税吏の祈祷
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神や我罪人を憐み給へ
問 是は誰の祈祷なりや
答 是は税吏の祈祷なり
問 税吏とは誰ぞや
答 税吏とは税を取立つる役人のことなり
問 我等は此祈祷を以て神に如何なることを願ひ求むるや
答 我等は此祈祷を以て神が我等罪人を憐み我等の罪を赦し我等を其罪の罰より免し給ふことを願ひ求むるなり
問 此祈祷は如何なる場合に唱ふべきや
答 此祈祷は常に罪を行ひたる場合に唱ふべし若し罪を行ひたることあるときは直に其罪を後悔して此祈祷を唱ふべし
- ○ 救主の嘗て此世に在りし頃ユデヤはロマの属国となりロマ人はユデヤ人より税を取り立てたり此税を取立つる役人を指して税吏と云へり税吏は重に残忍酷薄の人々にて無情なる圧制の振舞を為して貧者を苦めたり之に依てユデヤ人は税吏を見ること蛇蝎の如く社会の大罪人として席を共にする者もあらざりき然るに或る一人の税吏は終に己の大罪を認めて痛く己の罪を悔い頭を垂れ胸を推て此祈祷を唱へたり(路十八の十至十四)