コンテンツにスキップ

検索結果

  • 1934年1月 底本:『校定 新美南吉全集 第8巻』大日本図書、1981年。 註: 制作日時は推定である。 駱駝 駱駝がすはる もくもくと。 陽南の山茶花󠄁 花󠄁のした うす眼ですはる  もくもくと。 こぶこぶ二つ もくもくと。 大きなテントが ころぶやう ゆつくりすはる  もくもくと。 膝胼胝(たこ)つけて…
    504バイト (300 語) - 2020年5月15日 (金) 13:48
  • 旧式の山高帽の愛情深い宣教師S氏と けいれんする羞恥の赤さをもつた午後の庭に 柔い目をした犬の愛撫を見つつ 天国の話を初めてゐる 泣きはらした目のやうな山茶花が 無益な顔をしてゐる私に照つている 紅い花と————蒼白い顔 空に剥製の白鳥が飛んでゐる 饐んでゆく一日を 挽歌も知らず過してゐる男 明るく————そして暗い太陽の面に…
    894バイト (413 語) - 2023年4月16日 (日) 21:38
  • 榮譽(ほまれ)なき戀なき人の石の胸 何に拗ねたるかたくなの性(さが) ひな菊や小菊眞菊のみだれ咲く 籬をめぐる流音する 市松の日覆障子の菊花壇 老侯歩く庭眞日ざかり 山茶花のはらはらと散る藪かげに 抒(はた)の音聞く里の裏みち 鸚哥(いんこう)に言葉を仕込む端椽を カンナの垣のさわさわと鳴る 小流れに鉤(はり)をながして手を束ね…
    3キロバイト (681 語) - 2023年3月10日 (金) 12:24
  • 絶えず扉が鳴り、人びとは朝の新鮮な空気を撒き散らしていた。尭は永い間こんな空気に接しなかったような気がした。 彼は細い坂をゆっくりゆっくり登った。山茶花(さざんか)の花ややつでの花が咲いていた。尭は十二月になっても蝶(ちょう)がいるのに驚ろいた。それの飛んで行った方角には日光に撒かれた虻(あぶ)の光点が忙しく行き交(こ)うていた。…
    37キロバイト (7,629 語) - 2021年12月10日 (金) 09:31
  • 「八つ手も大きくなりやがったなあ。」 「あれだって、とうさんが植えたんだよ。」 「知ってるよ。山茶花(さざんか)だって、薔薇(ばら)だって、そうだろう。あの乙女椿(おとめつばき)だって、そうだろう。」  気の早い子供らは、八つ手や山茶花を車に積んで今にも引っ越して行くような調子に話し合った。…
    120キロバイト (23,060 語) - 2019年9月29日 (日) 05:09
  •  夕方に、熊吉が用達(ようたし)から帰って来るまで、おげんは心の昂奮を沈めようとして、縁先から空の見える柱のところへ行って立ったり、庭の隅にある暗い山茶花(さざんか)の下を歩いて見たりした。年老いた身の寄せ場所もないような冷たく傷(いた)ましい心持が、親戚の厄介物として見られような悲しみに混って、制…
    101キロバイト (20,958 語) - 2019年9月29日 (日) 04:46
  • と土瓶とを両手に持って、二人の顔を見競(みくら)べて、「まあ、大相(たいそう)お静(しずか)でございますね」と云って、勝手へ行った。  蹲の向うの山茶花(さざんか)の枝から、雀が一羽飛び下りて、蹲の水を飲む。この不思議な雀が純一の結ぼれた舌を解(ほど)いた。 「雀が水を飲んでいますね」 「黙っていらっしゃいよ」…
    404キロバイト (79,999 語) - 2023年10月17日 (火) 13:52
  •  赤松の間に二三段の紅(こう)を綴った紅葉(こうよう)は昔(むか)しの夢のごとく散ってつくばいに近く代る代る花弁(はなびら)をこぼした紅白(こうはく)の山茶花(さざんか)も残りなく落ち尽した。三間半の南向の椽側に冬の日脚が早く傾いて木枯(こがらし)の吹かない日はほとんど稀(まれ)になってから吾輩の昼寝の…
    1.06メガバイト (208,385 語) - 2022年11月4日 (金) 04:57
  • ひは夜の防ぎにもと紙布、ゆかたの類までも用意して百里二百里の道を踏んだといふ頃にわたしたちの心を馳せるとしたら、そして初しぐれの來る季節を想像し、山茶花なぞの咲く宿々を想像するとしたら、旅人と自分の名を呼ばれようと言つた昔の人の姿がおのづとそこに浮んで來る。…
    282キロバイト (57,833 語) - 2021年5月19日 (水) 16:37
  • 書籍(ほん)で、君の参考に成るだろうと思うようなものも、可成(かなり)有るよ。ああいうものはいずれ君の方へ遣ろう。君に見て貰おう」  部屋の前は、山茶花(さざんか)などの植えてある狭い庭で、明けても暮れても宗蔵の眺める世界はこれより外は無かった。以前には稲垣あたりへよく話しに出掛けたものだが、それ…
    437キロバイト (86,210 語) - 2022年9月18日 (日) 11:16
  • 「芭蕉(ばしょう)があるもんだから余計音がするのね」 「芭蕉はよく持つものだよ。この間から今日は枯れるか、今日は枯れるかと思って、毎日こうして見ているがなかなか枯れない。山茶花(さざんか)が散って、青桐(あおぎり)が裸になっても、まだ青いんだからなあ」 「妙な事に感心するのね。だから恒三(つねぞう)は閑人(ひまじん)だって云われるのよ」…
    677キロバイト (132,287 語) - 2022年4月2日 (土) 11:15
  • 木(ざつぼく)は、老木(おいき)稚木(わかぎ)も押なべて一様に枯葉勝な立姿、見るからがまずみすぼらしい。遠近(おちこち)の木間(このま)隠れに立つ山茶花(さざんか)の一本(ひともと)は、枝一杯に花を持ッてはいれど、㷀々(けいけい)として友欲し気に見える。楓(もみじ)は既に紅葉したのも有り、まだしな…
    429キロバイト (83,606 語) - 2023年10月20日 (金) 13:54
  • 「種」と主人は大きな声で言って見せて笑った。  食後に岸本は持って来た風呂敷包を取出した。その中からは銀杏(いちょう)、椿、山茶花(さざんか)、藤、肉桂(にくけい)、沈丁花(じんちょうげ)なぞの実も出て来た。  老婦人は岸本に向って、東京にある姪から仏蘭西大学の教授の許(もと…
    1メガバイト (204,909 語) - 2019年9月29日 (日) 05:14
  •  崖の上には石蕗(つわ)があった。あいにくそこに朝日が射していないので、時々風に揺れる硬く光った葉の色が、いかにも寒そうに見えた。山茶花(さざんか)の花の散って行く様も湯壺(ゆつぼ)から眺められた。けれども景色は断片的であった。硝子戸の長さの許す二尺以外は、上下とも全く津田の眼に映…
    1.06メガバイト (208,097 語) - 2023年10月17日 (火) 13:45
  • 長襦袢(ながじゆばん)の裾(すそ)は上履(うはぐつ)の歩(あゆみ)に緩(ゆる)く匂零(にほひこぼ)して、絹足袋(きぬたび)の雪に嫋々(たわわ)なる山茶花(さざんか)の開く心地す。  この麗(うるはし)き容(かたち)をば見返り勝に静緒は壁側(かべぎは)に寄りて二三段づつ先立ちけるが、彼の俯(うつむ)…
    1.02メガバイト (208,408 語) - 2024年1月28日 (日) 21:05