し、諸民爾の前にイトれん、此の箭は王の敵の心に中る。
神よ、爾の宝座は世々に在り、爾の国の権柄は権柄なり。
爾は義を愛し、不法を悪めり、故に神よ、爾の神は爾に歓びの膏を傅けしこと、爾の侶に勝れり。
爾の衣は皆没薬廬薈肉桂の如し、象牙の殿より爾を楽ましむ。
諸王の女は爾の貴嬪の中に在り、皇后はオフィルの金を妝いて、爾の右に立てり。
女よ、之を聴き、之を視、爾の耳を傾けよ、爾の民と爾が父の家とを忘れよ。
王は爾の美はしきを慕わん、蓋彼は爾の主なり、爾彼に伏拝せよ。
ティルの女は禮物を携え、民中の富める者は爾拝まん。
王の女の光榮は皆内にり、其の衣は金を繍とせり、
彼は彩服を衣て王の前に進められ、彼の伴たる童女は彼に従いて爾の前に進めらる、
彼等は楽しみ祝いて導かれ、王の殿に入る。
爾の列祖に代えて爾の諸子あらん、爾之を立てて全地の牧伯とせん。
我爾の名を萬世に誌さしめん、故に諸民爾を讃榮して永遠に迄らん。

第四十五聖詠

伶長に「アラモフ」の楽器を以て歌わしむ。コレイの諸子の歌。
神は我等の避所なり、患難の時には速やかなる佑助なり、
故に地は動き、山は海の心に移るとも、我等懼れざらん。
其の水は號り逆巻くべし、其の濤たつに依りて山は震うべし。
河の流れは神の邑、至上者の聖なる住所を楽しましむ。
神は其の中に在り、其れ撼かざらん、神は早朝より之を佑けん。
諸民は騒ぎ、諸国は撼けり。至上者一たび聲を出せば地は融けたり。
萬軍の主は我等と偕にす、イアコフの神は我等を護る者なり。
来たりて主の爲しし事、其の地に行いし掃滅を視よ、
彼は地の極まで戦いを息めて、弓を折り、矛を折き、火を以て兵車を焚けり。
爾等止まりて、我の神なるを識れ、我諸民の中に崇められん。
萬軍の主は我等と偕にす、イアコフの神は我等を護る者なり。

光榮讃詞