コンテンツにスキップ

整理公債条例/1888年6月18日発行官報各府県庁到達日数等の後7日施行

提供:Wikisource


朕󠄁整理公󠄃債條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公󠄃布セシム

御名

明治十九年十月十六日

內閣總理大臣伯爵󠄄伊藤博󠄄文󠄃

大藏大臣伯爵󠄄松󠄃方正義

勅令第六十六號

整理公󠄃債條例

第一條 整理公󠄃債ハ從前󠄃發行ノ六分󠄃以上利附ノ內國債ヲ償還󠄃整理スルカ爲メニ募集スルモノトス

第二條 整理公󠄃債ハ壹億七千五百萬圓ヲ限リ大藏大臣財政ノ便󠄃宜ヲ計リ漸次󠄄之ヲ募集スルモノトス

第三條 整理公󠄃債利子ノ割󠄅合ハ一箇年百分󠄃ノ五トス

第四條 整理公󠄃債ニ對シ發行スル證書ハ無記名利札附ニシテ五千圓千圓五百圓百圓五拾圓ノ五種トス但應募者又󠄂ハ所󠄃有者ノ望󠄉ニ由リ記名トスルコトヲ得

第五條 整理公󠄃債證書ノ樣式ハ大藏大臣之ヲ定メ豫メ告示スヘシ

第六條 整理公󠄃債ヲ募集スルトキハ其總額價格應募申込󠄃日限應募金拂込󠄃度數等ハ大藏大臣之ヲ定メ豫メ告示スヘシ

大藏大臣ハ前󠄃項ノ手續ニ據ラス市場ノ時價ニ準シ整理公󠄃債證書ノ價格ヲ定メ臨時之ヲ發行シテ日本銀行ニ交付スルコトヲ得但發行シタル證書ノ金額及價格ハ大藏大臣其發行ノ翌󠄃日之ヲ告示スヘシ

第七條 整理公󠄃債應募高每期需要ノ額ニ超過󠄃スルトキハ大藏大臣ハ應募價格ノ高キモノヨリ順次󠄄證書ヲ交付シ需要額ニ滿ルニ至テ止ム其價格同シキモノハ申込󠄃ノ高ヲ割󠄅合減少スルモノトス但時宜ニ依リ貳百圓以下ノ應募者ニハ之ヲ減少セサルコトアルヘシ

第八條 整理公󠄃債應募金ノ拂込󠄃ヲ數囘ニ分󠄃ツ場合ニ於テ拂込󠄃期ノ末日マテニ拂込󠄃未濟ノモノアルトキハ其翌󠄃日ヨリ現拂込󠄃ノ日マテ一箇年百分󠄃ノ七ノ割󠄅合ヲ以テ利子ヲ徵收スヘシ

前󠄃項拂込󠄃期日後三箇月ヲ過󠄃キ猶ホ拂込󠄃ヲ爲サ丶ルトキハ公󠄃債證書ヲ交付セス且既ニ拂込󠄃ノ金額ハ還󠄃付セサルモノトス

第九條 整理公󠄃債元金ハ募集ノ年ヨリ五箇年据置其翌󠄃年ヨリ向五十箇年間ニ抽籤法ヲ以テ償還󠄃スルモノトス但償還󠄃金額ハ其時々大藏大臣之ヲ定メ豫メ告示スヘシ

第十條 整理公󠄃債元金償還󠄃ノ爲メ抽籤ヲ爲ストキハ日本銀行本店ニ於テ大藏省官吏󠄄三名以上會󠄃計檢查院官吏󠄄二名以上日本銀行役員二名以上立會󠄃ノ上之ヲ執行ス但整理公󠄃債證書額面三拾萬圓以上ヲ有スルモノハ抽籤ニ臨席スルコトヲ得

抽籤ノ後ハ日本銀行ヲシテ當籤證書ノ記號番號種類及ヒ金額等ヲ廣告セシムルモノトス

第十一條 整理公󠄃債ノ利子ハ每年六月十二月ニ於テ支拂フモノトス

第十二條 整理公󠄃債ノ利子ハ其元金拂込󠄃ノ時月ノ十五日以前󠄃ニ在ルモノハ下半月分󠄃ヨリ支拂ヒ月ノ十六日以後ニ在ルモノハ翌󠄃月分󠄃ヨリ支拂ヒ元金償還󠄃ノ年ニ於テハ其償還󠄃ノ月マテ月割󠄅ヲ以テ支拂ヲモノトス

第十三條 整理公󠄃債證書ノ利札ハ利子請󠄃取ノ時其所󠄃有者各自之ヲ截斷シテ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ニ持參スヘシ

第十四條 整理公󠄃債元利ノ支拂ヲ請󠄃求セサルモノアルトキハ元金ハ償還󠄃ノ月ヨリ滿十五箇年利子ハ支拂ノ期月後滿五箇年ヲ過󠄃クレハ之ヲ支拂ハサルヘシ但證書ノ紛󠄃失汚染及ヒ毀損等ニ由リ元利ノ支拂ヲ見合セ及ヒ訴訟事件ニ由リ請󠄃求ヲ爲シ難キ場合アルトキハ其間ノ日數ヲ算セス

第十五條 無記名證書ヲ記名ニ變換セントスルモノハ其請󠄃求書ニ戶長ノ奧書ヲ受ケ證書ヲ添ヘ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ヲ經由シテ大藏省ニ申出ヘシ

第十六條 記名證書ノ賣買讓渡ヲ爲シタルモノハ雙方連󠄃署ノ請󠄃求書ニ證書ヲ添ヘ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ニ差出シ名前󠄃書換ヲ請󠄃ヲヘシ

第十七條 記名證書ノ所󠄃有者死去シタルトキ其相續人ハ請󠄃求書ニ正當ノ相續人タルコトヲ證スル戶長ノ奧書ヲ受ケ前󠄃條名前󠄃書換ノ手續ヲ爲スヘシ

第十八條 記名證書ノ所󠄃有者ノ遺󠄃旨ニ依リ相續人ニ非スシテ證書ヲ讓リ受クルモノアルトキハ右相續人ヲ以テ保證人ト爲シ前󠄃條名前󠄃書換ノ手續ヲ爲スヘシ但相續人ナキ場合ニ於テハ前󠄃所󠄃有者ノ親戚二名以上ヲ以テ保證人ト爲スヘシ

第十九條 記名證書ノ所󠄃有者身代限ノ處分󠄃ヲ受ケ證書ノ所󠄃有權他ヘ移轉シタルトキ其引受人ハ裁判󠄃所󠄃ノ證明書ヲ承ケ之ヲ證書ニ添ヘ前󠄃條名前󠄃書換ノ手續ヲ爲スヘシ

第二十條 整理公󠄃債證書若クハ其利札水火災等ニ由リ消󠄃滅シタルトキハ二名以上ノ保證人ヲ立テ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ヲ經由シテ大藏省ニ屆出代證書若クハ代利札ノ交付又󠄂ハ利子ノ支拂ヲ請󠄃求スルコトヲ得此場合ニ於テ大藏省ハ其消󠄃滅ノ證跡明確ナリト認󠄃ムルトキハ直ニ代證書若クハ代利札ヲ交付シ又󠄂ハ利子ヲ支拂フヘシ

第二十一條 整理公󠄃債證書又󠄂ハ利札ヲ紛󠄃失シタルモノハ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ニ屆出ヘシ其發見ノ時亦同シ

前󠄃項ノ屆出アルトキハ銀行ハ直ニ其次󠄄第ヲ廣告スヘシ但廣告料ハ屆出人ヨリ納󠄃メシムルモノトス

第二十二條 公󠄃債證書又󠄂ハ利札紛󠄃失ノ屆出アルトキハ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ハ之カ支拂ヲ見合スヘシ

第二十三條 紛󠄃失屆出ノ證書又󠄂ハ利札ヲ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ニ持參スルモノアルトキハ銀行ハ之ヲ預リ置キ其旨ヲ屆出人ニ報知シ持參人ト屆出人ト相當ノ手續ヲ經テ所󠄃有權ヲ證明スルヲ待テ其取扱ヲ爲スヘシ

第二十四條 記名證書紛󠄃失屆出後一囘ノ利拂了リタル上ハ二名以上ノ保證人ヲ立テ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ヲ經由シテ大藏省ニ申出代證書ノ交付ヲ請󠄃求スルコトヲ得

第二十五條 紛󠄃失無記名證書其屆出ヨリ滿六箇年ヲ過󠄃キ紛󠄃失利札其支拂期限ヨリ滿四箇年ヲ過󠄃キ猶ホ發見セサルトキハ屆出人ニ代證書ヲ交付シ又󠄂ハ利子ヲ支拂フヘシ但本文󠄃期限ヲ過󠄃キテ紛󠄃失證書又󠄂ハ利札ヲ持參スルモノアルモ屆出人ニ對シテノミ起󠄃訴ノ權アルモノトス

第二十六條 紛󠄃失證書ノ當籖ハ無効ノモノトス

第二十七條 整理公󠄃債證書ヲ汚染又󠄂ハ毀損シタルトキハ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ヲ經由シテ其證書ヲ大藏省ニ差出シ代證書ノ交付ヲ請󠄃求スルコトヲ得大藏省ニ於テ其訂正ヲ鑒別シ得ヘキモノニハ代證書ヲ交付シ鑒別シ難キモノニハ其取扱總テ紛󠄃失證書ノ例ニ準セシム

第二十八條 第十五條ノ證書交換ヲ受クルトキ第十六條第十七條第十八條第十九條ノ名前󠄃書換ノトキ第二十條第二十四條第二十五條第二十七條ノ代證書ヲ受クルトキ及ヒ記名證書ノ取扱店ヲ變更󠄃スルトキハ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ハ相當ノ手數料ヲ本人ヨリ納󠄃メシムルコトヲ得

第二十九條 第二十條第二十四條ノ保證人ハ日本銀行本支店又󠄂ハ代理店ニ於テ滿足スルモノニ限ルヘシ

第三十條 從前󠄃發行ノ六分󠄃以上利附ノ公󠄃債證書ヲ所󠄃有スルモノハ元金償還󠄃ノ時本人ノ請󠄃求ニ由リ大藏省ノ都合ヲ以テ整理公󠄃債證書ヲ交付スルコトアルヘシ

第三十一條 整理公󠄃債證書ノ製造󠄄費發行費及ヒ募集初年ノ利子ハ募集金ヲ以テ支出スルコトヲ得

第三十二條 整理公󠄃債ノ募集償還󠄃利子ノ拂渡證書ノ書換等ニ關スル取扱手續ハ大藏大臣之ヲ定メ日本銀行ヲシテ其事務ヲ取扱ハシム

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。