シリヤの聖イサアク全書/第二十四説教

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第24説教

<< 同胞（どうほう）にして同教（どうきょう）なる兄弟（けいてい）に遣（つかは）す書（しょ）。

彼（かれ）は世（よ）に居（お）りて、イサアクに遇（あ）はんと欲（ほつ）し、其（その）来（きた）らんことを書（しょ）を以（もつ）て勧（すす）め且（かつ）懇願（こんがん）したるによる。 >>

福（さいわい）なる者（もの）よ、我（われ）等（ら）は汝（なんぢ）の思（おも）ふ如（ごと）く有（ゆう）力（りょく）なるにあらず、蓋（けだ）し予（よ）の薄（はく）弱（じゃく）と汝（なんぢ）の為（ため）に予（よ）が亡（ほろ）ぶることの容（よう）易（い）なるとを汝（なんぢ）は知（し）らざるならん、ゆゑに我（われ）等（ら）の為（ため）にも慮（おもんばか）るを要（よう）せずして、汝（なんぢ）の為（ため）にも願（ねが）ふを要（よう）せざることを絶（た）えず我（われ）に求（もと）むること、恰（あたか）も習（しゅう）慣（かん）の故（ゆえ）に自（し）然（ぜん）に燃（も）ゆるものの如（ごと）し。兄弟（けいてい）よ、肉体（にくたい）と肉体（にくたい）の念（ねん）とを安（やす）んずる此（この）一（いち）事（じ）を我（われ）に求（もと）めずして、ただ我（わ）が霊魂（れいこん）の救（すくひ）の為（ため）に慮（おもんばか）るべし。猶（なほ）多事（たじ）ならずして我（われ）等（ら）は此（この）世（よ）を過（す）ぎ去（さ）らん。予（よ）が汝（なんぢ）に至（いた）る時（とき）は幾（いく）ばくの人（ひと）に接（せつ）すべきか。己（おのれ）の居所（きょしょ）に帰（かへ）る迄（まで）には人々（ひとびと）の風俗（ふうぞく）又（また）は其（その）場（ば）所（しょ）を幾（いく）ばく見（み）るべきか。人々（ひとびと）と面会（めんかい）するとき予（よ）の霊魂（れいこん）は思（し）念（ねん）の為（ため）に意（い）外（がい）の事（こと）を幾（いく）ばく受（う）くべきか。之（これ）を以（もつ）て惹（ひき）起（おこ）されたる人（にん）情（じょう）の為に多（た）少（しょう）慰（やす）んずる所（ところ）はあり共（とも）、之（これ）が為（ため）に擾（じょう）乱（らん）を幾（いく）ばく忍耐（にんたい）すべきか。此事（このこと）は汝（なんぢ）も知（し）らずんばあらず。世（よ）に属（ぞく）するものを見（み）ることの修（しゅう）道（どう）士（し）に害（がい）あることは汝（なんぢ）自（みづ）から之（これ）を知（し）る。見（み）よ、長（なが）き間（あいだ）自（みづ）から黙想（もくそう）を守（まも）りし者（もの）が、俄（にわか）に又（また）陥（おちい）りて、慣（な）れざる所（ところ）のものを見（み）且（かつ）聞（き）く時（とき）は、心（こころ）に如何（いか）なる変（へん）化（か）を生（しょう）ずべきか。それ苦（く）行（ぎょう）に居（い）て敵（てき）と奮闘（ふんとう）しつつある者（もの）の為（ため）には、未（いま）だ其（その）地位（ちい）に近（ちか）づかざる修道（しゅうどう）士（し）に面会（めんかい）することさへ害（がい）あるならば、特（こと）に長（なが）き間（あいだ）の経験（けいけん）を以（もつ）て認識（にんしき）を得（え）たる我（われ）等（ら）は如何（いか）なる井（せい）中（ちゅう）に落（お）ちんとするか、思（おも）ふべきなり。吁（ああ）我（われ）等（ら）は我（わ）が敵（てき）の鉾（ほこさき）より救（すく）はるるを得（え）ば幸（さいわい）なり。故（ゆえ）に必要（ひつよう）なくして予（よ）に此事（このこと）を為（な）さしめんと之（これ）を予（よ）より促（うなが）すなかれ。然（しか）のみならず、何（なに）を見聞（けんぶん）するも、これにより我（われ）等（ら）が為（た）めに何（なん）の害（がい）もあらずと主（しゅ）張（ちょう）し、野（の）に在（あり）ても世（よ）に在（あり）ても、わが思（し）念（ねん）は一様（いちよう）なるを得（え）んといふ者（もの）は、是（こ）れ我（われ）等（ら）を誘惑（ゆうわく）するなり、庵（あん）中（ちゅう）に在（あ）りても、其外（そのほか）に在（あ）りても、我（われ）等（ら）が謙遜（けんそん）は擾（みだ）されざるべし、之（これ）に悪（あ）しき変（へん）化（か）を生（しょう）ぜざるべし、人（ひと）と物（もの）とに接（せつ）するも之（これ）が為（ため）に慾（よく）の騒（そう）擾（じょう）を感（かん）ぜざるべしと、此（かく）の如（ごと）く主（しゅ）張（ちょう）する者（もの）等（ら）は、是（こ）れ疵（きず）を受（うく）るも、之（これ）を知（し）らざるなり。然（しか）れども我（われ）等（ら）は此（こ）の心霊（しんれい）上（じょう）の健全（けんぜん）に未（いま）だ達（たつ）せずして、臭（しゅう）穢（わい）なる傷（きず）を己（おの）れに有（ゆう）す、もし一日（いちにち）も此事（このこと）を慮（おもんばか）らず巻（ま）かずして之（これ）を棄（す）て、硬膏（こうこう）を貼（は）り包帯（ほうたい）を施（ほどこ）さずんば、蟲（むし）を湧（わき）出（いだ）さん。