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  • 窓からの風景はいつの夜も渝(かわ)らなかった。喬にはどの夜もみな一つに思える。 しかしある夜、喬は暗(やみ)のなかの木に、一点の蒼白(あおじろ)い光を見出した。いずれなにかの虫には違いないと思えた。次の夜も、次の夜も、喬はその光を見た。 そして彼が窓辺を去って、寝床の上に横になるとき、彼は部屋のなかの暗にも一点の燐光(りんこう)を感じた。…
    23キロバイト (4,808 語) - 2021年12月9日 (木) 11:40
  • 「学校へとりにゆくのも面倒だろうから」と云って尭に渡した。 母から手紙が来た。 ――お前はなにか変ったことがあるにちがいない。それで正月上京なさる津枝さんにお前を見舞っていただくことにした。そのつもりでいなさい。 帰らないと云うから春着を送りました。今年は胴着を作って入れておいたが、胴着は着物と襦袢(じゅばん)に看るものです、じかに着てはいけません。――…
    37キロバイト (7,629 語) - 2021年12月10日 (金) 09:31
  • 「番頭さん。ひどくむずかしいお話らしゅうござんすね」と、半七は冗談らしく笑った。「おまえさん、なにか粋事(いきごと)ですから。それだと少し辻番が違うが、まあお話しなさい。なんでも聴きますから」 「どういたしまして、御冗談を……」と、利兵衛は頭をおさえながら苦笑(にがわら)いを…
    59キロバイト (11,816 語) - 2021年12月14日 (火) 10:52
  • は見識(みし)らない男を連れて参りまして、相変らず若主人を表へ呼出して、なにか強面(こわもて)に嚇(おど)かしていたようで、二人が帰ったあとで若主人は蒼(あお)い顔をして居りました。あまり不安心でございますから、手前は人のいない所へ若主人をそっと呼びまして、これは一体どういう事かといろいろに訊きま…
    71キロバイト (14,226 語) - 2019年2月27日 (水) 14:47
  • いなかったのであるが、何分にも自分のあとを付け廻してくるのが気になってならなかった。彼女はだんだん気味が悪くなって来て、物取りや巾着切りなどということを通り越して、なにか一種の魔物ではないかとも疑いはじめた。死に神か通り魔か、狐か狸か、なにか
    103キロバイト (20,786 語) - 2021年8月31日 (火) 23:11
  • 芳枝。 でも人のほめる言葉位はよろこんでよさそうに思へるわ。 黑田。 梶山はなにも人のほめて呉れるのを待つてもゐなければ望んでもゐないのです。 なにか神とか、完全な人とかを怖れてゐるのです。そんな完全な人の前に出してやましくない樣な畫をかきたいと云つて唯そればか…
    24キロバイト (4,860 語) - 2022年4月3日 (日) 03:06
  • なにか仔細(しさい)がなければならないと彼は不思議に思っていると、平兵衛はつづけて話した。 「お徳はさすがに江戸馴れして居りますので、あんまり話の旨いのを不安に思いまして、どうしようかと二の足を踏んで居りますと、妹の方は年が若いのと、この頃の田舎者(いな
    39キロバイト (8,057 語) - 2019年2月27日 (水) 14:49
  • ら、たしかこの辺の曲がり角に看板のあるのを見たはずだがと思いながら行く。  人通りはあまりない。役所帰りらしい洋服の男五六人のがやがや話しながら行くのにあった。それから半衿(はんえり)のかかった着物を着た、お茶屋のねえさんらしいのが、なにか近所へ用たしにでも出たのか、小走りにすれ違った。まだ幌(ほ…
    15キロバイト (2,700 語) - 2020年6月18日 (木) 15:54
  • り集まって来て、その置手紙を木魚の口へ投げ込んで置いて、なにかの打合せをすることになっているらしい。そこまではまう判ったが、さてこの十五夜御用心……。誰に用心しろと云うのかな」 云いかけて、又なにか思い出したように、半七は向き直った。 「おい、元八。おめえはその芭蕉のかげで立ち聴きをしていて、なんにも話し声は聞えなかったか」…
    66キロバイト (13,394 語) - 2019年2月27日 (水) 14:49
  • 変死一件である。その一件と鶏とを結び付けて考えれば、なにかの謎(なぞ)が解けないでもなかった。 「いや、朝っぱらからお邪魔をしました」 半七は下駄屋の店を出た。 その次の日の午(ひる)頃に庄太が顔を見せると、彼はすぐに半七にひやかされた。 「おい、庄太。おれもぼんやりだが、おめえもよっぽどうっかり…
    59キロバイト (11,846 語) - 2019年2月27日 (水) 14:45
  • に会釈した。「それにしても、夜中どうしてこの墓地へおはいりなされた。なにか御用でござるか」 住職の物云いは穏かであるが、その眼の怪しく光っているのを、吉五郎は見逃さなかった。 初対面の住職はもう四十五六歳であろう。いろの蒼白(あおじろ)い痩形(やせがた)の一種の威厳を具(そな)えたように見える人柄…
    238キロバイト (48,030 語) - 2019年2月27日 (水) 14:39
  • 「それは子分の彦(ひこ)の野郎が、何かの手がかりになるだろうと云うので、検視の来る前に死骸の手からそっと取って来たんだ。あいつはなかなか敏捷(すばし)っこい奴よ。どうだい、三河町。なにかのお役に立ちそうなもんじゃあねえか」 「むむ、こりゃあ大手柄だ。これを手がかりに何とか工夫してみよう」 彦八(ひこはち)という若い手先は親分の枕も…
    50キロバイト (10,175 語) - 2019年2月27日 (水) 14:50
  • が出してくれた団扇を弄(いじ)くりながら、黙って俯向いていた。 「おい、何もかも正直に云ってくれねえじゃあいけねえ。姉さんが助かるのも助からねえのも、おめえの口一つにあることだ、なんでもみんな隠さず云って貰いてえ。姉さんはこの頃なにか親父(ちゃん)と折合いの悪いことでもあったんじゃあねえか」…
    50キロバイト (10,195 語) - 2019年2月27日 (水) 14:48
  • なにを云われても逆らう気力はなかった。彼女は人形芝居の人形のように、他人の意志のままに動いているよりほかはなかった。彼女はおとなしく本にむかっていると、さぞ暑かろうと云って一人の女が絹団扇(きぬうちわ)で傍からやわらかにあおいでくれた。…
    51キロバイト (10,717 語) - 2019年2月27日 (水) 14:40
  • で、誰か知っている人でもあるのか。ほかの女中はみんな小さくなって引っ固まっているのに、おめえ一人はさっきから其処(そこ)らをうろうろしているのは、なにか訳があるに相違ねえ。この男を識っているのか」と、半七は蚊帳のなかに倒れている七蔵を指さして訊いた。 女中は身をすくめながら頭(かぶり)をふった。 「それじゃあ連れの男を識っているのか」…
    34キロバイト (6,872 語) - 2021年12月29日 (水) 13:36
  • 「まったく可怪しい。なにか訳がありそうだ。ほかにはなんにも紛失物はないんだね」 「ほかには何もないようです」 「よし、判った。それもなんとか手繰(たぐ)り出してやろうから、主人によくそう云ってくれ」 「なにぶん願います」 与七は雨のなかを急いで帰った。材料はいつ…
    50キロバイト (10,346 語) - 2019年2月27日 (水) 14:50
  • 二人は息を嚥(の)んで待ち構えた。 「いや、馬鹿なお話ですね」と、半七老人は笑いながらわたしに話した。 「今考えると実にばかばかしい話で、それからその武士があがって来るのを待っていて、熊蔵がそれとなくいろいろのことを訊くと、どうもその返事が曖昧(あいまい)で、なにか物を隠しているらしく見えるんです。わたくしも傍(はた)か…
    49キロバイト (9,748 語) - 2021年8月31日 (火) 23:11
  • 三、四町もあったであろうか。その間にはごく稀(まれ)にしか電燈がついていなかった。今でもその数が数えられるように思うくらいだ。最初の電燈は旅館から街道へ出たところにあった。夏はそれに虫がたくさん集まって来ていた。一匹の青蛙(あおがえる)がいつもそこにいた。電燈の真下の電柱にいつもぴたりと身をつけて…
    13キロバイト (2,631 語) - 2021年11月10日 (水) 07:55
  • 最初は素知らぬ顔をしていたが、こっちの横顔をぬすむように窺いながら三、四間ほども付いて来るので、半七も勃然(むっ)として立停(たちど)まった。 「おい、大哥(あにい)。わっしになにか用でもあるのかえ。花見どきに人の腰を狙ってくると、巾着切(きんちゃっき)りと間違げえられるぜ」…
    54キロバイト (10,952 語) - 2019年2月27日 (水) 14:39
  • 出かけでしたね。あっちにいるあいだも、とかくに降られがちで困りましたよ」 「なにか面白いことはありませんでしたか」と、わたしは茶を飲みながら訊いた。 「いや、もう」と、老人は顔をしかめながら頭(かぶり)をふってみせた。「なにしろ、宇都宮から三里あまりも引っ込んでいる田舎ですからね。いや、それでもわた…
    48キロバイト (9,851 語) - 2019年2月27日 (水) 14:42
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