<< 悪言及び悪言者 >>
他を悪言するをもてたのしむ者は他を悪言するにより既に自ら捕へられたるを明に示すなり。けだし他を悪言する者は自ら己を罪に定むるなり。彼は世の網中に入りてこれにからまさるる肉に属するの人なり。悪言する者には讒言もあり、怨恨も、誹謗もすべてこれあり。故に彼は兄弟を殺す者、無慈悲なる者、残忍なる者と認めらるるなり。されども神を畏るるの畏を己れに有して、潔白なる心ある者は他を悪言するを好まざるべく、他の失敗によりて己れに慰を求めざらん。故に己を悪言に習はしめたる者は涙と哀哭とに当らん。さらば此より悪むべきものやある。故に聖なる使徒も悪なる行を禁じて、悪なる行を為す者の中に悪言する者をも数へ入るるなり、曰く『悪言する者又は奪う者は神の国を嗣がず』〔コリンフ前六の十〕。