シリヤの聖エフレム教訓/第15講話

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第15講話[編集]

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嫉妬しっと争心そうしんとにおちいらざるものさいわいなり、けだし争心そうしん嫉妬しっととはたがいあいたるるなり。されば悪習あくしゅうひとつあるものふたつながらともにこれあらん。ゆえ悪習あくしゅうにおちいらず、うちひとつにもきずつけられざらんものまことさいわいなり。けだし兄弟けいていせい競争きょうそうもの魔鬼まきともばつせられん。競争きょうそうするものたれたるものなり、かれにはうらみもあるべく、あだこころもあるべし、にんしんかれをくるしむるなり。さりながら嫉妬しっと争心そうしんとなきものをばにんしんかなしませざらん。めいのあらはるるあらんもかれこころはみだされざるなり。たかのぼらんもかれはさわがざらん、いかんとなれば衆人しゅうじん特権とっけんして、衆人しゅうじんおのれよりなおうえにすればなり、ひとおのれあたらざるものとおもひ、衆人しゅうじんよりのちなるものおもふて、衆人しゅうじんひいでたるものみとめ、衆人しゅうじんおのれよりまされるものとなせばなり。嫉妬しっとせざるもの尊敬そんけいしいもとめず。よろこものともによろこび、めいある事功じこうおのれにせず、しんするものたすけ、善路ぜんろによりてものたのしみて当然とうぜん生活せいかつするもの賞讃しょうさんせんとす。もし兄弟けいていくそのことおこなふをるときは、かれにさまたげずして、勧訓かんくんもつかれをはげまさん。もし安然あんぜんとして休息きゅうそくするをるときは、それをもつかれつみとなさず、かえつかれにたすけん。もし兄弟けいていあやまちあるをるときは、そしらずして、適当てきとうなる忠言ちゅうげんかれにあたへん。もしいかものるときは、かれこころをみださず、和平わへいすすめ、あいもつやすんぜしめん。もしかなしものるときは、かろんぜずして、かれともかなしみ、たましいえきあることばもつかれをなぐさめん。もしがくなるもの及び無智むちなるものるときは、かれおしへて、有益ゆうえきことむかはしめん。もし不知ふちなるものるときは、にくまずして、かれになおきにいたるべきみちしめさん。もし聖詠せいえいうたときねむらんとするをるときは、つとめてかれまさん。これを略言りゃくげんすれば嫉妬しっとせざるもの及び争心そうしんをもたざるものは、いかなることおいても近者きんしゃ嘲弄ちょうろうせざるべく、かへつて嫉妬しっとせざるものはそのとものすべてのしんとすべてかわらざるぎょうとをよろこばんとす。