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- そ)ぶ旅客(りょかく)も多(おほ)からん 勿禁(ふっきん)驛(えき)の甑(そー)城(じょー)は 威(い)風(ふー)草(くさ)木(き)を靡(なび)かせて 鬼(おに)と呼(よ)ばれし淸正(きよまさ)が 敵(てき)を防(ふせ)ぎし蹟(あと)とかや 院洞(いんどー)過(す)ぎて三浪津(さんろー…20キロバイト (3,661 語) - 2023年9月5日 (火) 15:11
- 『恐ろしき錯誤(おそろしきさくご)』 作者:江戸川乱歩 1923年 底本:昭和62年9月25日講談社発行『江戸川乱歩推理文庫1二銭銅貨』 「勝ったぞ、勝ったぞ、勝ったぞ……」 北川氏の頭の中には、勝ったという意識だけが、風車のように旋転していた。ほかのことは何も思わなかった。…71キロバイト (14,051 語) - 2021年8月31日 (火) 22:21
- 「そら踊った、踊った!」 単純な頭を、酒でめちゃめちゃにされた甚助の子は、気違いのようになっていた。 肌脱ぎになり、両手に草履を履くと、善馬鹿の体中を叩きながら、訳の分らないことを叫んで踊り出した。 「や! うめえぞッ!」 「そーらやれやれ。ええか? 唄うぞ! ホラ 俺らげーの畑でようー…… ホラ、シッチョイサ!……」…177キロバイト (35,166 語) - 2021年4月16日 (金) 23:39
- 『雪之丞変化』(ゆきのじょうへんげ) 女がた 作者:三上於菟吉 底本:昭和35年8月5日新潮社発行『雪之丞変化(上)』 晩秋(おそあき)の晴れた一日が、いつか黄昏(たそが)れて、ほんのりと空を染めていた夕映も、だんだんに淡(うす)れて行く頃だ。 浅草今戸(いまど)の方から、駒形(こまかた…36キロバイト (6,997 語) - 2024年1月12日 (金) 09:39
- た。 青年の頃から、彼自身の心に、食い込んでしまった、不思議な慾望――骨董癖、風雅癖が昂じた結果の、異状な蒐集慾、それを満たすために、どれ程、うしろ暗い、汚らわしい行為を、繰り返して来ていた彼であったろう! その衷情(ちゅうじょう)を、三斎はいま、不図言葉に漏らしてしまったのだ。…96キロバイト (18,832 語) - 2019年2月26日 (火) 14:51
- た。星あかりに私の方を透かしながらニッコリと笑った……と思ううちに両舷(りょうげん)の排気管(エキゾーストパイプ)からモノスゴイ火煙が流れ出した。艇尾(スターン)が河の中心に半円を描いた。蒼白(あおじろ)い、明煌々(めいこうこう)たるヘッドライドを射出す…275キロバイト (52,068 語) - 2024年4月8日 (月) 03:42
- いたりやこそ龍ハはやしぬる;やらしれんきに;すぐにとりつく。 それハ〳〵おそーしいめ を見るぞよ。これを やろふと思へ(ヱ)バよく 人の心を見さだめ なくてハいかん。おまへも まだわかすぎるかと 思ふよ。又けしてき りよふのよき人をつれ になりたりいたしたれバ ならぬ事なり。ごつ〳〵 いたしたるがふぢよふ ばんバのつよばんバで なけれバいかん。たん…8キロバイト (1,249 語) - 2015年3月21日 (土) 03:37
- たろう!影の影をつかんでいたようなものだ! しかし、名目が名目だけに、浪路は、屋敷に戻ると、奥の離れにしつらえられた臥床(ふしど)に、さも苦しげに身を横たえて、医師の加療に身をまかせねばならなかった。 だが、その医者も、城内典薬の診断と違わなかった。…58キロバイト (11,125 語) - 2019年3月1日 (金) 06:31
- た。昇が酒を強(し)いた、飲めぬと云ッたら助(す)けた、何でも無い事。送り込んでから巫山戯(ふざけ)た……道学先生に聞かせたら巫山戯させて置くのが悪いと云うかも知れぬが、シカシこれとても酒の上の事、一時の戯(たわむれ)ならそう立腹する訳にもいかなかッたろ…429キロバイト (83,606 語) - 2023年10月20日 (金) 13:54
- 黒吉の、唇に感じた、葉子の唇の感触は、ぬくぬくとして弾力に富んだはんぺんのようだった。妙な連想だけれど、事実彼の経験では、これが一番よく似ていたのだ。 唯、違った所――それは非常に違ったところがあるのだが――残念ながら、それをいい表わす言葉を知らなかった。 彼は、そー…184キロバイト (33,562 語) - 2023年10月17日 (火) 13:53
- 今度はへっついの影で吾輩の鮑貝(あわびがい)がことりと鳴る。敵はこの方面へも来たなと、そーっと忍び足で近寄ると手桶(ておけ)の間から尻尾(しっぽ)がちらと見えたぎり流しの下へ隠れてしまった。しばらくすると風呂場でうがい茶碗が金盥(かなだらい)にかちりと当る。今度は後方(うしろ)だと振りむく途端に、五寸近くある大(おおき)な奴…1.06メガバイト (208,385 語) - 2022年11月4日 (金) 04:57
- たが、どこか見覚(みおぼえ)のあるような心持を私に起させた。昔(むか)し「影参差(しんし)松三本の月夜かな」と咏(うた)ったのは、あるいはこの松の事ではなかったろうかと考えつつ、私はまた家に帰った。 「そんな所に生(お)い立(た)って、よく今日(こんにち)まで無事にすんだものですね」…181キロバイト (35,520 語) - 2021年5月13日 (木) 16:06
- とりと湿った森の大気は木精のささやきも聞えそうな言いがたいしずけさを漂せた。そのもの静かな森の路をもの静かにゆきちがった、若い、いや幼い巫女の後ろ姿はどんなにか私にめずらしく覚えたろう。私はほほえみながら何度も後ろをふりかえった。けれども今、冷やかな山懐の気が肌(はだ)寒く迫ってくる社の片かげに寂然…14キロバイト (2,775 語) - 2019年9月29日 (日) 05:15
- たろうか?その中に、夕飯がすんだらしいから、思い切って、台どころから、おふくろに声をかけようか――ここで、気を弱くしちゃあ、友だちが、どうなると、決心すると、塀をはなれようとすると、そのとき、妙なひそひそばなしが、ついうしろの方で、きこえたんだ――一てえ、どんな事をいっていやがったと思う?」…66キロバイト (12,894 語) - 2019年2月26日 (火) 14:52
- たろうに、死んでから知らせるとは随分非度い訣だ。民さんだって僕には逢いたかったろう。嫁に往ってしまっては申訣がなく思ったろうけれど、それでもいよいよの真際になっては僕に逢いたかったに違いない。実に情ない事だ。考えて見れば僕もあんまり児供であった。その後市川を三回も通りながらたずねなかった…99キロバイト (20,856 語) - 2019年11月18日 (月) 16:55
- 「御免、一つ剃(そ)って貰おうか」 と這入(はい)って来る。白木綿の着物に同じ丸絎(まるぐけ)の帯をしめて、上から蚊帳(かや)のように粗(あら)い法衣(ころも)を羽織って、すこぶる気楽に見える小坊主であった。 「了念(りょうねん)さん。どうだい、こないだあ道草あ、食って、和尚(おしょう)さんに叱(しか)られたろう」…315キロバイト (58,693 語) - 2023年10月17日 (火) 13:49
- すものもなかった。寝静まった両側の家からは、酔漢の叫び声に態々(わざわざ)窓を開けて見るような物好もなく、相変らずしーんと静まり返っているのだった。 土井は些(いささ)か張合抜けのした形で、又もや当度(あてど)なく、熱い息をぷうぷう吐きながら進んで行った。…705バイト (14,053 語) - 2019年8月24日 (土) 14:24
- た。なにをする気にもならない自分にとつて実際変な魅力を持つてゐた。二時三時が打つても自分は寝なかつた。 夜晩(おそ)く鏡を覗くのは時によつて非常に怖ろしいものである。自分の顔がまるで知らない人の顔のやうに見えて来たり、眼が疲れて来る故か、ぢー…21キロバイト (4,666 語) - 2021年8月31日 (火) 22:29
- に彼の語つたように一目見てもぞつとする程妖異な相で、膚は蛞蝓のように蒼白く光つていた。そして、何よりも怪奇に恐ろしく見えたのは、そのギロ〳〵と動く両眼だつた。 「どうだ、驚いたろう」手塚はせゝら笑いながら、 「このギロ〳〵動く眼は、恰度天秤の皿のように、眼の玉と同じ重さのもので平衡を取つて、尖つた…974バイト (9,443 語) - 2020年1月12日 (日) 14:04
- すと一番奥の方に二人は黒いフロックと五色の袖(そで)に取り巻かれて、なかなか寄りつけそうもない。食卓はようやく人数が減った。しかし残っている食品はほとんどない。 「近頃は出掛けるかね」と云う声がする。仙台平(せんだいひら)をずるずる地びたへ引きずって白足袋(しろたび)に鼠緒(ねずお)の雪駄(せった…323キロバイト (60,728 語) - 2023年10月17日 (火) 13:52